ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.13 9月13日 サンマリノ
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第13戦サンマリノGP
■開催日:2015年9月13日(日)決勝結果
■開催地:イタリア/ミサノサーキット(4.226km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:27度 ■路面温度:31度
■PP:L・ロレンソ(1分32秒146/ヤマハ)
■FL:L・ロレンソ(1分33秒273/ヤマハ)
REPORT
V・ロッシは5位
モビスター・ヤマハ・モトGPのV・ロッシは苦しい展開で5位。チームメイトのJ・ロレンソはペース良く走っていたが、難しいコンディションにつかまり完走ならず。
ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリは、地元のヒーローを応援する大勢のファンで黄色に染まっていた。レースはまさに劇的な展開。そのロッシは5位に留まり、ロレンソは2度目のマシン交換のあとすぐに、タイヤが暖まらないまま転倒した。
頭上には雲が広がり、雨粒も落ち始めるなかスタートを切ったロッシは、3番手で第1コーナーへ。D・ペドロサを抑え、チームメイトのロレンソとライバルのM・マルケスを追った。トップグループの戦いに留まるためペースを上げると、3ラップ目には1分33秒894のファステストラップを記録。しかしトップに近づき、追いついたところで雨が降り始めたため、7ラップ目にピットイン、7番手でコースに復帰した。2ラップ後には全員がピットに戻りマシンを交換。この間に再び3位へと浮上し、マルケスとロレンソを追う展開となった。難しいコンディションのなかで、あらゆる知識と経験を生かして1秒以上も速いペースをキープしたが、残り17ラップの時点でリアタイヤの状態は悪くなかった。次のラップでは、ドライ・ラインも現れ始めるなかでマルケスをパス。そして15ラップ目、ロッシはついにロレンソをとらえてレースをリードした。この日、初めてのトップ走行にファンは大喜びでジャンプ!しかしこのあともドラマが待っていた。路面が乾いてドライ・コンディションになると、何人かのライダーはマシン交換のためピットイン。ロッシはそのまま、できる限り長く走り続けることを決め、ロレンソとの差を拡大するため全力でプッシュしていった。ロッシは結局、20ラップ目でピットイン。再度コースに復帰したときには5位に後退してしまった。何とか表彰台獲得まで挽回したかったが、前のライダーとの差を詰めることができずに5位。トップからは33秒196も離された。
一方のロレンソはポールポジションから絶好のスタートを切りホールショット。追ってくるマルケスとロッシを引き離そうと、前方には誰もいないコースで順調にペースを上げていった。1分33秒台後半でラップを重ねながら1秒近いアドバンテージを築いたが、6ラップ目には雨を告げる旗が振られ、ペースも落ちてきたことからトップ3台はピットインを選択。ロレンソは5位でコースに復帰し、その後ろにマルケスが続いた。次のラップには順位が落ち着き、ロレンソはマルケスの後方に下がってコンディションを観察しながら走行していたが、マルケスがはらむ間に再びトップに立つこととなった。その後も全力で走り続けていたロレンソ。15ラップ目には、少しずつ乾き始めた路面にウエット・タイヤのグリップ感が落ちてきたところでロッシがパス。これを機に、残り8ラップでピットに戻り、4位で復帰した。ここからもう一度、ポジションアップを図り懸命なプッシュ。しかし第15コーナーで転倒を喫し、そのままリタイアを余儀なくされた。
この結果、11ポイントを獲得したロッシは合計247ポイントとしてリードを拡大。ノーポイントに終わったロレンソも、合計224ポイントでランキング2位を守っている。
B・スミスが2位表彰台を獲得
モンスター・ヤマハ・テック3チームのB・スミスが2位を獲得し、モトGPで自身2度目の表彰台に上った。昨日の予選で健闘し、グリッド2列目からスタートしたスミスだが、天気の急変によりレースの4分の1も進まないうちに多くがピットイン。しかしオープニングラップで6位につけていたスミスは、果敢にもスリック・タイヤのまま続行を決意。この結果11ラップ目までに21位へと後退したが、そのあと、雨が止んでコースが乾き始めると、先ほどの選択が効果を発揮し始めた。他のライダーたちが2度目のマシン交換を行う間に、スミスは一気にペースを上げて残り10ラップで9位へ浮上。その後もコンスタントにペースを上げてゆき、20ラップ目ではついに表彰台圏内へ、さらにそのすぐあとで2位に上がり、そのままチェッカーを受けた。21位から2位への挽回。見事なレース運びを見せたスミスは、チャンピオンシップでもランキング5位へ再浮上した。
一方、スミスのチームメイトのP・エスパルガロは厳しい展開。不運にもリタイアに終わった。スタートは好調で、グリッド12位から9位へ浮上。その後も集団から抜け出るためバトルしていたが、7ラップ目、雨が降り始めたところでピットインを決断。コースに復帰すると5位まで上がっていた。そのあとひとつ下げて6位をキープして走行していたが、再び天候が変化したため残り8ラップで2度目のピットイン。コース復帰後まもなく技術的不具合が発生し、最終ラップでついにリタイアとなった。ホーム・グランプリとなる次回アラゴンで雪辱を期す。
L・バズが総合4位でオープンクラス優勝
フォワード・レーシングのL・バズはオープンクラスで優勝、しかも総合4位獲得と大健闘。この結果、チャンピオンシップではオープンクラスのトップに立った。一方、チームメイトのC・コルティは20位。
予選16位から好スタートを切ったバズは、この難しいレースの主役のひとりとなった。最初の雨粒が落ち始めると、バズは素早くピットに戻ってマシンを交換して12位で復帰。そのまま6ラップを走ってから、再びピットに入りドライ用のセットアップに交換した。このタイミングが成功の鍵。徐々にトップグループとの差を詰め、表彰台にも近づいて、しばらくS・レッディングとバトルしたが、抜くことはできず4位でチェッカーを受けた。これで13ポイントを獲得してオープンクラスのランキングトップに浮上。2位のバルベラに5ポイント差をつけている。
一方のコルティは序盤で接触がありポジションダウン。タイミングよくマシン交換を行ったが、ウエット・コンディションに苦しみ20位となった。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | M・マルケス | Repsol Honda Team | Honda | 48’23.819 |
2 | B・スミス | Monster Yamaha Tech3 | Yamaha | +7.288 |
3 | S・レディング | Estrella Galicia 0.0Marc VDS | Honda | +18.793 |
4 | L・バズ | Forward Racing | Yamaha | +26.427 |
5 | V・ロッシ | Movistar Yamaha MotoGP | Yamaha | +33.196 |
6 | D・ペトルッチ | Octo Pramac Racing | Ducati | +35.087 |
7 | A・イアンノーネ | Ducati Team | Ducati | +36.527 |
8 | A・ドビツィオーゾ | Ducati Team | Ducati | +37.434 |
9 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | +39.516 |
10 | A・エスパルガロ | Team SUZUKI ECSTAR | Suzuki | +39.692 |
11 | C・クラッチロー | CWM LCR Honda | Honda | +41.995 |
12 | J・ミラー | CWM LCR Honda | Honda | +46.075 |
13 | M・ディ・ミリオ | Avintia Racing | Ducati | +48.381 |
14 | M・ビニャーレス | Team SUZUKI ECSTAR | Suzuki | +52.325 |
15 | A・バウティスタ | Aprilia Racing Team Gresini | Aprilia | +53.348 |
16 | S・ブラドル | Aprilia Racing Team Gresini | Aprilia | +58.828 |
17 | N・ヘイデン | Aspar MotoGP Team | Honda | +1’02.649 |
18 | H・バルベラ | Avinta Racing | Ducati | +1'04.768 |
19 | E・ラバティ | Aspar MotoGP Team | Honda | +1'05.677 |
20 | C・コルティ | Forward Racing | Yamaha | -1 Lap |
21 | K・アブラハム | AB Motoracing | Honda | -1 Lap |
22 | P・エスパルガロ | Monster Yamaha Tech3 | Yamaha | DNF |
23 | J・ロレンソ | Movistar Yamaha MotoGP | Yamaha | DNF |
24 | Y・ヘルナンデス | Octo Pramac Racing | Ducati | DNF |
25 | A・デ・アンジェリス | E-Motion IodaRacing Team | pART | DNF |
LAP CHART
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | V・ロッシ | Yamaha | 247 |
2 | J・ロレンソ | Yamaha | 224 |
3 | M・マルケス | Honda | 184 |
4 | A・イアンノーネ | Ducati | 159 |
5 | B・スミス | Yamaha | 135 |
6 | A・ドビツィオーゾ | Ducati | 128 |
9 | P・エスパルガロ | Yamaha | 81 |
15 | L・バズ | Yamaha | 28 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Yamaha | 297 |
2 | Honda | 240 |
3 | Ducati | 197 |
4 | Suzuki | 95 |
5 | Yamaha Forward | 33 |
6 | Aprilia | 23 |
7 | ART | 2 |
COMMENT
Movistar Yamaha MotoGP
V・ロッシ選手談(5位)
「このレースで優勝することよりチャンピオンシップのほうが重要。それが一番の目標だからね。ホルヘは不運にも転倒し、僕は11ポイントを獲得。ということはチャンピオンシップを考えるなら良かったんだと思っているよ。でも表彰台を逃したことは残念。やはり大勢の地元のファンの前で表彰台に上りたかった。とにかく今日はクレイジーなレース。2回もマシン交換を余儀なくされた場合、何より求められるのが、コンディションを読む素早い判断力と運。そういうなかで5位は悪くない結果だと思う。まだ5レースが残っており、ホルヘはいつでも優勝できる能力を持っている。マルケスももちろん手強いライバルだ。つまり獲り合うことになるポイントがまだまだたくさん残っているということ。アラゴンはいつも難しいが、何度かテストをしているしラップタイムも決して悪くなかった。良いレースをして、また表彰台に立ちたい」
J・ロレンソ選手談(DNF)
「2戦続けてバッド・ラック。前回のシルバーストーンでは自信が持てず、今回は、タイヤをしっかり暖めるだけのペースが持てなかった。そのせいでスリック・タイヤが冷たいままコーナーに進入してしまい、リアから転倒した。今シーズンは概してアンラッキーだと思っているけれど、そのなかでもこの2戦はとくにひどい。つまりどちらも優勝か、少なくとも2位には入れるはずのところだったんだ。でもそれがレースというもの…。以前は僕のチャンピオンシップのライバルたちが転倒していた。そして今年は、そのアンラッキーが僕。でもすべてを失ったわけではない。残りのレースを全部、勝ったとしたらチャンピオンになれる。その場合はバレンティーノが何位であろうと関係ないんだ」
M・メレガリ、チーム・ディレクター談
「天候がレースの鍵を握ることは、スタート前からわかっていた。チームはいつものように素晴らしい仕事をして、バレンティーノとホルヘのために最大限の良いセッティングを用意していた。しかしスタート直前になって天候が急変した。これでタイヤ・チョイスも戦略も完全に賭けになってしまったのだ。バレンティーノは序盤でやや遅れたが、カオスのなかでも常に冷静さをキープした。レースをリードしているときに、しかもチャンピオンシップのことが頭にあるならなおさら、どのタイミングでピットに戻るかは難しい判断だ。彼はホルヘよりも1ラップ多く走ることに決めたが、もちろん大きなチャレンジだった。そのホルヘは、この難しいコンディションにつかまってしまった。昨日まで非常に好調だっただけに本当に残念だ。ハイスピードからの転倒だったので、大きな怪我がなかったことは幸運だったのだ。2週間後にはまたパーフェクトな状態で戻ってくると信じている。今日の結果は我々の実力を反映したものではなく、このことを乗り越えて早く気持ちを切り替え、次のアラゴンに照準を定めてゆく」
Monster Yamaha Tech3
B・スミス選手談(2位)
「ゾクゾクするような感動!今日のこの結果は大きなギャンブルだったんだ。このような状況のなかで正しい判断をするのはとても難しいこと。僕は頭のなかでいくつかのことを分析、計算してみたんだ。スタート前には青空が見えていた。だから雨が降ったとしても短時間で終わるはず。そしてそのように自分自身に言い聞かせ、またすぐにドライになることを願った。とは言え、他にも問題はあって、新しい路面が雨でどのようになるかは未知。ホルヘやバレンティーノがピットインしたときに僕はタイミングを逃してしまったので、そのまま走り続けて雨が弱まるのを信じて待つことにした。またこの時点ですでに大きく遅れていたこともあって、とにかくしばらく様子を見ることがベストの選択だと思ったんだ。そしてついに雨が止んだ。ということはつまり、他のみんなはもう一度ピットに戻らなければならない。僕の賭けが当たったんだ。“運は勇敢さを好む”。自分自身にそう言い続けてさらに自分を励まして、ついにここまでたどり着いた!ポジションはどんどん上がっていって2位まで来てしまったんだ!とても感動的で、僕にとって最高のレースのひとつになった。フィリップアイランドではただレースを走り切って表彰台に上った。でもここでは、難しいコンディションのなかで技術と能力が求められ、本当にスムースなライディングができなければ不可能だった。サテライト・チームは毎回、全力で頑張って5位や6位を目指しており、表彰台にはなかなか手が届かない。だからこそ今日のようなチャンスをしっかりつかまなければならないと思う。この結果をチームとスポンサーにプレゼントできることが本当にうれしいんだ。次のレースが楽しみだ」
P・エスパルガロ選手談(DNF)
「昨日までが順調だっただけに、このような結果になり落胆を隠すことができない。しかもまたしても、天候に翻弄されてしまった。新しい路面でウエットを走るのは初めてなので、すべてが未確定で、正直に言えば、ラインがドライなのかウエットなのかさえわからないところもあった。それに加えて、このような状況のなかで目の前にも後ろにも誰もいなくなり、自分のポジションがよくわからなくなっていたんだ。天気はどんどん変化し、またいつ雨が降り出すかわからなかったので、ウエット・タイヤのまましばらく走り続けた。これがベストの選択だと思っていたが、終わってみれば、僕は今日の賭けに負けてしまったということ。ようやくピットインしてマシンを交換し、もう一度コースに戻ったときには技術的な問題が出てリタイア。そんなわけだから今は本当に悔しくてしかたがないよ。ドライ・コンディションではペース良く走れていたんだ…シルバーストーンと同様にね。一日スタートは上々だった。朝のウォームアップ・セッションでは5位につけた。ところが雨がすべてを変えてしまったんだ。でも、ブラッドリーにはおめでとうと言いたい。彼は本当に素晴らしかった。次のアラゴンではウイークを通じて天気が安定し、何もじゃまされずにノーマルなレースがしたい…」
H・ポンシャラル、チーム・マネジャー談
「ブラッドリーは最高の結果。素晴らしいレースだった。スタート前、グリッド上の全員と同様、私もドライ・レースを祈っていた。ブラッドリーは好スタートを切ったが、雨が降り出していたのでチームのみんなは非常にナーバス。そしてブラッドリーを除く全員がピットに戻り、一時は彼の勇敢さを感じたものの、コンディションがどんどん悪くなるなか、みるみるうちに10秒も遅れてしまった。ところがちょうど良いタイミングで雨が止み、そこから彼は大変な決意をもって挽回を試みた。今日は、リスクをかけなければならない日なのだと理解していたのだ。終わってみれば、それほど多くの転倒車もなく良いレースだったと思う。何よりもまずブラッドリーの頑張りにお礼を言う。そして表彰台獲得を心から祝福する。今日と、昨年の好成績によって、彼は大きく一歩、前進した。その一方で、ポルにとっては厳しいものになってしまった。絶好のスタートを切り、他のライダーと同様に正しいタイミングでピットに戻って来た。しかもレースのほとんどの時間帯で6位をキープする好調ぶりを見せていたのだ。そして2度目のピットイン。ところがドライ・マシンに跨るやいなや技術的不具合に見舞われた。ここまでがとても順調だっただけに非常に残念な結果。最終的に完走はならなかったが、彼は十分に速かったのだ。ブラッドリーが表彰台を狙えたならば、ポルも同じことができるはず。今後もモチベーションとポジティブ・スピリットをキープし、エネルギー満タンで次のアラゴンに臨む」
Forward Racing
L・バズ選手談(4位)
「何という一日!いつの間にかウエット・コンディションで走らなければならなくなり、1回ではなく2回もマシンを交換した。スリック・タイヤでは走ることもままならなかったが、なんとか頑張って、早めにピットに戻ってウエットに交換。6ラップ走ってから、また早めに戻り、スリックに履き替えた。この早めの判断が良かったようだ。今日のレースはまさにクレイジーとしか言いようがなく、自分自身がどこにいるのかさえわからないときもあったが、ただひたすら集中力をキープした。ドライ・ラインは本当に、本当に細かった。何とかマシンを無事にゴールまで持ち帰りたいと願っていたので、最終ラップはとても長く感じたよ。その結果、今はこうしてオープンクラスのトップに立っているんだ。フラッグ・トゥ・フラッグのレースは誰にとっても楽ではない。それを素晴らしい仕事で支えてくれたチームのみんなに感謝。もちろんそれは今日だけのことではなく、この数か月ずっと続いている」
C・コルティ選手談(20位)
「まさに混沌のレース。いろいろな変化が突然にやってきた。全体を思い返せば、リスクを賭けたところもあったけれども、それを楽しむことができた。序盤は集団に飲まれてポジションダウン。そのあと少しずつ挽回していったが、雨が降ってきてしまった。レイン・タイヤへの交換のタイミングがちょっと遅かったのかもしれない。今回もまたいろいろなことを学ぶことができたので、たくさんインプットして次につなげたい」