ニッコロ・カネパ :YARTはチャレンジが大好きなチーム、昨年の王者に勝って表彰台を目指す!
まずは、昨年のタイトル獲得について話したいと思います。自分の中で、最も感動したタイトルになりました。初めてEWCのタイトルを獲ったのは2017年。その時は多くのレースで優勝したので、正直、楽なシーズンでした。その後は、レースでは最速なのに、運の悪さもあってなかなかタイトルを獲れず、何かに呪われているような気分でした(笑)。
今年から#1をつけていますが、これを背負うプレッシャーは大きいです。でも実は2023年の"勝たなきゃいけない"という方が、僕たちにとってはもっと大きなプレッシャーでした。ずっと運が悪かったので、常に何かが起きるかもしれない... という不安を抱えたまま走ることが本当に大変だったのです。
だから2023年のタイトルは、長年頑張ってきたチーム全員にとって最高の瞬間となりましたが、正直、"やっと獲れた!"という安心感の方が強かったですね。同時に、僕の中では過去最高のタイトルであると断言できます!
今年の開幕戦、ル・マンでは、アクシデント(カレルの転倒)がありましたが、チャンピオンを獲ったという安心感と余裕を持って臨めていたこともあり、チームでうまく対処し3位表彰台。優勝できなかったのは残念でしたが、素晴らしい内容・結果だと思っています。ずっとトップを走っていたし、僕らの速さを証明できたからです。さらにスパでは、その強さをもう一度みんなで再現できました。
スパで僕は、とても大事なスタートと最後のスティントを担いました。最初のスティントでリードを奪いたかったのですが、メインストレート、第1セクターではライバルに負けていると感じていたので、逃げるのは難しいと思っていました。それで、スタートからよりアグレッシブな走りをすることに切り替えたのです。
バイクのエンジンがすぐにかかってくれて、1周目からからリズムを掴みライバルに対して約10秒のアドバンテージを築きました。その後、チームメイトも同等の速さで最後まで走ってくれたのですが、最後のステイントは簡単ではありませんでした。というのも、2番手との差がそこまで大きくなく、さらに僕たちはピットストップが多く、かなりプッシュしなきゃいけなかったのです。ピットストップを終えるとその差は約30秒でしたが、最後の15分は純粋に楽しめました。チェッカー受けた瞬間は全チームが拍手で迎えてくれ、感動的でしたね。
同時にこの勝利は、僕たちにより大きな自信を与えてくれました。鈴鹿で、最終戦のボルドールでいい成績が獲れる、もう一度、世界チャンピオンになれるという自信になったのです。
鈴鹿8耐は、EWCのレギューラーチーム以外のチームがたくさん参戦し、毎年難しいレースになります。彼らはこの鈴鹿8耐に集中して準備を進めているため、僕たちこそがチャレンジャーなのです。それに、シーズンは4大会しかなく、どのレースも重要で一つの失敗も許されません。1度の失敗がタイトルを失うことになるからです。本当は、リスクをとってでもトップに立ちたいのですが、タイトルが最優先なのでバランスをうまくとらないといけません。だから堅実な鈴鹿での目標を言えば、EWCレギュラーチームに勝つこととなります。
でも今年は、ディフェンディングチャンピオンとして#1を背負っている以上、もっとリスクを取ることも必要だと思っています。強いて言うなら、昨年の勝者に勝ちたいのです。それは表彰台に立つことを意味しますが、多くの人が"無理・不可能だ"と言うかもしれません。でもYARTはチャレンジが大好きなチームだし、不可能はないと思っています。
僕はEWCのすべてのレースで表彰台に立ったことがありますが、その中でも鈴鹿の表彰台は格別で、僕にとっては特別でした。毎年、表彰台を逃しているけど、僕たちには熟成された素晴らしいパッケージあるし、もうアンラッキーもないはずなので、今年は表彰台に立って、思い出をアップデートできればと思っています。
個人的には、3月のデイトナで肩を怪我してしまい、今は力があまり入らなくて、ずっと痛みを感じているけど、僕はファイターなんで大丈夫。本当は手術が必要ということもわかっていますが、それはシーズン終わってから。今シーズンは鈴鹿で表彰台に立ち、もう一回、世界チャンピオンになりたいので!
最後にいつも僕たちにとても親切にしてくれるヤマハファン、レースファン全員に感謝しています。そして今年は、ぜひ会場でブルーの服を着て、僕たちを応援して欲しいと思います。鈴鹿で会いましょう!