ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.15 10月10日 マレーシア
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第15戦マレーシアGP
■開催日:2010年10月10日(日)決勝結果
■開催地:マレーシア/セパン(5.548km)
■観客数:62,141人
■周回数:20周(110.96 km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:33度 ■路面温度:43度
■PP:J・ロレンソ(2分01秒537/ヤマハ)
■FL:V・ロッシ(2分02秒117/ヤマハ)
REPORT
V・ロッシが今季2勝目、J・ロレンソが3位となりチャンピオン決定
フィアット・ヤマハ・チームのV・ロッシが今季2勝目、J・ロレンソが3位となりランキング2位との差を85点とし、シリーズ終盤の3戦を残しチャンピオンを決めた。今季15戦中13回目の表彰台に上ったロレンソは、スペイン人ライダーとしては史上ふたり目の最高峰クラス・チャンピオン。一方のモンスター・ヤマハ・テック3チームのB・スピースはロレンソに続く4位でゴール。C・エドワーズはコースアウト後にリタイアした。
レースは中盤10周?11周目が勝負どころだった。予選6番手でスタート直後は11番手につけていたロッシは着々と順位を上げ、4周目に単独3番手に浮上。この段階でA・ドビツィオーゾ(ホンダ)とロレンソの首位争いからは2秒離されていたが、着実につめていき10周目にロレンソをパスして2番手に。11周目にドビツィオーゾをパス。終盤16周目には一時的にドビツィオーゾに先行を許すが、その周の終わりには抜き返し、その後はトップを守りきり優勝を飾った。ロッシはこの優勝によって、ランキング3位に浮上。またゼッケン46をつけたヤマハM1での優勝が46回目となる。
ポールポジション発進のロレンソは、好スタートから序盤は首位を快調に飛ばしていく。直ぐ後ろにドビツィオーゾがつける接戦が続いた後、9周目の最初のコーナーでドビツィオーゾに先行される。次の周には追い上げてたロッシに抜かれて3番手に後退するが、ロレンソも今日ばかりは、勝利の栄冠よりも安全に走りきることのほうが重要であることをよく理解し、安定したペースで走り抜いて3位でゴール。ここまでに優勝7回、表彰台を逃したのは15戦中2回だけと、非常に安定した走りを見せてきたロレンソが、250ccクラスのタイトルに加えて初めての最高峰クラスタイトルを手中にした。
予選4番手のスピースは、スタート直後3番手。その後少し順位を落とし、始めの4ラップはハードコンパウンドを選択したリアタイヤの様子を確かめながら、6位につける。その後、自信をつかんで本来のポテンシャルを発揮すると、ペースを上げて前車に近づいていき、8ラップ目にはN・ヘイデン(ドゥカティ)をパス。この頃にはトップ争いのロッシ、ロレンソ、ドビツィオーゾらに続くラップタイムを記録する好調ぶりで、さらに2秒ほど先を行く M・シモンチェリ(ホンダ)を追っていった。そして14ラップ目にシモンチェリをパスして4位に上がると、前を走るロレンソを追うが、既に差が広がっており単独4位でのゴールとなった。6位以内はこれで10回目。ランキングでは6位につけている。
一方、レース序盤でブレーキングの問題に悩まされたC・エドワーズ。これに自らのライディング・スタイルを変えて対処したものの、そのあとフロントのグリップにも問題が出てしまう。そして10ラップ目、4台で激しいバトルを展開中に転倒。マシンを修復して再びコースインを果たしたが、規定周回数に1ラップ足りずノーポイントに終わった。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | V・ロッシ | Fiat Yamaha Team | Yamaha | 41'03.448 |
2 | A・ドビツィオーゾ | Repsol Honda Team | Honda | +0.224 |
3 | J・ロレンソ | Fiat Yamaha Team | Yamaha | +6.035 |
4 | B・スピース | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | +13.676 |
5 | A・バウティスタ | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | +15.402 |
6 | N・ヘイデン | Ducati Marlboro Team | Ducati | +18.826 |
7 | 青山博一 | Interwetten Honda MotoGP | Honda | +20.218 |
8 | M・シモンチェリ | San Carlo Honda Gresini | Honda | +23.574 |
9 | M・メランドリ | San Carlo Honda Gresini | Honda | +23.964 |
10 | R・ド・ピュニエ | LCR Honda MotoGP | Honda | +31.850 |
11 | H・バルベラ | Paginas Amarillas Aspar | Ducati | +38.579 |
12 | M・カリオ | Pramac Racing Team | Ducati | +38.849 |
LAP CHART
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | J・ロレンソ | Yamaha | 313 |
2 | D・ペドロサ | Honda | 228 |
3 | V・ロッシ | Yamaha | 181 |
4 | C・ストーナー | Ducati | 180 |
5 | A・ドビツィオーゾ | Honda | 179 |
6 | B・スピース | Yamaha | 152 |
11 | C・エドワーズ | Yamaha | 81 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Yamaha | 334 |
2 | Honda | 305 |
3 | Ducati | 230 |
4 | Suzuki | 92 |
COMMENT
V・ロッシ選手談(優勝)
「このような形で優勝することができて、しかもM1で46回目の勝利を実現することができた。とても素晴らしい瞬間だよ! スタートが最悪だったから、しばらくはかなり不安だったんだけれど、コーナーをいくつか抜けるうちには、必ず上がっていけるということがわかったんだ。ウォームアップで小さな変更をしたんだけれど、それがうまくいってマシンのフィーリングはとても良かった。すべてはジェレミーのアイディアのおかげだよ! 僕もとてもよく乗れていて、素晴らしいレースになった。たぶん今までのキャリアのなかでも最高のひとつだと思う。この46回目の勝利が、どうしても欲しかったんだ。みんなも知っているように、僕にとっては特別な数字だからね。チームのみんなが一生懸命に頑張ってくれたので、この優勝が最高のプレゼントになったんじゃないかな。第1コーナーで11位まで落ちて、そこから挽回しての優勝。このような勝ち方ができて、本当にうれしいんだ。そして、最後になったけれど、ヤマハとホルヘに“おめでとう!”と言いたい。ホルヘは今シーズンずっと、どのコースでも、どんなコンディションでも速かった。だからこそ、こうしてチャンピオンになったんだよ」
D・ブリビオ、チーム監督談
「何というレースだ!素晴らしいレースができて、いいウイークエンドになったよ。昨日まではいろいろ問題もあって、予選は6位に留まってしまったが、チームが頑張ってくれたおかげでバレンティーノは気持ちよく乗れるようになった。もちろん、彼の走り自体もとても順調だった。1周目で11位に後退、トップから2.5秒も離されながら挽回。しかもそのなかでファステストラップも記録している。この46回目の勝利は、彼とヤマハとの素晴らしい協力関係によって実現したものなのだ。ホルヘの世界チャンピオンも決定して、ヤマハにとっては最高の1日になったと思う。今シーズンのホルヘは確かに強かった。祝福するよ。だから今日は誰もがハッピーなんだ!次はオーストラリア。あのコースもバレンティーノにとっては良い場所なので期待している。ヤマハでの優勝は、まだ終わっていない」
J・ロレンソ選手談(3位)
「今日は僕の夢が現実になった。まだ信じられないくらいなんだ。走り終えたあと5分間は、ひとりで心を落ち着かせ、静寂を楽しみ、自分が成し遂げたことを思っていたよ。これまでの人生のなかでいつも考え、いつも夢見ていたこと。だからこそ最高に素晴らしい瞬間なんだ。感謝の気持ちを伝える言葉が見つからないけれど、ヤマハとチームと、ここまで支えてくれたすべての人にお礼を言わなければならない。今日のレースは、スタートがうまくいって始めからトップに立つことができた。でもアンドレアとバレンティーノに抜かれてしまって、そのあとは自分のいつもの走りができなくなってしまった。だから必要以上に激しくプッシュするのはやめたんだ。今日は優勝が最も大切なことではないとわかっていたしね。そしてただしっかりと走りきって、必要なポイントを獲得することに専念したよ。これでようやくリラックスできる。そして最後の3戦を楽しんで走ることができるよ。でもその前に、今夜は盛大にパーティーだ!」
W・ズィーレンベルグ、チーム監督談
「我々チームにとって最高の1日になった。ホルヘとの最初のモトGPシーズンが、こんなに素晴らしいものになるとは思っていなかった。ホルヘは走るたびに、彼こそが勝者であることを証明していった。そして我々の今シーズンの目標、つまりいつも表彰台を目指すことを着実に実現して、その結果として今、こうしてここにいるのだ。ホルヘは今日も、いつものようにクレバーだった。冷静でいなければならないことを彼自身がよくわかっていて、確かな判断をしてくれた。7回の優勝を果たし、それ以上の表彰台も獲得して、本当に素晴らしいシーズンになった。懸命に仕事をしてくれたみんなと、頑張ってくれたホルヘに感謝」
B・スピース選手談(4位)
「スタートは良かったんだけど、そのあとタイヤの左側がなかなか暖まってこなくて苦しい展開になった。でも一度、暖まってからはとても感触が良くなって、思い通りに攻めていくことができたよ。しばらくニッキーの後ろにつけて交わせなかったけれど、何とか前へ出てからは2分02秒台で引き離していくことができた。このときのペースには満足しているよ。3位が不可能なことはわかっていたけど、トップ3台のラップタイムを見ると悔しい気持ちもあるんだ。もしも初めから彼らについていくことができていれば、きっといい戦いができただろうからね。ロレンソが全力を賭けていないことはわかっていたけど、そうだとしても僕はきっともっと近づけたはずなんだ。でももちろん、僕にとっては十分に素晴らしいレースだった。今は、次のフィリップアイランドを楽しみにしているよ。最後に、ホルヘとヤマハを祝福したい。ホルヘはここまでずっと好調をキープしてミスもおかさなかったのだから、獲るべくして獲ったタイトルだと思う。来年から一緒に仕事をするのがとても楽しみだ」
C・エドワーズ選手談(DFF)
「厳しいレースだった。スタート直後はとてもフィーリングがよくて、何台かパスすることもできたんだけれど、その一方で、フロントブレーキにちょっとした問題があることにも気づいていたんだ。ベンのテールに突っ込みそうになったこともあったし、ハードブレーキングの箇所ではこれが大きな妨げになった。とくにこのコースはそういう場所が多いから大変なんだ。でもそれを何とか克服。すると今度はフロントタイヤにちょっとした不具合を感じるようになって、ラインをキープすることも難しくなった。それでもいいバトルができていたからハードにプッシュし続けて、そして第4コーナーで転倒してしまったというわけなんだ。原因はブレーキなのか、タイヤなのか、それとも両方なのかわからないけれど、当然の成り行きだったのかもしれない。最後まであきらめるつもりはなかったし、みんなの努力を水の泡にしてしまうようなことはしたくなかったけれど、結局フロントが切れ込んでしまった。再スタートして、何とかポイントを獲りたかったんだけれど、周回数が足りずにノーポイント。バレンティーノ、アンドレア、ホルヘのバトルに入り込むつもりはなかったから道を譲ったら、それがあだになってしまったんだ。最後になったけれど、ホルヘとヤマハを祝福するよ。素晴らしいチームワークだった。ホルヘはずっと最速をキープしていた。そして来シーズンは挑戦される側になるということだ」
H・ポンシャラル、チーム監督談
「モンスター・ヤマハ・テック3を代表して、ホルヘとヤマハのチャンピオン獲得を祝福したい。ホルヘはシーズンを通じて好調をキープし、最速のライダーであることをアピールし続けた。その安定感はとても印象的なものだった。その一方で、モンスター・ヤマハ・テック3にとっても今日は素晴らしい日になった。ベンが見事な走りを披露してくれたからだ。最初の数ラップは思ったほどペースが上がらなかったが、ひとたびリズムをつかむとトップ3に続く速さを見せ、何度かいいパスもあった。今日サーキットに足を運んでくれたファンは、ベンの走りを楽しんでくれたに違いない。コーリンのほうは、ここまでの努力が結果につながると思っていただけに残念なことだった。彼はポジションを上げようと奮闘中に転倒。ピットに戻ったマシンを修復して再スタートしたが、残念ながら規定周回数に届かなかった。だが我々チームとしては、転倒してもまたコースに戻り、少しでもポイントを獲得しようと頑張ってくれた彼に感謝しているんだ。次のオーストラリアでは、ベンとコーリンがそろって、いいレースをしてくれることを期待している」
中島雅彦MS開発部MotoGPグループリーダー談
「まずはライダーチャンピオンシップを確定したホルヘとチームスタッフを祝福したいと思います。今回、高温多湿の過酷なコンディションの中、ライダー、マシン、タイヤとも、どれだけ安定したタイムを持続できるかのサバイバルレースとなりました。ホルヘは重圧を背負いながらも最後まで安定した走りで確実にマシンをゴールまで運んでくれました。今年の彼の精神的な成長には驚かされながらも、頼もしく感じています。バレンティーノも肩への負担が大きいこのコースで第1戦以来の優勝を飾り、彼の復活も我々にとっては大きな喜びです。ベンも最後まで素晴らしい集中力を見せてくれました。コーリンは残念ながら転倒してしまいましたが、幸いなことに怪我は無く、次戦に向けて気持ちを切り替えているので心配していません。目標の一つを達成できた喜びは大きいですが、最終目標を達成するまでは、気を緩めること無く、残り3戦を全力で戦い抜きます」