ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.07 6月8日 カタルニア
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第7戦カタルニアGP
■開催日:2008年6月6日(金)フリー走行2(総合結果)
■開催地:スペイン/カタルニア・サーキット(4.727km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:26度 ■路面温度:41度
REPORT
ロッシ、総合3番手で順調な滑り出し
5日前にホームGPで見事な優勝を果たしたばかりのフィアット・ヤマハ・チームのV・ロッシ。今回のマシンのカラーリングは、イタリアのナショナル・サッカーチーム"Azzurri"の活躍を祝うための特別仕様。レザースーツはサッカーのショーツやシャツ、ソックスを履いたように見えるデザインでマシンカラーと統一されている。
前日の晩に大量の雨が降ったため、コースはところどころウエットの状態。とくに長いメインストレートはグランドスタンドの陰になっているため乾きにくい。このため通常よりさらに路面のグリップが低下したため、ロッシはこのコンディションに合わせてトラクション重視のタイヤ・セッティングに時間を割いた。そのなかでも1日を通して速さをキープしたロッシは第1セッションで2位、第2セッションで総合3位と好調ぶりを示した。
チームメイトのJ・ロレンソは、第2セッションで転倒して負傷、日曜日の決勝を欠場することになった。走行開始からわずか4ラップ、第11コーナーでフロントを滑らせて転倒してグラベルへ。サーキット内の診療所で診察を受けた結果、負傷中の足首への影響はないことがわかったが、さらに詳細に検査するためにバルセロナの病院へ搬送された。
バルセロナにある大学病院の医師、ザビエル・ミルは次のようにコメント。「検査の結果、今週末のレース出場は不可能と判断した。怪我の状態は以下の通り。1)頭に衝撃を受けて意識を失った。CATおよびMRIの検査を行い、ヘモグロビンに問題がないことが確認されている。しかし依然として48~72時間の間は容態を観察していなければならない状態だ。2)右手の薬指と小指の肉が一部はがれている。また伸張筋の剥離もある。経過を見なければならないが、おそらく小さな箇所の皮膚移植が必要になるだろう。3)その他たくさんの打撲や擦過傷がある。
テック3ヤマハ・チームのJ・トーズランドは、初めて走るカタルニアのコースで、1分43秒479を記録して8位と好調。このタイムはトップのD・ペドロサからわずか0.462秒差。
エストリル,ルマン、上海、ムジェロといった未経験のコースでは、初日のタイムはいつもトップから1秒以上離されていた。しかし今回は、ムジェロで作り上げたYZR-M1のベースセッティングが好調であることから、1日目からコース攻略に取り組み、午後の第2セッションでは午前中のタイムを1秒近く短縮することに成功した。
チームメイトのC・エドワーズは決勝用セッティングでの安定性を追求することに専念。ミシュランの決勝用タイヤのテストを行いながら、トーズランド同様、1分43秒台をコンスタントにキープした。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | 1'43.017 |
2 | L・カピロッシ | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 1'43.023 |
3 | V・ロッシ | Fiat Yamaha Team | Yamaha | 1'43.090 |
4 | C・スト―ナー | Ducati Marlboro Team | Ducati | 1'43.099 |
5 | A・デ・アンジェリス | San Carlo Honda Gresini | Honda | 1'43.233 |
6 | C・バーミューレン | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 1'43.368 |
7 | 中野真矢 | San Carlo Honda Gresini | Honda | 1'43.442 |
8 | J・トーズランド | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | 1'43.479 |
9 | N・ヘイデン | Repsol Honda Team | Honda | 1'43.614 |
10 | C・エドワーズ | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | 1'43.668 |
11 | A・ドビツィオーゾ | JiR Team Scot MotoGP | Honda | 1'43.707 |
12 | R・ド・ピュニエ | LCR Honda MotoGP | Honda | 1'43.742 |
13 | J・ロレンソ | Fiat Yamaha Team | Yamaha | 1'43.961 |
14 | J・ホプキンス | Kawasaki Racing Team | Kawasaki | 1'44.043 |
15 | T・エリアス | Alice Team | Ducati | 1'44.610 |
16 | M・メランドリ | Ducati Marlboro Team | Ducati | 1'44.649 |
17 | S・ギュントーリ | Alice Team | Ducati | 1'44.678 |
18 | A・ウエスト | Kawasaki Racing Team | Kawasaki | 1'44.865 |
COMMENT
V・ロッシ選手談(フリー走行総合3番手/1分43秒090/52周)
「ここは路面のコンディションがとても難しく、今日もかなりスライドしていたので作業は大変だった。長く加速する場所では、とくにトラクションが十分必要なので、たくさんのタイヤを試してどれが一番うまく走ってくれるかを試した。昨晩の雨で、さらにコンディションが悪かったこともり、また今年はブリヂストンなので昨年とはライディング・スタイルを変えなければならないこともあり、いろいろと考慮しなければならない。ムジェロでのセッティングは、ベースとしては問題ないが、トラクションに関してはまだ改善が必要だ。
マシンのカラーリングはフィアットのアイディアで、レザースーツはそれに合わせてデザインし、僕がサッカー選手に見えるようにした。とても面白いと思うよ」
D・ブリビオ、フィアット・ヤマハ・チーム監督
「もうほとんど問題ないように見えているかもしれないが、実際には重大な課題がいくつか残っている。ここは特殊なサーキットなので、今日はとてもたくさんのタイヤをテストした。最終決定を下すまでにチェックしなければならないことが非常に多く、決勝日の気温にも左右されるからだ。今の段階では、できるだけ多くのデータを収集し、それに沿ってマシンを調整していくことが重要。そういう意味では今日の作業には満足できている。カラーリングはとても面白くて、バレンティーノがサッカーのユニフォームを着ているように見えるところがとくにいい!イタリアチームの活躍を願い、日曜日には我々と同様に成功して欲しい」
D・ロマニョーリ、フィアット・ヤマハ・チーム監督
「不運にもまた転倒した。今の彼は、運に見放されてしまっていることが明らかだ。午前中のセッションは非常に好調で、ベースのセッティングが見つかって成果に満足していた。そのまま午後のセッションに入り、順調に走行していたが、ホルヘは11コーナーで倒してしまった。130km/hのスピードが出ていたのでかなり高速での転倒となってしまったが、データを分析したところでは、彼がとくに何かをしたわけではない。特別なミスをしたというわけではないのだ。
タイヤのテストを予定していて、マシンのセッティングのほうは午前中でかなり良いところまで来ていただけに、このことは非常に残念。幸い、足首への影響はなかったが、頭を打っているためしばらく休養が必要だ。ホルヘのことが心配でならないが、今はとにかくしっかり休養してもらい、回復を待つことしかできない」
J・トーズランド選手談(フリー走行総合8番手/1分43秒479)
「1日目でトップに対してコンマ4秒差まで近づけたのは非常に嬉しい。チームの好調ぶりや、ルマンのあとのテストで見つけた新しいセッティングの良さが証明できた。今までなら、初めてのコースでの初日は1秒以上離されてしまっていたので、今回は大きく前進できたわけだ。マシンのベースセッティングが既に仕上がっていて、早くからコースの把握に取り組むことができたのが大きかった。
セッティングを初めから仕上げるのではなく、さらにチューンアップするだけでよく、あとは自分の走りに集中できた。大きな変更ではなく、マシンをちょっと"つねる"くらいでいいところまで、既に到達しているということだ。セッティングがここまで仕上がったお陰でリアのグリップ感がとても良くなった。古いタイヤでも安定して走ることができたのは、攻め込んでいける信頼感があるからだ。
新しいセッティングによってリアタイヤへの荷重が大きくなり、より安定するようになった。コーナー進入でリアが安定し、接地面が大きくなっているためブレーキングを遅らせることができる。しかもグリップ性が上がっているので、進入スピードが速くなっているにもかかわらず、よく曲がる。そしてしっかりとラインを取って、うまく立ち上がることができるのだ。これは驚くべき進化。このリア・トラクションがなかったとしたら、どれだけタイムに影響するかわからない。
まだ1日目を終えたところなので、これからチームのみんなやミシュランと話し合って、さらに改良していきたいと思っている。依然として小さな課題は残されており、あとわずかコンマ数秒というところの追求が、いつも非常に難しい。それでも今日の成果には満足しているし、このコースはとても気に入った。ムジェロと似ていて、高速&テクニカルなコース。流れるような高速コーナーを走るのは気分がいい」
C・エドワーズ選手談(フリー走行総合10番手/1分43秒668)
「10位というのは不本意だが、タイムを見る限りそれほど遅れているわけではないので心配はしていない。1分43秒台をコンスタントに出しているし、それ以外でも常にその付近のタイムを出せた。でも他のライダーは、それがあまり出来ていなかったようだ。ベストタイムを出したタイヤで20ラップを走り、その最終ラップでもベストからわずかコンマ5秒差で走れた。
決勝では43.7秒で25周を走れるだろうと誰かが言ってくれるなら、僕はそれを信じるよ。他の多くのライダーが、このペースをキープし続けることに苦労していたようなので、我々は優位に立っていると思う。
あとは日曜日の決勝に向けてセッティングの調整を行うだけで良く、トラクションに関してはいくらか課題も残っているものの、心配には及ばない。コーナー立ち上がりの引っぱり感がもう少し欲しいというところだが、これはセッティングの調整で実現できるだろう。ミシュラン、ヤマハ、テック3は今回もとてもよく頑張ってくれているから信頼している。ミシュランにデータを提供するために多くの周回を重ね、おそらくこのコースでの僕のベストラップ・レベルでそれができたと思う。あともう少しリアのトラクションがあれば、それで万全だ」