ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.11 8月16日 チェコ
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第11戦チェコGP
■開催日:2009年8月16日(日)決勝
■開催地:チェコ共和国/ブルノ(5.403km)
■観客:138,096人
■周回数:22周(118.866 km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:29度 ■路面温度:45度
■PP:V・ロッシ(ヤマハ/1分56秒145)
■FL:J・ロレンソ(ヤマハ/1分56秒670)
REPORT
ロッシが今季5勝目を飾る
フィアット・ヤマハ・チームのV・ロッシが優勝。チームメイトのJ・ロレンソは首位走行中の18周目に転倒しリタイヤした。モンスター・ヤマハ・テック3のC・エドワーズは7位、J・トーズランドは9位だった。
ポールポジション発進のロッシは、ホールショットこそD・ペドロサ(ホンダ)に譲るが、オープニングラップ序盤で首位に立つ好スタート。しばらくはロッシ、ペドロサ、ロレンソの3台がトップ集団を形成し後続を引き離していく展開。4周目、ロレンソがペドロサを抜いて2番手に上がり、ロッシとロレンソの2人は更にリードを拡大。中盤に入るとペドロサがやや後退、ロッシとロレンソの2人がテール・トゥー・ノーズでレースをリード。
とくに10周目以後は、2人は申し合わせたかのようにファステストラップを互いに更新する果敢な走りを見せる。1分56秒670のファステストラップを16周目に叩き出したロレンソは、その勢いのまま次周の第3コーナーでロッシのインをさしてトップに浮上。ロレンソ、ロッシの順番となるが、しかし次の18周目の同コーナーでロレンソは転倒してアウト側に弾きだされる。すぐ直後につけていたロッシは、僅かにイン側のラインを取っていたため巻き込まれることなく、トップに再浮上。この段階で既に後続とは約15秒の差をつけており、ロッシはその後1分58秒台に少しペースを落としながらも独走。最終ラップではラップ中にウイリーするパフォーマンスを見せつつトップでゴールした。ロッシはこれで、GP初優勝からほぼ13年で自己通算102勝目を挙げた。また表彰台獲得回数では160回目となり、G・アゴスティーニの記録を抜いてトップに立った。
グリッド2列目からスタートしたエドワーズは、6位入賞を目指して順調に走行。前方ではT・エリアス(ホンダ)、A・ドビツィオーゾ(ホンダ)、L・カピロッシ(スズキ)らが4位争いを展開しておりこれを追っていたが、やがて離され後方のN・ヘイデン(ドゥカティ)とのバトルへと変化した。体調が依然、万全でないなかでエドワーズは懸命に力を尽くし18ラップまでヘイデンを抑えていたが、ついには先行を許して7位に後退。今季5度目の6位以内を目指して終盤で逆転を狙ったが、わずかに届かずコンマ1秒差で7位となった。一方のトーズランドは、予選グリッド14位の位置から好スタートを切って1周目に2台をパス。フロントの問題を克服して自信を得て、その後も安定したペースで走りきって9位を獲得した。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | V・ロッシ | Fiat Yamaha Team | Yamaha | 43'08.991 |
2 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | 11.766 |
3 | T・エリアス | San Carlo Honda Gresini | Honda | 20.756 |
4 | A・ドビツィオーゾ | Repsol Honda Team | Honda | 21.418 |
5 | L・カピロッシ | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 21.538 |
6 | N・ヘイデン | Ducati Marlboro Team | Ducati | 25.544 |
7 | C・エドワーズ | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | 25.676 |
8 | A・デ・アンジェリス | San Carlo Honda Gresini | Honda | 34.109 |
9 | J・トーズランド | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | 35.617 |
10 | R・ド・ピュニエ | LCR Honda MotoGP | Honda | 39.824 |
11 | C・バーミューレン | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 40.776 |
12 | N・カネパ | Pramac Racing | Ducati | 50.661 |
13 | G・タルマクシ | Scot Racing Team MotoGP | Honda | 59.188 |
LAP CHART
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | V・ロッシ | Yamaha | 212 |
2 | J・ロレンソ | Yamaha | 162 |
3 | C・スト―ナー | Ducati | 150 |
4 | D・ペドロサ | Honda | 135 |
5 | C・エドワーズ | Yamaha | 112 |
6 | A・ドビツィオーゾ | Honda | 107 |
13 | J・トーズランド | Yamaha | 62 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Yamaha | 255 |
2 | Honda | 184 |
3 | Ducati | 166 |
4 | Suzuki | 100 |
5 | Kawasaki | 79 |
COMMENT
V・ロッシ選手談(優勝)
「非常に重要な意味のある優勝だよ!ホルヘはウイークを通じて強さを見せつけていた。僕のほうはウォームアップのあとも完璧な状態ではなかったので、フロントのフィーリングを向上させるためにちょっとしたモディファイを行って、それが大成功だった。スタートもうまくいって、そのあとは思い通りにベストラインをとり、まったく思い通りに乗ることができたよ。終盤になってホルヘに抜かれ、いよいよ戦いが始まったと思っていたら、彼はミスをしてしまった。
彼にとってはとても残念なことなんだけれど、僕のチャンピオンシップでのリードが50ポイントに拡大したことになる。でもこれからも彼は最大のライバルになるだろうから、ここで気を抜くわけにはいかないよ。また表彰台獲得回数でトップに立つことができたことは誇りに思っている。とくに13年前に初優勝を果たしたここブルノで、それが実現できたのは感慨深いね。いいレースだった。ヤマハとチームに感謝している」
D・ブリビオ、チーム監督談
「今回もふたりの終盤でのバトルを期待していたので、ホルヘの転倒は非常に残念。今日のバレンティーノはまるで魔術師。ヤマハのマシンが最高だということを確かに証明した。またチームのみんなの頑張りにも感謝。彼らのおかげでバレンティーノは気分よく走ることができたのだ。シリーズポイントでは50ポイントのリードを築くことができたわけだが、ホルヘは必ずリベンジをねらってくるから気を抜くわけにはいかない。次はアメリカ。ヤマハ・モーターUSのスタッフに再会するのを楽しみにしている。そして今日のこのリズムをそのままキープしていけるよう期待している。明日はマシンテストを行う予定で、2010年型マシンの開発もスタートする予定。バレンティーノに新型シャシーと新型エンジンを試してもらう」
J・ロレンソ選手談(リタイヤ)
「スタートが悪かったので、そこから挽回しなければならなかったし、ペースも今までのようには速くなかった。プラクティスのときよりペースが上がらないなんて、こんなことになるとは予想もしていなかったんだ。その一方でバレンティーノのほうは絶好調。ついて行くためには本当に懸命にプッシュしなければならなかったよ。それでも終盤になって差を縮めて、ついにはパスすることができたんだけど、そのあとすぐにミスをしてしまい転倒した。今、言えることはチームとヤマハに申し訳ない、ということだけ。そして次のアメリカできっとこの借りを返す」
D・ロマニョーリ、チーム監督談
「プラクティスがあれほど順調で、決勝も大いに期待していただけに今日のことは本当に残念だった。ホルヘの今日の目標は、もちろん、シリーズポイントの差を縮めるためにバレンティーノにくらいついていくことだった。そしてそのとおりに彼をパスしたが、そのあと差を広げていくことができずに、逆に後ろからプレッシャーをかけられる形になってしまった。結果的にホルヘはミスをして転倒したわけだが、このことはホルヘにとって、とてもいい教訓になったと思う。ここから学び、また素晴らしい走りを見せてくれると信じている。明日はテストを行い、次のインディアナポリスはベストの状態で臨みたい」
C・エドワーズ選手談(7位)
「非常にタフなレースだったよ。ウイークの初日から話していたように、エンジンが少しフラットな感じで、今日も自分ではどうすることもできなかった。後ろからきたマシンには簡単に抜かれてしまうし、スリップストリームにつくことも全くできなかった。ただラップタイムを上げるということならできるんだけど、レースにならないんだ。ブレーキングで詰め、コーナーでのスピードを上げるようにしていたので、コーナー立ち上がりでは前のマシンに迫ることができる。でもストレートエンドではマシン10台分くらいの差ができてしまうという状態だったんだ。
序盤はトニ、アンドレア、ロリスに離されたが、フロントをハードにプッシュして頑張ったら何とか追いつくことができた。でもそのせいでフロントタイヤの右側が熱くなり過ぎて、フロントが不安定になってしまっていた。コーナー途中では前のマシンにぶつかってしまいそうになったほどだ。終盤はニッキーとのバトルになったが、結局はパスすることができず7位に留まった。ポイントを獲得することができたし、トップ6まであと少し。でもいつも彼らには勝ってきたのだし、今日は表彰台を狙っていただけに残念。次はまた、母国のアメリカへ戻るので、いいレースができるよう頑張りたい」
J・トーズランド選手談(9位)
「厳しいウイークだったよ。正直に言えば、トップ10に入れたことは運が良かった。毎ラップ、ベストを尽くし、決してあきらめるようなことはしなかったけれど、前半はフロント周りに問題がありかなり難しい状態。フロントが飛び跳ねるような感じがあって、コーナーでのスピードが上げられなかった。でも後半になると、なぜかフィーリングが良くなった。走っている間に、まるで誰かがマシンを少し調整してくれたように、急に調子が良くなったんだ。そして20ラップ目には、予選タイムにコンマ1秒差と迫る58秒4が出たのだから、どれだけフィーリングが向上したかがわかるだろう。でもレース前半での遅れは大きすぎた。後半のペースならトップ6も可能だったはずなんだけれど...。このフロントの問題を解決することができれば、もっと上位を目指せるに違いない。そこが本来、モンスター・ヤマハ・テック3がいるべき場所なんだけれど...」
H・ポンシャラル、チーム監督談
「このような厳しいレースのなかで、コーリンとジェームスがふたり揃って10位以内に入ったのだから文句はない。でもコーリンのほうはウイークを通して好調だっただけに、少し残念だ。病気をして、まだ完全に良くなっていないというのに、とてもよく頑張ってくれたと思う。ジェームスのほうは、プラクティスよりもずっと良くなった。とくにレース後半の走りには満足している。今はまだいくつかの問題があり、うまくいかないところもあるが、それが解決できれば成績もかなり上がってくるだろう。次はコーリンのホームGPとなるインディアナポリス。コーリンだけでなくヤマハ、スポンサーのモンスターにとっても非常に重要なレースだ。だから今度はトップ5を目指していく。バレンティーノの圧倒的勝利を祝福する。ヤマハの強さがまた証明されたというわけだ。バレンティーノとホルヘのタイトル争いを誰もが楽しみにしているので、今日のホルヘの転倒は残念だった」
中島雅彦談(技術開発部MotoGPグループリーダー)
「まずは今季5勝目をあげたバレンティーノにおめでとうと言いたいです。一方、終盤まで素晴らしい走りで、バレンティーノとの一騎討ちを披露してくれたホルヘは、予選から好調を維持していただけに、本当に残念としか言いようがありませんが、このレースで学んだ事も多かったので、気持ちを切り替えて次に繋げてもらいたいです。
我々にとっては、今回から新しいレギュレーションでエンジンの使用台数が制限される為、パフォーマンスと信頼性のバランスを考えながら、2台のマシンの運用管理には気を使いましたが、緒戦を終えて課題も見えてきました。これから終盤に掛けて、ミスがないように更に気を引き締めるとともに、技術面でも性能、パフォーマンスを含めて、来年を見据えた挑戦を継続して行きます」