YARTは全員が2分5秒台をマーク、充実のテストで本番に向け準備万端
"コカ・コーラ"鈴鹿8時間耐久ロードレース 第45回大会に向けた合同テスト2日目、天候は曇りとなり、快晴だった昨日より過ごしやすい気候となったこともあり、昨日からタイムアップが図られた。#1 YAMALUBE YART YAMAHA EWC Official Team(YART)も例外なく、この日はロングラップを交えながら、予選を想定したタイムアタックも行い、昨日のベストタイムを更新しテストを締め括った。
2日目は、まずセッション5が9時30分から、セッション6が14時から設定され、ともにロングラップも可能な80分という比較的長い時間で行われた。セッション5では、ニュータイヤを装着したニッコロ・カネパとマービン・フリッツが出走。ライバルにプレッシャーをかけるかのように、序盤からアタックを行い両者とも3周連続で2分6秒台をマーク。そのタイムも初日にカネパがマークしたベストタイム2分6秒381を上回る、2分6秒137と、2分6秒198をマークした。
鈴鹿8耐は決して一発のタイムを重要としないが、Ducati team KAGAYAMA、Yoshimura SERT Motul、Team HRCという、ライバルたちを抑えてワンツーフィニッシュ。さらにアベレージも7秒台をコンスタントに刻む好調ぶりで、仕上がりの高さをライバルたちに示した。
続くセッション6では、Ducati team KAGAYAMAが、本テストでの最速となる2分5秒162をマークした。これに対してYARTはセッションのほとんどでロングランを進めたが、最後にフレッシュなタイヤを投入しそれぞれがタイムアタックを実施。ライバルのタイムには届かなかったものの3名ともに5秒6〜7をマーク。昨年の予選に匹敵するタイムを確認し、大きな手応えとともに2日間のテストを終えることとなった。
#15 IRF with AZURLANEは、あくまでもタイムアップではなく、鈴鹿8耐本番を見据えた、ロングランを重ねながら継続してサスペンションのセッティングを中心にテストを重ねていた。昨年に続き2回目の出場となる遠藤晃慶が、車両実験という業務で培った能力を活用し、3名が8時間をより快適に速く走るためのセットアップに取り組んだ。これを初出場となる高居京平とベテランの宮腰武の2名が確認していく作業を続けた。幸いに3名とも好みの方向性が近いこともあり、理想のセッティングへ大きく前進させることができた。
その一方で、この2日間で2つの大きなトラブルが発生。その対応に追われたことから、予定していた予選に向けたセットアップの確認と、実際のタイムアタックができなかった。これは、本番直前の合同テストで実施する予定なっている。なお、この日の最速タイムは2分15秒565で、2日目の総合結果では69番手となった。
鈴鹿8耐は、7月17日(水)に2回目の合同テストが実施された後、18日を挟んで、19日(金)から予選、20日(土)にTOP10 トライアルを経て21日(日)の11時30分にレースがスタートする。
#1 YAMALUBE YART YAMAHA EWC Official Team
カレル・ハニカ選手談
「今日は、ライディングポジションやサスペンション、電子制御について調整を行い、昨日からさらにポジティブな結果が得られました。ライダーとしてもチームメイト同士で互いに引っ張り合うなど助け合って、総合的にいいテストになりました。課題はありますが細かい部分のみだし、ライダーはみんな速いから大きな問題ではありません。そしてライバルは強力ですが、僕たちはロングランでも十分に戦えることを確認できました。特にいろんなタイプのタイヤを試しましたが、スティントの終盤までワークすることも確認でき、このテストでやるべきことはやり切った感じで、ウィークに向けて準備は万端です。でも、まだ改善できる部分が残っています。残り1ヵ月は、いつもと同じように過ごすだけ。鈴鹿8耐の本番はとても暑いですが、僕が住んでいるところも暑くなってきたので、その中で有酸素運動を中心に行って準備します」
ニッコロ・カネパ選手談
「昨日はびっくりするくらい何もかもが順調だったので、今日はやることが多くはありませでした。それでも、少しだけポジションやサスペンション、電子制御について調整し、改善することができました。他のチームと比べても、僕たちはこの2日間でいい仕事ができたと思います。 今日は予選のような好タイムを目指していたわけではなくレースペースの向上を目指しており、ロングランでは素晴らしいペースでした。最後にニュータイヤを履いてタイムアタックを行ったのですが、3名ともかなり近いラップタイムでした。3名が同じ力を持つことはチームの目標なので、かなり満足です。ここから鈴鹿までの期間は、トレーニングもしますが、痛めた肩の回復に努めます。スパを終えスーパーバイクのテストもあり肩には負荷をかけたので、治療をしながらしっかり休ませて回復を目指します」
マービン・フリッツ選手談
「今日は、ライディングポジションや電子制御、そしてサスについてはフロントを中心にセットアップしました。このほか、ロングランを行って燃費を確認し、最後にタイムアタックを行いました。タイムアタックでは2分5秒6という自己ベストをマークできました。まだ、若干の改善はありますが、満足しています。今日はライバルたちもいいタイムを出しましたが、僕たちにはまだ余力があるので、あまり心配はしていません。最後のロングランでは前にザルコ選手が走っていて、十分についていくことができたし学ぶこともありました。トータルで見ると、決勝に向けて自信をつけることができました。残り1ヵ月は、いつもよりレベルアップしたトレーニングを行う予定です」
マンディ・カインツ監督談
「ミスもトラブルもなく今回のテストはとても素晴らしかったのですが、実際のウィークも今回と同じようにノントラブルだったら最高ですね。バイク、タイヤ、ライダー、メカニック全部が完璧に仕事をしてくれましたが、完璧すぎて怖いくらいです。僕たちはレースペースだけを追い求めていますが、ラップタイムは昨年より1秒程度よくなっています。同時にライダー3名がほぼ同じタイムであることもいいことです。このテストを通じてライダーはさらに自信をつけたのではないでしょうか。数週間後もまったく同じことをすればいい結果になるはずです。約1か月後にレースが始まりますが、準備は万端ですが、まずはニッコロの怪我の回復を祈ります」
#15 IRF with AZURLANE
遠藤晃慶選手談
「高居選手と自分は似たセッティングを好み、宮腰選手も近い好みで、かつ幅広く乗れるタイプのため、みんなんで細かく擦り合わせながら、順調にセッティングを進めることができ、この時点でいいバランスのことまで持ってくることができました。僕自身は8耐トライアウトで転倒があり、そこからペースを上げられずにいるので、速さを取り戻しつつ安定したラップタイムを刻むことを念頭に参加しました。今日のロングランでは、昨年のアベレージより1秒速く走れることができ、あとは決勝に向けて身体を作っていけば、もう少し楽に走れるかなと思います。本番に向けては、個人的な目標として予選は10秒台、決勝では初出場の昨年とは異なり、考える余裕もあるので、どんな状況でも自分のペースを崩すことなく走り切ることです。これが、チームの目標であるノントラブル完走につながると信じています」
高居京平選手談
「私が今回初めての鈴鹿8耐ということで、前回は慣れを重視したロングランをしてきました。そして今回は決勝のセッティングを決め、そのバイクに予選用のタイヤを入れた時に状態を確認したかったのですが、トラブルによってそこまではできませんでした。個人としては全日本に参戦したことがなく突然の世界選手権ということで、様々なレベルのライダーが混走し、速いライダーに抜かれていくこととなりますが、その中でいかに自分にペースをキープしていくかに焦点を当てて取り組みました。また今回トラブルがありましたが、トラブルを起こさない準備、トラブルが起きた時の準備が甘かったという反省がありました。チームとしてノントラブル完走を目標に掲げている限りは、準備についても意識を高くもつ機会にもなりました。残り約1ヵ月、しっかり準備してウィークを迎えたいと思います」
宮腰武選手談
「バイクは曲がりにくいセットでスタートして、遠藤選手の頑張りもあり徐々に改善が見えてきて、みんなが乗りやすい仕様へと進んでいます。現在は8割ぐらいまできているので、もう一歩の状況です。また、経験があるのですが、1年のブランクがあり、普段自分が乗っている車両と年式が違うことから慣れるためにも、予定では今回、ロングランをする予定でしたが、それができずに不安の残る状況で、本番を迎えることとなってしまいました。本番に向けては、今回の高いレベルの若いライダーが揃ったので、とても大きな刺激をもらって成長できているし、ノントラブル完走を成し遂げ、過去最高の達成感を得られればと思います」