突然の雨に翻弄されたタイGPのMoto2決勝。Yamaha VR46 Master Camp TeamのK・クボが難しいコンディションを克服し、9位獲得と健闘した。チームメイトのM・ゴンザレスはスリックタイヤへの交換を決断するも、スタート手続き中に作業が間に合わず、ピットレーンからスタートして25位となっている。
スタート直前に雨が降り出したため、スタート時刻を繰り下げるとともに周回数を16ラップに減算。ウエットレースが宣言され、ウォームアップラップ開始の3分前までタイヤ交換が許された。
グリッド上で雨を確認して喜んだのがクボ。地元のクボは、ウエットを得意とすることで知られている。16番グリッドから絶好のスタートを切ったあと第1コーナーでは大きくはらんでしまったが、すぐさま挽回して1ラップ目を12番手で終了した。
コース上にしぶきが上がり前方がほとんど見えない状態にもかかわらず、戦いはますます激しくなっていく。そしてライバルたちが悪天候に苦戦して戦列を離れるなかで、クボは順調に走行を続けて9番手に浮上した。同じくタイ人のS・チャントラ(ホンダ)がトップ走行中に転倒すると、地元ファンの声援はクボに集中。雨がさらに激しさを増すなかでいくつかポジションを下げたが、残り8ラップでレッドフラッグが提示されてレースは中断した。この時点ではまだレースの3分の2を終了しておらず再スタートが予定されていたが、雨はさらに強まるばかりだったため、そのまま中止が決定。通常の半分のポイントが与えられることとなり、9位のクボは3.5ポイントを手中にした。
一方のゴンザレスはスリックタイヤ装着を決断して賭けに出るが、時間内に作業を終えることができずピットレーンからのスタート。ところが雨はますます激しくなり、この賭けは裏目に出てしまう。ゴンザレスは最後尾で1ラップ目を終えると、再びピットに戻ってウエット・タイヤに交換した。
この時点で前のライダーから1分半以上遅れたが、それでも挽回を目指して全力の走行を続けるなか、残り8ラップでレッドフラッグが振られた。再スタートとなれば、グリッドは25位ながら前のライダーにかなり近づくことができるからだ。しかし再スタートした‘レース2’はすぐさま中断され、そのまま中止が決定。ゴンザレスは‘レース1’終了時点の25位に留まった。
この結果、ゴンザレスは合計44ポイントでランキング19位をキープ。クボは合計7.5ポイントでランキング25位に浮上した。Yamaha VR46 Master Camp Teamは合計60.5ポイントでチーム・ランキング12位となっている。
Yamaha VR46 Master Camp Team
K・クボ選手談(9位)
「ウォームアップはいいペースで走れていたのですが、フロントのフィーリングがあまり良くありませんでした。そしてゴンザレス選手について行こうとして第7コーナーで転倒してしまったのです。それでもラップタイムでは14位を獲得することができました。
決勝のスタート時間が近づいてきたとき、急に天候が変わって雨が降り出しました。そしてウエットレースがスタートすることになったのです。私はすぐさまポジションを上げましたが、目の前は、まさにカオス状態でした。何台かオーバーテイクを試みましたが、マシンは当然、ドライコンディション用にセッティングされています。雨は非常に激しく、そんなかでプッシュを続けるうちに、ついにレッドフラッグが振られました。この判断には全面的に賛成です。そのあと再スタートするはずでしたが、ピットを出た頃、第3コーナーではみんなが手を上げていました。走行は不可能だったのです。そのためレースはそのまま中止となり、私は9位を獲得することができました! トップ10入りは初めてなので本当にうれしいです! 私のために頑張ってくれたチームのみんなに感謝します。今日の結果は彼らのおかげです」
M・ゴンザレス選手談(25位)
「理論上は、これまで以上に表彰台に近づいていましたが、実際はそうはなりませんでした。グリッド上はかなり混乱状態でしたが、確かに雨が止んで路面が乾き始めていたのです。そしてクルーチーフのルカとともにスリックタイヤ装着を決断しました。でもみんながレインタイヤで出て行き、私たちの期待は外れてしまいました。1分後には雨が非常に激しくなったので、ここで終わりだとわかりました。私はタイヤを交換して完走しようとしましたが、それ以上、レースは不可能で、そのままキャンセルされました。今回はシーズンで最もいい走りができていましたし、決勝への準備も整っていただけに悔しい気持ちです。その一方で、クボ選手の活躍はとてもうれしいです。ホームGPで素晴らしい走りを見せました」
G・ニエト(スポーツ・ディレクター)談
「まさにクレイジー・レースです! 今日は、人生が一瞬で変わってしまうことを目の当たりにしました。最後の瞬間に、グリッド上でスリックタイヤの使用を決めました。グリッド上の路面は乾いていたので、それが最善の選択だと思ったのです。ゴンザレス選手はピットレーンからスタートすることになりましたが、突然、雨が激しく降り出し、チャンスを失ってしまいました。私たちはリスクをおかして好成績を目指しましたが、そうはなりませんでした。
クボ選手はレインタイヤで行くと決めました。そして自らのホームGPで初めてトップ10入りを果たしたのです。素晴らしい成績です! 簡単ではありませんでしたが、しっかりレースをコントロールしていました。私たちはみな、彼を誇りに思っています」