INTERVIEW

Looking Back on the 2019 Season

確かな成長と悔しさを携えて、次の目標へ

8月17日、メリーランド州のメカニクスビルで行われた第11戦の予選、ここまで2度ポイントを獲得し、この11戦を含めた2大会でさらなるポイント獲得を目指していた渡辺祐介は、大クラッシュを喫し、AMAモトクロス・250MX2年目の挑戦をランキング45位で終えることとなった。日本に帰国し、久々に全日本モトクロスを観戦してこのインタビューに臨んでいる。

「改めて感じました。全日本とはすべてが違うって… 日頃のトレーニングやそれをこなす思考が違います。今年はいろんなことを理解した上で自分を変えてきたから、余計に感じます」。この言葉の中に「確かな成長」があったという自負が滲みでている。

2019年春、渡辺は2シーズン目に向け元AMAライダーでアドバイザーのダグ・デュバック氏、全日本時代からの専属メカニックである内山学氏と準備を進めていた。「昨シーズン、自分に一番欠けていたのが序盤のスピードでした。そもそも速いライバルが120〜130%で走るとついて行けない。そこで、僕も最初の5ラップをベストからコンマ5秒以内に揃えるトレーニングに取り組んだのです。80%の力で続けることはできますが、100%でタイムを安定させるのは並大抵のことではありません。でもこれができれば、前半はポイント圏内かその後方につけ、レース中盤以降は、自信のある体力で勝負できると考えたのです」

改めて「ポイント獲得」という目標を立て、昨年の経験から課題を洗い出し入念に潰していく作業に取り組んだが、そうは簡単ではない。

開幕戦は、「緊張こそあったものの何もできなかった昨年と違いフィーリングは良かった」のに予選を不通過。敗者復活戦にでることとなった。結果的に決勝進出を果たしたが、「シーズンオフのトレーニングを考えると、この結果には焦燥感がありました」

昨年は追いかけていたライバルとバトルできるようになっていたのに順位が変わらない。ふと、周りの景色が昨年から違っていることに気づく。AMA250MXファクトリーライダーのレベルは元来世界的に高い、さらに今年は欧州、カナダ、オーストラリアから新たな挑戦者が加わり、層が一段厚くなっていた。

このままではポイントには届かないという現実が立ちはだかっていた。こうした状況の中、やってきたことが間違いではなかったという確信を頼りに、未来を変えるため、次々と迫りくるレースの合間を縫って進化を求める日々を続けた。そして第5戦フロリダのMoto1で19位に入り、昨年から17戦目にして初ポイントを手にする。

「3〜4戦ではこれまで勝つことができなかったライバルに勝利するなど進歩がありました。フロリダは、高温多湿で自分には有利な環境でしたが、ベストを5周連続で続ける技術の習得、荒れたコンディションを走破するためスタンディング走行トレーニングの成果だと思います」

ポイント獲得と同様に、昨年からさらに突破が難しくなっている予選に関しては、「昨年も意識はしていましたが、走り出しからすぐベストタイムをマークしなければなりません。ところが今年はさらに厳しく、感覚としてはリスク覚悟の120〜130%で走る必要がありました。そこで120〜130%でも可能な限りリスクを抑えて走る練習をシーズン前半の終わり頃から取り入れてきたのです」。実際のデータをみると、前半はほとんどが30番台での予選通過だが、後半は25〜30番台で通過している。

それでもフロリダ以降で、ポイントを獲得できたのは第9戦のワシューガルだけだった。

「ダグさんやチームメイトには、今の250でポイントを取れたのはすごいことだと言ってもらえました。実際、今年はレースを楽しめたし、予選でも改善して以前負けていたライダーに勝てるようになって、爪痕は残せたと思います。ただ、ポイントを取れたのは24レース中2つ。満足なんかできるはずがありません。ライバルが速いのはわかりきっている中で、原因は僕でしかない。ダグさんやメカニックの内山さん、チームのサポートに応えられなかったのが残念です」

今シーズンを振り返る中、決してやりきったという言葉は使わなかった。「目標は人それぞれで、どんなに高くても何個あってもいい。僕は目の前のものから、未来に向けたくさんの目標があり、AMA参戦ものその一つです」

そして「2018年、記念参戦でなく、技術を磨くためでもなく、成功したいという決意で行きましたが、アメリカは全然甘くなかった」

だからこそ、渡辺はさらに成長するため次の目標を掲げている。「250MXで過ごした2年間で、僕に足りないものが鮮明になりました。それを克服するトレーニング方法もわかっているし、もっと速く強くなる可能性があるので目標は次から次へと湧いてきます。例えば、AMA、全日本、ネイションズなど、今度は450ccで走ってみたいです」

アメリカで、全日本で、または他のどこかで、目標がある限り渡辺の挑戦に終わりはない。

最後にもらったコメントは「ヤマハの育成チームがどれだけ大きな存在だったか。極端に言えば、YAMALUBE RACING TEAMがなければ、今の僕もなかったと思います」。現在、YAMALUBE RACING TEAMには、渡辺に続く次の挑戦者が確実に育っている。