ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.17 10月25日 マレーシア
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第17戦マレーシアGP
■開催日:2015年10月25日(日)決勝結果
■開催地:マレーシア/セパン(5.548km)
■周回数:20周(110.86 km)■観客数:88,832人
■コースコンディション:ドライ
■気温:35度 ■路面温度:47度
■PP:D・ペドロサ(1分59秒053/ホンダ)
■FL:J・ロレンソ(2分00秒606/ヤマハ)
REPORT
2位3位とヤマハが今季10度目のダブル・ポディウム
Movistar Yamaha MotoGPのJ・ロレンソが2位を獲得し、チャンピオン争いを最終戦まで持ち越した。チームメイトのV・ロッシは、チャンピオン獲得への希望をつなぐため、その長いキャリアのなかでも最も激しいバトルを展開して3位。今季10度目となるダブル・ポディウムを獲得した。
第17戦マレーシアGPは非常にドラマティックな展開。ロレンソは好調にスタートしたが、第1コーナーではA・イアンノーネ、A・ドビツィオーゾ(ともにドウヵティ)にはじき出される格好になり6位へ後退。しかしすぐに挽回を図り、わずか半周のうちに4位を取り戻してロッシを追って行った。
まもなくロッシの後方に追いつくと難なくパスし、その2ラップ後にはM・マルケス(ホンダ)が第4コーナーでミスをする間に2位へと浮上。そしてさらにトップのD・ペドロサ(ホンダ)を追って行ったが届かず、3.612秒遅れて2位でゴールした。
一方、グランプリ出場回数で最多の329回を迎えたロッシ。今日のマレーシアGPは、そのなかでもおそらく最も劇的なレースとなった。3番手グリッドから好スタートを切り、ペドロサ、マルケスに続く3位で第1コーナーに進入。ロレンソが追い上げてくると、すぐに対応したが、次のラップでは先行を許し、その後はマルケスにぴったりとつけ、これが今世紀最大とも言えるような激しいバトルへと展開してゆく。
ロッシとマルケスは4ラップにわたって、互いにフェアリングをぶつけ合いながらのハード・バトルでコーナーごとに順位を入れ替える。そして7ラップ目の13コーナーで接触したあとマルケスが転倒。ロッシはそのまま走行を続けて3位を獲得した。トップとの差は13.724秒。
セカンドロウからのスタートで見事2位まで上げたロレンソは、20ポイントを加算してトータル305ポイント。一方のロッシは16ポイント獲得でトータル312ポイント。ポイント差は7ポイントまで縮まったが、依然、ランキングトップをキープして最終戦に臨むこととなった。
第13コーナーでの接触について大会主催者は、ロッシに対して3ポイントのペナルティを課し、次回、バレンシアGPでグリッド最後尾からのスタートが義務づけられた。
スミスが4位獲得の大健闘
Monster Yamaha Tech3のB・スミスが、第14戦マレーシアGPで4位を獲得。グリッド3列目から飛び出し、序盤から積極的に攻めていったスミスは、1ラップ目を10位で終えてポジションアップを目指す。そして4ラップまでに3台をパスして7位に浮上。さらにペースを上げて6位に上がり、レース中盤を迎えるころにはA・ドビツィオーゾ、C・クラッチロー(いずれもドゥカティ)に追いついた。11ラップ目にクラッチローをとらえて4位に上がり、同時にサテライト勢のトップに浮上。その後は順調にリズムをキープして後続を引き離し、最終的には4.726秒のアドバンテージを築いて4位でチェッカーを受けた。この結果、シリーズポイントを合計171まで伸ばし、ランキング6位をキープしている。
一方、スミスのチームメイトのP・エスパルガロは、痛みを堪えながらの激走で9位を獲得。午前中に行われたウォームアップ・セッションでバルベラ(ドゥカティ)と接触して転倒し、頸椎に違和感があったが、レントゲン検査の結果、骨に異常がなかったため出場許可が下りた。このような厳しい状況のなかでも、集中力を保ってグリッド4列目から好スタート。果敢に攻めて1周目で7位まで浮上し、ペースをつかんでさらに上位を目指していった。そして4ラップ目でひとつ下げたあとは懸命にポジションをキープしていたが、終盤では他の3台との6位争いへと展開し、ここで抑え切れずに9位でチェッカーを受けることとなった。2週間後のバレンシアGPでは、好成績でシーズンを締めくくることが目標。
エリアスが今季初ポイント
フォワード・レーシングのT・エリアスが14位でチェッカーを受け、今季初めてのポイントを獲得。チームメイトのL・バズは2ラップ走行後にリタイアとなった。
21番グリッドからスタートした直後は前方にスペースが見つからず苦労したが、その後オープンクラスのライバル、ラバティ、ミラー、ヘイデン(いずれもホンダ)とバトルを展開しながら順位を上げていった。そして15番手で最終ラップを迎え、その最終ストレートでバウティスタ(アプリリア)をパスして14位を獲得した。
一方のバズは非常に厳しい戦い。昨日のフリープラクティスで大幅に前進し、自信を持って臨んだ決勝だが、2ラップ目の第1コーナーで転倒。そのままリタイアとなった。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | 40'37.691 |
2 | J・ロレンソ | Movistar Yamaha MotoGP | Yamaha | +3.612 |
3 | V・ロッシ | Movistar Yamaha MotoGP | Yamaha | +13.724 |
4 | B・スミス | Monster Yamaha Tech3 | Yamaha | +23.995 |
5 | C・クラッチロー | CWM LCR Honda | Honda | +28.721 |
6 | D・ペトルッチ | Octo Pramac Racing | Ducati | +36.372 |
7 | A・エスパルガロ | Team SUZUKI ECSTAR | Suzuki | +39.290 |
8 | M・ビニャーレス | Team SUZUKI ECSTAR | Suzuki | +39.436 |
9 | P・エスパルガロ | Monster Yamaha Tech3 | Yamaha | +42.462 |
10 | S・ブラドル | Aprilia Racing Team Gresini | Aprilia | +44.601 |
11 | S・レディング | Estrella Galicia 0.0Marc VDS | Honda | +47.690 |
12 | Y・ヘルナンデス | Octo Pramac Racing | Ducati | +52.112 |
13 | H・バルベラ | Avinta Racing | Ducati | +52.360 |
14 | T・エリアス | Forward Racing | Yamaha | +53.619 |
15 | A・バウティスタ | Aprilia Racing Team Gresini | Aprilia | +53.631 |
16 | N・ヘイデン | Aspar MotoGP Team | Honda | +1'01.431 |
17 | J・ミラー | CWM LCR Honda | Honda | +1'02.828 |
18 | M・ディ・ミリオ | Avintia Racing | Ducati | +1'05.075 |
19 | E・ラバティ | Aspar MotoGP Team | Honda | +1'09.877 |
20 | A・ウエスト | AB Motoracing | Honda | +1'24.749 |
LAP CHART
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | V・ロッシ | Yamaha | 312 |
2 | J・ロレンソ | Yamaha | 305 |
3 | M・マルケス | Honda | 222 |
4 | D・ペドロサ | Honda | 190 |
5 | A・イアンノーネ | Ducati | 188 |
6 | B・スミス | Yamaha | 171 |
10 | P・エスパルガロ | Yamaha | 103 |
17 | L・バズ | Yamaha | 28 |
22 | 中須賀克行 | Yamaha | 8 |
27 | T・エリアス | Yamaha | 2 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Yamaha | 382 |
2 | Honda | 335 |
3 | Ducati | 247 |
4 | Suzuki | 129 |
5 | Yamaha Forward | 35 |
6 | Aprilia | 34 |
7 | ART | 2 |
COMMENT
Movistar Yamaha MotoGP
J・ロレンソ選手談(2位)
「非常にハードなレース。ダニとの距離を縮めようと全力を尽くしたが、正直なところ、彼のペースは驚くほど速かった。速く、安定していて、マシンを完璧に乗りこなしていたので、ブレーキングで前へ出るのは難しかったんだ。結局2位になったが、これでポイント差を縮めることができたのだから評価したい。マルクとバレンティーノとのバトルを見ていて、アクションが非常に大きいことに驚かされた。大会主催者の判断を尊重する」
V・ロッシ選手談(3位)
「接触の原因はマルケスもわかっているんだ。ヘリコプターからの映像を見ても、僕が彼を転倒させようとしたわけではないことがはっきりとわかる。僕はただ、ラインを外側へ外させて減速させ、遅らせようとしただけ。僕はコーナーではらみ、減速し、ほとんど止まりそうになるほど。あのときには彼を見て“どういうつもりなんだい?”と言いたかったよ。そしてそのあと、とうとう接触してしまった。彼の右脇が僕の脚に当たり、足がステップから外れてしまった。ヘリコプターの映像を見れば、僕の足がステップから外れたとき、マルケスがすでに転倒していたことは明らかなんだ。僕は彼を蹴るつもりなどなかったし、もしもモトGPマシンを蹴ったとしても、とても重いものだから転倒などするはずがない。僕は決して、彼を故意に転倒させようとしたわけではなくて、彼の行動に反応しただけ。もちろんキックもしていないよ。僕はただ、ホルヘとチャンピオン争いをして、強いほうが勝つことを目指すだけ。決してマルケスを転倒させたかったわけではない。チャンピオンシップはまだ終わっていないので、バレンシアで最善を尽くす」
M・メレガリ、チーム・ディレクター談
「このような素晴らしいチャンピオン争いがふたりのヤマハ・ライダーで展開されることで最もエキサイティングになるはずであったが、そうならなかったのが残念だ。大会主催者によって課されたポイントのペナルティは厳し過ぎると思うが、チームとしてその最終決定を尊重する」
Monster Yamaha Tech3
B・スミス選手談(4位)
「昨日まで苦しんできただけに、ここで4位を獲得できたことはとても素晴らしい結果。ウイーク初日は14位。そこから4位まで上がってこられたのはチームのみんなの努力のおかげなんだ。彼らには心から感謝しているよ。昨日までの2日間は本当に辛かったけれど、あきらめずに一歩一歩、前を目指して進んできた。そして今朝のウォームアップ・セッションで良い兆しが見え、またマシン・セッティングを少し変更して前のライダーについて行けるようになったんだ。これでリズムに乗り、ラップタイムも安定してきたので、自信を持って走れるようになったし、ユーズド・タイヤの使い方も身についた。決勝では、ライト消灯とともに絶好のスタート。第2コーナーではやや遅れてしまったが、すぐにステファン・ブラドル(アプリリア)をパスすることができた。そしてそのあとはカル・クラッチロー、アンドレア・ドビツィオーゾとの差をキープするよう心掛けたんだ。というのは、レースのなかのどこかのタイミングで彼らに近づくことができると確信していたからね。そして同時に、タイヤをできる限り大事に走るようにした。ドビツィオーゾとは良いバトルができると思っていたので、彼がクラッチローと接触してしまったことは残念。でもそのあと、僕はクラッチローに追いついてパス。最後の7ラップを全力で走り切ってアドバンテージを広げることができた。これで13ポイントを獲得し、ドビツィオーゾとのポイント差も拡大。今日の成功を祝い、笑顔でヨーロッパへ戻るよ」
P・エスパルガロ選手談(9位)
「これまでの経験のなかでも最も厳しいレースのひとつだったことを認めなければならない。今朝のウォームアップ・セッションでバルベラに追突され、首をひどく傷めてしまった。それで決勝前に怪我の具合を検査しなければならず、病院とクリニカ・モバイル(サーキット内の診療所)のお世話になった。正直なところ体調は決して良くなかったんだけれど、そこのスタッフたちが、僕をできるかぎりベストの状態に近づけようと頑張ってくれたんだ。彼らには本当に感謝しているよ。厳しいレースになることはわかっていて、実際、その通りになった。激しい痛みがあったし、めまいを感じることもあったんだけれど、100%の力を出し切り、チェッカー目指してベストを尽くしたよ。ここまでくると、マシンのフィーリングやセッティングやその他いろいろなことは、あまり重要じゃない。ただひたすらファイトし、残りのラップ数を数えるだけだったんだ。それでも振り返ってみれば、今朝のプラクティスでのペースやレース展開を考えると、もっと良い結果もあり得たのではないかと思う。何はともあれ、バルセロナでもう一度、首を検査してもらってから、次のバレンシアへ向けて少しでも体調を回復できるよう努力するよ」
H・ポンシャラル、チーム・ディレクター談
「非常にうれしく、素晴らしい戦いを見せてくれたふたりのライダーを誇りに思う。ブラッドリーは見事なレースで、昨日までの困難を克服。昨日も一昨日も彼が相当に苦労していたことは明らかで、とくにQP1出場の経験は、我々が本来いるべき位置から大きく後れていることを如実に物語っていた。幸い、今朝のウォームアップ・セッションでは状況が好転し、決勝が始まると、いつものように好スタートを切った。身体的には万全の状態であることはわかっていたし、この暑さにも対処できた。そして毎ラップ、安定したタイムをキープし、着実にポジションを上げていった。カルとのバトルでは、カルのミスでブラッドリーがアドバンテージを拡大。さらに前を行くバレンティーノとの差をわずかに縮めることもできた。そういうわけだから、いつも以上にうれしい4位だ。一方のポルについても、懸命のファイトに感謝している。ウォームアップ・セッションでバルベラとの接触により転倒し、頸椎を負傷。決勝に出場できるかどうかは予断を許さない状況だった。しかし彼は全力でプッシュし、最終的に非常に貴重なポイントをもぎ取った。この3連戦はいろいろなことがあったが、総合的に非常に良い結果になったと思う。次のバレンシアでも同様のパフォーマンスができるよう期待している」
Forward Racing
T・エリアス選手談(14位)
「順位もポイントもとてもうれしいよ。このマシンに初めて乗ったのがわずか1か月前で、それからたくさんの仕事に取り組んで、ようやく目標に到達することができたんだ。スタートはあまり良くなかったが、そのあとは序盤からペース良く走れて順位もいくつか上げることができた。ラバティと競り合い、そのあとミラーとヘイデンをパス。最終ラップはバウティスタについて行って、ストレートの手前でとらえることができた。チームのみんなのハードワークに、モトGPに戻るチャンスを与えてくれたジョバンニに、そして支えてくれる家族とスポンサーに感謝」
L・バズ選手談(DNF)
「レースは予定より早く終了してしまった。スタートは悪くなかったのに、2ラップ目の第1コーナーで、まったく何もできないまま転倒してしまった。シリーズポイントを挽回するチャンスを逃してしまい本当に残念。でも最終戦には自信を持って臨む」