ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.12 9月1日 イギリス
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第12戦イギリスGP
■開催日:2013年9月1日(日)決勝結果
■開催地:イギリス/シルバーストーン(5.902km)
■周回数:20周(118 km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:18度 ■路面温度:29度
■PP:M・マルケス(2分00秒691/ホンダ)
■FL:D・ペドロサ(2分01秒941/ホンダ)
REPORT
ロレンソ、接戦を制し今季4勝目を飾る
ヤマハ・ファクトリー・レーシングのJ・ロレンソは、激しいバトルを制して0.08秒差で優勝。チームメイトのV・ロッシは4位。モンスター・ヤマハ・テック3チームのC・クラッチローとB・スミスは、それぞれ7位、9位でゴールした。
20周・約40分のレースは、ゴールまで終始テール・ツー・ノーズのトップ争いが展開された。予選2番手フロントロウ中央から発進のロレンソは、閃光の如く飛び出してホールショットを決め、最大のライバル、M・マルケス(ホンダ)を従える格好となった。序盤は2人が後続を引き離す展開。7周目ころ、D・ペドロサ(ホンダ)が2人に追いつき3人の縦一列になった接近戦となる。俊敏な旋回で攻めるロレンソと、果敢なブレーキングでインを狙うマルケスとのハードな争いが毎コーナーで続いていく。その僅差は中盤から終盤にかけても変わらない。ところが終盤順位が動く。18周目にインを刺したマルケスがトップに浮上。しかし次の周ロレンソが抜き返す。ロレンソは、0.3秒差でトップを守り最終20ラップ目に突入。この周も再びマルケスがインを差し一時にトップに立つが、ゴール手前で再びロレンソは抜き返してチェカーを受けた。
2列目発進のV・ロッシも、絶妙なスタート。スタート直後はロレンソ、マルケスに続く3番手を走るが、ペドロサに抜かれて1周目は4位通過。その後も2選手に先行され、レース序盤はマシンの挙動に手間取ってペースが上がらず、前半は6番手を走る。追い上げは中盤からだった。9周目にS・ブラドル(ホンダ)を抜き返すと、前を走るA・バウティスタ(ホンダ)を追いかけ、ついに18周目にバウティスタをパス。残りの3周も2人のテール・ツー・ノーズが続くが、ロッシは0.06秒差でバウティスタの追い上げをふり切り4位でフィニッシュした。
シリーズポイントでは、ロレンソがランキングトップのマルケスとの差を5ポイント縮めて39ポイントとした。合計は194ポイントで、ランキング2位のD・ペドロサに9ポイント差まで迫っている。一方のロッシは合計156ポイントでランキング4位をキープ。5位のC・クラッチローとの差は20ポイント。
モンスター・ヤマハ・テック3チームは、クラッチローがフロントロウからスタートすると、74,000人もの母国ファンが大声援を送った。クラッチローもこれに応えようと持ち前のファイティング・スピリットと“ネバーギブアップ”の姿勢を見せるが、今日までに3度ものハイスピード・クラッシュを経験したため、痛みでペースが上がらない。7番手を走るクラッチローに、イギリスのファンは暖かい声援を送り続け、今季10回目のトップ10入りを歓迎した。
一方、ランキング10位浮上を目指すスミスは、僅差で8位を逃して9位。N・ヘイデン、A・ドビツィオーゾを追っていたスミスは、残り4ラップで9位に浮上。その後も引き続きヘイデンを追っていったが、結局パスはならず、コンマ2秒離されてチェッカーを受けた。
次回は2週間後の9月15日、サンマリノで行われる。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | J・ロレンソ | Yamaha Factory Racing | Yamaha | 40'52.515 |
2 | M・マルケス | Repsol Honda Team | Honda | +0.081 |
3 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | +1.551 |
4 | V・ロッシ | Yamaha Factory Racing | Yamaha | +13.233 |
5 | A・バウティスタ | GO&FUN Honda Gresini | Honda | +13.298 |
6 | S・ブラドル | LCR Honda MotoGP | Honda | +20.227 |
7 | C・クラッチロー | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | +26.299 |
8 | N・ヘイデン | Ducati Team | Ducati | +35.993 |
9 | B・スミス | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | +36.119 |
10 | A・エスパルガロ | Power Electronics Aspar | ART | +53.196 |
11 | A・イアンノーネ | Energy T.I. Pramac Racing Team | Ducati | +59.058 |
12 | M・ピロ | Ignite Pramac Racing Team | Ducati | +1'00.710 |
13 | H・バルベラ | Avintia Blusens | FTR | +1'01.690 |
14 | C・エドワーズ | NGM Mobile Forward Racing | FTR Kawasaki | +1'01.843 |
15 | D・ペトルッチ | Came IodaRacing Project | Ioda-Suter | +1'08.833 |
16 | R・ド・ピュニエ | Power Electronics Aspar | ART | +1'09.063 |
17 | C・コルティ | NGM Mobile Forward Racing | FTR Kawasaki | +1'16.474 |
18 | 青山博一 | Avintia Blusens | FTR | +1'16.535 |
19 | M・ラバティ | Paul Bird Motorsport | PBM | +1'32.057 |
20 | Y・エルナンデス | Paul Bird Motorsport | ART | +1'36.224 |
21 | B・スターリング | GO&FUN Honda Gresini | FTR-Honda | +2'00.635 |
LAP CHART
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | M・マルケス | Honda | 233 |
2 | D・ペドロサ | Honda | 203 |
3 | J・ロレンソ | Yamaha | 194 |
4 | V・ロッシ | Yamaha | 156 |
5 | C・クラッチロー | Yamaha | 136 |
6 | S・ブラドル | Honda | 113 |
11 | B・スミス | Yamaha | 66 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Honda | 271 |
2 | Yamaha | 245 |
3 | Ducati | 107 |
4 | ART | 70 |
5 | FTR | 31 |
6 | FTR Kawasaki | 27 |
7 | Ioda-Suter | 22 |
8 | PBM | 3 |
COMMENT
J・ロレンソ選手談(優勝)
「僕のこれまでのキャリアのなかでも最高のレースのひとつになった。ほんとうにハッピーで、ほんとうにうれしい! 何より、とても大きな意味のある勝利だったと思うんだ。序盤から、これまで以上に懸命にプッシュしてアドバンテージを広げようとしたが、どうやっても差は広がらなかった。マルクはウォームアップでちょっと身体を傷めていたというのに、決してあきらめようとはしなかったんだ。そして最後の3ラップになって僕の前へ出てきたので、1ラップは後ろについて様子を窺った。すると、ブレーキングがあまりうまくいっていないのがわかったので、彼が転倒したコーナーで勝負。最終ラップも最大限の力でプッシュし、ようやくわずかにアドバンテージが広がったが、そのあとのブレーキングでミスをして危うく転倒しそうになってしまったんだ。最後の3コーナーというところで彼が再び抜いて行った時には、もうこれで終わりだ、2位止まりだ、と思ったけれど、すぐ次の瞬間には“今しかない!”と感じてもう一度トライ。今の僕は、正直に言ってチャンピオンシップのことは考えていないよ。ただこの特別な優勝を喜ぶだけ。そしてそのあとは、次のミサノに気持ちを切り替えていく」
V・ロッシ選手談(4位)
「前回のブルノより良かったと思う。ここではいつも、あまり良い成績を獲ったことがないんだけれど、今回は少し様子が違っていてフィーリングは悪くなかったよ。でも、まだまだ4位止まり…。スタートはとてもうまくいったが、2ラップ目から7ラップ目くらいまではライバルたちのほうが、ずっと速くてついて行くことができなかった。今後も決してあきらめずにハードワークを続けていく。トップとの差が少し縮まり、ペースも安定してきて、もうあとほんのわずかというところまで来ているんだけれど、もう少しスピードが必要なんだ。ウォームアップのなかでモディファイを行い、フロントのフィーリングは向上していた」
W・ズィーレンベルグ、ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームマネジャー談
「3連戦の最終回で好結果を見ることができて良かった。何周もリードをキープしていながら最終的に3位になってしまうのは本当に辛いこと。しかし今回は、まるで猛獣のようなタフさで最後まで走り切った! 持っているものすべてを出し尽し、とくに最終ラップでは信じられないほどの強い決意で勝利を引き寄せた。チームのほうもハードワークを行って、この決勝マシンを用意した。ブレーキングでのパフォーマンスが向上しており、優勝の鍵にもなったが、ライダーとの緊密なやり取りのなかで、それが可能になったと感じている」
M・メレガリ、ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームディレクター談
「非常にハードで苦しいレースではあったが、ホルヘはそれに打ち勝ち、ついに優勝を果たした。ほんとうに素晴らしい仕事をしてくれたと思う。彼とチームとがともに懸命に努力したからこそ、あの最終ラップで、手強いライバルたちに勝ちきることができたのだ。シルバーストーンがヤマハに合っていることはわかっていたが、実際にその通りになり、大きな意味のある優勝を飾ることができたことに満足している。これでポジティブな気持ちを取り戻し、自信を持ってミサノを迎えることができる。この勝利を支え、可能にしてくれたすべての人々にお礼を言いたい。そして我々は、今後も懸命に攻め続けていくことを約束する。バレンティーノのほうも苦しい戦いのなかで4位を獲得した。次のミサノは彼のホームレースになるので、ベスト・マシンを用意して表彰台を目指してもらいたい」
C・クラッチロー選手談(7位)
「正直なところ、ようやくレースウイークが終わってほっとしているよ。僕にとっては、これまでで最も難しいレースになってしまい、何もチャレンジできなかったことが悔しい。転倒のあとで、とくに右腕は全く力が入らない状態。しかもスタート直後のタイヤが暖まっていないときにグリップを失ってしまった。そのようなわけで、今週は合計3回も転倒してしまったんだ。このような最悪のウイークのなかで唯一、良かったことは、去年よりも速くなっていたこと。それでも水曜日にここに到着した時点での目標には遠く及ばなかった。ホルヘの活躍を祝福したい。マルク、ダニも含めて上位のライダーたちが、見事なスピードで素晴らしいショーを展開した。僕も何としてもそこに加わりたいと思っているが、あと数日は自宅で静養し、それから次の戦いの舞台であるミサノへ向かう予定。今度こそ、トップに近づきたい」
B・スミス選手談(9位)
「スタートはとてもうまくいった。これまでグリップ不足に悩んできたので、決勝ではリアに柔らかめを選んでいたんだ。太陽の出現を待ち望んでいたけれど、結局、気温は上がってこなかったので、わずか3ラップ走っただけで、そのあとの厳しい展開が予想できてしまった。おそらくハード・タイヤが正しい選択だったのだろうが、昨日はそれを比較検討する時間がなかったんだ。自分たちにできることをするしかなかった。ニッキーの後ろでチェッカーを受けるのはいやだったけれど、アンドレアが目の前で転倒したばかりだったので、安全に走り切るほうを選んだ。このように何から何まで厳しい状況だったけれど、大勢のイギリスのファンの前で走ることができて良かった。とても特別な感覚があった」
H・ポンシャラル、モンスター・ヤマハ・テック3チーム、チームマネジャー談
「モンスター・ヤマハ・テック3チームにとって非常に厳しいウイークが終わり、ほっとしている。カルとブラッドリーにとっては特別なレースだったので、モチベーションがときに大きくなり過ぎたようだ。カルは毎年のように、ここでバッドラックに見舞われてきた。予選のあとは表彰台争いを期待することができたが、今朝の転倒でまた自信を失ってしまったのかもしれない。苦しい戦いのなかでも、ひたすらゴールラインを目指し、ポイントを獲得してレースを終えたことを評価している。彼はウイークを通じて懸命にプッシュし続け、大きな転倒があっても決してあきらめなかった。その勇敢さに感謝したいと思う。ブラッドリーのほうは、今回もまたアンドレア、ニッキーと終始バトルを展開し、多くの時間帯で前を走った。彼らの経験の豊かさを考えれば、決して簡単なことではないだろう。今は、カルとブラッドリーがホームレースでしっかり走り切ったことに満足している。これからミサノでのチャレンジに向けて準備を始める」
津谷晃司、MS開発部 モトGPプロジェクトリーダー談
「今週はウィークを通して天候に恵まれ、本日も朝から晴天のもと、気温18℃/路面温度29℃と良好なコンディションでの決勝となりました。初日から落ち着いてセッティングを進めることができたロレンソ選手が好スタートでホールショットを奪い、ライバル2台を引き連れて終始トップを走行、ラスト3周での壮絶なドッグファイトを制して、6戦振りに今季4勝目を飾ることができました。アッセンでの鎖骨骨折以降、手負いの状態で厳しいレースが続いていましたが、今回非常に強い彼本来の姿が戻ったことを感じました。モトGPクラスでは2010年の開催から4年目となるここシルバーストーンサーキットでロレンソ選手は2年連続3回目の優勝であり、今回も自信を持って挑んだ結果だと思います。ロッシ選手は思ったようにグリップが得られずセットアップに苦慮しましたが、決勝では最後まで諦めない走りで4位、2日目の転倒の影響が残るクラッチロー選手はペースを掴みきれず7位、スミス選手は9位でのフィニッシュとなりました。夏休み中にもフルサポートを続けてきた開発陣、マシンのブレーキングスタビリティと旋回性に加えてタイヤ性能をうまく引き出すべくレース直前まで調整を繰り返した現場スタッフ、そんなスタッフの頑張りに気迫の走りで応えてくれたライダー達に改めて祝福の言葉を送りたいと思います。次回はロッシ選手の地元サンマリノ・ミサノサーキットでの第13戦となります。ライバル達も非常に強く厳しい戦いが続くと思いますが、今はひとつひとつ勝利することを考えて前進し続けていきますので、今後とも応援よろしくお願いします」