ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.01 4月8日 カタール
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第1戦カタールGP
■開催日:2012年4月8日(日)
■開催地:カタール/ロサイル・サーキット(5.380km)
■周回数22周(118.36km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:24度 ■路面温度:23度
■PP:J・ロレンソ(1分54秒634/ヤマハ)
■FL:C・ストーナー(1分55秒541/ホンダ)
REPORT
ロレンソ開幕戦で優勝!クラッチローは自己ベストの4位でゴール
ヤマハ・ファクトリー・レーシングのJ・ロレンソが、開幕戦カタールGPで優勝を飾った。MotoGP開幕戦でのロレンソの優勝は初めて。モンスター・ヤマハ・テック3のC・クラッチローは、MotoGP自己ベストの4位でゴール、チームメイトのA・ドビツィオーゾは5位。ロレンソのチームメイト、B・スピースは振るわず11位だった。
市販エンジン搭載のCRTマシン9台を含め、22台が出走した決勝。4周目からトップに浮上したC・ストーナー(ホンダ)が序盤からリードし、その後にロレンソ、D・ペドロサ(ホンダ)が続き、この3台のトップ集団で中盤へ入る。レースが3分の2を経過した頃、ストーナーは2番手ロレンソに1.5~1.7秒ほどリードし、そのまま終盤に入るかの様相を呈していた。しかしそこから終盤にかけて2人の差はジリジリ詰っていく。ラスト4周目=19周目に一瞬ペドロサに抜かれて3位まで下がったロレンソだったが、そこから猛烈な追い上げを開始。まずペドロサを抜き返すと、次の周、ラスト3周(20周目)に入るときにはストーナーを抜いてトップに浮上。その後の3周はさらにリードを広げトップでゴールした。これでロレンソはMotoGP通算18勝目。
一方チームメイトのスピースは、予選4番手グリッド2列目から順調なスタートをきったが、序盤から徐々に後退、6周目には9番手まで下がり、さらに中盤以降も順位を下げ11位でのゴールに終わった。
MotoGPで初めてフロントロウからスタートしたクラッチローは、やや出遅れたもののすぐにペースを取り戻して3ラップ目には早くも1分55秒984の自己ベストラップをマーク。これは優勝したロレンソのラップタイムを上回る記録となった。一方のドビツィオーゾはグリッド2列目から絶好のスタートを切って4位につけており、1周目を終えた時点ではこれにクラッチローが5位で続いていた。ふたりはそのままコンマ3秒と差を開けずに周回を重ね、ドビツィオーゾがクラッチローのアタックを懸命に防ぐ格好となっていったが、17ラップ目でついにクラッチローが動き4位に浮上。ドビツィオーゾはその後もあきらめずに追って行ったが、クラッチローは安定したペースをキープしており逆転のチャンスは訪れなかった。この結果、クラッチローは非ファクトリーライダー中トップの座を獲得。モンスター・ヤマハ・テック3チームは、チーム・ランキングで3位につけることになった。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | J・ロレンソ | Yamaha Factory Racing | Yamaha | 42'44.214 |
2 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | +0.852 |
3 | C・ストーナー | Repsol Honda Team | Honda | +2.908 |
4 | C・クラッチロー | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | +17.114 |
5 | A・ドビツィオーゾ | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | +17.420 |
6 | N・ヘイデン | Ducati Team | Ducati | +28.413 |
7 | A・バウティスタ | San Carlo Honda Gresini | Honda | +28.446 |
8 | S・ブラドル | LCR Honda MotoGP | Honda | +29.464 |
9 | H・バルベラ | Pramac Racing Team | Ducati | +31.384 |
10 | V・ロッシ | Ducati Team | Ducati | +33.665 |
11 | B・スピース | Yamaha Factory Racing | Yamaha | +56.907 |
12 | C・エドワーズ | NGM Mobile Forward Racing | Suter | +58.088 |
13 | R・ド・ピュニエ | Power Electronics Aspar | ART | +1'10.650 |
14 | Y・エルナンデス | Avintia Blusens | BQR-FTR | +1'15.943 |
15 | A・エスパルガロ | Power Electronics Aspar | ART | +1'26.733 |
16 | I・シルバ | Avintia Blusens | BQR-FTR | +1'43.327 |
17 | M・パッシーニ | Speed Master | ART | +1'47.419 |
18 | J・エリソン | Paul Bird Motorsport | ART | +1'51.882 |
LAP CHART
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | J・ロレンソ | Yamaha | 25 |
2 | D・ペドロサ | Honda | 20 |
3 | C・ストーナー | Honda | 16 |
4 | C・クラッチロー | Yamaha | 13 |
5 | A・ドビツィオーゾ | Yamaha | 11 |
6 | N・ヘイデン | Ducati | 10 |
11 | B・スピース | Yamaha | 5 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Yamaha | 25 |
2 | Honda | 20 |
3 | Ducati | 10 |
4 | Suter | 4 |
5 | ART | 3 |
6 | BQR-FTR | 2 |
COMMENT
J・ロレンソ選手談(優勝)
「なんて素晴らしいレース!僕は自分の能力をすべて出し切り、自分のパワーをすべてコースに注入したよ!最後まで決してあきらめず、全力でプッシュし続けたからこそ、この勝利につながったんだ。ケイシーは序盤で強さを見せてリードを広げていった。でも終盤で何かあったらしく、ペースが落ちてきたんだ。僕のほうは自分のペースをキープできていたので、最後には彼をパスすることができた。YZR-M1はこの冬の間に大きく進化した。このマシンを与えてくれたヤマハに心から感謝している」
B・スピース選手談(11位)
「厳しいレースだった。でもレースっていうのはこういうもの。今回はレースウイークのなかで2回もエアバッグのテストをしてしまったけれど、それがちゃんと機能してくれることがわかったから良かったよ。これからヘレスに戻り、次までにマシンの問題を解決したい。ホルヘの優勝は素晴らしかった。このことでヤマハの好調ぶりを確信することができる。僕のほうは、とにかくチャタリングがひどいので、これを何とかしないとね」
W・ズィーレンベルグ、ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームマネジャー談
「何を話せばいいだろう?とにかく最高のレース!まったくロレンソらしい素晴らしい勝利だよ。彼はこのような勝ち方を以前にも何度かしているんだ。決してあきらめずにね。彼にはこの力があるから勝利を手にすることができる。ケイシーがややペースを下げたことも確かだが、我々のほうもパーフェクトなセッティングで臨めていたわけではない。とくに最後の数ラップでは、ホルヘがリスクをおかしながらも必死でプッシュしていったからこそ、ようやくこの勝利をつかむことができたのだ。ホルヘは本当に素晴らしかった。そしてこの勝利のために今週も頑張ってくれたチームのみんなにも感謝する」
M・メレガリ、ファクトリー・ヤマハ・レーシング・チームディレクター談
「ウォームアップで突然、ベンのマシンにチャタリングの問題が発生した。決勝までにそれを解決することができなかった。原因はまだはっきりしないが、エンジニアたちが分析を行い、ヘレスまでに解決できるよう取り組んでいく。ホルヘのほうは非常に素晴らしい勝利だ。どれほど素晴らしいか、言葉で言い表すのが難しいほどだ。ウイークを通じてずっと、一歩、抜きんでていたように思う。シーズンのスタートとしてこれ以上ないほどのレースができたので、次のスペインも自信を持って臨むことができる。またカルやアンドレアの好調もうれしい。このことがYZR-M1の性能を如実に表しているからね」
C・クラッチロー選手談(4位)
「素晴らしいシーズンのスタートとなった。でも戦いは厳しかった。スタートがあまりうまくいかず最初でいくつか下げてしまったのが残念。それがなければトップ3にもっと近づくことができたのに...。彼らとバトルするのは無理だったかもしれないけれど、その差は半分くらいになっていたんじゃないかな。でも代わりにアンドレアとのバトルを楽しむことができた。彼は経験豊富なライダーで、ほとんど猫とねずみの戦いのようだったけれども、そこからたくさんのことを学ぶことができた。彼をパスすることは可能だったんだけれど、そのあとは必ず僕の後ろにぴったりつけてくることもわかっていた。だから最後までチャンスを待っていたんだ。
一旦、前に出たあとは、ただひたすら身体を伏せて走りに集中し、ミスをしないように、安定性を崩さないように心掛けて再逆転を防いだよ。今日の走りのなかで、冬の間に積み重ねてきたことをすべて引き出し、上位にもここまで近づくことができたのはとても良かったと思う。昨シーズンもバレンシアで4位に入っているけれど、あのときはコース・コンディションが悪くてリタイアも多かった。今回の4位は本物だと思うので、とてもうれしい。モンスター・ヤマハ・テック3チームのスタッフが素晴らしい仕事ぶりで僕を支えてくれた。彼らのためにも本当に良かったと思っているよ。次のヘレスにも自信を持って臨むことができる」
A・ドビツィオーゾ選手談(5位)
「5位は悪くない成績だと思うけれど、あまりハッピーな気持ちにはなれない。これは主に、ヤマハのマシンでのレース経験が少ないからだと思うんだ。でも今日のレースの中で多くのことを学ぶことができた。それを次のヘレスに活かしていきたい。
いい仕事をしたいという気持ちが強いのに、なかなかそれができない。その原因は、ひとつには、やはりまだヤマハのマシンをマスターできていないこと。もうひとつはシャシーと電子制御システムのセッティングがしっかりできていないことだと思う。このふたつができれば順位はもっと上がっていくだろう。今日はスピースをパスするのに時間がかかり、その間に上位グループから離されてしまった。またカルを抑えきれなかったことも悔まれるが、終盤はとくに自信をもって走ることができなくなっていた。でもそれよりも、彼のほうが確かに素晴らしかった。今日のこの経験を次につなげていきたい。モンスター・ヤマハ・テック3チームは、僕に少しでも早くマシンを理解させようと懸命にサポートをしてくれている。次のヘレスはもっと力強く、いい走りができるはずだよ」
H・ポンシャラル、モンスター・ヤマハ・テック3チーム・チームマネジャー談
「モンスター・ヤマハ・テック3チームにとっては、最高のシーズンのスタートとなった。カルとアンドレアが本当に素晴らしい仕事をしてくれた。彼らふたりの懸命のバトルを見ていて、私としてはかなりナーバスにもなった。何しろ最初から最後までコンマ3秒と離れない距離で戦っていたのだから。でもそのなかでは、ふたりが互いにリスペクトし合って正々堂々と戦い、またミスによってつまらない結果を出してしまうようなこともなかった。だからふたりとも祝福したい。カルの4位とアンドレアの5位は、これからの戦いに向けてもチーム全員の大きな励みとなるだろう。
ふたりの活躍によって、1000ccのYZR-M1のポテンシャルを証明することができたと思う。ヤマハの技術スタッフにも"おめでとう"と言いたい。オフシーズンのテストでも新型YZR-M1は戦闘力の高さを見せてくれていたので自信を持っていたが、今夜、それが実践のなかで証明されたのだ。ホルヘの優勝はもちろん、カルとアンドレアがトップ5に入ったことはヤマハにとって非常にうれしい結果だと思う。モンスター・ヤマハ・テック3チームの全員が、ハッピーな気持ちで故郷に帰ることができる。彼らのハードワークのご褒美になった」
辻 幸一、MS開発部 モトGPグループリーダー談
「見事にロレンソが開幕戦を優勝で飾ってくれました。ライダーはもちろんのこと、チームスタッフ、開発のサポートしていただいたメーカーさん、なによりヤマハを応援していただいている皆様に感謝、感謝です。昨年の反省をもとに2012年YZR-M1はすべての見直しを行いました。その甲斐もありオフシーズンの3回のテストを通じ、極めて高いパフォーマンスを示すことが出来、ここカタールでもヤマハ勢全員が非常に良い結果を出してくれたと思います。スピース選手は昨日の転倒の影響もあり本来の力を発揮できませんでしたが、次回は確実に復活します。次のレースはスペイン・ヘレスサーキットでの開催となります。我々はチャレンジャーであるという気持ちを持って、新たな気持ちで戦います。引続き皆様のご支援・ご声援を宜しくお願いします」