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「さらなる進化に大きな余地を感じた」。<br>最速マシンを目指す開発者たちの挑戦

2016年7月26日、ニコファーレ(東京・六本木)で開催した「ヤマハ鈴鹿8耐メディアカンファレンス」。2016年型「YZF-R1」についての説明を行った技術本部 MS開発部の辻幸一部長は、鈴鹿8耐デビューを鮮やかな勝利で終えた「YZF-R1」について、「さらなる進化に大きな余地を感じた」と語った。あれから1年、鈴鹿8耐仕様のYZF-R1は何を変え、どう進化を遂げたのか? 最速マシンを目指す開発者たちに迫る。

技術本部 MS開発部 部長 辻幸一


2015年は、新型「YZF-R1」による、世界でも最も厳しいレースの一つと言われる鈴鹿8耐ということで、正直、不安を持ったままでのレースになりましたが、3人のすばらしいライダーとチームワーク、そして少しの運が味方してくれたおかげで、19年ぶりの優勝を果たすことができました。

レース後に行ったスタッフによるレビューでは、運営面を含め150項目におよぶ改善点の打ち上げがありました。そのうちマシン関するものも多くあり、「YZF-R1」に対して我々は、まだまだ進化できる余地を感じていたわけです。だからこそ、連覇を目指して改善を進め、良かった点についてはさらに伸ばすべく、丸1年を費やしてきました。

昨年は、エスパルガロ選手がトップ10トライアルで、2分6秒フラットという驚異的なタイムを出していおり、性能には十分な手応えがありました。しかし、8時間という長丁場、さらに超スプリントレースということで、信頼性と燃費には少しばかり不安があり、最後まで開発陣の頭から離れることはありませんでした。

そこで、今回の8耐マシンを開発するにあたっては、「性能」「燃費」「信頼性」にフォーカスし、「安定したラップタイムの維持」をめざしました。具体的には、1スティント約25周を想定し、無理なくハイレベルなタイムを出すことができるマシンへの進化です。

まずエンジンは、馬力を向上させつつライダーが扱いやすく、タイヤに優しいトルク特性が得られる方向を目指し、それを下支えする制御システムでは特にトラクションコントロールを重点に改良を進めました。

燃費については、昨年、第1スティントを務めた中須賀選手の走りが象徴するように、ライダーが補ってくれたことと、ペースカーの介入で問題は表面化しませんでしたが、正直に言えば、我々が開発目標としていた値に届かないまま本番を迎えていたのです。

今年はエンジンのロス馬力の低減に注力したことで、馬力向上と燃費を両立し、制御ではより緻密な燃料コントロールを実現。また車体は、ガソリンタンク形状を見直し給油時の充填率を向上するなど、トータルでは、昨年の8耐マシンに対し約10%の実走燃費を向上しました。

鈴鹿8耐では、1台のマシンがレースウィークで約1,600km、しかもレーススピードで走行することになるため、言わずもがな、信頼性が大切になります。しかし昨年は、開発段階で最低限の目標を達成していたものの、まったく余裕がない状況でした。それでも昨年は、問題は表面化せず改めて素性の良さを確認しました。しかし、何度も言うようですが、8耐は世界で最も厳しいレースの一つです。大会に向けて特にエンジンは、1年を通じて耐久試験をしていたと言っても過言ではなく、マシン全体の信頼性についてもテストコースで十分な確認試験を行ってきました。

こうした結果、事前テストでは、ラップタイム、燃費、信頼性のすべてにおいて開発目標を上回り、本番を迎えることができました。

しかしご存知の通り、鈴鹿8耐はマシンの性能が高いだけでは勝つことはできません。マシンを操るライダーの能力は当然ながら、すべての要素を確実に機能させるチームワークが不可欠です。ファンの皆さまも感じていただけたと思いますが、昨年のヤマハライダーのチームワークは、全チーム中で1番であったと自負しています。今年は新たに、ローズ選手が加わりましたが、違和感なくチームに溶け込んでおり、チームワークは昨年のレベルをキープ、いやそれ以上になっていると感じています。また、ピットワークについても、今年はライバルと遜色のないレベルまで短縮することができ、チーム全体でレベルアップを果たせたと感じています。

最後に、我々の目標は、連覇の実現であり、再び全世界のヤマハファン、レースファンの皆さまとともに感動を味わうことです。「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」、「YART Yamaha Official EWC Team」へのご支援、ご声援、宜しくお願いします。

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