ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.06 6月26日 オランダ
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第6戦アッセンTT
■開催日:2010年6月26日(土)決勝
■開催地:オランダ/アッセン(4.542km)
■周回数:26周(118.092km)
■観客数:97,000人
■コースコンディション:ドライ
■気温:23度 ■路面温度:48度
■PP:J・ロレンソ(1分34秒515/ヤマハ)
■FL:D・ペドロサ(1分34秒525/ホンダ)
REPORT
ロレンソ、ポール・トゥー・フィニッシュで今季4勝目!
ダッチTT80周年の記念の大会で、フィアット・ヤマハ・チームのJ・ロレンソがポール・トゥ・フィニッシュを飾り今季4勝目を飾った。ロレンソは125ccクラス、250ccクラスでも優勝経験があり、ダッチTT優勝は今回で3回目。ロレンソのチームメイト、V・ロッシは欠場したが、モンスター・ヤマハ・テック3のB・スピースが4位と健闘、C・エドワーズは8位となった。
フリープラクティス初日から絶好調で、プラクティス、予選ともにトップタイムをマークしたロレンソ。ポールポジションから好スタートを切ってトップに立つと、そのままリードを1秒ほどに拡大した。しかしその後の5周までにD・ペドロサ(ホンダ)、C・ストーナー(ドゥカティ)が徐々に追い上げ近づいてくる。そして3台によるトップ争いへと発展するかに見えたが、ロレンソはレース中盤を迎えて燃料タンクが軽くなるとハードコンパウンドタイヤの利点を生かして、再びペースを上げた。最終的には2位のペドロサに2.935秒差をつけて圧勝。3位はストーナー。シリーズポイントでは、ランキングトップのロレンソがリードを47ポイントに拡大。ロッシは4位をキープしている。次回のバルセロナでは吉川和多留がロッシに代わって出場する。
スピースは予選4位の位置から絶好のスタートを切ってトップのロレンソについて行く。ソフトコンパウンドをチョイスしていたスピースは序盤からペースを上げ、ペドロサとストーナーを突き放し、ロレンソ、スピースのワン・トゥーを形成。しかしスピースは4周目にふたりに抜かれて4位に後退。その後も懸命に攻め続けるもトップ3台からは徐々に離され、逆に追い上げてきたA・ドビツィオーゾ(ホンダ)との戦いへ。そして一度は4位のポジションをドビツィオーゾに譲ることとなったが、15周目には、それまで0.7秒あった差を0.103秒まで縮める激しいチャージを見せ、16周目の最終シケインではついに抜き返して4位に返り咲いた。戦いはしかし、これで終わりではなかった。次に追いついてきたのはR・ド・ピュニエ(ホンダ)。再び4位争いが激しくなったが、スピースは最後までアグレッシブに走り切り、最終的には2秒近い差をつけて4位でチェッカーを受けた。
チームメイトのエドワーズは、今回からフロントのジオメトリーを変更して臨んでおり依然としてテスト段階ではあったが、8位獲得と健闘。プラクティス、予選、決勝を通じてデータを豊富に収集しており、これが今後の戦いに必ず役立つことになるだろう。スピース、エドワーズの活躍により、モンスター・ヤマハ・テック3チームはチームランキングで4位へ浮上した。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | J・ロレンソ | Fiat Yamaha Team | Yamaha | 41'18.629 |
2 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | +2.935 |
3 | C・スト―ナー | Ducati Marlboro Team | Ducati | +7.022 |
4 | B・スピース | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | +13.265 |
5 | A・ドビツィオーゾ | Repsol Honda Team | Honda | +15.323 |
6 | R・ド・ピュニエ | LCR Honda MotoGP | Honda | +15.772 |
7 | N・ヘイデン | Ducati Marlboro Team | Ducati | +25.867 |
8 | C・エドワーズ | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | +28.991 |
9 | M・シモンチェリ | San Carlo Honda Gresini | Honda | +35.658 |
10 | A・エスパルガロ | Pramac Racing Team | Ducati | +35.837 |
11 | M・カリオ | Pramac Racing Team | Ducati | +56.769 |
12 | H・バルベラ | Paginas Amarillas Aspar | Ducati | +56.890 |
13 | L・カピロッシ | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | +1'00.615 |
14 | A・バウティスタ | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | +1'08.074 |
15 | 秋吉耕佑 | Interwetten Honda MotoGP | Honda | +1Lap |
LAP CHART
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | J・ロレンソ | Yamaha | 140 |
2 | D・ペドロサ | Honda | 93 |
3 | A・ドビツィオーゾ | Honda | 89 |
4 | V・ロッシ | Yamaha | 61 |
5 | N・ヘイデン | Ducati | 61 |
6 | R・ド・ピュニエ | Honda | 56 |
8 | B・スピース | Yamaha | 49 |
10 | C・エドワーズ | Yamaha | 34 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Yamaha | 145 |
2 | Honda | 117 |
3 | Ducati | 81 |
4 | Suzuki | 26 |
COMMENT
J・ロレンソ選手談(優勝)
「今日は、前回のシルバーストーンよりも厳しかったよ。ペドロサがソフトコンパウンドのタイヤを履いていて、レース序盤がとても速かったからね。僕は苦しい中で何とか集中力を保ち、必死になって彼を抑えたんだ。僕はハードコンパウンドを選んでいたから、終盤では必ず役に立ってくれると信じていた。そしてそのとおりになったんだ。つまり僕らの選択は正しかったということだね。それでも、もちろん楽なレースだったわけではなくて、最後のほうではかなりスライドもした。実際、シケインでミスをして危うく転倒しそうになったこともあったし、だからこの優勝が格別にうれしいんだ!またこの歴史あるサーキットで、すべてのクラスで優勝して‘ハットトリック’を実現できたこともとてもうれしい。ヤマハのみんな、ブリヂストンのスタッフたちにもお礼を言いたい。これでチャンピオンシップのリードがまた大きくなったので、少し心を落ち着けることができそうだ。次は故郷、バルセロナ。またスペインのファンの前でレースできるのでわくわくしているよ」
W・ズィーレンベルグ、チーム監督談
「ペドロサとストーナーがソフトコンパウンドをチョイスしていたことはスタート前からわかっていたので、序盤はかなり速いペースでくるだろうと予想していた。ホルヘはこの間、よく頑張って、逆にリードしたので驚いてしまった。そのあとふたりが少しずつ追いついてきて激しく攻めることもあったが、ホルヘは強い精神力でこれを抑え込んだのだ。しばらくして燃料が少なくなってくると、ハードコンパウンドをアドバンテージにできるようになりペースを上げていった。その頃には、もうまったく不安はなくなっていたよ。ホルヘもチームのみんなも本当によく頑張ってくれたおかげで2連勝を達成することができた」
B・スピース選手談(4位)
「スタートが上手くいって良かったよ。フロント荷重を強めコーナーを曲がりやすくするために、リアにソフトコンパウンドタイヤをチョイスしていたんだけれど、それが最初の10周くらいはあまり機能しなかったんだ。その間にペドロサとストーナーに抜かれてしまった。それでも作戦は変えず懸命に攻め続けていたら、12周目に今度はドビツィオーゾにも抜かれた。でも彼のタイヤ性能も落ちてきていたから、もう一度追いつくことができた。でもその時には、表彰台争いはすでに遠くなってしまっていた。
それから3周はドビツィオーゾとド・ピュニエがプレッシャーをかけてきていたけれど、僕は懸命に身体を伏せてペースを上げ、ふたりを少しずつ引き離していった。その頃はマシンのスライドが激しくなってきていたけれど、何とか耐えてリードを広げ、チェッカーを受けることができた。今日は最低でも4位に入りたいと思っていたので、何とか満足できる結果。でもシルバーストーンのときのような絶好調ではなかったんだ。次のカタルニアはまた初めてのコースなので、上手くはいかないかもしれない。でもいつものように最大限、ベストを尽くすよ」
C・エドワーズ選手談(8位)
「がっかりしたり、怒ったり、こんなに頑張っているのに、何故こんな成績なんだろう、なんてことを考えたりしてはいけない。今日も自分にできることは全てやったのだから。でもやっぱり、もっと改善できるところがあることだけは分っているんだ。今回はフロントエンドのセッティングをいくつか試して、いくらか良くなったけれど、ブレーキを放すときにやや遅れがちで、思うようにマシンが曲がってくれない。それが色々な要素が積み重なって、1ラップで大きな差になってしまうんだ。去年の4位よりもハードに攻めたのに、今年は8位。それはつまり上位のライダーたちが、とてつもなく速いペースで走っていたということ。僕はずっとヘイデンの後ろについていたけれど、パスできるところまで近づくことはできなかった。スピースは前回に続いて、とても素晴らしかった。祝福するよ」
H・ポンシャラル、チーム監督談
「ベンについては、十分な褒め言葉が見つからないくらいだ。スタートから素晴らしく、あともうちょっとでトップに立つところ。最初の数ラップでストーナーとペドロサが激しくプッシュしてくることはわかっていたし、その一方でベンのほうは、マシンのフィーリングがまだあまり上がってこないだろうと思っていたのだ。ところが実際には初めから激しく攻め、プッシュし続けた。これには本当に感服したよ。最後はドビツィオーゾとド・ピュニエが追い上げてきたが、ベンはタイヤが消耗したあとが強く、今回もその能力を発揮した。もちろん、もう一度、表彰台に上ることを熱望していたが、4位も十分に素晴らしい。今の彼はモンスター・ヤマハ・テック3チームにとってとても大切な存在だ。コーリンのほうも力強いレースを見せてくれた。シルバーストーン以降、マシンの方向性が見つかったので、今後もそれを追求していくつもりだ。彼はいつもハードに攻め続け、決してあきらめない。毎回、貴重なポイントを獲得し、我々チームに貢献してくれている。おかげでチームランキング4位に返り咲くことができたのだ。2010年シーズンの我がチームはこれまでで最強の布陣。そのことを今日も確かに証明できたと思う」
中島雅彦 技術開発部・MotoGPグループリーダー談
「ダッチTTで有名なアッセンサーキットも80周年を迎え、一部改修されたコースはさらに高速となりました。回り込んだコーナーから高速の切り替えしとマシンが直立している時間は皆無と言えるくらいのテクニカルなコースで、ハンドリングとメカニカルグリップのバランスに苦慮しました。レースはホルヘが見事なマシンコントロールで連続ポール to フィニッシュを決め、バレンティーノ不在の中、頼もしい限りです。ベンの4位は確実に力が付いてきたことを証明しており、コーリンも8位と健闘、少しずつ良くなってきていると感じます。今後もタイトなスケジュールが続きますので、ライダーの体調管理も含め、ミスが無いようにあらためて気を引き締めたいと思います。次戦カタルニアからバレンティーノの代役として開発ライダーである吉川ライダーが走ります。大きなプレッシャーの中でタフなレースになると思いますが、開発に繋がる有意義な経験としてもらえるように、彼を全力でサポートしたいと思います」