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EWC最速から、最強のチャンピオンを目指して

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YAMALUBE YART YAMAHA EWC Official Team(YART)はマンディ・カインツ監督の元、ファミリーのように強い絆で結ばれたスタッフ、そしてファミリーの一員として優秀なタレントを揃え、2023年にチャンピオン、2024年にランキング2位を獲得。世界耐久選手権(EWC)の数あるチームの中でも、圧倒的なスピードと多くの経験を兼ね備えたトップチームとして君臨している。

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鈴鹿8耐においてもYARTの存在感は年々増していった。特にYZF-R1がフルモデルチェンジを果たした2015年からの5年間、YAMAHA FACTORY RACING TEAMとともにトップチームの一翼を担って参戦。新型コロナウィルス感染症が猛威を奮った2020-2021年を挟んで、2022年からは活動を休止したファクトリーの代わりヤマハのトップチームとして、2024年には8耐史上過去最高となる220周を走破して2位とし初の表彰台に登壇した。

そして2025年は、開幕戦のル・マン24時間で優勝、スパ8時間で3位とランキングトップ(ランキング2位に18ポイント差)に立っており、YART は「EWC最速」の名をほしいままにしている。

6月中旬、鈴鹿8耐に向けて来日したYARTのマンディ・カインツ監督とライダーたちは、充実感と自信みなぎる表情を湛えていた。

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「毎年楽しみにしているよ。最高のレースだからね」。ゆっくりと話を始めたのはチームのボス、マンディ監督だ。鈴鹿8耐を控え、今シーズンの戦いについて触れる。「今のところ、ほぼ完璧な流れできている。あらゆる天候に見舞われたけどル・マンで勝ち、スパでは6戦連続で表彰台に立った。これはチーム史上初の快挙。昨年の開幕戦、ル・マンからすべてのレースで表彰台に上がっているんだ。これは簡単なことではないし、他のどのチームも成し遂げていないからね」。耐久レースにつきもののトラブルを乗り越え、強力なライバルたちと競うあう中で勝ち取ったこのとんでもない成績こそが、チームにとっての誇りであり、揺るぎない自信を築いてきたのだ。

「以前から僕の役割は変わらない」と話すのは、ニッコロ・カネパ氏の引退を受けてチームを牽引しているマービン・フリッツ選手だ。「毎年、相手もどんどん強くなっている。でも僕個人はスパのコースレコードを更新したり、チームとしてもとても速いペースでレースを走れている。(昨年の鈴鹿8耐でポールポジションを獲得したのもマービン選手)バイク、ライダー、全体のポテンシャルが向上している証拠なんだ」

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そして昨年の2月に婚約したマービン選手は、「今年の9月に結婚式を挙げる予定だよ。素晴らしい関係を築けていて、これ以上の人はいないんだ。最高のチームメイトに、最高の婚約者が加わって最高のサポートをしてくれる。彼女はレースをよく知っているしね。カレルの姉であり、二人のお父さんはレーサーだったし、血管にガソリン流れていると思うよ(笑)。そのおかげで僕はもっと速く走れるんだ」と、プライベートも順調であり、32歳という年齢とともに油が乗り、どの言葉も力強く、一挙手一投足から自信が溢れている。

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チームの最年少のカレル選手は、常に言動も走りも安定しており、あまり感情を表に出すタイプではないが、うちに秘めた闘志は熱い。「ニッコロはこのEWCの中で最も強く速いライダーだった。以前と違う服を着ているのには慣れないけど、本人も会場に会いに来てくれる。でもやっぱり彼がいなくなって本当に寂しいんだ。彼の代わりには誰もなれないけど、僕とマービンはニッコロのレベルになりたいと思っているし、僕たちは頑張り続けることが大事なんだ」と、カネパ氏が抜けチームの状況が変わったことで、カレル選手自身は前向きな変化を見せている。

こうしたチームの前向きな姿勢は、新しいチームメイト、ジェイソン・オハロラン選手がチームにフィットしたことも大きな要因になっている。マンディ監督は「ニッコロはヤマハのロードレース部門のマネージャーに就任し、チームを離れることになった。新しいライダーを迎えるにあたり多くの選択肢があったが、最終的にニッコロが自ら後任を選ぶ決断をした。経験豊富なライダー、特に過酷な耐久レースを乗り切ることができるライダーが必要だった。だから自分の抜けた穴を埋めるのは彼にとって大変な仕事になった。そして彼の選択は正しかったと思う、ジェイソンはここまで素晴らしいパフォーマンスを見せているからね」

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ジェイソン選手がチームに合流したのは昨年のYARTクリスマスパーティだった。オーストリアのワークショップで顔を合わせ、2月にはバレンシアでのテストで本格的にチームに合流している。「僕にとって、BSBのスプリントからEWCに移ったのは大きな変化だった。特にスプリントはバイクもチームも全部自分一人のためだけど、EWCではバイクを共有する。これは大きな違い。それに、耐久レースならではの多くのことを覚えなきゃいけないんだ」

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こう話したジェイソン選手はすでに耐久レースの洗礼を浴びている。「ル・マンでは夜のウェットをドライタイヤで走り、ウェットタイヤでドライのサーキットを走った。スパでは雨でダブルスティントもしたし、大きな転倒も経験した。スプリントであれば転倒でレースは終わりとなる。ところがチームは決して諦めることはなかった。そして優勝と3位という信じられない結末を経験したんだ」と、マービン選手とカレル選手、チームに大きな信頼を持ち、本人も「これ以上のスムーズな移行はない」と話すほどチームに溶け込み、確実な戦力となったのだ。

そして迎える鈴鹿8耐は彼らにとっては、3回目のチャンピオン獲得に向けて重要な一戦。EWCのライバルよりも多くのポイント獲得が最優先になるが、今年、YARTが強く意識するチームがまた一つ増えた。それが「YAMAHA RACING TEAM」であり、YAMAHA vs YAMAHAは、今大会の大きな見どころの一つになる。

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「もちろん勝ちにいく。2位を取りにきたわけじゃない」とマービン選手。「昨年より難しい。暑さも大変だけど、とにかくライバルが強い。Trickstar、SERT、FCC、BMWというレギュラーチームも強力だし、EWCでは走らないHRC、BMW、Ducatiと強いライバルが加わった。そしてヤマハファクトリー#21にも勝ちたい」

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「YRTにはMotoGPライダー、WSBKのライダーがいるが、鈴鹿を知っているのは中須賀さんだけ。僕たちはブリヂストンの経験が多く、YRTの二人は経験が少ない。彼らは圧倒的なスピードはあるが、僕たちには経験もスピードもあるのでどうなるかわからないけど、一番大事なのは僕たちとYRTが力を合わせヤマハがトップでフィニッシュすることだ(カレル)」

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2回目の8耐となるジェイソンは「僕にとって鈴鹿8耐は、昔から好成績を獲りたいレースの一つ。8耐の表彰台に立てたら僕のキャリアの中で大事なリザルトになると思う。まあ、すべてのレースで表彰台を狙っているけど、このレースはかなり難しい。トップライダー、トップチームがいて、とてもタフなレース。コンデイションもタフだしね。僕が長年見てきたレースで走ったことは1回しかないけど、本当にいい成績を残したい」

「何回も勝っている#21が復活し、ライバルもとても強いのでタフなレースになる。その中で目標は二つ。一番は表彰台にもう一度立つこと。2番目はEWCのランキングでギャップを広げること。もちろん、ヤマハの仲間に勝つことはターゲットになる。昨年、MotoGPライダーのザルコが来たときも私たちは恐れなかった。私たちが勝てることを証明する必要はある。ポールポジションを獲れたし誰を相手にしても恐れることはない。そして今年はすべてを賭けるようなリスクは取らず、良いレースをすることに集中する(マンディ)」

YRTを筆頭とするライバルたちと対峙することとなるYARTだが、前のめりになる状況でも「以前は表彰台に上がるために常にリスクをとり続けてきた。でも今年は、すでに表彰台を手にしているのでこれまでと比べてプレッシャーが少なく余裕がある(マンディ)」と冷静である。おそらく戦況によって優勝を、表彰台を目指すこともあれば、ポイントゲットに切り替えるなど、さまざまな戦いができる。

EWC最速チームは、この鈴鹿8耐でワンランクアップとなるEWC最強を目指しているのだ。

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