ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.09 7月25日 アメリカ
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第9戦USGP?
■開催日:2010年7月25日(日)決勝結果?
■開催地:カリフォルニア州/ラグナセカスピードウエイ(3.610km)
■周回数:32周(115.52km)
■コースコンディション:ドライ?
■気温:23度 ■路面温度:40度
■PP:J・ロレンソ(1分20秒978/ヤマハ)
■FL:C・ストーナー(1分21秒376/ドゥカティ)
REPORT
ロレンソ今季6勝目、ロッシは3位表彰台
フィアット・ヤマハ・チームのJ・ロレンソが今季6勝目。2位のC・ストーナー(ドゥカティ)に3秒以上の大差をつけての圧勝だった。一方、脚の骨折からわずか7週間のV・ロッシは、ラスト10ラップでA・ドビツィオーゾ(ホンダ)に追いつき、見事3位表彰台を獲得した。モンスター・ヤマハ・テック3チームのB・スピースとC・エドワーズは、それぞれ6位と7位だった。
5戦連続でポールポジションからのスタートとなったロレンソだが、下り急勾配の第1コーナーで遅れて3番手。その後しばらくは前を行くD・ペドロサ(ホンダ)とストーナーについて行くだけだったが、6ラップ目にストーナーがはらみ、その間に2位に浮上した。この時点でトップのペドロサとの差は1秒以上。しかしロレンソはあきらめることなく懸命にペースを上げ、見る見るうちに差を縮めていく。そしてコンマ5秒差まで追いついてプレッシャーをかけるまでになると、12ラップ目でペドロサが転倒。これでトップに立つこととなったロレンソは、その後も順調に走行を続け、終盤は2位のストーナーに対するアドバンテージをみながら3秒以上大差でゴールした。これでアメリカでの優勝は2回目。またMotoGPでは11回目、全クラス通算で32回目の優勝。そして昨年の最終戦を含め、10回連続の表彰台という記録になった。
一方、脚と肩の痛みに苦しんできたロッシ。決勝も厳しい戦いが予想されており、実際にN・ヘイデン(ドゥカティ)をパスして5位に上がった後はそれ以上のポジションアップは難しいかに思われた。しかしペドロサが転倒したことで4位。さらに後方から追い上げてきたB・スピースを抑えようとするなかでペースが上がり、3位のドビツィオーゾとの差が縮まっていった。それまで2秒あった差を詰め、後方につけた時点で残りは6ラップ。そして27ラップ目にはついに勝負をかけてパスに成功した。そのあとはゴールまでポジションを守り切り、久しぶりの表彰台に返り咲いた。
シーズンの半分を終了し、シリーズポイントではロレンソが72ポイントをリードしてランキングトップ。ロッシは120ポイント離れてランキング5位につけている。このあとは2週間半の休暇をはさみ、次回は8月15日決勝のブルノ。この間、ロッシはリハビリのための貴重な時間を過ごすことになる。
スピースはグリッド2列目から絶好のスタートを切り、第1コーナーまでに3台をパス。その後の数ラップで、いくつか順位を下げたが、リアタイヤの好調に自信を深めると、再び少しずつ挽回していった。レース前半まではヘイデンとロッシのバトルからコンマ5秒以上離されていたが、徐々にその差を短縮。21ラップ目にはヘイデンをとらえて5位に浮上した。次にロッシに照準を定め、25ラップ目の最終コーナーでまさに勝負をかけようとしたところでミスをおかし、この間にヘイデンにも抜き返されて6位となった。ミスはあったものの、表彰台争いに匹敵するハイペースを実現できたことは大きな収穫だった。
一方のエドワーズは今季最高の成績。豊富な経験を生かしてM・シモンチェリ、M・メランドリ(いずれもホンダ)に根気よくついていき、7位争いに加わった。そして10ラップ目のコークスクリュー立ち上がりでメランドリを捉え、さらに15ラップ目でシモンセリをパスして7位に浮上した。その後はふたりを一気に引き離し、7秒近い差をつけて7位でゴール。ランキングでは10位まであと1ポイントと迫った。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | J・ロレンソ | Fiat Yamaha Team | Yamaha | 43'54.873 |
2 | C・ストーナー | Ducati Marlboro Team | Ducati | +3.517 |
3 | V・ロッシ | Fiat Yamaha Team | Yamaha | +13.420 |
4 | A・ドビツィオーゾ | Repsol Honda Team | Honda | +14.188 |
5 | N・ヘイデン | Ducati Marlboro Team | Ducati | +14.601 |
6 | B・スピース | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | +19.037 |
7 | C・エドワーズ | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | +40.721 |
8 | M・メランドリ | San Carlo Honda Gresini | Honda | +47.219 |
9 | M・カリオ | Pramac Racing Team | Ducati | +52.813 |
10 | L・カピロッシ | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | +52.814 |
11 | R・ヘイデン | LCR Honda MotoGP | Honda | +1'14.089 |
12 | A・デ・アンジェリス | Interwetten Honda MotoGP | Honda | +1'14.666 |
LAP CHART
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | J・ロレンソ | Yamaha | 210 |
2 | D・ペドロサ | Honda | 138 |
3 | A・ドビツィオーゾ | Honda | 115 |
4 | C・ストーナー | Ducati | 103 |
5 | V・ロッシ | Yamaha | 90 |
6 | N・ヘイデン | Ducati | 89 |
7 | B・スピース | Yamaha | 77 |
11 | C・エドワーズ | Yamaha | 48 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Yamaha | 215 |
2 | Honda | 175 |
3 | Ducati | 133 |
4 | Suzuki | 48 |
COMMENT
J・ロレンソ選手談(優勝)
「ラグナセカでの優勝をずっと夢見ていたんだ。だから今日は本当にうれしいよ! 走りもとても良かったと思う。限界ぎりぎりまでベストを尽くし、ダニについて行こうと懸命に攻め続けた。彼はいつも決勝で強さを発揮する。でもあきらめずにプレッシャーをかけ続ければ、きっとチャンスが巡ってくると信じていたんだ。彼が転倒してしまったことは残念だけれど、僕としてはそのあと、すごく楽になった。ケイシーとは、かなり差があったからね。そしてあとは、M1の走りを存分に楽しむことができた。シリーズポイントでは大きなリードを築くことができたけれど、シーズンはまだあと半分、残っている。大量リードをしながらタイトルを逃したライダーもたくさんいるから、現時点ではまだ何もわからないよ。それよりも、今はただ、少しだけでいいからゆっくりしたい。この2ヵ月、本当に忙しかったからね。チームのみんなにも感謝しているよ」
W・ズィーレンベルグ、チーム監督談
「とてもいいレースだった。ダニを限界までプッシュしていったのはクレバーなやり方だったと思う。でもこれは簡単なことではなかったんだ。ランキングトップに立っているホルヘには失うものが多く、そのなかでぎりぎりまで攻めていくのは本当に厳しいことだったに違いない。これでチャンピオンシップのリードは72ポイントに拡大。ここまでの9戦中、優勝6回、2位3回は見事としか言いようがない。ホルヘの素晴らしい走りに、そしてチームのみんなの努力にお礼を言いたい。このあとは束の間の休暇を楽しんでもらいたい」
V・ロッシ選手談(3位)
「怪我の痛みのせいで序盤はかなりきつかった。その時点では表彰台は遥か彼方という感じだったんだ。でもそのうちにペドロサが転倒して4位に上がることができたので、あとはドビツィオーゾを追うしかなくなったというわけ。できるかぎりの力を注いで追っていったら次第に近づいてきた。そうなるとますます、あきらめられなくなってしまったんだ。彼をパスして3位になったときは何とも言えない素晴らしい気分だったよ。怪我で何度も欠場したあとだけに、みなさんの前でまた表彰台に上れたことが本当にうれしかったんだ。ここまで僕を支えてくれた大勢の人たちに心から感謝している。このあとはちょっと休めるので、この間に体の調整に励まないとね。次のブルノではベストの状態に戻れるように、しっかり準備したい」
D・ブリビオ、チーム監督談
「素晴らしいレースだった。結果も我々の期待を上回るものだった。前回のザクセンリンクを含め、バレンティーノにとってはリハビリのためのレースで、ただマシンの勘を取り戻すことが目的だったはず。ところが前回は4位、そして今回は3位表彰台と、好成績を残すこととなったのだ。このコースはとくに体への負担が大きく、ウイークを通じてかなり苦しんだが、それでも決勝では、またこうして表彰台争いを展開することができた。彼の素晴らしさに、チームのみんながとてもハッピーな気持ちになっている。このあとの休暇を楽しみにしているが、同時にシーズン後半戦のスタートも心待ちにしている」
B・スピース選手談(6位)
「スタートがうまくいって3番手まで上がることができたけれど、そのあとの数ラップはなかなかスピードが上がらなかった。目の前にいた集団が少しずつ離れて行きそうになったんだけど、すぐにリズムをつかむことができてニッキーとバレンティーノに一気に追いついた。それからまずニッキーをパスし、バレンティーノの後ろに迫って、いいバトルができた。そして勝負に出ようと思っていた矢先、最終コーナーの進入でミスが出て、はらんでしまったんだ。母国でのレースだから、表彰台には上れないとしても地元ファンに僕の走りを見てもらいたかった。いい走りができたし、表彰台に上れるだけのスピードもあったと思う。結果的に、最後までしっかりやり遂げられなかったことは僕の責任。でも、まったくペースもつかめず、遠く離れたところでゴールしたわけではなく、表彰台も目指せるとわかったことは大きな収穫だよ。またトップ6に入り、いい戦いができたわけだから、これ以上、望むものはない。何も不満はないよ」
C・エドワーズ選手談(7位)
「自分の走りには十分に満足している。やれるだけのことはやったからね。ホームGPでの7位争いは、元々の希望とは違うけれど、今までのことを考えれば大きな進歩。すべてはモンスター・ヤマハ・テック3のスタッフたちの努力のおかげだから、本当に感謝しているよ。序盤はメランドリ、シモンチェリと好バトルができて楽しかったし、彼らよりちょっと速かったからうまくパスすることもできた。シモンチェリを抜いてからはひたすら体を伏せて、何とか引き離そうと頑張った。そうしたらそのとおり、うまく逃げ切ることができたんだ。でもそれ以降、前の集団を視界にとらえることができなかった。だから少しペースを緩めることにしたんだ。大事なホームレースでつまらないミスなどしたくなかったからね。考えてみれば、ウイーク中ずっと7位あたりをうろうろしていた。トップグループのペースには一度も届かなかった。それでも本来いるべきところに少しずつ近づいてきていることは確か。ヤマハの新しいスペックも助けになった。その意味では、シーズン後半戦に向けて、また自信を持って取り組んでいけそうだ」
H・ポンシャラル、チーム監督談
「うれしい夏季休暇を前に、ほんのちょっとだけ残念な気持ちを残してしまったことを否定することはできない。ベンは非常に好調だったから、念願の母国での表彰台獲得を実現する大きなチャンスだと考えていた。スタートがよく、その後はリズムをつかむまでに少しかかったが、リズムをつかんでからはラップタイムも上がり、ついにはニッキーをパス。さらにバレンティーノに迫っていった。あの時点で表彰台を期待してはいたが、簡単なものではないこともよくわかっていた。なぜならバレンティーノの走りも信じられないほど見事だったからだ。ベンはバレンティーノの後ろに迫り、地元のファンはその果敢な攻めに興奮していた。ところが不運にもラインを外れ、順位を下げてしまった。彼ががっかりしているのは、最後までしっかり闘いきれなかったことに対してだと思う。だが我々チームとしては、彼の走りにとても満足している。表彰台獲得に十分なスピードを持っていたことは間違いない。
コーリンもとてもよくやってくれた。今シーズンのなかでは最高の走りだったと思う。毎セッション、毎ラップ、ベストを尽くした。そして決勝でも、懸命に抵抗するメランドリやシモンチェリをパスする強さを見せてくれた。6位と7位という成績は十分に素晴らしい。そしてチームランキング4位という成果につながっている。これからしっかり準備をして、気持ちも新たにシーズン後半戦に臨みたい」
中島雅彦 MS開発部MotoGPグループリーダー談
「今日はフィアット・ヤマハ・チームにとって素晴らしい結果でした。ホルヘの優勝とバレンティーノが表彰台に戻ってきたことは、チーム全員の士気を大いに上げました。起伏に富んだ、難しいコースレイアウトの攻略には苦しみましたが、ブレーキングとハンドリングにはアドバンテージがあったと思います。ホルヘの安定した強さ、そしてバレンティーノはフィジカルコンディションが万全ではない中、驚異的な頑張りでしっかりと仕事をしてくれました。テック3チームも両ライダーのホームグランプリを全力でサポートし、大いに盛り上げてくれました。ベンの3位争いに加わる気迫の走りは、次に繋がる結果であり、コーリンはベテランらしい走りで今季ベストリザルトでした。タフなスケジュールでしたが、ヤマハ4台がトップ7に入り、良い形で前半戦を折り返すことが出来ました。この調子で気を緩めることなく、更なるレベルアップを目指して行きたいと思います」