ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.02 4月13日 アメリカズ
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第2戦アメリカズGP
■開催日:2014年4月13日(日)決勝結果
■開催地:テキサス州/サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)(5.513km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:26度 ■路面温度:32度
■PP: M・マルケス(2分2秒773/ホンダ)
■FL: M・マルケス(2分3秒575/ホンダ)
REPORT
ロッシは8位、ロレンソが10位を獲得
COTAで行われた第2戦アメリカズGPは、V・ロッシが8位、J・ロレンソが10位にとどまり、モビスター・ヤマハ・MotoGPにとって非常に厳しい結果となった。
ロッシは完璧なスタートを決めることができず、グリッド6位から9位へ後退。追い上げを強いられたロッシは序盤から果敢に攻め、A・ドビツィオーゾ(ドゥカティ)、S・ブラドル(ホンダ)、C・クラッチロー(ドゥカティ)らを次々にパスして4位まで浮上する。さらにA・イアンノーネ(ドゥカティ)との差を縮めていきながら表彰台獲得を目指していたが、その矢先、フロントタイヤ右側のグリップが失われてペースを上げられなくなり、再び後退を余儀なくされた。
一方のロレンソはスタートで逸り、ジャンプ・スタートによってライド・スルーのペナルティー。オープニングラップを走り終えたところでピットに戻り、すぐにまたコースに復帰したが、その時点で23位となっていた。このように非常に厳しい展開となってしまったが、シーズン初のポイント獲得を目指して懸命に追い上げ、8位のロッシに4秒差まで近づく10位となった。
ロッシは8ポイントを加算して合計28ポイント、ランキングは3位に後退した。ロレンソは6ポイントで16位となっている。
モンスター・ヤマハ・テック3のB・スミスとP・エスパルガロは、ともにMotoGP自己最高となる5位と6位をそれぞれ獲得。エスパルガロはMotoGPルーキーのトップとなり、同カテゴリーで初めてのポイントを獲得した。
スミスは予選8位からスタート後、1周目でひとつ順位を下げたが、そのあとはリズムをつかんで順調にペースを上げ、数ラップ後には7位まで挽回。さらにロッシに追いついて素早くパスに成功すると、14ラップ目にはチームメイトのエスパルガロ、3ラップ後にはもうひとりとらえて4位に浮上した。表彰台獲得を狙ってさらに追い上げを図るが、S・ブラドルとの4位争いが激しくなり、最終的にはこれを抑えきれずに5位でチェッカー。これがヤマハ勢ではトップの成績となった。
一方のエスパルガロは、好スタートから1周目で10位へポジションアップ。昨年のMoto2チャンピオンはそのポテンシャルを存分に披露し、チームメイトのスミスとバトルを展開しながらさらに順位を上げていった。そして10ラップ目にはロッシをもパス。最終的には6位まで上げて初めてのポイントをゲットした。
NGMフォーワード・レーシングのA・エスパルガロがオープン・カテゴリーでトップ。総合成績でも9位と健闘した。
予選で好位置を獲得していたエスパルガロだが、スタートで出遅れてトップグループについていくことができなかった。走行中はチャタリングの問題に悩まされたこともあり、無理な追い上げをやめて着実に走りきった。これでチャンピオンシップ・ポイントを合計20に伸ばし、ランキング5位につけている。
一方、ホームGPでの好成績を狙っていたチームメイトのC・エドワーズだが、エスパルガロと同様、思うような走りができないまま、残り4ラップでマシンが止まりリタイアを余儀なくされた。ノーポイントに終わったことで、ランキングは14位に後退。NGMフォーワード・レーシングはチームランキング4位となっている。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | M・マルケス | Repsol Honda Team | Honda | 43'33.430 |
2 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | +4.124 |
3 | A・ドビツィオーゾ | Ducati Team | Ducati | +20.976 |
4 | S・ブラドル | LCR Honda MotoGP | Honda | +22.790 |
5 | B・スミス | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | +22.963 |
6 | P・エスパルガロ | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | +26.567 |
7 | A・イアンノーネ | Pramac Racing | Ducati | +28.257 |
8 | V・ロッシ | Movistar Yamaha MotoGP | Yamaha | +45.519 |
9 | A・エスパルガロ | NGM Forward Racing | Yamaha | +47.605 |
10 | J・ロレンソ | Movistar Yamaha MotoGP | Yamaha | +49.111 |
11 | N・ヘイデン | Drive M7 Aspar | Honda | +1'00.735 |
12 | 青山博一 | Drive M7 Aspar | Honda | +1'03.954 |
13 | Y・ヘルナンデス | Energy T.I. Pramac Racing | Ducati | +1'07.333 |
14 | K・アブラハム | Cardion AB Motoracing | Honda | +1'27.972 |
15 | H・バルベラ | Avintia Racing | Avintia | +1'32.376 |
16 | M・ラバティ | Paul Bird Motorsport | PBM | +1'32.543 |
17 | D・ペトルッチ | IodaRacing Project | ART | +1'39.176 |
18 | M・ディ・ミリオ | Avintia Racing | Avintia | +1'51.962 |
LAP CHART
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | M・マルケス | Honda | 50 |
2 | D・ペドロサ | Honda | 36 |
3 | V・ロッシ | Yamaha | 28 |
4 | A・ドビツィオーゾ | Ducati | 27 |
5 | A・エスパルガロ | Yamaha | 20 |
6 | A・イアンノーネ | Ducati | 15 |
9 | B・スミス | Yamaha | 11 |
10 | P・エスパルガロ | Yamaha | 10 |
14 | C・エドワーズ | Yamaha | 7 |
16 | J・ロレンソ | Yamaha | 6 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Honda | 50 |
2 | Yamaha | 31 |
3 | Ducati | 27 |
4 | Forward Yamaha | 20 |
5 | ART | 2 |
6 | AVINTIA | 1 |
7 | PBM | 1 |
COMMENT
モビスター・ヤマハ・MotoGP
V・ロッシ選手談(8位)
「フロントタイヤの右側が完全にだめになった。昨日までにも同じことがあったが、今日ほどひどいのは初めてだった。朝のウォームアップでは調子が上がっていて、ユーズド・タイヤで最後まで走りきることができたから手ごたえはとても良かったんだけれど…。ところが7周か8周でグリップしなくなって、そのあとはラップタイムが3秒も落ちてしまった。目標にしていた表彰台が目の前に近づいてきていただけに悔しいよ」
J・ロレンソ選手談(10位)
「スタートで集中しきれず、大きなミスをおかしてしまった。そのあとは、ただひたすら全力でポジションアップを目指していったが、戦い自体はそこですでに終わってしまっていた…。このような形で大事なレースを、まさに破壊してしまったことを、チームのみんなに謝らなければならない。大変な緊張感を抱えながら非常に厳しい状況のなかで走り続けた。このようなときはミスをおかしやすくなるが、少なくとも転倒せずに走りきることができた。そしてポイントを獲得できたのは良かったと思っている」
M・メレガリ、モビスター・ヤマハ・MotoGP、チーム・ディレクター談
「バレンティーノは、ほんの数ラップでフロントタイヤの右側が完全にだめになってしまった。これまでにも同様のことが起きていたので、それに対処するためのセッティング変更も行っており、今朝のウォームアップでは16ラップ走ってまだ大丈夫そうだったので問題は解決したと考えていた。もともと厳しい展開を覚悟していた今回のレースだが、表彰台に迫りながらも結果的にそれを逃すこととなってしまい非常に残念だ。ホルヘについては、昨日までにどんなにしっかりと準備をしたとしても、予想もつかない出来事がレースには起こりうるということだ。彼が誰にも負けないくらいに頑張っていたことはよくわかっているし、非常にミスの少ないライダーであることも知っている。それでもこのようなことが起こった。残念ではあるが、そのあとはベストを尽くして最後までしっかりと走りきってくれた。今回も懸命に作業を行い、ここまでマシンを作り上げてくれたチームのみんなに感謝している。次のアルゼンチンでは、さらに強くなってリベンジを狙いたい」
モンスター・ヤマハ・テック 3
B・スミス選手談(5位)
「体力的に他のどこよりも厳しいこのコースで、21ラップにわたってこのようなパフォーマンスができたことに満足している。自分自身にハードワークを課し、それを実行できたと思っている。ここはいろいろなタイプのコーナーがあるから、完璧なセッティングは難しい。実際、ひとつのセッティングですべてのコーナーに合わせるのは不可能なんだ。だからどこかで妥協して、そのなかのベストを見つけなければならない。最初の数ラップでアグレッシブに行き過ぎたためブレーキがオーバーヒート気味。フロントタイヤもかなり熱くなっていたので、そのあとの3、4周は無理に攻めるのをやめて一旦クールダウンを図った。その間にポルに抜かれ、バレンティーノも逃げて行くのが見えたので、大きく息を吸って準備を整え、タイヤが安定してきたところで勝負を開始。あのときは、転倒するか、あるいはこのままのポジションか、というような気持ちだったよ。残り12ラップになったところでチャンスがあると確信。それでさらに身体を伏せて全力でブラドルに挑み、あの左―右―左と続くコーナーに到達したところで彼の内側に飛び込んで行った。すごくどきどきして、心拍数は天井を突き抜けるくらい跳ね上がっていたよ。ドビツィオーゾは少し離れていたし、僕は持っているすべてのカードを切って勝負を賭けたが、どうしてもパスしきれなかった。でもヤマハのトップになれたことはとてもうれしいよ」
P・エスパルガロ選手談(6位)
「今日の結果には心底、ハッピー! 6位でMotoGP初完走。しかもヤマハ・ファクトリーの前でゴールできてとても誇らしい気分。上位グループに離されないためには、序盤から全力でプッシュしなければならないことは承知のうえ。でもちょっと頑張りすぎたようで、結局そこから最後まで、自分のリズムをキープすることができなかった。それでも、今シーズン絶好調のブラッドリーと少しの間バトルできたのはうれしかったし、ヤマハ勢2位という結果も、僕らの方向性が間違っていないことの証明になると思う。レースのなかで最大の問題になったのがフロントタイヤ。おそらくヤマハの全員がこのことに悩まされていたと思う。ヤマハとの相性が良くないことは去年からわかっていたことで、僕自身の経験としても体力的に非常に厳しく、マシンがかなり消耗しているのがわかった。さらには左コーナーがたくさんあるため、とくにレース終盤のブレーキングでは肩に少し痛みも出てしまった。チームが素晴らしい仕事をしてくれて、僕も全力で、少しでも早くマシンに慣れて改良していけるように頑張っている。次のレースを楽しみにしている」
H・ポンシャラル、モンスター・ヤマハ・テック 3、チームマネジャー談
「前回のカタールは非常に残念な結果に終わったが、今回はそれとは違う展開になりほっとした。わがチームのふたりのライダーは、強い決意とファイティング・スピリットを持って臨み、本当に素晴らしいレースを見せてくれた。ブラッドリーはMotoGPでのベスト・リザルトを獲得。前回も同じ位置を走っていたので、今回の結果が偶然ではないことを証明できるだろう。彼はこれからも力強いパフォーマンスを見せてくれるに違いない。そして2、3戦のうちにはもっとトップに近づいていることだろう。またポルのほうも本当に素晴らしかった。彼はカタールで肩を骨折して痛みがあったにもかかわらず、体力的に非常に厳しいこのコースを最後まであきらめずに走りきった。しかも終盤も懸命にプッシュし続け、最終ラップではついにイアンノーネを抜いたのだ。ふたりがそろってトップ6に入り、チャンピオンシップ・ポイントを獲ってきてくれた。前回はノーポイントに終わっただけにうれしい結果だ。さらにはヤマハ勢トップに立ち、それによってヤマハのコンストラクターズ・ポイントに貢献できたことを光栄に思っている。我々にはまだ伸びしろがあって、もっと上を目指せると信じている。技術提供を通じて最高のサポートをしてくれているヤマハに、この場を借りて感謝の気持ちを伝えたい。ふたりのライダーは今日も多くを学び、次のアルゼンチンではさらに強くなっていると確信している」
NGMフォーワード・レーシング
A・エスパルガロ選手談(9位)
「朝のウォームアップでも、フロントのチャタリングに悩まされたが、同じことが決勝でも起きてしまった。プッシュすることができなかったので、無理せず守りの態勢で、完走とポイント獲得だけを目指して走り続けた。力を出し切れず悔しい思いをしたが、今日はどうしても攻めることができない状態だったんだ。今は次回のアルゼンチンを楽しみにしている。自信を持って臨める」
C・エドワーズ選手談(DNF)
「ウイーク中ずっと、問題に悩まされてばかりだった。フロントタイヤにもまだ違和感があって、状況をより一層複雑にしていたんだ。残り4ラップのストレートを走行中、インジェクションの燃料圧力に不具合が出てとうとうマシンがストップ。これで僕のレースは終わりになった。これから原因究明を試みる」
津谷晃司、MS開発部 モトGPプロジェクトリーダー談
「カタールに引き続き、残念ながら全く想定外の結果となってしまいました。ホルヘのスタートは信じられないようなアクシデントでレース後は本人も落ち込んでおりましたが、既に気持ちを切り替えて次に進むための話を始めています。バレンティーノはカタール同様にアグレッシブな走りで2戦連続表彰台まであと一歩まできたところで、タイヤを上手く使うための我々の作戦が裏目に出てガッカリさせてしまいましたが、彼もすぐに次戦に向けての前向きな会話を始めてくれており、こんな頼もしいライダー達と一緒に戦えることを改めて光栄に思います。またTech3の両ライダーも素晴らしい走りを見せてくれました。オープンカテゴリーのマシンがその大きなメリットを生かして上位に入ってくる状況下で、不利だと思われるファクトリーオプションのサテライトチームの印象を払拭してくれたと思います。次戦アルゼンチンはモトGP初開催のサーキットですが、現在の課題への対応も確実に進めながら結果が出せるよう、ライダー、チーム、スタッフ一丸となって頑張りますので、引続きご支援・ご声援をよろしくお願いします」