ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.06 6月17日 イギリス
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第6戦イギリスGP
■開催日:2012年6月17日(日)決勝結果
■開催地:イギリス/シルバーストーン(5.900km)
■周回数:20周(118km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:15度 ■路面温度:23度
■PP:A・バウティスタ (2分03秒303/ホンダ)
■FL:J・ロレンソ(2分02秒888/ヤマハ)
REPORT
ロレンソが今季4勝目
ヤマハ・ファクトリー・レーシングのJ・ロレンソが今季4勝目を飾った。チームメイトのB・スピースは5位。モンスター・ヤマハ・テック3チームのC・クラッチローは最後尾スタートから追い上げ6位。A・ドビツィオーゾは3位走行中転倒、再スタートするも1周遅れの19位に終わった。
5周目から首位を走っていたC・ストーナー(ホンダ)の後にロレンソが追いついたのは10周目頃だった。この周から11周目にかけて、2人は激しい抜きさしを披露。幾度か首位争奪バトルを繰り返した後、リードを広げていったのはロレンソだった。その後、ジリジリと差をつけ、残り4ラップのところで小さなミスがあったが、逆転されることはなく終盤は独走して優勝した。
フロントロウ発進のスピースは、好スタートをきり序盤はトップを走る。ところが4周目ごろからタイヤのグリップが急激に低下し、5ラップ目には若干ラインを膨らませる間にストーナーに抜かれて2位に後退。その直後は、スピース、ロレンソのランデブー走行でストーナーを追っていくが、スピースは後退。それでも後半は、5番手をしっかり守り、今季自己最高となる結果を残した。
クラッチローは見事な走りで母国ファンを魅了。クラッチローは昨日のフリー・プラクティス中の転倒で負傷し、検査の結果、左足首の骨にひびが入っていることがわかったが、朝のウォームアップ・セッション開始直前に走行可能と診断されて出場が決定した。公式予選を欠場したためグリッドは最後尾。ここから、6万6千を超えるイギリス・ファンの記憶に残るような絶好のスタートを切り、2ラップ目までに9台をパスして11位。10位のV・ロッシまであと3.3秒まで近づいた。きり返しやシフトチェンジでは怪我の影響があり苦労しながらも、6ラップ目にはロッシを捉え、11ラップまでにH・バルベラとS・ブラドルをパスして7位に浮上した。この時点で6位のN・ヘイデンに7秒遅れていたが、痛みに耐えながら歯を食いしばり、トップグループと同等のハイペースで追撃。ついには最終ラップでヘイデンを捉え、6位に上がってチェッカーを受けた。素晴らしいレースを見せた母国のヒーローを、観客たちはスタンディング・オベーションで迎えた。
一方、チームメイトのA・ドビツィオーゾは序盤でトップ争いを展開。ヘイデン、D・ペドロサ、スピースを振り切り、9ラップ目に3位に浮上した。しかし2位のストーナーを追い始めたところで転倒。幸い怪我はなかったが、ブレーキ・レバーのプロテクト・カバーを損傷していたため一旦ピットに戻らなければならず、その後、再スタートしたものの19位に留まった。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | J・ロレンソ | Yamaha Factory Racing | Yamaha | 41'16.429 |
2 | C・ストーナー | Repsol Honda Team | Honda | +3.313 |
3 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | +3.599 |
4 | A・バウティスタ | San Carlo Honda Gresini | Honda | +5.196 |
5 | B・スピース | Yamaha Factory Racing | Yamaha | +11.531 |
6 | C・クラッチロー | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | +15.112 |
7 | N・ヘイデン | Ducati Team | Ducati | +15.527 |
8 | S・ブラドル | LCR Honda MotoGP | Honda | +22.521 |
9 | V・ロッシ | Ducati Team | Ducati | +36.138 |
10 | H・バルベラ | Pramac Racing Team | Ducati | +41.328 |
11 | A・エスパルガロ | Power Electronics Aspar | ART | +1'03.157 |
12 | R・ド・ピュニエ | Power Electronics Aspar | ART | +1'03.443 |
13 | M・ピロ | San Carlo Honda Gresini | FTR | +1'07.290 |
14 | J・エリソン | Paul Bird Motorsport | ART | +1'14.782 |
15 | Y・エルナンデス | Avintia Blusens | BQR | +1'15.108 |
16 | C・エドワーズ | NGM Mobile Forward Racing | Auter | +1'29.899 |
17 | D・ペトルッチ | Came IodaRacing Project | Ioda | +1'40.302 |
18 | I・シルバ | Avintia Blusens | BQR | +1'52.099 |
19 | A・ドビツィオーゾ | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | -1Lap |
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | J・ロレンソ | Yamaha | 140 |
2 | C・ストーナー | Honda | 115 |
3 | D・ペドロサ | Honda | 101 |
4 | C・クラッチロー | Yamaha | 66 |
5 | A・ドピツィオーゾ | Yamaha | 60 |
6 | V・ロッシ | Ducati | 58 |
11 | B・スピース | Yamaha | 35 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Yamaha | 140 |
2 | Honda | 126 |
3 | Ducati | 65 |
4 | ART | 24 |
5 | FTR | 9 |
6 | Ioda | 4 |
7 | Suter | 4 |
8 | BQR-FTR | 3 |
9 | BQR | 2 |
COMMENT
J・ロレンソ選手談(優勝)
「非常に難しいレースだった。上位グループはみな、とても強くて速かったから、彼らに追いつき、ついて行くのは大変だったよ。少しずつリアが落ち着いてくると自信がついて、彼らより速く走れるようになったので挽回を開始。そしてケイシーに追いついたあとも、無理をして転倒するようなことは避けたかったから、じっと我慢して絶好のチャンスがめぐってくるのを待ったんだ。ケイシーとのバトルは素晴らしくて、幸運にも僕のほうがペースで勝っていたのでパスすることができた。チェッカーまであと4ラップというところでミスをしてしまい、もうちょっとで転倒するところ! これを何とか持ちこたえて優勝することができた。素晴らしいマシンを準備してくれたチームのためにも、とてもうれしい結果」
B・スピース選手談(5位)
「ほろ苦い一日。スタートは素晴らしく、序盤はいいペースで走ることができたけれど、4、5ラップもするとリアタイヤが言うことをきかなくなり、それまでの勢いもペースもなくなってしまったんだ。でも5位は今シーズン最高の成績。マシンのポテンシャルは非常に高いので、ホルヘとともに表彰台や優勝を目指すこともできたはずなんだ」
W・ズィーレンベルグ、ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームマネジャー談
「今週は変わりやすいコンディションに悩まされてきたが、最終的には3連勝を飾ることができた。予想できない状況がいくつもあったなかで、この結果は本当にうれしいものだ。チームはハードワークに励み、ホルヘも序盤でよく我慢して後半の戦いに賭け、終盤は激しくプッシュしていった。見事な勝利だった!」
M・メレガリ、ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームディレクター談
「今回もまた、大きな意味のある勝利となった。シリーズポイントを拡大し、まだ十分というわけではないけれども、確かに良い方向へと進んでいる。ベンのほうも絶好のスタートからレースをリードして好調だったが、リアタイヤのグリップ低下でペースをキープすることができなくなってしまった。なぜ、こんなことになったのか、これからデータをチェックして原因を探る。次のアッセンにはポジティブな気持ちで臨むことになるだろう。楽しみにしている」
C・クラッチロー選手談(6位)
「忘れられないレースになるだろう。昨日は転倒してしまい、またもホームレースを欠場することになるのかと悲嘆に暮れていた。でもクリニカ・モバイルの医師団とシルバーストーンのメディカル・スタッフのおかげで、ようやく出場が許可されたんだ。でも、まさか6位に入れるなんて思っていなかったよ。
普通なら、グリッド3列目からスタートしても、なかなか実現できないことだからね。怪我をしていたから苦しい戦いだったんだけれど、とにかくやらなければならない。痛みは無視して、アドレナリンとイギリスの観客のサポートを引き出そうと頑張ったよ。ブラドルをパスしたあと、ニッキーは前方、はるか遠くにいたけれど、ひたすらプッシュしていって結果を待った。ラップタイムではトップ3にも負けない速さが出ていたから、昨日の転倒さえなかったらイギリスGPでの表彰台も夢ではなかっただろう。
もちろん、今日の6位に不満はない。マシン・セッティングのベースを決めてくれたモンスター・ヤマハ・テック3のスタッフに感謝。また大きな声援で支えてくれたイギリスのファンにも心から感謝しているよ。昨日、転倒してグラベルに投げ出されたとき、脳裏に浮かんだのは彼らのことだった。このままではまたしても、イギリスGPで僕の走りを見られないことになってしまう、とね。彼らのサポートに助けられた。そのことを誇りに思ってほしい」
A・ドビツィオーゾ選手談(19位)
「2位争いに加わる可能性があっただけに、悔しい結果。序盤はとてもリズムが良くて、昨日までと比べて格段にペースが速くなっていたんだ。最初は限界ぎりぎりまで攻めていたけれど、しばらくすると、ロレンソ以外はみなペースが落ちてきた。それで僕もまたトップグループに近づき、いいペースをキープした。これで3位に上がり、表彰台を目指して自信を持って走っていたのに、思いがけず転倒してしまったんだ。とても気持ち良く乗れていて、限界を超えていたとは思っていなかったので、まったく予期しないことだった。ほんの小さなミスでリアがグリップを失い、マシンをコントロールすることができなかった。本当に残念だ。でも今回でまた、YZR-M1のフィーリングが大きく向上したことは確か。転倒がなければ2位を獲得できたし、優勝も遠くはない。モンスター・ヤマハ・テック3チームは今回もいい仕事をしてくれたし、ヤマハのマシンも本当に素晴らしい。だから次のアッセンではまた、表彰台を目指して戦っていくよ」
H・ポンシャラル、モンスター・ヤマハ・テック3チーム・チームマネジャー談
「本当に見事なレースだった。カルの素晴らしさを言葉で言い表すのは、とても不可能だ。今朝の段階ではまだ、彼が走れるのかどうかさえわからなかった。そのことを考えれば、この6位獲得という最良の結果を我々は今後も決して忘れることはないだろう。チームとしては10位あたりまで上がってきてくれることを期待していたのだが、ひとたびアドレナリンが噴き出すと自信が戻り、身体を伏せてペースを上げた。7位に上がったときには本当にうれしかった。前のニッキーとは大きな差があったが、彼は何と、最終ラップに計ったように、完璧なパスを成功させたのだ。自分を信じて決してあきらめず、その才能に負けないくらいの強い精神力を見せてくれた。
彼を誇りに思い、イギリスのファンもまた、同じ気持ちであったと確信している。その一方で、アンドレアのほうは残念な結果になった。明らかに表彰台獲得に匹敵するペースをもっていたのだが...。ファクトリー・マシンを次々にパスし、前にはケイシーとホルヘだけが残った。ところがほんの小さなミスで、非常に大きな代償を被ることとなってしまった。誰もが彼の表彰台獲得を疑わなかったのだが...。しかしカルとアンドレアがモンスター・ヤマハ・テック3チームの強さをアピールしてくれたことは間違いない。そしてホルヘとヤマハにも祝福を贈ろう。ライダーとチームとがひとつになり、見事な仕事を成し遂げた。今日もそのコンビネーションの良さが光っていたと思う」
辻 幸一、MS開発部 モトGPグループリーダー談
「レースの本場であるイギリス・シルバーストーンサーキットですが、例年変わり易い天候に翻弄されセットアップを煮詰める事ができないままレースを迎えるため、マシンそのものの実力がレース結果を左右するといっても過言ではありません。今年も同様初日から小雨、強い風に加え低い気温と路面温度にバイクセッティング、タイヤ選択の方向性が最後まで定まりませんでしたが4人のライダーが上手くカバーしてくれたおかげで実力を発揮してくれたと思います。ロレンソ選手は3戦連続の優勝、スピース選手は序盤トップを快走する速さを見せつけ最終的に5位。サテライトのドビツィオーゾ選手は3位争いの中で転倒するも最後まで諦めることなく完走してきれました。しかしながら今回のMVPは何と言ってもクラッチロー選手であったと思います。昨日フリー走行で転倒し左足を負傷。怪我を推して最後尾からのスタートでしたが最後は6位入賞を果たし見事なパフォーマンスを見せてくれました。
6戦中4勝と結果は悪くはありませんが、毎回チャレンジをしているため綱渡りの状態です。引続き皆様の後押しをよろしくお願いします。次回はオランダ・アッセンサーキットでの第7戦となります」