ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.06 6月14日 カタルニア
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第6戦カタルニアGP
■開催日:2009年6月14日(日)決勝結果
■開催地:スペイン/カタルニア(4.727km)
■観客:88,502人
■周回数:25周(118.175km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:36度 ■路面温度:46度
■PP:J・ロレンソ(ヤマハ/1分41秒974)
■FL:C・ストーナー(ドゥカティ/1分42秒858)
REPORT
フィアット・ヤマハ・チーム、今季2度目のワン・ツー・フィニッシュ!
フィアット・ヤマハ・チームのV・ロッシとJ・ロレンソが優勝争いを展開、ロッシが最終コーナーで前に出て自己通算99回目となる優勝を飾った。2位ロレンソとの差はわずか0.095秒。ヤマハのワン・ツー・フィニッシュは今季2度目。モンスター・ヤマハ・テック3のC・エドワーズは7位、J・トーズランドは13位だった。
レース序盤はグリッド順の通り、ロレンソがリードしてロッシとC・ストーナー(ドゥカティ)が追う展開。そして4周目のストレートエンドでロッシが初めて仕掛け、第1コーナー進入でトップに浮上。その後もしばらくは3台でバトルを続けていくが、さらに4周を過ぎるとヤマハの二人がペースを上げ始め、一気に1秒のリードを築いてストーナー以下、後続を引き離していった。ロッシとロレンソはテール・トゥ・ノーズの激しい競り合いで、お互い小さなミスも許されない接戦。
そしてロレンソは、25周のレースの折り返し点となる13ラップ目、ストレートエンドでついにロッシをとらえて再びトップに浮上。しかしその後もコンマ1秒以内の差でバトルが続き、さらに10ラップ後にはロッシが再び前に出た。この時点で残りは2周。二人の戦いはこれで終わらず、その後も何度か順位を入れ替える大激戦。そしてロレンソがリードして最終ラップを迎え、コースの半分を終了してそのまま逃げ切るかに思われたが、ロッシは最終コーナーで最後の勝負に出る。見事なパスでチームメイトを抑え、カタルニアでは自己通算9回目となる優勝を飾った。
グリッド2列目からスタートしたエドワーズは、混戦のなかで4つポジションを下げて1周目を終了。フロントのフィーリングの問題は今日も続いていたが、そのなかでも13ラップ目まで8番手をキープし、14周目にはR・ド・ピュニエ(ホンダ)をパスして7番手に浮上した。この時点で、L・カピロッシ(スズキ)とD・ペドロサ(ホンダ)の5位争いに3秒差があったが、これを1.4秒まで縮める健闘を見せ7位でチェッカーを受けた。これでシリーズポイントでは6位に浮上。ファクトリーを除くライダーの中ではトップをキープしている。
一方のトーズランドはスタートで出遅れ、9番手から16番手まで後退。しかしその後は懸命の挽回を見せ、S・ジベルナウ(ドゥカティ)とバトルを展開。そして16ラップ目、トーズランドはジベルナウをパスしてリードを広げたが、その時点で前方の集団からは大きく離されてしまっていた。それでも22ラップ目にはM・メランドリ(カワサキ)をとらえ、最終的に13位でゴールした。
なおストーナーは3位となり、シリーズポイントではロッシ、ロレンソ、ストーナーが106ポイントで並んでトップタイ。第6戦を終了し、チャンピオンシップはまた振り出しに戻ることとなった。次回は2週間後、ロッシ、ロレンソともに好きなコースのアッセンでダッチTTとして行われる。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | V・ロッシ | Fiat Yamaha Team | Yamaha | 43'11.897 |
2 | J・ロレンソ | Fiat Yamaha Team | Yamaha | 0.095 |
3 | C・ストーナー | Ducati Marlboro Team | Ducati | 8.884 |
4 | A・ドビツィオーゾ | Repsol Honda Team | Honda | 8.936 |
5 | L・カピロッシ | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 19.831 |
6 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | 22.182 |
7 | C・エドワーズ | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | 23.547 |
8 | R・ド・ピュニエ | LCR Honda MotoGP | Honda | 25.265 |
9 | M・カリオ | Pramac Racing | Ducati | 31.797 |
10 | N・ヘイデン | Ducati Marlboro Team | Ducati | 33.593 |
11 | C・バーミューレン | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 36.683 |
12 | A・デ・アンジェリス | San Carlo Honda Gresini | Honda | 36.874 |
13 | J・トーズランド | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | 39.433 |
14 | M・メランドリ | Hayate Racing Team | Kawasaki | 44.788 |
15 | S・ジベルナウ | Grupo Francisco Hernando | Ducati | 46.754 |
LAP CHART
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | V・ロッシ | Yamaha | 106 |
2 | J・ロレンソ | Yamaha | 106 |
3 | C・ストーナー | Ducati | 106 |
4 | A・ドビツィオーゾ | Honda | 69 |
5 | D・ペドロサ | Honda | 67 |
6 | C・エドワーズ | Yamaha | 54 |
11 | J・トーズランド | Yamaha | 29 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Yamaha | 140 |
2 | Ducati | 106 |
3 | Honda | 89 |
4 | Suzuki | 60 |
5 | Kawasaki | 50 |
COMMENT
V・ロッシ選手談(優勝)
「イタリア語で言うなら、マンマ・ミーア! 今日はこれまでのキャリアのなかで最高の、そして最高にハードなレースだったと言うことができるよ。重要性で言うなら去年のラグナセカが一番かもしれないけれど、今日は久しぶりに、最終ラップの最終コーナーでの劇的な逆転とができて、本当にうれしい優勝になったんだ。前の二つのレースでもそのような展開を期待していたが、今日ようやく成功。そして99回目の優勝を挙げることができた。
今回はウイークを通じて完璧で、M1もブリヂストンタイヤも非常に素晴らしかった。でもロレンソも同じ状況だということがわかっていたから、今日は必ず、彼がライバルになると確信していたよ。その意味では勇気が必要だったし、限界ぎりぎりまで攻めなければならなかった。今日の優勝は25ポイントの価値よりもずっと大きな意義があると思う。そしてこの時点で3人が同ポイントに並ぶという信じられない展開になっているんだ!
チームのみんなに感謝。そしてこの勝利をクルーチーフのジェレミー・バージェスに捧げたい。というのも彼のお母様が昨日亡くなられたんだよ… 僕は彼女にもお礼を言わなければならない。ジェレミーがいなかったら僕の99回目の優勝はあり得なかったからね。今日はぐっすりと、たくさん眠るつもり。今日の興奮を癒すためにね」
J・ロレンソ選手談(2位)
「見事なバトル、そしてファンのみなさんにとっては最高に素晴らしいショーになったと思う。僕はその役者の一人になれて本当に幸せだったよ。もちろん勝てなかったことは悔しい。だってハートをマシンに乗せて、すべてを賭けて戦っていたし、最終ラップのバトルでは、これまでなら僕はいつも勝ってきたんだ。でもバレンティーノはやはり素晴らしかった。僕よりもクレバーで、勇敢だったということだ。
実際のところ、あのラストラップは、僕が彼をパスしたあと、もっと早い時点でまた仕掛けてくると思っていたんだ。でもなかなか来なくて、最終コーナーを迎えたときには、僕はもう十分なクローズラインを取れなかったんだ。そしてあのような結果になったんだ。でも僕はまだ若くて、これからまだまだ学ばなければならないことがたくさんある。その意味で今日のレースは、悔しいけれど誇れるものなんだ。チームは今回もウイークを通じて素晴らしい仕事をしてくれた。これからも今日のようにいい走りを続けることができたとしたら、チャンピオンシップがどんなことになるか、誰にもわからないよね」
D・ブリビオ、チーム監督談
「バレンティーノのこれまでのキャリアのなかでも最高の一戦になったと思う。そしてロレンソと二人で圧倒的な強さを見せることができたことで、ヤマハにとっても素晴らしい一日になった。最終ラップでの逆転劇を、もう43レースも見ていないと皆で話していた矢先だったので、それを我々が一番に実現することができたこともとてもうれしかった。このような最高のモチベーションのなかで優勝できたことはバレンティーノにとって非常に重要。そして我々としては、自分たちの仕事がとてもいい状態にあると確認できたことが大切だったと思う。
金曜日の午前中にはマシンにいくつか決定的な変更を行った。それが功を奏したということなので、エンジニア、チームのみんなに感謝の気持ちでいっぱいだ。そしてこの優勝が、彼らにとっても最高のご褒美になっている。このような素晴らしい優勝を成し遂げるためには、バレンティーノのようなライダーと、M1のようなマシンと、我々のようなチームが必要だということだ。若いライダーたちもすぐに学んで同じようなことができるようになるだろうが、今、このようなことができるのはバレンティーノしかいないということなんだ。
明日はテストを予定しており、とても楽しみにしている。でも実際には、テストするべきことのほとんどは、もうこの週末に試してしまったよ! いずれにしても、ライダーたちをもっと楽にさせるために、我々はこれからもベストを尽くして頑張るだけ」
D・ロマニョーリ、チーム監督談
「何というレースだ! ホルヘにとっても、チームにとっても、ヤマハにとっても最高の一日になった。ホルヘとバレンティーノの素晴らしいバトルを、みんながエンジョイしたに違いない。そして我々チームにとっては、ホルヘが最後までバレンティーノと戦ったことに特別の意味がある。またその結果として20ポイントを獲得することができて、バレンティーノ、ケイシー、そしてホルヘの3人が今は同ポイントに並んでいるんだ! 我々は次回もこの好調をキープし、また表彰台を狙っていきたい」
C・エドワーズ選手談(7位)
「今日はすごく暑くて、体力的に非常に厳しいレースになった。しかもフロントの問題がまた出てしまって、思い通りに乗ることができなかったし、スタートもうまくいかなくて出遅れてしまったんだ。クラッチミートは悪くなかったんだけれど、今年のマシンはホイールベースが短くなっているせいで、加速したときにフロントが浮き上がりやすいようだ。今朝のウォームアップは好調で3位のタイムを出すことができた。あのときはまだあまり暑くなかったから、うまくマシンを曲げることができたんだけれど、午後になって暑くなってきたら滑りやすくなり、マシンがまったく思い通りにならなくなってしまった。
あの状態でもっと攻めていったとしたら、フロントをプッシュすることになって、さらに遅れてしまっただろう。前方にカピロッシとペドロサが見えていたんだけれど、攻めれば攻めるほどミスが出てしまう状況だった。きのうの転倒を含めて今回は問題が多く、フロントのフィーリングが十分ではないとなると7位でも怒る気にはなれない。満足はしていないが、今回はこれが限界だったと思うんだ。チームのみんなは今回もとても一生懸命に頑張ってくれた。これから問題を解決し、大好きなコースの一つのアッセンで、もっと上位に近づきたい」
J・トーズランド選手談(13位)
「予選は今季最高位と調子が良かっただけに、この結果はとても残念。スタートでとんでもないミスをしてしまって、自分自身に大きな課題を与えてしまったことが原因だ。エンジンが止まってなかなか動けず、大きく出遅れてしまった。その後はみんなが同じようなタイムでバトルをしているから、その中で順位を取り戻していくのはとても無理だった。またマシンのセッティングでもいくつか問題があって、リアグリップが不十分。タイヤが消耗してからのグリップについては、これからの課題になるだろう。
とは言っても今日の一番の問題は、やっぱりスタートで、これは間違いなく僕のミス。きのうまではとても好調で、すべてが良い方向に向かっていただけに本当に残念な結果。でもこれに屈せず、次のアッセンでもモンスター・ヤマハ・テック3のためにすべてを捧げる用意ができているよ!」
H・ポンシャラル、チーム監督談
「素晴らしいショーだった。そしてヤマハにとっては最高の結果だ。あのようなレースを見れば、MotoGPが退屈だなどと誰が言えるだろう。今日は多くの人にとって忘れられないレースになったに違いない。モンスター・ヤマハ・テック3のほうも決して悪くなかったが、コーリンもジェームスも本来ならもっと上へ行けたはずだ。
コーリンはスタートで出遅れて、ペースを取り戻した頃にはペドロサとカピロッシに離されてしまっていた。それでも決してあきらめないところが彼の素晴らしさで、そのおかげでランキングで6位に浮上することができたと思っている。ノン・ファクトリーライダーとしてはトップに立っており、そのことが彼の実力を証明している。ジェームスの方は、今回とても調子が良かっただけに残念な結果と言わざるを得ない。それでも彼は常に前進し続けているので、今日のことも乗り越えて、次のアッセンではまた10位以内を目指していくだろう」
中島 雅彦談(技術開発部MotoGPグループリーダー)
「ヨーロッパラウンドに入ってからも不安定な天候が続き、なかなか良いコンディションでのレースができませんでしたが、ここバルセロナは久々に週末を通じて素晴らしい天候に恵まれ、大勢のファンの前で今季2度目のヤマハ1-2フィニッシュを達成することができ、チームの士気は大いに盛り上がりました。ライダー、チームスタッフには心から感謝したいと思います。
消化不良のレースが続くバレンティーノは、これまでの課題と昨年のレースのレビューをしっかり行い、周到に準備したセットアップが奏功し彼らしい走りを取り戻してくれました。ホルヘはホームグランプリであり、初日から気合の入った熱い走りで、レースでも素晴らしいファイトを見せてくれたと思います。チャンピオンシップは、トップ3が同ポイントで並ぶ状況となりました。今後もさらにタフな戦いが続きますが、ここを乗り切るべくスタッフ一同全力で頑張りたいと思います」