ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.18 11月11日 バレンシア
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第18戦バレンシアGP
■開催日:2012年11月11日(日)決勝結果
■開催地:スペイン/リカルド・トルモサーキット(4.005 km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:13度 ■路面温度:15度
■PP:D・ペドロサ(1分30秒844/ホンダ)
■FL:D・ペドロサ(1分33秒119)
REPORT
中須賀克行、2位表彰台
「ウェットレース」が宣言されての決勝。雨は止んだがハーフウエット状態で、ライン上が少しずつ乾き始める頃のスタート。フォーメーションラップをウェットタイヤ車で走ったC・クラッチローやD・ペドロサ(ホンダ)らは、スタート時にピットでスリックタイヤ車に乗り換え、ピットレーンからのスタート。スタート直後はCRTマシンが先行したが、まもなくスリックタイヤ車でスタートしたロレンソが首位にたつ。
6周目には最後尾発進のペドロサが追い上げ2番手につける展開。ロレンソがそのまま中盤以降も独走するかに見えたが、中盤に入る頃、ラップ遅れのライダーに急接近した際にバランスを崩して転倒、そのままリタイアに終わった。これでトップにたったペドロサはそのまま独走してトップでゴール。
ピットレーン発進のクラッチロー。ほぼ最後尾からの追い上げを強いられたが、車両交換で多くのライダーがピットインする間に、みるみるうちに上昇。ロレンソが転倒した次周には中須賀をパスして2番手に上がる。そしてペドロサを追っていくが、23ラップ目の最終コーナーに入るところで単独転倒しリタイアに終わった。
中須賀もスリックタイヤ車で16番手から発進。先行車を次々パスして6周目に5番手に上ると、12周目には2番手に一瞬あがる健闘。追い上げてきたクラッチローに先行されてしまい3番手を走るが、そのクラッチローが終盤単独転倒し中須賀は2位へ復活。その後ペドロサとの差を詰めるまでには至らなかったが、着実に走りきり堂々2位ゴールを果たした。今季のMotoGPで日本人初の表彰台。
モンスター・ヤマハ・テック3チームで最後のレースを戦ったドビツィオーゾは6位を獲得。しかしレインタイヤを選択したことを後悔することとなった。コースのいくつかのセクションはまだ水が残っていたため序盤は好調で、3ラップ目にはA・エスパルガロをとらえてトップに浮上。しかし急激にコンディションが好転してドライ・ラインが増えてくると、ピットに戻ってタイヤ交換をせざるを得なくなってしまった。さらにピットでエンジンをストールさせて遅れを拡大したが、再スタート後は見事なリカバリーを見せて6位まで挽回した。6位以内獲得は15回目。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | 48'23.819 |
2 | 中須賀克行 | Yamaha Factory Racing | Yamaha | +37.661 |
3 | C・ストーナー | Repsol Honda Team | Honda | 1'00.633 |
4 | A・バウティスタ | San Carlo Honda Gresini | Honda | +1'02.811 |
5 | M・ピロ | San Carlo Honda Gresini | FTR | +1'26.608 |
6 | A・ドビツィオーゾ | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | +1'30.423 |
7 | K・アブラハム | Pramac Racing Team | Ducati | +1'31.789 |
8 | D・ペトルッチ | Came IodaRacing Project | Ioda | -1Lap |
9 | J・エリソン | Paul Bird Motorsport | ART | -1Lap |
10 | V・ロッシ | Ducati Team | Ducati | -1Lap |
11 | A・エスパルガロ | Power Electronics Aspar | ART | -1Lap |
12 | R・ド・ピュニエ | Power Electronics Aspar | ART | - 2Laps |
13 | 青山博一 | Avintia Blusens | BQR | - 2Laps |
14 | C・エドワーズ | NGM Mobile Forward Racing | Suter | -3Laps |
LAP CHART
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | J・ロレンソ | Yamaha | 350 |
2 | D・ペドロサ | Honda | 332 |
3 | C・ストーナー | Honda | 254 |
4 | A・ドビツィオーゾ | Yamaha | 218 |
5 | A・バウティスタ | Honda | 178 |
6 | V・ロッシ | Ducati | 163 |
7 | C・クラッチロー | Yamaha | 151 |
10 | B・スピース | Yamaha | 88 |
18 | 中須賀克行 | Yamaha | 27 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Honda | 412 |
2 | Yamaha | 386 |
3 | Ducati | 192 |
4 | ART | 100 |
5 | FTR | 43 |
6 | BQR | 35 |
COMMENT
中須賀克行選手談(2位)
「コンディションが非常に難しかったなかで、このような成績を獲得することができてとてもうれしい。本当に厳しいレースだったけれど、チームが素晴らしい仕事ぶりで僕を支えてくれた。セッティングでベスト・チョイスをしてくれた彼らに、心から感謝している。予選が悪かったので、こうして表彰台に上れたことは夢のようだし、まるで奇跡と言ってもいい。モトGPという特別なチャンスを与えてくれたヤマハに感謝する」
J・ロレンソ選手談(リタイア)
「僕らはすでにチャンピオンになっていた。そのことに満足しているし、とても重要なことだ。もしも、まだタイトルが決まっていなかったとしたら、今日は別の展開になっていたかもしれない。今日はもちろん、勝ちたい気持ちがとても強かった。スリックタイヤの選択はかなりリスキーだったけれど、それが的中して好レースを走ることができた。ダニが追ってきても、結局は4秒もリードを広げることができたんだ。でもそのあと遅いライダーにつかまって、おそらくマーシャルが青旗を出すのが遅かったのだろう、僕はしばらくそこから抜け出ることができなかった。エリソンはずっとレース・ラインをキープしているので、僕はもう待ちきれなくなった。それでついに抜いていこうとしたらミスをしてしまったんだ。ドライ・ラインを外れてウエットの路面に乗り、激しいハイサイドを食らったよ」
W・ズィーレンベルグ、ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームマネジャー談
「何というばかげたレースだ! 優勝できたはずなのに、このような結果になり非常に残念だ。ホルヘは大きな賭けをしていたが、それが功を奏して力強い走りを見せてくれた。だが路面コンディションはひどい状態で、その上、たくさんの遅いマシンがリスクを高めていた。ホルヘが怪我をしなかったことが幸いだったし、すでにチャンピオンを決めていて本当に良かったと思う。今夜はお祝いをして、そのあとはまた仕事に戻る。火曜日にはもう、2013シーズンに向けて次のスタートを切ることになる。一方、中須賀も本当に見事だった。もちろん、ベンのチームの貢献も非常に大きかった」
M・メレガリ、ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームディレクター談
「このような展開は誰も予想できなかっただろう。ホルヘにとってのチャンピオン・シーズンが、それも母国ファンの目の前で、こんな形で終わることになり非常に残念だ。彼に怪我がなかったことは幸いだった。一方、中須賀の活躍はまさに奇跡のおとぎ話。彼をチームに迎えた我々としても非常にうれしかったし、その快挙を誇りに思う。また苦しいシーズンを送ってきたベンのチームのスタッフたちにとっても、非常にうれしい結果だった。彼らのさらなる活躍、発展を願っている」
A・ドビツィオーゾ選手談(6位)
「モンスター・ヤマハ・テック3チームでの最後のレースで6位に留まり残念だ。タイヤ・チョイスで最悪の判断をしてしまい申し訳ないし、自分自身も本当にがっかり。いつもは、状況判断は得意なほうだが、今回のウエットタイヤの選択は完全に間違いだった。そしてもうひとつの間違いは、ピットインが遅れたことだ。他のライダーの様子がわからなかったんだけれど、ホルヘを見たときに、すでに遅過ぎたことに気づいた。それでも、やっぱり戻るべきだと思ってピットでタイヤを交換したら、エンジンをストールさせて、さらに時間を費やしてしまった。でもそこでもまだ、あきらめなかったよ。そして必死でリズムを取り戻し、何とか6位まで上がることができた。モンスター・ヤマハ・テック3チームで戦った今シーズンは、とても素晴らしい経験になった。スタッフは皆プロフェッショナルで、このようなチームとともに仕事ができたこと、いくつもの良い結果を残せたことを誇りに思う」
C・クラッチロー選手談(リタイア)
「このような形でシーズンを終えることになり残念。ウエットタイヤを履くべきかどうか迷ったが、ダニのピットを見てそれに従ったんだ。結果的に、スリックタイヤの選択は正しかったわけだけれど、ドライ・ラインがあるとは言っても、そのなかにはとても狭いものもあったんだ。そこでは、パスを仕掛けるときでも決してラインを外れることはできなかった。ダニが僕より先に前へ出ていったが、僕も一旦リズムをつかむと、とても楽に走れるようになった。3位を大きく引き離していて、モトGP最高成績に向かって好調に走っていた。
ところが最終コーナーで、ほんの小さな水たまりに乗ってしまった。一気にマシンが振られ、僕は投げ出された。マシンと絡まなかったことはラッキーだった。決して激しくプッシュしていたわけではなかっただけに悔しかったが、このようなコンディションの下では多くのライダーが同じようなことになっていたはず。そのなかでも速さをアピールすることができたし、とくにシーズン後半戦は良いところもたくさんあった。表彰台に2回、上り、このところはずっと表彰台争いを展開している。もう少し結果につなげたかったけれど、ポテンシャルをアピールすることはできたし、世界のトップライダーと戦うだけの力を証明できたと思う。自信を持って、2013シーズンを迎えられる」
H・ポンシャラル、モンスター・ヤマハ・テック3チーム・チームマネジャー談
「こんな展開になるとは...。最初の数ラップはカルがスリック、アンドレアがレインという、信じられないような状況だった。コンディションはとてもトリッキーで誰にも予測はつかなかったが、結果的にはカルの判断が正しかったことになる。彼は3位以下を大きく引き離していて、残りは数ラップということになったので、彼にとってモトGPで最高の、そしてチームにとっても今季最高の成績が目の前まで近づいていたのだが...。運の悪いことに、彼は小さなウエットラインにのってしまった。でもこれは誰を責めることもできない。カルは2年目のシーズンをエンジョイし、素晴らしい走りを見せてくれた。2013シーズンはさらに大きく成長して手強い存在になると確信しており、今から非常に楽しみにしている。
アンドレアもよく頑張ったが、ピットに戻った時にエンジンをストールさせてしまったことは残念だった。モンスター・ヤマハ・テック3チームでの最後のレースで何としても表彰台に上りたいと思っていたが、ウエットタイヤを選択したことが結果的にはそれを妨げた格好だ。だが、彼には心から感謝している。今シーズンは本当に素晴らしい仕事をしてくれて、表彰台6回を含めランキング4位獲得と、我がチーム史上、最高のライダーとなった。もちろんチーム・ランキング3位獲得の立役者だ。ヤマハ・ファクトリー・チーム、HRCに続く3位だから、サテライト・チームとしては見事な結果と言っていいだろう」
辻 幸一、MS開発部 モトGPグループリーダー談
「中須賀選手がやってくれました!モトGPの強豪ライダーを従えて見事2位という素晴らしい結果を残してくれました。ヤマハファクトリーライダーのベン・スピース選手の代役として、全日本選手権JSBチャンピオンとして、またYZR-M1の開発ライダーとして大きなプレッシャーがあったと思います。 一方、チャンピオンのロレンソ選手はトップを快走中に周回遅れを抜き損ねて転倒リタイヤ。有終の美を飾ることはできませんでしたが、それ以上に充実した結果を得ることができました。今シーズンのモトGPは全日程を終了しました。ご支援、ご声援を下さった多くの方々にあらためて感謝申し上げます。本当にありがとうございました」