ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.07 6月8日 カタルニア
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第7戦カタルニアGP
■開催日:2008年6月8日(日)決勝結果
■開催地:スペイン/カタルニア・サーキット(4.727km)
■観客数:113,150人
■周回数:25周(118.175km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:27度 ■路面温度:39度
■PP:C・スト―ナー(ドゥカティ/1分41秒186)
■FL:D・ペドロサ(ホンダ/1分42秒358)
REPORT
ロッシ2位表彰台でランキングトップをキープ!
【速報】
9番グリッドからスタートのロッシが2位。テック3・ヤマハチームのエドワーズとトーズランドはそれぞれ5位、6位となった。
決勝レースはペドロサ(ホンダ)がスタートで飛び出してレースをリードする展開になる。9番手スタートのロッシはオープニングラップを8番手で終えると、5周目には6番手にまで次々にポジションを上げていく。7周目、ペドロサは2番手以下に約5秒の差をつけて独走。2番手争いは、ストーナー(ドゥカティ)、ドビツィオーゾ(ホンダ)、エドワーズ、ロッシの順に集団が形成される。トーズランドは10番手を走行。
ロッシは8周目にエドワーズをかわして4番手に上がると、9周目にドビツィオーゾとストーナーを順にかわして2番手に浮上、約6.5秒先をいくペドロサへの猛追を開始する。しかしその差はなかなか縮まらず、17周目には後ろにつけていたストーナーに一度かわされるが、24周目に抜き返してそのままフィニッシュ。2位でゴールした。
エドワーズは5位フィニッシュ、トーズランドは21周目に前をいくヘイデン(ホンダ)をかわして6番手に浮上しそのままフィニッシュした。
なお、ロレンソはアクシデントから2日、バルセロナの大学病院で順調に回復している。ザビエル・ミル医師の日曜の発表によれば、右手に皮膚移植が必要になるということである。「さらに詳細な検査を行った結果、転倒によって衝撃を受けた頭蓋についてはとくに複雑な問題にはならないことがわかり安心した。しかしもう一度、また別のCAT検査を行いたいので今日の午後、ホルヘを院内の別の場所へ移したところだ。その他の怪我については、右手薬指の肉が約2cm欠損しているので、おそらく明日の朝、皮膚移植を行うことになる」
【レポート】
フィアット・ヤマハ・チームのV・ロッシは、予選9位というスターティング・ポジションの不利を払拭し2位を獲得。前方の集団を抜き去ったときには、トップのD・ペドロサはすでに十分なリードを築いており届かなかった。終盤の2、3ラップはC・ストーナーと2位争いを展開して昨年のバトルを再現、今回はロッシがこれを制した。
チームメイトのJ・ロレンソは金曜日午後に行われたフリープラクティス第2セッションで転倒負傷し、自らのホームGPを欠場。ロレンソは走行開始から4ラップ目、第11コーナーでフロントを滑らせて転倒、グラベルへ投げ出されて横になったまま動かなかった。サーキット内の診療所に運ばれて検査を受けた結果、中国で負傷していた足首へのさらなる影響はないことがわかったが、それ以上のことについてはバルセロナ市内にある病院へ搬送してさらに詳しく調べることとなった。
バルセロナの大学病院のザビエル・ミル医師によれば、頭部への衝撃によって意識を失っており決勝出場は不可能。またCATおよびMRI検査の結果、ヘモグロビンへの影響はないものの48時間から72時間は病院で容態を見守る必要があるとのこと。右手の薬指と小指も負傷して皮膚を欠損しており腱にもダメージがあるが、これについては次のドニントンまでに回復する見込みだ。
ロレンソの欠場決定により、フィアット・ヤマハ・チームの希望はロッシひとりに託されることとなった。ホームGPのムジェロでの優勝からわずか5日。カタルニアに現れたロッシのマシンは、イタリアのナショナル・サッカーチーム、Azzurriのカラー。間近に迫ったヨーロッパ選手権での成功を祈るための特別仕様のカラーリングだった。そしてレザースーツはサッカー選手と同じデザインで、サッカーのショーツ,シャツ、ソックスも揃えられた。
前日の晩に激しい雨が降り、金曜日午前中は、コースのところどころにウエットが残る状態。とくにグランドスタンドで影になってしまうメインストレートは乾きが遅かった。ここは元々スリッピーな路面だが、雨のおかげでさらにグリップが低下。ロッシはこのコンディションに合わせて、とくにトラクション向上を目指してブリヂストン・タイヤのテストとマシン・セッティングの調整に専念した。ロッシは一日を通して速く、第1セッションで2位、第2セッションはコースがさらに乾いたためコンマ5秒以上、短縮して3位となった。
ロッシにとって初日の最大の課題はコーナー進入速度を上げることだった。しかしこれはなかなか解決できず、翌日も2つのセッションを使って取り組んだが思うような結果が得られなかった。公式予選終盤のタイムアタックでリアに柔らかめの予選タイヤを履いてもあまり変化はなく、結局9位に留まった。ベストラップの1分42秒427は昨年の彼自身のポールタイム、1分41秒840に届かず、また今回ストーナーが記録したポールレコード、1分41秒186に遠く及ばなかった。
テック3ヤマハ・チームのJ・トーズランドとC・エドワーズはともにグリッド2列目からのスタート。エドワーズはフロントロウにコンマ2秒届かなかったが、開幕以来の予選での好調を依然としてキープしており7戦連続で5位以内を獲得している。一方のトーズランドはテクニカルなカタルニアを短時間で攻略。エドワーズに0.211秒遅れるタイムで、ポルトガル大会エストリルと同じく今季最高の6位につけた。
決勝日。チームスタッフとエンジニアによる懸命な作業によって、ロッシのマシンは明らかに戦闘力を増していた。そしてウォームアップで好調な走りを見せ、トップタイムを記録した。気温27度、路面温度39度という絶好のコンディションが激しい追い上げを可能にしたため、ロッシは表彰台を目標にしてレースに臨んだ。
9位からスタートしたロッシは、1周目でC・バーミューレンをパス。その一方で地元ファンの声援を受けるペドロサがトップに立ち、リードを広げていく。ロッシはしかしその後、次々に前車をパスし再び観客の注目を取り戻すこととなった。最初の標的になったのが同じくヤマハのトーズランドだったが、極めてフェアながらアグレッシブな動きのためにトーズランドははらんでしまい後退。その後の3ラップは7位をキープしたが、第5ラップ目、ロッシは再び仕掛けていき1kmにも及ぶ長いストレートエンドのブレーキングでN・ヘイデンとR・ドゥプニエをパスして5位に浮上した。
ロッシのチーム・クルーたちはまさに、このコーナーでのハード・ブレーキングに照準を合わせてマシンをセットアップしてきた。それが功を奏し、実際にここで何度もパスが行われエドワーズをパスして4位。そして9ラップ目には裏コースの高速右コーナーでA・ドビジオーゾ、ストーナーを捉えて2位に上がった。
見事なパスを見せたロッシだったが、ストーナーもぴったりとついて離れず、16ラップにはまたバトルが再燃。ストーナーがトップスピードを生かしてストレートで前へ出て逆転し、その後しばらくはふたりの一騎討ちが続いた。
そして残り2周となったときにロッシが再び動き、ストレートエンドでの強みを生かして2位に浮上した。ストーナーに再びチャンスを与えることのないように、そのままリードを広げたいロッシ。この段階で1分42秒台を叩き出し、そのままの勢いでチェッカーまで走りきった。
優勝したペドロサからは2.806秒の差をつけられたが、ポイントにおいては5ポイントを失っただけで依然ランキングトップをキープ。ロレンソも3位を守っている。
序盤でロッシに抜かれたトーズランドはリズムを崩し、またフロントエンドの新しいセッティングに慣れるまでの時間も必要となったため、8周目の時点で11位まで後退。しかしその後ペースをつかむとバーミューレン、ヘイデン、A・デアンジェリス、L・カピロッシを次々にパスして6位まで上がり、そのままチェッカー。パスしたライダーの数でトーズランドを上回ったのはロッシだけという大健闘だった。トップ6は今季4度目。これでランキング7位に浮上した。トーズランドのチームメイト、エドワーズは序盤でストーナー、ドビジオーゾを追っていき2位争いを展開。最終的には5位でチェッカーを受けた。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | 43'02.175 |
2 | V・ロッシ | Fiat Yamaha Team | Yamaha | 2.806 |
3 | C・スト―ナー | Ducati Marlboro Team | Ducati | 3.343 |
4 | A・ドビツィオーゾ | JiR Team Scot MotoGP | Honda | 10.893 |
5 | C・エドワーズ | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | 16.426 |
6 | J・トーズランド | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | 21.482 |
7 | C・バーミューレン | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 21.548 |
8 | N・ヘイデン | Repsol Honda Team | Honda | 22.28 |
9 | 中野真矢 | San Carlo Honda Gresini | Honda | 22.375 |
10 | J・ホプキンス | Kawasaki Racing Team | Kawasaki | 46.835 |
11 | M・メランドリ | Ducati Marlboro Team | Ducati | 57.991 |
12 | A・ウエスト | Kawasaki Racing Team | Kawasaki | 59.168 |
13 | S・ギュントーリ | Alice Team | Ducati | +1'00.779 |
LAP CHART
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | V・ロッシ | Yamaha | 142 |
2 | D・ペドロサ | Honda | 135 |
3 | J・ロレンソ | Yamaha | 94 |
4 | C・スト―ナー | Ducati | 92 |
5 | C・エドワーズ | Yamaha | 69 |
6 | A・ドビツィオーゾ | Honda | 57 |
7 | J・トーズランド | Yamaha | 53 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Yamaha | 160 |
2 | Honda | 135 |
3 | Ducati | 97 |
4 | Suzuki | 63 |
5 | Kawasaki | 35 |
COMMENT
V・ロッシ選手談(2位)
「とてもいいレースだったと思うよ!こんな上位争いをしたのは久しぶりで、今日は去年のこの大会と同じようにストーナーとのバトルができた。ただ今回は優勝争いではなく2位争いだったが。この3戦、ほぼ完璧なレースを展開した後で、昨日の予選は非常に苦しい思いをした。でも昨晩のうちに皆で話し合い、それをもとに作業をしてもらって今日は素晴らしいものができ上がった。
目標は表彰台だったので2位に入れて本当に嬉しい。 今日は大勢のファンが応援に来てくれていたしYZR-M1とブリヂストンが最後までよく走ってくれたおかげで何度もうまくパスすることができた。今すぐにでも、今日の走りをビデオで見てみたい。ストーナーをパスしたあとは逃げたかったが難しく、終盤の激しいバトルを予想していた。またペドロサはとても調子が良くて、もしも僕がもっと上位からスタートしていたとしても、彼についていけたかどうかはわからない。今日は予選位置が悪かった上にペドロサがこんなにも速かったのでどうにもならなかった。このような状況のなかで2位となり、1位とは5ポイントしか差がなかったのだから良かったと思う。シリーズポイントでは依然としてランキングトップをキープできているし、レースの展開も良かった。だから十分に満足しているよ。
明日はテストを行う予定なので、そこで今回の出来事を十分に分析してみたい。そして次のドニントンにつなげたい。チームのみんなにありがとう!そしてダニにおめでとう!」
D・ブリビオ、フィアット・ヤマハ・チーム監督
「今回はウイーク中ずっと悩んでばかりだったので、今日の結果には満足している。チームスタッフとエンジニアが頑張ってくれて短い時間でセッティングをここまで改善してくれた。ウォームアップでの走りを見たときに、チャンスがあると確信した。ただグリッド位置は不利で、またペドロサがとても好調だったため優勝は不可能だったが、そのなかでの2位の20ポイントは非常に貴重。失ったのは5ポイントだけなのだ。チャンピオンシップは長いので、我々はいつも表彰台を目標にしている。今回も厳しい状況の中で、それを達成したということだ。
明日はテストを行い、今回のデータを分析しより一層ヤマハ+ブリヂストンを理解したい。そしてそれを次のドニントンに役立てたいと思っている。今回はピットの半分が空だったことが非常に残念だ。チームの皆がホルヘの回復を祈っており、また我々のところへ帰ってきてくれる日を待ちわびている」
C・エドワーズ選手談(5位)
「スタートがとてもうまくいって、‘素晴らしい!この調子で行こう!'と思った。でも第2コーナーからもう問題が出始めてしまった。はじめは43秒台前半で走行していたが、その後そのペースをキープできなくなってしまった。
ブレーキングしてコーナーに突っ込むとマシンが激しく揺れてしまうので、ムジェロのときのことを思い出してランディングスタイルを変えなければならなかった。強くブレーキをかけ、コーナー進入で向きを変え、それからマシンを起して加速するというわけだ。そして普通なら2速を使うコーナーで、3速を使ったりもした。
できることは何でもやって、何とか上位グループについて行こうとしていたが、ドビツィオーゾは僕よりもリアのグリップが良く、ラップごとに少しずつ差を広げられてしまった。ブレーキングでは追いつけるのだが、立ち上がりでわずかに置いていかれてしまう。朝のウォームアップで使用したタイヤは、決勝が行われる時間帯においてはソフト過ぎたようだ。
このコースではベストリザルトのひとつ。このあとのドニントンとアッセンはどちらも好きなコースなので、表彰台を狙っていけると確信している。チームランキングでは3位をキープで、このことはテック3チーム、ヤマハ、ミシュランにとって、とてもいいことだ」
J・トーズランド選手談(6位)
「スタートはとてもうまくいったが、その後の第1コーナーでバレンティーノに抜かれてしまった。非常にクリーンな抜き方ではあったが、タイミングがかなり遅かったので横に並んだままコーナーに突っ込むことになり、僕は結局行き場を失って真っ直ぐ行ってしまったんだ。
ライバルたちと同等のタイムで走ったとしても、取り戻せるのはほんの僅かずつ。午前中のウォームアップのときにマシンを変更しており、それに慣れるための時間も必要だった。ウイーク中はほとんど柔らかめのタイヤを履いてタイムを出していたが、決勝のために少し硬めのものを選んだところ、スタートで十分なグリップが得られず、さらに慣れるのに時間がかかり、ハードにプッシュできなかった。今はこの成績に満足しているが、だんだんと焦りを感じるようになってきている。もっと上へ行けたと思っているので、残念な気持ちもあるんだ。6位でゴールし、精一杯やったと思えば納得できるだろうが、今はもっと何かできたはずだと考えている。
新しいセッティングはとても好調なので、ドニントンではさらに素晴らしいマシンになるだろう。しかも僕にとってのホームGPになるので待ちきれない思いだ。ここまでは順調にトップ6を獲得してきたが、今回ばかりはもっと上を狙いたい。テック3、ヤマハ、ミシュランが僕をバックアップしてくれるので、きっとできると確信している」
H・ポンシャラル、テック3・ヤマハ・チーム監督談
「好結果になり非常に嬉しい。コーリンとジェームスは今回も全力を尽くし、揃ってトップ6以内に入った。ペドロサはまるで宇宙人のように走っていたが、コーリンも序盤は非常に好調で上位をキープした。でもある時点から彼は、リスクをおかさずに確実に5位を獲得することを決意したようだった。
ジェームスのほうはスタートでかなり遅れたが、すぐにペースを取り戻して上位陣と同等ペースで挽回していった。ムジェロとバルセロナはまったく特性の異なるサーキットだが、にもかかわらずコーリンとジェームスが両方のサーキットで6位以内を獲得。これはヤマハとミシュランのおかげだ。
これでテック3・ヤマハ・チームはチームランキングの3位をキープ。7レース経過後の状況としては上出来だ。次はジェームスのホームGPを迎えるので、この好調のまま意気揚々と臨みたい。またコーリンにとってもドニントンと、その次のアッセンは相性の良いコースなので楽しみにしている」
中島雅彦フィアット・ヤマハ・チーム総監督
「スペインはバルセロナ郊外にあるカタルニヤサーキットは高速サーキットの一つで320km/hの最高速が記録されます。また、回り込んだコーナーでの旋回性とブレーキングスタビリティが要求されるテクニカルなコースでもあります。ヨーロッパラウンドに入ってから不安定な天候が続きここバルセロナでも週末は不安定な天気が続きました。
ロッシ選手は思ったようにグリップが得られず、セットアップに苦慮しました。レース直前までチームとYMCスタッフの懸命な努力が続けられ、何とか彼本来のリズムを取リ戻し、予選9番手ながら確実に順位を上げ2位を確保しました。テック3・ヤマハ・チームのエドワード、トーズランドの両名も揃って5、6位と好調を維持しYZR-M1のポテンシャルの高さをアピールしてくれました。
ロレンソ選手はプラクティス中の転倒で頭を強打したため大事を取ってレースをキャンセルしています。彼にとってはホームグランプリであり、我々スタッフも期待していただけに残念ですが、次戦には再びキレのある走りを見せてくれるはずです。今後も1週間のオフを挟んで5週間で4戦のタフな戦いが続きますが、ここを乗り切るべくスタッフ一同全力でがんばりますので、皆さんのご声援を宜しくお願いします」