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Resolve「覚悟を決めて、勝ちに行く」

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インタビューは葛藤から始まった。

「正式に1人目のライダーは"中須賀克行でいくよ"と言われた時は、2019年から6年も経って年も重ねて40代に入り、8耐っていうのは年々スプリント化してきてライダーの負荷が増えてるし、ファクトリーとして出るからには勝ちを狙っていく中で今の年齢を迎えて正直衰えも感じてます。同時にそれに抗いながらいろいろやってきて何とかパフォーマンスを発揮できてるけど、じゃあ、8時間の中でそれらを背負ってしっかりパフォーマンスを出せるかなっていう不安もあって、一瞬迷いが生じたのは事実。

だからオファーをもらったから時に、"よっしゃ、やるぞっ"ていう気持ちにはいろんなフェーズ考えるとなれなくて。ヤマハ発動機が中須賀克行っていうライダーに期待していて、期待されているからこそこういうオファーがあったんだなっていうのを考えて、最終的にはその期待に応えなきゃなっていう思いで、強い気持ちを持って"やらせていただきます"っていうふうに答えたのが、最初やったかなと思います」

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もっと若ければね。"よっしゃ、やってやる"ってなる。でも今まで8耐でも勝ってきたからわかるけど、パフォーマンスを最大限発揮しなきゃ獲れないレースなので。そういった意味で、いろいろ考える間はあったかな」

5連覇をかけて挑んだ2019年の鈴鹿8耐、2番手走行後、最後のスティントを終えた中須賀選手がヘロヘロの状態で「もう俺、本当、限界だった。ごめん」とスタッフに言った言葉が思い出される。「ただ参加するだけのレースだったらいいけどトップを獲りにいってるんで、その時の自分の役割はギャップを詰めなきゃいけなかったはずなんですよ。でも、そのターンではできなかった。そういう思いからその言葉が出たんだと思う。みんなも一生懸命ピット作業して、みんなで戦ってるわけだから、絶対に手を緩めるわけにはいかない。それが耐久。だから簡単じゃないし過酷なレースですよね」

これはすべて本心だと思うが、もう一つの本心は「最終的に出られることになってうれしいですよ」でもあった。

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「もう今の段階では"やったるぞ"という気持ちしかない。覚悟は決まってるので。だから、やらなきゃいけないことをしっかり準備をして挑むし、チームとジャックとロカと一緒に大きな目標に向かっていかなきゃいけないなっていう強い気持ちでいます」

今回ヤマハ発動機70周年+レース活動70周年については意識していないと言う。長いライダー人生を過ごす中須賀選手にとっては幾度となく訪れてきた節目は、プロフェッショナルの感覚としてはすべてを通過点と捉えている。「ライダーとしては結局やるべきことは毎年一緒なんで、節目だからこうしなきゃみたいなのってないんですよね、正直。だからナチュラルです。逆にそれをいちいち感じてたら結果なんて残せないし。基本どんな年であろうが一年一年に全力を賭けている。だから、やってやるぞっちゅう気持ちはいつも変わらない」。そしてすべては「純粋に勝つため。チームのため、ファンのため、ヤマハのため、家族のため。勝てばそこに全部つながるわけだから」と澱みなく答える。

そしてチームメイトの話に及ぶ。過去も含めてMotoGPとスーパーバイクを走るビッグネームが今年も揃ったが、吉川和多留監督が期待する通りの役割を自覚している。「本当に各カテゴリーのトップライダーが集まった。基本ライダーってわがままで自己中なので、それをまとめていくためにタイムで示していかなきゃいけない。それが一つの調和になるというか、バランスが崩れると"俺のほうが速いんだからこっちに合わせろ"みたいなことになる。そうした思いがあるとバランスってどんどん崩れていくんで。だから、そこで競争があるんです」

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「競争」という言葉が面白い。「ライダーとしては戦っている。口では言わないけど、勝ったとか負けたとか。ただYARTで参戦した時とか"俺が一番"みたいにこだわり過ぎて、ポカやっちゃった年もあったので。それと、自分は鈴鹿を一番走ってるし、分かってる。タイヤも本数制限もあるので走行機会が少ない彼らに少しでもいい条件で走ってもらってリズムを作らせてあげる。しっかりモチベーションを上げられるような立ち回りをしたいなというふうに思ってます」

一方で強力なチームメイトに対して、「どういうふうにあのR1を走らせるかなっていう勉強になる。一つでも自分の実になるようにしたいなと思ってる。これをきっかけにね」と楽しみにしているのがとにかく中須賀選手らしい。

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中須賀選手の8耐はとにかく話題に絶えない。その詳細はここでは避けるが、中でも一番は「2015年、ファクトリー復活して勝った年ですよね。自分自身も初優勝だし、表彰台から見る景色は今でも鮮明に覚えてる。2回目、3回目、4回目って乗ったけど、一番インパクトに残ってるのは2015年の表彰台からの景色。2015年は結構、厳しかった。もう不安しかなかったし。最初のスティントでは結構走った。28周だったかな。みんな驚いたけど、もう本当に燃料も絞って。走りも(アクセルを)開けないような走らせ方で任務をしっかりこなせたレースでもあった。だからこそ一番かな、噛み合ったよね全部が」

こうした経験から中須賀選手にとって鈴鹿8耐の印象は我慢、我慢、我慢の大会でもある。「燃費、暑さ、タイヤ、セッティング、ポジションをみんな我慢して乗らなきゃいけない。一生懸命ピットワークして、ミスせず8時間。それがあっての優勝だから最高ですよね。だけどやっぱり苦手」とキッパリ。

そしていよいよ鈴鹿8耐が目の前に見えてきた。意気込みを聞くと「6年ぶりにファクトリーとして出るということで、期待しくれている方も多いからこそライダーとしても気が引き締まるし、しっかり準備して、2019年は結果として2位で終わっちゃったけど、たくさんの応援を背にしっかり1位をもぎとれるようチーム一丸、力を合わせて最後まで熱い走りを見せたいと思ってます」と、いつもの全日本と同じ答えが返ってきた。

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そして冒頭の葛藤が嘘だったかのようにあっけらかんと言う。特別なことはしてない?「うん。もう普段から追い込めてるからやってない。普段どおりのことをやるだけで、8耐もそのまま臨めるような状態にある。年齢を重ねてきて量は増やしてるけどね。これプロとして当たり前なんで」

大ベテランはいつでも頼もしい。きっと鈴鹿8耐の優勝をかさっらってくれることだろう。

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