ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.09 7月19日 ドイツ
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第9戦ドイツGP
■開催日:2009年7月19日(日)決勝結果
■開催地:ドイツ/ザクセンリンク(3.671km)
■観客:46,679人
■周回数:30周(110.13km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:19度 ■路面温度:27度
■PP:V・ロッシ(ヤマハ/1分32秒520)
■FL:D・ペドロサ(ホンダ/1分22秒126)
REPORT
フィアット・ヤマハ・チーム、今季4度目のワンツー!
フィアット・ヤマハ・チームのV・ロッシとJ・ロレンソが最終ラップまで激しい優勝争いを展開。第6戦カタルニアGPと同様、最終的にはロッシが振りきり優勝したが、ロレンソも最後まで懸命に攻め続けて0.099秒の僅差でチェッカーを受けた。ロッシはこれで自己通算101回目の優勝。同時にアゴスティーニの記録に並ぶ159回目の表彰台獲得となった。
ロッシはポールポジションから絶好のスタート。一方のロレンソは出遅れて6位まで順位を下げてしまった。しかしすぐにひとつ挽回し、さらにR・ド・ピュニエ(ホンダ)が転倒したため4位まで上がって1周目を終了。A・ドビツィオーゾ(ホンダ)と何度か順位を入れ替えるバトルを展開したあと4番手を確保し、この時点でロッシ、C・ストーナー(ドゥカティ)、D・ペドロサ(ホンダ)、そしてロレンソというランキング上位の4人が激しいトップ争いを繰り広げることとなった。
7周目、ロッシはストーナーにトップを譲り、その状態が10ラップほど続いたが、この間、トップから3位のロレンソまではほとんど差がない状態。18周目になって、ロッシは最後からふたつ目のコーナー進入でストーナーをとらえて再びトップに浮上。ロレンソもストレートでストーナーをパスして2位に上がり、ヤマハの1-2体制ができ上がった。2台はここから一気に加速して後続を引き離し、その後はふたりの一騎討ちへと突入。
ロレンソは26周目、第1コーナー進入でロッシをパスしてトップに上がり、そのまま残り2周までリードを守っていたが、同じ場所で再びロッシに抜き返された。ロレンソはそれでもあきらめずに、最終ラップに入るところでもう一度仕掛けていったが届かず、一方のロッシが完璧な走りを見せて今季4度目の優勝を果たした。ロレンソは2位でゴールし、今季8回目の表彰台。ペドロサは3秒近く離されて3位でチェッカーを受けた。優勝したロッシは、ポイントランキング2位のロレンソとの差を14ポイントに拡大。またロレンソは、ランキング3位のストーナーに同じく14ポイント差をつけることとなった。
モンスター・ヤマハ・テック3のC・エドワーズとJ・トーズランドはともにトップ10に入り、チーム・ランキングで4位に浮上した。グリッド7位からスタートしたエドワーズは、ひとつ上げて6位につけていたが、リアの不具合で順位を下げ8周目の時点で11位。しかしすぐにライディングスタイルを変えてこれに対応し、レース後半では再び本来の力を発揮してN・ヘイデン(ドゥカティ)、M・メランドリ(カワサキ)の7位争いに近づいていった。そして7位との差を1.5秒まで縮めて9位でゴールした。
チームメイトのトーズランドはエドワーズのひとつうしろの10位。アンチウイリー・システムを初めて搭載したM1で、グリッド5列目から好スタートを切ったが、タイトな第1コーナー進入で集団に呑み込まれてしまう。その後、序盤はフロントのグリップ不足に悩まされたが、これを克服してエドワーズ、ヘイデン、メランドリ、T・エリアス(ホンダ)らを追っていくこととなった。この時点で安定したペースをつかんでいたトーズランドは後続を難なく引き離し、今季5度目となるトップ10入りを果たした。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | V・ロッシ | Fiat Yamaha Team | Yamaha | 41'21.769 |
2 | J・ロレンソ | Fiat Yamaha Team | Yamaha | 0.099 |
3 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | 2.899 |
4 | C・スト―ナー | Ducati Marlboro Team | Ducati | 10.226 |
5 | A・デ・アンジェリス | San Carlo Honda Gresini | Honda | 21.522 |
6 | T・エリアス | San Carlo Honda Gresini | Honda | 30.852 |
7 | M・メランドリ | Hayate Racing Team | Kawasaki | 31.301 |
8 | N・ヘイデン | Ducati Marlboro Team | Ducati | 31.726 |
9 | C・エドワーズ | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | 32.865 |
10 | J・トーズランド | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | 43.926 |
11 | L・カピロッシ | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 57.375 |
12 | N・カネパ | Pramac Racing | Ducati | 1'00.539 |
13 | C・バーミューレン | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 1'03.645 |
14 | M・カリオ | Pramac Racing | Ducati | 1'04.155 |
15 | G・タルマクシ | Scot Racing Team MotoGP | Honda | 1 lap |
LAP CHART
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | V・ロッシ | Yamaha | 176 |
2 | J・ロレンソ | Yamaha | 162 |
3 | C・スト―ナー | Ducati | 148 |
4 | D・ペドロサ | Honda | 108 |
5 | C・エドワーズ | Yamaha | 83 |
6 | M・メランドリ | Kawasaki | 70 |
14 | J・トーズランド | Yamaha | 45 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Yamaha | 210 |
2 | Ducati | 148 |
3 | Honda | 139 |
4 | Suzuki | 84 |
5 | Kawasaki | 70 |
COMMENT
V・ロッシ選手談(優勝)
「ランキング上位の4人のライダーが、みな好調で激しい優勝争いを展開したことがとても良かったと思う。ライバルはみんな手強かったので、そのなかでもいい走りができて、チームもセッティングの面で素晴らしい仕事をしてくれて、最終的に優勝することができたことがとてもうれしい。スタートがうまくいって、序盤はストーナーとバトル。僕のほうが少し速かったし、好調だったのでマックスまで攻めることができて楽しめた。終盤になるとロレンソとの競り合いになって、とくに思いもよらないところでパスされてしまったときには僕も全力で応戦しなければならなかったよ。運良く抜き返すことができて、そのあとの最終ラップはノーミスの完璧な走りで乗りきった。
そういう意味で、今日はすべてがうまくいった。M1もブリヂストンタイヤもね! だからみんなの努力に感謝しているんだ。これで今季4度目の優勝。ヤマハのマシンの素晴らしさを実感しているよ。今日のようなレースができればモーターサイクルスポーツにとっても素晴らしいこと。チャンピオン争いでも、少しアドバンテージができたところで、次はお気に入りのドニントンだ。ここ何年か優勝がなかったので、今年こそ勝ちたい!」
D・ブリビオ、チーム監督談
「何という見事なバトル! そして何というヤマハの素晴らしさ! 今回もまた、ランキング上位の4人が互いに何度も順位を入れ替える見応えあるレースになった。そのなかでバレンティーノはいつものように底力を見せ、終盤ではチームメイトの必死の挑戦に対してすべてを出しきって対応しなければならなかった。我々をここまで苦しめたホルヘに祝福を、そしてもちろん、それを抑えて優勝したバレンティーノに心からおめでとう!」
J・ロレンソ選手談(2位)
「このコースは低速でツイスティー。パフォーマンスを出しきるには、体のすべての力を使わなければならないので、とても厳しいレースになった。ラグナセカでの怪我の影響もあって、バレンティーノのペースについていくのがかなり大変。そのなかでも最後まで彼とバトルできたことに、とても満足しているんだ。ブレーキングがハードで遅いので、彼をパスするのは非常に困難だった。ようやくパスできたとき、あと何周か残っていると勘違いしてしまったのは、僕のミス。彼をパスし、それから逃げたいと思っていたけれど、結局うまくはいかなかった。ここまで追い詰めていながら、あとわずかなところで勝てなかったことは、もちろんとても悔しい。でも逆に考えれば経験豊かな彼と、ここまで戦えたことを誇りに思っていいのかもしれない。今日の2位は非常に重要だと思う。シーズンはまだ長いのだから」
D・ロマニョーリ、チーム監督談
「今回もまた素晴らしい成績を残すことができた。ホルヘは見事なレース運びで、チームも彼のためにマシンのセッティングとタイヤ・チョイスの面で非常に良い仕事をしてくれた。ホルヘの体調が万全でなかったことを考えれば、最後まで力一杯戦ってバレンティーノを追い詰めていったことを十二分に評価しなければならない。タイトル争いにおいてまだチャンスが残っているのだから、これからもこの調子をキープしていきたい」
C・エドワーズ選手談(9位)
「変なレースだったよ。このところの数戦と同じ問題が出てしまったんだ。コーナー進入でリア荷重がかかり、それがまるで僕を後ろから押しているような感じ。それでマシンをうまく曲げられないんだ。最初の2、3ラップはとくにひどく、何度もフロントをとられそうになり、順位も一時は10位以下に落ちてしまった。でもそこで気持ちを切り替えて、この大変な戦いにしっかり取り組もうとしたら急に状況が変わったんだ。
つまりリアのグリップが落ちてきて、不思議に速く走れるようになり、マシンも曲げやすくなったんだよ。リアのグリップが少ないほうが、マシンが曲がり易い。そしてフロントがまっすぐいってしまおうとするのを止めることができるようになるんだ。そうなってからは、ひたすら体を伏せてポジションを挽回。でもニッキーやマルコに近づいた頃にはもう時間が足りなくなっていた。次は大好きなドニントン。MotoGPでもいくつかいい思い出がある。いつも懸命に僕を支えてくれるモンスター・ヤマハ・テック3のみんなのためにも、少しでもトップに近づきたい」
J・トーズランド選手談(10位)
「ラグナセカは失敗してしまっているから、今日はスタートがうまくいったことがとてもうれしい。ヤマハが作ってくれたアンチウイリー・システムは本当に素晴らしいよ。でもその後の1コーナーで集団に呑み込まれてしまい、誰だかわからなかったけれど両膝にぶつかってきたんだ。転倒は免れて続行できたけれど、序盤はフロントタイヤにちょっと問題が出てしまった。それが気温のせいなのか、あるいは満タンの重さのせいなのかわからないが、序盤は自信満々というわけにはいかなかった。
レース中盤になってようやくうまく乗れるようになり、ペースも安定した。昨日も一昨日もコンディションの変化が激しく、リアにハードコンパウンドのタイヤを試すチャンスがなかったんだけれど、これが最後の10ラップでとてもよく頑張ってくれて、おかげで前方の7位集団を追いかけていくことができたよ。でも最後の最後でハードタイヤがアドバンテージになってくれず、ソフトタイヤを履いているライダーに差をつけることができなかった。でも今回またトップ10に入れて満足。次はホームレースとなるドニントン。もう一度10位以内を目指したい。地元ファンのためにも、昨年の失敗の雪辱を果たしたいんだ」
H・ポンシャラル、チーム監督談
「このコースはヤマハがとても強いので、もっと上にいけると期待していた。でもコーリンもジェームスも全力を尽くしてくれたので不満はない。ウイークを通じてコンディションが変わりやすく非常に苦労させられたなかで、ふたりがトップ10に入ったのだから悪くない結果だろう。そしてふたりの努力のおかげで、チーム・ランキングで再び4位に上がることができた。またライダー・ランキングでもコーリンが5位を確保していることは、我々の安定感をアピールすることになっていると思う。ジェームスもいいレースを見せてくれた。これは来週、彼のホームレースとなるドニントンパークに自信をつなげる役割を果たしてくれるに違いない。最後にバレンティーノとホルヘの活躍を祝福したい。彼らは、ヤマハがMotoGPのベストブランドであることを証明してくれている」
中島雅彦談(技術開発部MotoGPグループリーダー)
「レースウイークはまたしても不安定な天候に悩まされ、セットアップがうまく進みませんでしたが、ライバルとの差を詰めるべく、レース当日の朝までギリギリの調整を続け、トップ争いができるレベルに仕上げることができたと思います。レース直前まで天候が読めず、今回はタイヤの選択も難しい状況となりましたが、バレンティーノ、ホルヘ両ライダーは常にトップ4のグループで勝機をうかがい、今季4度目のワン・ツーフィニッシュを決めてくれたことに感謝したいと思います。終盤はチームメイト同士の一騎討ちに、冷静ではいられなかったと言うのが正直なところですが、この難しいコースを攻略できたことは残りのレースに向け、大きな自信となりました。来週はすぐにイギリスGPとなりますが、前半戦を有終の美で飾りたいと思います」