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「YZF-R1」レース車両開発プロジェクトリーダーインタビュー Vol.2

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2019年以降のYZF-R1の開発状況や、新しく採用したウィングレット、鈴鹿8耐に向けた準備状況や目標について「YZF-R1」レース車両開発プロジェクトリーダーである福島造にインタビューを行いました。

ブレイクスルーをもたらす「ウィングレット」

進化を加速する魔法のようなアイテムはないということでしたが、新型のYZF-R1には、MotoGPの「YZR-M1」からの技術フィードバックとして、新たに「ウィングレット」を追加しました。

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これについて、福島PLは、「1,000ccのエンジンには有り余るパワーがあり、簡単にフロントが浮いてしまいます。それを制御によってコントロールしているのですが、実際は制御でエンジンパワーを落としてウィリーしないようにしています。そこでウィングレットをつけることによって空気でフロント(ウィリー)を強制的に押さえて制御を少なくして加速性能を向上。コーナー進入時にバイクを倒しこんでいく際も同様に空気でフロントを押さえることができ、接地感の向上にもつながっています。

実はこのウィングレット、JSBだけでなく、スーパーバイクや世界耐久といったプロダクションレースでも使用していますが、市販の状態から変更ができないため、すべて同じ形状と取り付け位置になっています。すなわち、中須賀選手をはじめ、A・ロカテッリ選手やJ・レイ選手、YART(Yamalube YART Yamaha EWC Official Team)も同じウィングレットを使用しているのです。だからこそ、形状を決める際により慎重を期す必要があり、その開発には中須賀選手が加わり、メリット・デメリットを考慮した上で、ベストな形状と取り付け位置を決めています」

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中須賀選手は「YZR-M1のウィングレットの開発には初期段階から携わってきました。R1用には数種類の形状がありましたが、M1での経験・知見があったことから、割とすんなり今の仕様に決まりました。もっとウィリーを押さえることができる仕様もありましたが、ウィリーだけでなく、コーナーでの安定性向上など、すべての項目をバランスよく向上させる形状と取り付け位置を目指し、現在のものになっています。

併せて、大きなウィングを取り付けることの抵抗によりトップスピードは落ちる方向になりますが、従来からロスもなく、トップスピードへの到達速度も十分で、ベースからのポテンシャルアップにつながっています」と、話してくれました。

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当然、R1はレースだけで使用する訳ではありません。サーキットでのメリットを出しながら、公道で使用した時に過剰に効きすぎることがないバランスを作り込む必要があります。先ほどウィングレットはフロントの接地感を増やしてくれるとありましたが、過剰に効いてしまうと、フロントを押さえつけすぎて前後バランスが崩れたり、タイヤが潰れすぎることで切り返しが重くなってしまうなどのデメリットもあるので、公道におけるいろんな走行環境を考慮してバランスをとり、その上でレースにおけるメリットも創出しています。

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