ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.07 6月29日 オランダ
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第7戦ダッチTT
■開催日:2013年6月28日(土)決勝結果
■開催地:オランダ/アッセン(4.542km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:18度 ■路面温度:18度
■PP:C・クラッチロー(1分34秒398/ヤマハ)
■FL:V・ロッシ(1分34秒894/ヤマハ)
REPORT
ロッシ、自己通算80勝を達成!クラッチローは3位
ヤマハ・ファクトリー・レーシングのV・ロッシが優勝。J・ロレンソは5位だった。モンスター・ヤマハ・テック3チームのC・クラッチローが3位、チームメイトのB・スミスは9位。
ロッシの優勝は自己通算80回目、2010年10月以来。ウイークを通じて好調をキープしてきたロッシは、決勝でも完璧な走り。グリッドポジションの4位をキープして第1コーナーへ進入し、2ラップ目にはS・ブラドルをパスして3位。残り22ラップの第1コーナー進入でM・マルケスをパスして2位に上がると、さらに上を目指してトップのD・ペドロサに照準を定めた。そしてわずか1ラップでペドロサに追いつき、最終シケインでトップに浮上。その後は最後までリードをキープし、メインスタンドを埋めた黄色い旗に迎えられてチェッカーを受けた。この結果、シリーズポイントでは25ポイントを加算して合計85ポイント。ランキング5位に浮上し、4位のC・クラッチローに2ポイント差まで迫っている。
一方、36時間前に鎖骨骨折の手術を終えたばかりのJ・ロレンソは、果敢にも決勝に出場して5位を獲得。グリッド12位からスタートし、第3コーナーまでに8位へ浮上。2ラップ目には5位に上がり、4位のクラッチローを追って行く展開となった。そして残り23ラップで早くもクラッチローをパス。さらに3位を目指して懸命の走行を続けたが、周回を重ねるごとに疲労が大きくなってペースが上がらなくなり、残り11ラップでクラッチローに抜き返された。それでも最後の力を振り絞って5位を死守。チェッカーを受けてピットに戻るとチームの拍手喝采に迎えられた。ロレンソはこの快挙によりランキング2位をキープ。トップのペドロサとの差はわずか9ポイント。
クラッチローの3位は、自身今季3度目の表彰台。モトGPで初めてのポールポジションを獲得していたクラッチローはスタートで5位まで後退したが、好調な走りをキープして15ラップ目の最終シケインでロレンソをパスして4位。さらに21ラップ目にはペドロサを捉えて3位に浮上した。その後もル・マンで獲得した自己ベストの2位に並ぼうと懸命にマルケスを追走。最終ラップの第1コーナーでついにマルケスを捉えて前に出ようとしたが、その後わずかにはらんでコースを外れ、ポジションアップはならなかった。この結果、3位を獲得してランキング4位をキープしている。
チームメイトのスミスも5戦連続でトップ10入りを果たす健闘。ロッシ、ペドロサと並んで2列目からスタートしたスミスは、世界のトップライダーたちの走りを学ぶべく、序盤から全力を尽くして上位グループに加わった。左手首の怪我が完治していないためハードブレーキングのコーナーで苦労し、一時はトップ10を外れたが、残り5ラップでN・ヘイデン、A・ドビツィオーゾとのバトルを制して9位でチェッカーを受けた。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | V・ロッシ | Yamaha Factory Racing | Yamaha | 41'25.202 |
2 | M・マルケス | Repsol Honda Team | Honda | +2.170 |
3 | C・クラッチロー | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | +4.073 |
4 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | +7.832 |
5 | J・ロレンソ | Yamaha Factory Racing | Yamaha | +15.510 |
6 | S・ブラドル | LCR Honda MotoGP | Honda | +27.519 |
7 | A・バウティスタ | GO&FUN Honda Gresini | Honda | +31.598 |
8 | A・エスパルガロ | Power Electronics Aspar | ART | +32.405 |
9 | B・スミス | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | +33.751 |
10 | A・ドビツィオーゾ | Ducati Team | Ducati | +33.801 |
11 | N・ヘイデン | Ducati Team | Ducati | +34.371 |
12 | R・ド・ピュニエ | Power Electronics Aspar | ART | +57.674 |
13 | A・イアンノーネ | Energy T.I. Pramac Racing Team | Ducati | +1'01.424 |
14 | M・ピロ | Ducati Test Team | Ducati | +1'01.561 |
15 | K・アブラハム | Cardion AB Motoracing | ART | +1'04.426 |
16 | D・ペトルッチ | Came IodaRacing Project | Ioda-Suter | +1'11.114 |
17 | C・エドワーズ | NGM Mobile Forward Racing | FTR Kawasaki | +1'15.249 |
18 | C・コルティ | NGM Mobile Forward Racing | FTR Kawasaki | +1'24.884 |
19 | Y・エルナンデス | Paul Bird Motorsport | ART | +1'25.854 |
20 | H・バルベラ | Avintia Blusens | FTR | +1'25.978 |
21 | B・スターリング | GO&FUN Honda Gresini | FTR-Honda | +1'26.256 |
22 | M・ラバティ | Paul Bird Motorsport | PBM | +1'26.610 |
LAP CHART
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | D・ペドロサ | Honda | 136 |
2 | J・ロレンソ | Yamaha | 127 |
3 | M・マルケス | Honda | 113 |
4 | C・クラッチロー | Yamaha | 87 |
5 | V・ロッシ | Yamaha | 85 |
6 | A・ドビツィオーゾ | Ducati | 65 |
11 | B・スミス | Yamaha | 41 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Yamaha | 152 |
2 | Honda | 151 |
3 | Ducati | 66 |
4 | ART | 44 |
5 | FTR | 14 |
6 | Ioda-Suter | 13 |
COMMENT
V・ロッシ選手談(優勝)
「今日は特別な一日。長い間、待ち焦がれ、どうしても欲しかった勝利なので、今までのどの優勝よりもうれしいよ!ライバルたちは皆、非常に速く、手強く、怪我をしていたホルヘを除いて実力がぶつかりあったまさに真っ向勝負。そのなかでの勝利だから余計にうれしかったんだ。僕はスタートから好調。ブレーキングでパスすることができ、マシンのフィーリングも良かった。フィニッシュ・ラインが僕を呼んでいたので、少しでも速く飛び込みたいという気持ちで懸命に走り続けたんだ。マシンが一歩、前進したので、より良く走れるようになった。これからは毎回、首位争いに加われるよう努力を続けなければならない。チームメイトのホルヘが、信じられないくらいの見事なレースをした。大変な覚悟で臨み、しっかりと形を残して貴重なポイントを獲得した。本当に素晴らしかった。おめでとう!」
J・ロレンソ選手談(5位)
「こんなことが実現するなんて、転倒のあとはとても信じられなかったよ。転倒したその日のうちに、すぐに決断して手術を受けたことが良かったのだろう。もし金曜日まで待っていたとしたら、ドクターたちも決勝出場を許してくれなかったと思う。僕らは今日、決勝出場を果たした。そして序盤から果敢に攻めて、何人かをパスすることができた。鎖骨がこんな状態なのでブレーキングはとてもきつかったけれど、それ以外は初めのうちはとても順調だったんだ。でも7ラップ目あたりから徐々に辛くなってきて、マシンの向き換え、ブレーキング、立ち上がりの加速も難しくなった。だからそれ以上はとても無理だったんだ。
シリーズポイントでは、ダニとの差が2ポイント広がっただけ。この5位は僕にとって、優勝よりも価値があると思っているよ。次のドイツまでにしっかり治したい。100%というわけにはいかないと思うけど、少なくとも今回よりは良くなっているはず。バレンティーノの優勝とカルの3位は素晴らしい成績。カルがマルケスの前でゴールしてくれたらもっと良かったんだけれど、すべてが思い通りにいくはずはないからね。バレンティーノは2年以上も優勝できず苦しんできたと思うので、チームメイトとして本当にうれしい。アラゴンのテストで何かをつかみ、大きく一歩、前進した。その成果が表れたんだ。去年のザクセンリンクではホンダ勢が強く、僕らも問題が出たりして苦労したけれど、今年はどうなるか…。体調さえ良くなれば、きっといい戦いができる」
W・ズィーレンベルグ、ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームマネジャー談
「レース前にコメントを求められていたとしたら、“完走して何ポイントかを獲得することが目標”と答えていただろう。実際には最初の15ラップで果敢に攻め、上位に絡んでいった。こんなことはとても信じられない。そしてホルヘは5位を獲得。さらにバレンティーノが優勝し、カルも3位に入って表彰台に上った。ヤマハにとって最高の結果になった。しかもチャンピオン争いのライバル、ダニとの差は2ポイント広がっただけ。これがこのレースのすべてと言っても過言ではない。苦しい時もダメージを最小限に留め、転倒せず最後まで走りきるということだ」
M・メレガリ、ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームディレクター談
「今日は‘ダブル・ウイン’のようなもの。バレンティーノもホルヘも、両方とも素晴らしかった。バレは2年8か月ぶりの優勝。前回もヤマハでの勝利だったので、我々としてもとてもうれしい結果。同時にポイント争いにおいてもライバルたちにストップをかけることができ、とても良かったと思う。ホルヘはまさに、信じられないようなことをやってのけた。尋常ではない意志の強さを見せつけられた。2日前に手術を受けたばかりで決勝を走ることだけでも素晴らしいが、ライダーというものは、怪我をしていてもマシンに乗っていれば力を発揮できるものなのだ。しかもペドロサとの差は2ポイント広がっただけ。今日のことは忘れられない思い出になるだろう。とても良い状態でこの地を離れ、次のレースに臨むことができる。全力で戦う」
C・クラッチロー選手談(3位)
「バルセロナが不甲斐ない結果に終わったあとで、またこうして表彰台に戻ってくることができてうれしい。最初から最後まで好バトルを展開し、自分のスピードを改めてアピールすることができたと思う。もう少しでモトGP自己ベストの2位を獲得できるところだったんだけどね…。ポールポジションからのスタートだったので優勝を目指していたが、最初の5ラップはタンクが重くて思うように走れなかった。うまくマシンの向きを変えられずにいるうちにホルヘに抜かれてしまい、再び追いついてパスすするまでに少し時間がかかった。そのあとダニとマルケスを追っていったけれど、ふたりを抜くだけの時間は残っていなかった。
最終ラップでマルケスに近づき、ちょっと接触してしまったと思う。マルクがスロットルを開けてくれたので良かったけれど、そうでなかったらふたり揃ってグランドスタンドに飛び込んでいたかもしれないよ!いずれにしても表彰台復帰は最高の気分。モンスター、テック3、ヤマハのすべてにとってうれしい結果になった。シーズン開幕前なら、最初の7戦で3回も表彰台に上り、安定して速くトップライダーたちと戦っているなんて誰も信じられなかっただろう。好調のまま次のドイツへ向かう。そしてもう一度、表彰台を目指すよ」
B・スミス選手談(9位)
「手首の怪我の影響が未だに残っていて、今日は今シーズンで最も厳しいレースになった。カタルニアの後で手術を受けたので、その前の2戦よりは楽になると思っていたけれど、実は他の問題も出てきてしまったんだ。そんな状態を考えれば十分にいいレースができたと思うし、最終ラップで9位に上がることができたのは大きな収穫だよ。ブラドルとの差はバルセロナの時とほとんど同じだし、僕としてはバルセロナの6位よりも今日の9位のほうがうれしいくらい。だって今日は本当に苦しい状況で、前で転倒したライダーもいなかったんだからね。そして今回は何より、2列目スタートができたことがうれしかった。ホルヘが来ることはわかっていたから、考え得る最高の成績は7位だったと思う。そのために安定性をキープし、とくに後半戦は力強いペースで走ったつもり。そして最終ラップでベテランふたりをパスし、今回もまたトップ10入りを果たすことができたんだ。レース序盤のためのセッティングをもう少し煮詰める必要性を感じているが、次のドイツには自信を持って臨めそう。その頃には手首の怪我がもう少し良くなって、もう少し扱いやすくなっているといいのだけれど…」
H・ポンシャラル、モンスター・ヤマハ・テック3チーム・チームマネジャー談
「とても素晴らしいレースだったが、正直に言えば、カルが予選でポールポジションを獲得したときにはもう少し上の成績を期待していた。我々チームにとっても2010年のB・スピース以来、初めてのポールポジション。もしもカルが、序盤からもう少し速く走れていれば、バレンティーノと優勝争いを展開することができたはずなのだ。でも、だからと言って、彼が何かを失ったわけではない。サテライト・チームのライダーとして際立った存在であることに変わりはなく、チャンピオンシップ・リーダーに打ち勝ち、もう少しでマルケスをパスできるところまで迫った。今日、改めてその強さを証明し、次のドイツでも再び表彰台争いを目指すだけの能力を我々に確信させてくれたのだ。
ブラッドリーのほうも非常に好調だった。ムジェロで負傷した手首の痛みが残っているにもかかわらず、懸命の努力で予選6位、決勝9位を獲得。決してあきらめようとせず、しかも安定性を最後までキープした。最終ラップでニッキー、アンドレアという経験豊富なライダーふたりをパスできたことは、将来のための自信にもなったことだろう。バレンティーノとホルヘにおめでとう! バレンティーノの優勝は、ヤマハだけでなくモトGP界全体にとってもうれしいことだと思う。そしてホルヘのほうは、あの見事なパフォーマンスを形容する言葉も見つからないくらいだ。世界チャンピオンたる所以を如実に表していると思う。カルがダニの前でゴールしたことも、彼はきっと喜んでいるはず」
津谷晃司、MS開発部 モトGPプロジェクトリーダー談
「ここアッセンサーキットで行われるオランダGPは、ダッチTTとして親しまれる伝統あるグランプリの一つです。また、オランダは1日のうちで天気が目まぐるしく変わる"ダッチウェザー"でも有名で、今年も天候に悩まされましたが、レース時には路面は完全ドライ、気温・路面温度も上昇し、今ウィーク中では最も良好なコンディションとなりました。
先週実施したテストでフロント周りのセッティングに改善の方向性を見つけたロッシが2010年のマレーシアGP以来となる3年振りの優勝。2日前の高速ハイサイド転倒による左鎖骨骨折の手術をしたばかりのロレンソは、痛みに堪えながらトップと大差のないタイムで走行し非常に価値のある5位を獲得、ウェットコンディションであればレースをキャンセルする可能性もあったため、天候も味方につけました。
ここ数戦、ライバルより上手くタイヤを機能させることができており、ヤマハとしては3連勝、今シーズン7戦4勝となります。2日前の時点では最悪の事態を想定せざるを得なかったチャンピオンシップポイントも、優勝ロッシ、3位クラッチローの援護射撃とロレンソ自身の奇跡的な頑張りで、トップとの2位ロレンソとの差は2ポイント離されただけ、その差9ポイントで十分射程圏内です。またコンストラクターズポイントもトップに立ち、マシンの戦闘力の高さも証明できていると思います。
ロレンソの骨折による悪い雰囲気でスタートした今レースでしたが、ライダー/チーム/スタッフ全員の頑張りで良い結果につなげることができ、現場の士気は高いです。これから連戦が始まりますが、チャンピオン獲得に向け全力で戦っていきますので、引続きご支援・ご声援を宜しくお願いします」