ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.16 10月14日 オーストラリア
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第16戦オーストラリアGP
■開催日:2007年10月14日(日)決勝結果
■開催地:オーストラリア/フィリップアイランド(4.448km)
■観客数:50,000人
■周回数:27周(120.096km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:20度 ■路面温度:31度
■PP:D・ペドロサ(ホンダ/1分29秒201)
■FL:V・ロッシ(ヤマハ/1分30秒801)
REPORT
ロッシが3位表彰台を獲得!
【速報】
フィアット・ヤマハ・チームのV・ロッシが3位表彰台。C・ストーナー(ドゥカティ)が今季9勝目を飾った。他のヤマハ選手はロッシのチームメイトC・エドワーズが9位。テック3・ヤマハ・チームのS・ギュントーリが14位、玉田誠が16位だった。
序盤はストーナー、N・ヘイデン(ホンダ)、D・ペドロサ(ホンダ)、ロッシの順で先頭集団を形成。ストーナーが先頭に立ちリードを広げる中、ロッシは7周目に1分30秒801のファステストラップを叩きだすなどで追い上げ、11周目にヘイデンを抜き2番手に上がって約2.8秒先をいくストーナーを追う。
その後ヘイデンがトラブルで後退するが、ロッシはストーナーへの追い上げを試みる。しかし差は広がってしまい、18周目に追い上げてきたペドロサに先行され3番手に後退。トップとの差は約7秒となる。20周目、追い上げてきたカピロッシ(ドゥカティ)が、ロッシ、ペドロサを抜いて2番手に。一方、ペドロサは後退して4番手に。その後の終盤7ラップは、ストーナー、カピロッシ、ロッシの順に変動なくゴール。ロッシはトップから約10秒差の3位となった。予選11位発進のエドワーズは、序盤15番手を走るも中盤迄に12番手まで挽回。後半にはさらに3人をかわして9位でゴールした。
【レポート】
ロッシは3位に入り、フィリップアイランドで連続10回目の表彰台を獲得。またそのなかでファステストラップも記録した。チームメイトのエドワーズは9位。優勝はC・ストーナー、2位にカピロッシが入った。
天候が変わりやすいことで知られるフィリップアイランド。今年も例外ではなく、フリープラクティス初日の金曜日は激しい雨と明るい太陽とが交互に現れるコンディション。バス・ストレートを吹き抜ける冷たい風のため気温は終日低く、マシンのセットアップ作業には繊細さが要求された。ロッシとエドワーズは今回、フィアットのレーシング・ブランド、「Abarth」を模した赤/白のカラーリングで登場。1日目の走行をそれぞれ4位、15位で終えた。
この日は完全なウエットコンディションでスタートしたが、MotoGPのプラクティスが始まる頃には少しずつドライラインも現れ始めていた。しかしセッション終了20分前になるとまた激しい雨。そのなかでロッシは順調に3位、エドワーズは11位につけた。午後からの第2セッションは、途中わずかな雨粒が見られたものの全体的には明るい太陽に恵まれて天気が安定。二人はこの高速コースでの、決勝用セッティングに取り組むことができた。ロッシは好調をキープして総合4位。トップのストーナーとの差はわずかに0.423秒。
土曜日午前中のフリープラクティス3回目も、ウエットで始まり途中から急速に乾き始めるという、前日の午前中と似たコンディション。そのなかでロッシとエドワーズは6位と 10位。しかし午後になると幸いにも天気が回復。このウイークで初めて完全なドライでの走行が可能となり、予選が行われた。
ロッシは多くの時間を決勝用セッティングとタイヤチョイスに費やしながら、セッションのほとんどで3番手をキープ。残り10分になったところで予選タイヤを装着すると、序盤からタイムアタックを行ってトップに立っていたストーナーを上回った。しかし2本目の予選タイヤを装着したときにはストーナーに再び抜き返され、さらにペドロサがポールタイムとなる1分29秒201を記録して、ロッシは3位に後退した。
残り4分。ロッシはペドロサに迫ったが届かず、1分29秒419で2位。エドワーズは一時6番手まで上がっていたが、ミシュランの予選タイヤにマッチするセッティングが見つからず、ペドロサから1.475秒差の11位。グリッド4列目の中央からスタートすることとなった。
幸いにも好天は決勝日まで持続。フィリップアイランドを訪れた50,000人の観客は明るい太陽と20度の快適な気温に迎えられた。とは言え、バス・ストレートを駆け抜ける強風のため、その多くはジャケットを脱ぐことはできなかったのだが…。
暖かい太陽のおかげで路面温度は31度。ロッシのエンジニアたちは、初めに想定していたものよりも硬めのタイヤを選択した。これによってフロントロウスタートがより重要な意味を持つこととなるわけだが、これまでのレースでもその難しさが証明されているように、序盤はトップグループについていくことができない。
予選2位からスタートしたロッシだが、2列目からヘイデンがチャージし、またペドロサにも抜かれて4番手。それでも闘志を見せるロッシは、トップのストーナーがリードを拡大しようとするなかで2周目にペドロサをパスして3番手に上がる。ところがその周の終盤、メインストレートでスロットルを開けたところでわずかに草に乗ってしまうミス。YZR-M1のリアホイールがドライブを失った瞬間にペドロサが再び前へ出た。
ロッシはしかし、ペドロサを視界から離さず、2ラップ後には再び逆転。まず第1コーナーでペドロサのアウト側に回り込み、第2コーナー進入で最もタイトなイン側のラインをとってこれをパス。さらに、前方が大きく開いていたためロッシは自分のペースでの走行が可能となり、7周目には1分30秒801のファステストラップも記録しながらヘイデンとの差を着実に縮めていった。そしてついにはヘイデンに追いつくと4周に渡ってその背後につけていたが、ヘイデンが突然スローダウン。エンジントラブルで結局リタヤすることとなった。
トップのストーナーがさらにリードを広げていく一方で、ロッシはリアグリップが低下し始めたこともあって目標を2位争いに変更。ロッシのペースが下がるとペドロサ、さらにはカピロッシも加わって3台でのバトルとなり、互いに何度か順位を入れ替えたあとペドロサが後退。次はロッシとカピロッシという因縁の対決が展開されたが、ロッシはタイヤの状態もあってペースをキープすることができず徐々に後退。約3秒離されて3位でゴールした。なおその数秒前でストーナーがトップでチェッカーを受けている。
プラクティスを通じてセッティングを詰めきれなかったエドワーズは、決勝を前にセッティングを変更。これに慣れるまでに数ラップを要して序盤はポジションを下げたが、その後懸命のプッシュでいくつか挽回。最終的には9位でゴールして7ポイントを獲得し、ランキングは一つ上げて8位となった。一方16ポイントを獲得したロッシは、ランキング3位のペドロサに29ポイントの差をつけている。
テック3・ヤマハ・チームは、S・ギュントーリと玉田誠がそれぞれ14位と16位。予選はより好調で、ギュントーリが今季4回目の10位を獲得している。次戦はマレーシアのセパンで行われる。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | C・ストーナー | Ducati Marlboro Team | Ducati | 41'12.244 |
2 | L・カピロッシ | Ducati Marlboro Team | Ducati | 6.763 |
3 | V・ロッシ | FIAT Yamaha Team | Yamaha | 10.038 |
4 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | 11.663 |
5 | A・バロス | Pramac d'Antin | Ducati | 19.475 |
6 | R・ド・ピュニエ | Kawasaki Racing Team | Kawasaki | 27.313 |
7 | J・ホプキンス | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 29.243 |
8 | C・バーミューレン | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 34.833 |
9 | C・エドワーズ | FIAT Yamaha Team | Yamaha | 35.073 |
10 | M・メランドリ | Honda Gresini | Honda | 36.971 |
11 | C・チェカ | Honda LCR | Honda | 37.721 |
12 | A・ウエスト | Kawasaki Racing Team | Kawasaki | 38.426 |
13 | 中野 真矢 | Konica Minolta Honda | Honda | 47.430 |
14 | S・ギュントーリ | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | 54.324 |
15 | T・エリアス | Honda Gresini | Honda | 1'10.471 |
16 | 玉田 誠 | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | 1'12.904 |
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | C・スト―ナー | Ducati | 322 |
2 | V・ロッシ | Yamaha | 230 |
3 | D・ペドロサ | Honda | 201 |
4 | J・ホプキンス | Suzuki | 165 |
5 | C・バーミューレン | Suzuki | 160 |
6 | M・メランドリ | Honda | 154 |
8 | C・エドワーズ | Yamaha | 115 |
16 | S・ギュントーリ | Yamaha | 45 |
18 | 玉田 誠 | Yamaha | 37 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Ducati | 349 |
2 | Honda | 268 |
3 | Yamaha | 267 |
4 | Suzuki | 216 |
5 | Kawasaki | 124 |
6 | KR212V | 14 |
COMMENT
V・ロッシ選手談(決勝3位)
「自分にできることはすべてやったので、悔いはないよ。スタートはまずまずで、序盤はとてもペースが良く、トップを狙っていけると思っていた。ペドロサをパスしたときヘイデン、ストーナーにかなり近づいたが、ストレートに入るところでちょっとしたミスをして遅れてしまった。その後もう一度ペドロサを抜き返したが、そのときにはもう、全力で走ってもストーナーには届かなくなってしまっていた。
いくつかとても好調に走れる場所があって、乗っていても楽しかった。とくに終盤は、昔みたいなカピロッシとのすごいバトルを期待していたが、リアタイヤのグリップが足りなくなりペースを落とさざるを得なかった。でもこの特別な場所でまた表彰台に立てて本当にうれしい。ここはいつも、ファンたちがどんどんピットレーンに入ってきて、とても感動的な表彰式になるからね。今日のストーナーは、ムジェロのときの僕みたいだったよ。僕らはこれからマレーシアへ移動する。セパンではいつもいいレースができるので、今回も全力で優勝を狙っていく」
C・エドワーズ選手談(決勝9位)
「プラクティスでは、ずっと問題ばかりで大変だったから、今日はタイヤとマシンセッティングを大幅に変更して、バレンティーノが使っているものに近づけた。だからまったく別のものに乗っているような感じになってしまったんだ。スタートでちょっとミスをしてしまって大回り。それからその周の終盤では危うく転倒しそうになり、また順位を下げてしまった。それでも徐々にマシンに慣れてくると、今まで一度も届いたことのなかった31.9秒を記録できた。9位という成績に満足することはできないが、きのう、一昨日の状況ならもっと悪い結果も十分に考えられた。できることはすべてやったんだ。今回は大勢の友達や親戚が来てくれて支えてくれた。それから、いつものように力を尽くしてくれたチームのみんなにも心から感謝している」
D・ブリビオ、フィアット・ヤマハ・チーム監督談
「レース序盤、バレンティーノはトップと同等のペースをキープしていた。我々としては、これが最終コーナーまで続くことを期待していたわけだ。でも後半になるとグリップが落ちてきて、最終的には3位に留まった。今日は大好きなこのコースで、もっと上のポジションを狙っていたのだが…。コーリンは非常に苦労したが、レース後半でいくつか順位を上げてとても頑張ってくれた。序盤からこのようにできていれば、結果は大きく変わっていただろう。彼のマシンについてはウイークを通じて問題が続いていた。精一杯、やるだけのことはやったんだ。バレンティーノはランキング2位獲得の可能性が強くなっており、あとの2戦で確実にこれをキープするためにも次回のマレーシアGPでは勝利を狙いたい」
S・ギュントーリ選手談(決勝14位)
「スタートはうまくいったが、その後タイヤが暖まるまで待つ間に大きくポジションを下げてしまった。暖まってからはいいペースをキープして、トップグループにも迫るラップタイムを記録することができた。C・デイビスをパスするのに時間がかかってしまい、その間にリードを広げられてしまったので挽回することができなかった」
玉田誠選手談(決勝16位)
「セッティングが非常にうまくいっていた。タイヤについてはフロントはかなり良いフィーリングだが、リアはサイドグリップが不足。バンクしている間はほとんど問題ないが、コーナー進入と立ち上がりがうまくいかなかった」
H・ポンシャラル、テック3・ヤマハ・チーム監督談
「今回は好成績を期待していたので、この結果はとても残念。天候に翻弄され、セッティングをしっかりと煮詰めることができなかった…。でもこれは言い訳にはならない。シルバンが何人かの有力ライダーを抑えてグリッド3列目に並べたことは良かったが、決勝では重要な最初の数周でタイヤが十分にグリップしなかった。しばらくすると徐々にペースが上がってきてトップと同等にまでなったが、すでに5秒以上も離されていたので挽回することができなかった。もっと上を目指していたので残念だ」
辻幸一談(ヤマハ発動機モトGPグループ)
「今回のGPは初日の金曜日から天候、路面状況が目まぐるしく変わり、十分な車体セッティング、タイヤ評価の時間がありませんでした。日曜日の決勝レースは、週末で初めて好天に恵まれるとともに、気温、路面温度とも上昇し、フィアット・ヤマハ・チーム、テック3・ヤマハ・チームとも非常に厳しいレースとなる中で、ロッシ選手が最後まであきらめず3位表彰台を獲得しました。日本では阿部典史選手の悲報があり、ライダー、チーム・スタッフ一同優勝して見送ろうという意気込みが強かったため、残念でなりませんでした。この場をお借りし、慎んで阿部選手のご冥福を心からお祈りいたします。なお、次戦は来週、マレーシアでの開催となります。あらためて皆さんのご支援、ご声援をお願いします」
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