ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.18 11月10日 バレンシア
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第18戦バレンシアGP
■開催日:2013年11月10日(日)決勝結果
■開催地:スペイン/リカルド・トルモサーキット(4.005km)
■周回数:30周(120.15 km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:23度 ■路面温度:26度
■PP:M・マルケス(1分30秒237/ホンダ)
■FL:D・ペドロサ(1分31秒628/ホンダ)
REPORT
J・ロレンソ&YZR-M1が優勝
ヤマハ・ファクトリー・レーシングのJ・ロレンソが今季8度目の優勝。チームメイトのロッシは4位。モンスター・ヤマハ・テック3チームのB・スミスは7位、チームメイトのC・クラッチローは、6番手走行中の10周目に転倒リタイアした。このレースを3位で終えたM・マルケス(ホンダ)がチャンピオンを決定。ロレンソは4ポイント差のランキング2位でシーズンを終えた。
チャンピオン争いのライバル、M・マルケス(ホンダ)に13ポイント差で臨んだ決勝。ロレンソにとって失うものは何もなく、チャンスを勝ち取るためだけにチャレンジしていった。スタートでマルケスを抑えてホールショット。後続の集団をふたりのバトルに引き込むため、序盤から逃げるのではなく、ややペースを抑えて走行した。これが功を奏してD・ペドロサ(ホンダ)が追い上げ、ふたりの闘志漲る超接近戦は、文字通り息をのむテール・ツゥー・ノーズの好バトル。ついには10周目の第2コーナーで接触し、ペドロサが大きくはらみ5番手までポジションを下げた。
このアクシデントの間にマルケスが一時トップに浮上。しかしロレンソは直後の周にマルケスをパスしてトップを奪い返すと、その後はジリジリ差を拡大。15周目に約1秒差を、20周目には約1.5秒の差を築いていく。終盤に入ってマルケスが後退して、代わりにペドロサが2番手に上ってきたが、ロレンソは2位以下を寄せ付けることなく独走してトップでゴールした。
ロッシは、序盤からトップ集団につける走り。マルケスを追って第1コーナーに進入。そのすぐ後ろにはA・バウティスタ(ホンダ)がつけていた。まもなくバウティスタに先行を許したが、12周目のコーナー進入でブレーキングを遅らせて3位に浮上。そのまま表彰台獲得を目指したが、14周目にはペドロサに先を譲り、その後は4番手をキープしてゴールした。
シーズン終盤から好調をキープしてポイント差を挽回し、最終戦まで持ち込んだロレンソ。その最終戦も最高のパフォーマンスを見せたが、マルケスには届かずランキング2位。ロッシは今季8度目の4位でランキング4位を守った。
モンスター・ヤマハ・テック3チームのB・スミスとC・クラッチローは明暗を分けた。スミスは7位を獲得。クラッチローは10周目、上位グループを追い上げているところで転倒した。
スミスはいつものように絶好のスタートを切り、クラッチローがこれを追う形。6ラップ目にクラッチローが前に出て6位に上がり、前方の5台の集団を追っていったが、レースの3分の1まで来たところで転倒してしまった。
スミスは序盤のハイペースをそのままに、危なげなく走りきって今季13度目のトップ10フィニッシュ。最後の5レースはいずれもトップ8入りという健闘で、ランキング10位を獲得した。またモンスター・ヤマハ・テック3チームは、チーム・ランキングでヤマハ、ホンダのファクトリー・チームに続く3位を獲得している。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | J・ロレンソ | Yamaha Factory Racing | Yamaha | 46'10.302 |
2 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | +3.934 |
3 | M・マルケス | Repsol Honda Team | Honda | +7.357 |
4 | V・ロッシ | Yamaha Factory Racing | Yamaha | +10.579 |
5 | A・バウティスタ | GO&FUN Honda Gresini | Honda | +14.965 |
6 | S・ブラドル | LCR Honda MotoGP | Honda | +24.399 |
7 | B・スミス | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | +29.043 |
8 | N・ヘイデン | Ducati Team | Ducati | +39.893 |
9 | A・ドビツィオーゾ | Ducati Team | Ducati | +53.196 |
10 | M・ピロ | Ignite Pramac Racing Team | Ducati | +1'02.983 |
11 | A・エスパルガロ | Power Electronics Aspar | ART | +1'04.197 |
12 | H・バルベラ | Avintia Blusens | FTR | +1'06.826 |
13 | C・コルティ | NGM Mobile Forward Racing | FTR Kawasaki | +1'11.481 |
14 | D・ペトルッチ | Came IodaRacing Project | Ioda-Suter | +1'13.643 |
15 | C・エドワーズ | NGM Mobile Forward Racing | FTR Kawasaki | +1'24.249 |
16 | 青山博一 | Avintia Blusens | FTR | +1'33.010 |
17 | M・ラバティ | Paul Bird Motorsport | PBM | -1Lap |
18 | L・スカッサ | Cardion AB Motoracing | ART | -1Lap |
19 | B・スターリング | GO&FUN Honda Gresini | FTR-Honda | -1Lap |
20 | M・バウアー | Remus Racing Team | S&B Suter | -1Lap |
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | M・マルケス | Honda | 334 |
2 | J・ロレンソ | Yamaha | 330 |
3 | D・ペドロサ | Honda | 300 |
4 | V・ロッシ | Yamaha | 237 |
5 | C・クラッチロー | Yamaha | 188 |
6 | A・バウティスタ | Honda | 171 |
10 | B・スミス | Yamaha | 116 |
22 | 中須賀克行 | Yamaha | 5 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Honda | 389 |
2 | Yamaha | 381 |
3 | Ducati | 155 |
4 | ART | 99 |
5 | FTR Kawasaki | 46 |
6 | FTR | 46 |
7 | Ioda-Suter | 26 |
8 | PBM | 3 |
9 | FTR Honda | 2 |
COMMENT
J・ロレンソ選手談(優勝)
「序盤でペースを抑える作戦だったが、バウティスタ、バレンティーノ、クラッチロー、その他のライダーたちはなかなか上がって来られなかったようだ。最初と最後に少しでも順位をかきまわそうとトライしてみたけれど、後ろを見るとバレンティーノはかなり遠く離れていたので、あとはもう優勝を狙うことに集中するしかないと思って作戦を変更。マルケスのミスを待つしかなかったんだ。ランキング2位は素晴らしい結果。今はマルケスのチャンピオン獲得を祝福したい。今夜はパーティーだ!」
V・ロッシ選手談(4位)
「今朝のウォームアップでいろいろな問題が発生してしまい、ペースが上がっていなかったが、決勝では何とか解決していい走りができたと思う。でも残念ながら、表彰台を目指すところまではいかなかったんだ。序盤はついて行けたので頑張ってトライしたんだけれど、後半はスピードが上がらず、シーズンを通してずっとそうだったように、上位のライダーと比べると常にコンマ2、3秒の差があった。今シーズンはどうしても、ポールポジション、優勝、チャンピオンを狙うことができなかったんだ。総合的に見れば悪くないシーズンだったと思うけれど、今後はさらにスピードを上げ、パフォーマンスを高めてコンスタントに表彰台に上れるようにしていかなければならない。これが2014シーズンの目標」
W・ズィーレンベルグ、ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームマネージャー談
「ファンタスティックなシーズン。そして最終戦での優勝。見ごたえある素晴らしいショーだった。最初の10ラップの作戦は、後続を引き込み集団にすること。難しいことだが、ホルヘはとてもうまくやってくれた。すべてはチャンピオンのチャンスを探るため。これがレースというものだ。だがマルクのほうも非常にクレバーで冷静だった。ホルヘは彼にできるすべてを最高の形でやり遂げ、優勝を果たしたが、タイトルを奪うことはできなかった。このランキング2位は特別なもの。ホルヘは今シーズン、8回優勝し、2回鎖骨を骨折した。厳しい状況のなかで、タイトルまであと4ポイントに迫ったのだから見事としか言いようがない。チーム全員が、この結果を誇りに思っている」
M・メレガリ、ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームディレクター談
「素晴らしいシーズンだった。我々にできる最大限の力を尽くし、ここまで来れたことは、チャンピオン獲得と同等の価値があると思う。ホルヘとチームを支えてくれたすべての人に心からのお礼を言いたい。我々は最後まで決してあきらめなかった。そしてホルヘもあきらめていなかった。そして今日も非常に素晴らしいレースを見せてくれた。作戦を持って臨み、着実にそれを遂行し、最大限を尽くしてレースをコントロール。そして、もうこれ以上はどうにもならないというところまで頑張って、そのあと作戦を変更してペースを上げたというわけだ。シーズンは長く、ハードで、タフだったが、ここまでやってきたことに満足することができた。すべての人に感謝。そしてチームメンバーのジェレミー、ウォルター、“ビーボ”の前途を祝したい。明日からはもう、新しいシーズンが始まる。3日間のテストがあるので、日本のエンジニアたちにできるだけ多くの情報を上げていきたい」
C・クラッチロー選手談(DNF)
「モンスター・ヤマハ・テック3チームでの最後のレースがこのような形に終わり、とても残念。自分自身のことよりも、チームのみんなに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。今朝のウォームアップでエンジンに不具合が出て2ラップしか走行できなかったため、試そうと思っていたセッティングを試せないままレースに臨んでしまった。それでも走りだしてみるとフィーリングが良くて、ブラッドリーを抜いたあと上位との差を詰めていこうとしていたところだったんだ。運悪く縁石に乗ってしまいフロントをすくわれた。今日は残念な結果になったが、今シーズンの目標だったランキング5位を獲得することができたので良かったと思う。チームのみんなに改めてお礼を言いたい。3年間をともにし、たくさんの素晴らしい思い出を作った。この3年間でチームから多くを学んだ。そして今、新しい冒険に踏み出す時が来たんだ」
B・スミス選手談(7位)
「もうひとつ7位を獲得。そしてシリーズポイントで合計116ポイントとチーム・ランキング3位。ルーキー・シーズンとして十分にうれしい結果だ。トップとの差は今回も30秒以内におさまっていたので、良い形でシーズンを締めくくることができたと思う。シーズンを振り返ってみると、開幕のときからここまで大きく成長することができた。すべてはチームのおかげ。この厳しいクラスを戦いながら、彼らは12か月にわたりずっと僕を導き助けてくれた。そしてこの経験は、同時にとても楽しいものでもあったんだ。グランプリで長い歴史と経験を持つこのチームに支えてもらったことに心から感謝。火曜日にはもう次のシーズンが始まる。今から楽しみにしているよ!」
H・ポンシャラル、モンスター・ヤマハ・テック3チーム、チームマネジャー談
「チーム・ランキングで再び、ホンダ、ヤマハのファクトリーに続く3位を獲得できたことを誇りに思っている。ライダーのランキングではカルが5位、ブラッドリーが10位と健闘。総合的に見て、今年も素晴らしいシーズンだったと言えるだろう。カルの転倒はもちろん残念だったが、最終戦で何としても表彰台を目指したかった彼を誰も責めることはできない。しかもランキング5位は日本ですでに決まっていたのだから。ブラッドリーのほうは、今日もよく頑張った。レース終盤のペースはS・ブラドルやバレンティーノにも近づいており、我々に来シーズンへの自信と希望を与えてくれるものになった。彼がたった1年でここまで成長したことを本当にうれしく思い、2014シーズンの活躍を期待せずにはいられない。また、明日はポルがチームに加入することになるので楽しみにしている。今日は転倒してしまったが、そのスピードを見せてくれた。来シーズンは我がチームの重要なひとりになるだろう。しかし今日は、カルがチームを去る日でもあり、我々はみなとても悲しい気持ちになっている。2011年から互いに協力し合い、ともに仕事をしてきたことは素晴らしい経験だった。そして今は、家族の一員のような存在だ。彼はある種の魔法と忘れ得ぬたくさんの思い出を残してくれた。我がチームにとって、そしてヤマハとモンスターにとって、彼は際立って素晴らしいライダーだった。その彼を送り出すことは悲しいことだが、将来の成功を祈りたい」
津谷晃司、MS開発部 モトGPプロジェクトリーダー談
「最後まで決して諦めることなく全力で挑んだ最終戦でした。勝利にこだわって最終戦でも新たな技術的トライをしながら、チーム、スタッフが一丸となってライダーに十分な戦闘力を持ったマシンをライダーに託すことができたと思います。ロレンソ選手は最善を尽くして戦い、レースは最終的には余裕を持って独走で優勝を果たしましたが、ライバル達の落ち着いた走行により、ロッシ選手の援護も一歩及ばず僅差でチャンピオンシップを逃してしまいました。しかしながら、来年に繋がる貴重なデータを得られたことは良かったと思います。これまで応援してくださった全世界のファンの皆様、多大なご支援を頂いたスポンサー、テクニカルサプライヤーの方々にも心から感謝したいと思います。また共に闘い、このレースを最後にチームを去るクラッチロー選手やスタッフ達にも、たくさんの感動と勇気を残してくれたことを感謝します。長かったタフなシーズンが終わり、まだ今は悔しい気持ちで一杯ですが、気持ちを切り替えて早速明日から来シーズンに向けたテストを開始します。1年間応援ありがとうございました。そして、これからチャンピオン奪還を目指して新たな戦いに挑みますので、引き続きご声援よろしくお願いします」