YAMAHA FACTORY RACING TEAM <br>2連覇に向けて好発進
速さと強さを鮮やかに見せつけながら、昨年の鈴鹿8耐で完全勝利を成し遂げた「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」。ヤマハにとって28年ぶりとなる2連覇をめざし、鈴鹿サーキットに帰ってきた。6月29〜30日、「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」は2日間の日程でプライベートテストを実施。梅雨空の下、雨雲の動きをにらみながらも精力的なテストを行った。
ライダーは、全日本ロードレースで連勝を続けている中須賀克行選手、MotoGPで活躍しているスペイン人のポル・エスパルガロ選手。そして昨年表彰台の頂点に立ったこの2人に、スーパーバイク世界選手権に参戦しているイギリス人のアレックス・ローズ選手が加わっての3人体制だ。
6月29日、テスト初日の午前中はドライコンディション。3ライダーともYZF-R1とコース、さらには自身のフィジカルコンディションを確認しながら確実に周回をこなす。昼過ぎから雨が降り出し、予定されていた午後の走行はキャンセルとなるも、それぞれに手応えを得た初日となった。
テスト2日目となる6月30日、鈴鹿サーキット上空は朝からどんよりとした雲に覆われ、時おり通り雨が路面を濡らすというコンディションに。ドライともウエットともつかない路面のため、予定したテスト項目をこなすのが難しい状況となった。
そんな中、チームのムードメーカーであり、今回のプラベートテストが「鈴鹿8耐レースウィーク前の、最初で最後の走行チャンス」となるエスパルガロ選手は積極的にコースイン。雨の様子を判断しながら中須賀選手、ローズ選手もこれに続き、力強く周回を重ね、ピット作業練習も本番さながらの緊張感が漂い、ライダーとチームの士気の高さを窺わせた。
午後は、たびたび雨が落ちてきたものの、路面はかろうじてドライコンディションを維持。YZF-R1のライディング経験が豊富な中須賀選手を軸にして、エスパルガロ選手、ローズ選手ら3人が情報交換する姿が常に見られ、チームの雰囲気は良好。走行時間終了30分前には雨が降りはじめて待機となったものの、残り15分で雨が上がるや再び走行を開始。ギリギリまでマシンのセットアップを進め、実り多き2日間のテストとなった。
この後、「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」は7月13〜14日の4メーカー合同テストに参加する予定。中須賀選手とローズ選手が参加し、7月31日の鈴鹿8耐決勝に向けてさらに調整を進め、戦闘力を高めていく。狙いはあくまでも「2年連続優勝」。ライダー、そしてチームには覇者の風格と、連覇に挑むチャレンジャーとしての緊張感が入り交じり、気を引き締めてのテストが続く。
なお、鈴鹿8耐スペシャルサイトでは、テストの様子から決勝レースまで、さまざまな情報を公開していく予定です。ぜひ、ご期待ください。
#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAM
中須賀克行選手談
「天候に左右され、走行時間としては予定より短くなりましたが、その中でもやりたいことがしっかりこなせたテストでした。決勝に向けてのタイヤチョイスも進められたし、結果的にはいい内容になったと思います。ライダー同士のコンビネーションもバッチリ。ポル(エスパルガロ選手)、アレックス(ローズ選手)ともにレベルが高くて、みんないいアベレージで走れていますね。レースウィークにはさらに高いポテンシャルを見せてくれるはず。ポルは『ポールポジションはナカスガさんだね!』なんて言ってるけど、彼もスイッチが入ったら本当に速い。スーパーポールは彼に任せます(笑)」
ポル・エスパロガロ選手談
「雨に降られてしまい、思ったように周回を重ねることができなかったのは残念。でも、何度かの走行セッションではドライで走れたことをラッキーだと思うことにするよ(笑)。久しぶりにYZF-R1を走らせて自分の感覚も取り戻せたし、新しいセッティングも試せたし、全体的にはハッピーだ。これで僕の事前テストは終わりだけど、何もかもが初めてだった去年よりもずっと効率よく物事が進んでいて、十分な成果が得られたよ。いやぁ、今年もポールポジションを獲るのは難しいかもしれないな。ナカスガさんが速いから(笑)。でも、僕たちの目的は表彰台の頂点に立つこと。いいライダー、速いマシン、素晴らしいチームと、僕たちは勝つために必要なすべてを持っているけど、何があるのか分からないのがレースだ。最後の最後にみんなと喜び合えるように、自分たちのやるべきことをしっかりやるよ。そうすれば結果がついてくると信じている」
アレックス・ローズ選手談
「去年初めて鈴鹿8耐に参戦したが、今年はマシンもチームも変わって、僕にとってはすべてが新しい。今回のテストでは多くを学ぼうと意気込んでいたが、雨は残念だったね……。ただ、普段スーパーバイク世界選手権で走らせているのとは仕様の違うYZF-R1にもタイヤにもだいぶ慣れてきたし、得たものは多い。ただ、まだまだやらなくちゃいけないことは山積みで、自分のライディングスタイルも変えていくつもり。次のテストではたくさん周回できることに期待してるよ。チームの雰囲気はとても良くて、チームメイトは“グッドガイ”だし、スタッフは懸命にやってくれるし、最高にいい環境でリラックスできている。勝利にもっとも近いチームで走ることにはプレッシャーも感じるけど、それも勝つためには必要なもの。ベストを尽くすよ」
吉川和多留監督談
「天候が不安定で最高とは言えないコンディションでしたが、オランダGPを終えたばかりのエスパルガロ選手、スーパーバイク世界選手権でのケガからの復調が心配だったローズ選手、そしてSUGOでの全日本からそのまま駆け付けた中須賀選手が全員揃い、内容のあるテストをこなすことができました。エスパルガロ選手は持ち前の明るさでチームを盛り上げてくれます。2年目となる今年も走ることに対するモチベーションは非常に高く、しかも非常に速い。ローズ選手はケガの影響もなく、初めての環境の中で落ち着いてペースを上げていきました。そして中須賀選手は絶対的な信頼感とともに多くのテスト項目をこなし、経験を生かしながらライダー間のバランス取りという役割も見事に果たしてくれています。そのおかげもあって、ライダー3人のコンビネーションはうまくいっていますし、セッティングも順調で、レースウィークが楽しみです。ただ、昨年優勝したとはいえ、自分たちとしてはまだまだ不甲斐ない内容だったことも確か。勢いで勝った去年と違い、2連覇を懸けた今年は、すべてをコントロールしながら勝つことの難しさを実感しています。自分たちがやるべきことをスキなくこなして、誰が見ても恥ずかしくない勝利をあげられるよう、気を引き締めて次のテストに臨みます」