ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.06 6月3日 イタリア
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第6戦イタリアGP
■開催日:2007年6月3日(日)決勝結果
■開催地:イタリア/ムジェロ(5.245km)
■観客数:85,480人
■周回数:23周(120.635km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:24度 ■路面温度:29度
■PP:C・ストーナー(ドゥカティ/2分00秒359)
■FL:D・ペドロサ(ホンダ/1分50秒357)
REPORT
YZR-M1のロッシが今季2勝目!
【速報】
フィアット・ヤマハ・チームのV・ロッシが地元イタリアGPで自身6連勝・今季2勝目を飾った。チームメイトのC・エドワーズは12位、テック3・ヤマハ・チームのS・ギュントーリ、玉田誠はそれぞれ14位、15位となりヤマハ選手全員がポイントを獲得した。
レースはドゥカティ勢の好スタートで始まりL・カピロッシ、C・ストーナーが先行。後方にC・バーミューレン(スズキ)、M・メランドリ(ホンダ)、A・バロス(ドゥカティ)、D・ペドロサ(ホンダ)、ロッシ、J・ホプキンス(スズキ)が続く展開。序盤このトップ8台がテール・トゥ・ノーズの接近戦を見せるが、カピロッシ、バーミューレン、メランドリらが徐々に後退。一方ロッシは2周目以後ラップ毎に順位をアップ。またペドロサも順位を上げ6周目にストーナーを抜いてトップに立つ。
この周ロッシも順位をアップし、続く7周目にはペドロサに次ぐ2番手につける。その後数周はペドロサとロッシのテール・トゥ・ノーズが焦点となるが、ロッシは9周目にペドロサを抜いてトップに。しばらくは2人の接近戦が見られたが、終盤に入るとロッシは差を拡大、最終的には約3秒の差をつけて優勝した。玉田は前日の予選通過タイムをクリアーできなかったが、悪天候下の予選が考慮され最後尾からの出場権を得て出走、力走して15位でポイントを獲得した。
【レポート】
ロッシがまた一つ前人未到の記録を達成した。ホームサーキットでの6年連続優勝を成し遂げたのだ。連日の雨に耐え、グリーンの丘を輝くイエローで埋め尽くした85,480人のファンも、ロッシのこの感動的な勝利に陶酔した。ヤマハ加入後4回目、これまでの12年のキャリアのなかでは、他のクラスも含めて自己通算8回目の地元での優勝だ。
一方、チームメイトのエドワーズは、ドライで見事な走りを見せたものの、6列目スタートというハンディが最後まで響いて12 位。エドワーズの予選での苦戦の原因は、二転三転した気象条件によるところが大きい。GP125の予選が激しい雨に見舞われたため、その後に行われたMotoGPでは、各車、ウエット用タイヤを装着して出走。その後、強い風の影響もあって一気に路面が乾き始め、そのなかで好タイムを記録するライダーも出てきていた。ところがセッションも中盤を迎えた頃に再び雨が降り始め、走行不可能となってピットに避難。しかし幸い雨は長く続かず、すぐにピットアウトしていったロッシが、最後の10分間でそれまでの8位から順位向上を目指した。
フルウエットのタイヤを装着したロッシは、再び路面が乾いていくなかでコンスタントにタイムを上げながら周回。最後から2周目でついには2分01秒695のベストラップを記録して3位。2位にはコンマ3秒差でバーミューレンが入っており、ポールポジションは、雨が降り出す前の路面が乾いた状況で2分00秒359を記録したストーナーが獲得。エドワーズは好タイムが出ず16位で6列目に留まった。
金曜、土曜と午後になると雨が降り出す天候が続いたため、日曜日の決勝でもドライコンディションに合わせて準備するのは無謀とも思われた。そうしたなかウォームアップは、気温が低かったもののドライのまま行われ、さらにGP125、GP 250の決勝の頃には太陽がコースを暖め始めた。そしてMotoGPのライダーがグリッドに並んだときには、気温が週末最高となる29度まで上昇したのだ。
これによってタイヤチョイスはギャンブルになってしまったが、ロッシのスタッフは、経験と技術、知識を生かして最適な選択を行いコンディションに合わせた最高のマシンを作り上げた。ロッシはスタートで出遅れて8番手に後退したが、コースを埋め尽くした大勢のファンがハラハラさせられたのは最初の2~3ラップだけ。ストーナーがポールポジションからリードし、チームメイトのカピロッシがこれに続いて、ドゥカティの2台が逃げるかに見えた状況も、ロッシの追い上げですぐに変化していった。
ロッシが素早くタイヤを暖め、驚くほどのスピードで挽回に転じていたことに、トップの2台は気づいていなかった。3周目、ロッシはまずホプキンスとバトルを展開。続いてバロスを取り込み3台で競り合い、さらにはバーミューレンをパスして順調にポジションを上げていく。そして5周目にホプキンスを突き放すと、6周目に入ったところでカピロッシがミスをして後退。この時点ですでに4番手に上がっていたロッシは、メランドリをパスして3番手。D・ペドロサとストーナーだけがその前方に見えていた。その後ペドロサがストーナーをパスしたため、ストーナーがロッシの標的となったが、ロッシは7周目、得意のカサノバ・サベリのS字で完璧なパッシングを披露しファンを湧かせた。
それから2ラップに渡ってペドロサについていったロッシは、スカルペリア・パラジオのコーナーでついにトップに浮上。その後は2台で一騎討ちを展開し、ツイスティな部分でロッシが逃げ、メインストレートでペドロサが縮めてくるという展開。そうしたなかでも速さにまさったロッシが少しずつリードを拡大し、最終的には3秒以上の差をつけてトップでチェッカーを受けた。若きペドロサは、かつての自らの憧れのヒーローに完敗した形となったものの大健闘の2位。その後方では、終盤でバロスがストーナーをパスして3位。これでシリーズポイントでは、ロッシがストーナーとの差を9ポイントまで縮めることとなった。一方で12位に留まったエドワーズは、ランキングも10位に後退した。
この3日間の変わりやすい天候に、ギュントーリ、玉田も翻弄されていた。ドライセッションの時間が少なかったことから決勝用の最良のセッティングを見つけられないままに出走していた二人は、それぞれ14位、15位に留まったが、今回は初めて決勝で16インチタイヤを採用するなど大きな成果もあった。フランスから続いたウエットコンディションの経験から、新しいウエットタイヤも投入されている。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | V・ロッシ | FIAT Yamaha Team | Yamaha | 42'42.385 |
2 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | 3.074 |
3 | A・バロス | Pramac d'Antin | Ducati | 5.956 |
4 | C・ストーナー | Ducati Marlboro Team | Ducati | 6.012 |
5 | J・ホプキンス | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 13.244 |
6 | T・エリアス | Gresini HONDA | Honda | 19.255 |
7 | L・カピロッシ | Ducati Marlboro Team | Ducati | 19.646 |
8 | C・バーミューレン | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 22.810 |
9 | M・メランドリ | Honda Gresini | Honda | 22.837 |
10 | N・ヘイデン | Repsol Honda Team | Honda | 24.413 |
11 | A・ホフマン | Pramac d'Antin | Ducati | 24.781 |
12 | C・エドワーズ | FIAT Yamaha Team | Yamaha | 28.001 |
13 | 中野 真矢 | Konica Minolta Honda | Honda | 36.733 |
14 | S・ギュントーリ | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | 45.098 |
15 | 玉田 誠 | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | 45.145 |
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | C・ストーナー | Ducati | 115 |
2 | V・ロッシ | Yamaha | 106 |
3 | D・ペドロサ | Honda | 82 |
4 | M・メランドリ | Honda | 68 |
5 | C・バーミューレン | Suzuki | 63 |
6 | J・ホプキンス | Suzuki | 59 |
10 | C・エドワーズ | Yamaha | 39 |
16 | S・ギュントーリ | Yamaha | 14 |
17 | 玉田 誠 | Yamaha | 12 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Honda | 90 |
2 | Yamaha | 59 |
3 | Ducati | 59 |
4 | Suzuki | 29 |
5 | Kawasaki | 28 |
6 | KR211V | 20 |
COMMENT
V・ロッシ選手談(優勝)
「またムジェロで勝てたということは、僕にとっては本当に感動的なこと。心からハッピーだ。地元のファンの前でレースをするときの気持ちは、何かとても素晴らしくて、彼らがいつも以上の力を与えてくれるんだ。コース中にあんなにたくさんのイエローが見えて、彼らが僕のレースに熱狂してくれたことがうれしい。今日は誰もが望んだようにドライコンディションとなり、すべてが計画通りに進んだ。チームのみんなもとても頑張ってくれたのでマシンは完璧。思い通りに走ってくれたんだ。彼らと、そしてミシュランに心からお礼を言いたい。
スタートは良くなかったが、タイヤが暖まってからはYZR-M1がまさに調子よく滑らかに走ってくれたので、すぐに挽回することができた。今日は序盤から皆が100%の力でプッシュしていて、最初の2、3周は本当に面白かった。僕にとっては完璧なレースで、すべての人が僕の味方になってくれているような感じがした。ムジェロは魔法のコース。そしてこの勝利が、次に向けての大きな自信を与えてくれた。今回はヘルメットに大きなハートのデザインを入れたんだけれど、ヤマハを心から愛していることを見せられたと思う。本当に素晴らしい瞬間だ」
C・エドワーズ選手談(12位)
「僕にとってムジェロは、やっぱりあまり良いところじゃない、ということになってしまったのだろうか。このウイークは最初から最後まで最悪だったと言っていい。今日のペースは5位か6位に匹敵すると思うが、何しろあの位置からのスタートなので、1周目で大勢に飲み込まれて6、7秒は遅れてしまった。金曜日の午前中のセッションで多くの時間を無駄にした。たった2時間だけのドライコンディションだったのに、新しく試していたものが結局は何も効果をもたらさないまま終わってしまったんだ。ただただ、コースとの相性が良くないのだと思っている。早くここを離れて次のバルセロナへ向かいたい。次はもっと良くなることを願っている」
D・ブリビオ、フィアット・ヤマハ・チーム監督談
「何と素晴らしい1日なんだ! ムジェロで勝つということ自体がすでに素晴らしいが、こんなに大差をつけて勝てたことが本当にうれしいんだ。これ以上の勝ち方は想像もできない。これは、まず第一に、バレンティーノが持てるすべてのエネルギーとモチベーションを注いだこと、そしてチーム、ヤマハ、ミシュランのすべてのスタッフが力を合わせたことで実現した。このところ厳しい状況もあったが、そのなかで全員が一丸となって戦い抜いて、またこのトップの位置まで戻って来ることができたのだ。シリーズのうちの一つのレースに過ぎないが、今日の勝利はとても重要なものだ。今回はいくつかのエンジン開発を行い、タイヤもまた改良されてきた。このところのこうした動きに良く対応し、好結果を導くことが出来て皆が喜んでいるんだ。
コーリンは、ペースは悪くなかったが、スタート位置が悪すぎて、これが最後まで響いてしまった。もっと前からスタートしていれば、結果は大きく変わっていただろう。この後は、ここよりは好成績の経験があるバルセロナへ向かう。ランキング争いもそろそろ面白くなってきているので、これからも全員で力を合わせて頑張っていく」
S・ギュントーリ選手談(14位)
「今回も実り多い1週間だった。ドライで走るチャンスが少ないなかで、決勝では初めてフロントに16インチを装着、また気温に合わせてリアタイヤも新しいものを採用した。難しい賭けではあったが、それだけの価値があることだったと思う。スタートはあまりうまくいかなかったが、まもなくリズムをつかんで、O・ジャックとチームメイトの玉田をパス。彼らとのバトルはとても楽しくて、最終的にそのグループの一番先頭でゴールできたことは非常にうれしい。今は来週のバルセロナが楽しみで仕方がない。あのコースでは、いつも良い走りができるので、また頑張っていきたい」
玉田誠選手談(15位)
「快晴から嵐まで、ありとあらゆる天気に見舞われて、誰にとっても非常に難しいレースだったと思う。みんな最後までセッティングを決められなかったんだ。レース自体は悪くなかった。オープニングラップではとても感触が良くて、その後タイヤのグリップが落ち始めてからも安定性を保つことができた。16インチのフロントタイヤも前のものよりずっといいので、マシンについてもタイヤについても、レースの度にどんどん向上していると実感している。次のバルセロナは好きなコースなので、僕にとってもチームにとっても良い結果が出るよう期待している」
H・ポンシャラル、テック3・ヤマハ・チーム監督談
「ドライコンディションでレースができたことを感謝する。チームにとっても良かったし、観客にとってもとても見応えのあるレースになった。二人ともスタートは良くなかったが、よく持ち直してペースをつかみ、O・ジャックとC・チェカをパスした。14位、15位は特別に喜べる結果ではないが、二人がそろってポイントを獲得できたことは評価したい。ライバルたちからは依然として遅れているが、16インチのフロントがさらなる前進をもたらしてくれたと思う。シルバンは順調に学び続けていて着実に速くなっている。1年目でMotoGPウイナーやかつてのGP250のチャンピオンをパスするなど、大健闘と言っていいだろう。乗るたびに懸命にプッシュする彼の姿勢は、私を十分に満足させるものだ。もちろん誠のほうも最初から最後まで全力を尽くした。二人のおかげで、チームのランキングではカワサキに2ポイントと迫っている」
辻幸一談(ヤマハ発動機モトGPグループ)
「ロッシ選手の母国GPということもあり、今回のレースを前半戦の一つの山場ととらえ、ここにターゲットを合わせて開発を進めてきましたが、ロッシ選手が優勝し、結果に結びつけることが出来ました。このレースウイークは、初日から不順な天候に悩まされシャーシセッティング、タイヤ選択に十分な時間を費やせなかったものの、ウエットコンデションの予選ではライダーの頑張りで3番手フロントロウを獲得。今週末で最も良い天候に恵まれた決勝では、スタート直後は一時8番手に後退するも、ライダーの力強い走りにマシン、タイヤが応えて優勝し、チャンピオンシップポイントでもトップに9ポイント差まで迫っています。
またコーリン選手は、苦手としているサーキットでありながら12位でチェッカー。テック3・ヤマハ・チームのギュントーリ選手、玉田選手も14位、15位で全車完走を果たしました。次の第7戦スペインGPもロッシ選手が得意とするコースの一つですので、ご期待ください。引き続き、皆さんのご支援、ご声援をお願いします」
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