ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.01 3月10日 カタール
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第1戦カタールGP
■開催日:2007年3月10日(土)決勝結果
■開催地:カタール/ロサイル(5.380km)
■観客数:4,132人
■周回数:22周(118.36km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:29度 ■路面温度:45度
■PP:V・ロッシ(ヤマハ/1分55秒002)
■FL:C・ストーナー(ドゥカティ/1分56秒528)
REPORT
フィアット・ヤマハ・チームのロッシが2位表彰台
【速報】
C・ストーナー(ドゥカティ)がMotoGP初優勝を果たした。フィアット・ヤマハ・チームのロッシは2位。チームメイトのC・エドワーズは6位。ダンロップ・ヤマハ・テック3のS・ギュントーリと玉田は15位、16位で完走した。
ポール発進のロッシを先頭に全車きれいなスタートで開始された決勝。予選2番手のストーナーは1周目にロッシを抜いて首位に立つ。ストーナーを先頭としたトップグループは、ロッシ、D・ペドロサ(ホンダ)、M・メランドリ(ホンダ)、J・ホプキンス(スズキ)、L・カピロッシ(ドゥカティ)。予選3番手のエドワーズはやや出遅れ1周目は7番手。ロッシは序盤5周目にストーナーをさしてトップに立つが、その周再び順位が入れ替わりストーナーが首位のまま中盤へ。
6周目にカピロッシが転倒しトップ集団から脱落。10周目に入ると先頭グループは、ストーナー、ロッシ、ペドロサ、ホプキンスの4選手が約1秒の間にひしめく接近戦となる。その数ラップを終えるとペドロサ、ホプキンスがやや遅れ、首位争いはストーナーとロッシの2人に絞られる。
15周目に入っても2人の差は0.2秒、その後の数ラップもコンマ数秒差の接戦が続くと、19周目にロッシがコーナーの切り返しで素早くインに入りトップを奪う。一方ストーナーはその直後のメインストレートで再度ロッシを抜き返してトップに立つと、残り3周半をストーナーが逃げ切りMotoGP初優勝を果たした。ロッシは2位表彰台。3位にはペドロサが入った。カピロッシの転倒で7周目に6番手に上がったエドワーズは9周目、メランドリを抜き5番手まで挽回。しかし終盤メランドリに抜かれ6位でチェッカーとなった。
【レポート】
フィアット・ヤマハ・チームのV・ロッシは、2007年度世界選手権MotoGPの開幕戦で2位を獲得。優勝はC・ストーナー(ドゥカティ)でGP初優勝。
自己通算46回目のポールポジションから好スタートを切ったロッシ。終始ストーナーとトップ争いを展開し、後続に一時は8秒も差をつける勢いを見せた。残り4ラップとなったところでロッシが勝負に出たが、トップスピードで優位に立ったストーナーがロサイルサーキットの長いストレートで挽回してそのままゴールラインを通過した。一方、予選3位、フロントロウを獲得して好調だったC・エドワーズだが、グリップの問題に悩まされて6位に終わった。
ロッシとエドワーズはウイーク初日の木曜日、800ccマシンで初めてとなるフリープラクティスに臨み、昨年までの990ccマシンによるサーキットレコードを上回るタイムを記録して1-2のポジションを確保する好調ぶり。長い冬の間に行ってきた懸命の作業が実を結んだ形となり、チームは安堵した。なお、開幕戦がヨーロッパ以外の地で行われるのは2004年以来初めてのこと。このときはヤマハに加入したばかりのロッシが、そのデビュー戦で優勝するという歴史的快挙を達成している。
2日目の金曜日の予選も二人は良いペースをキープ。終盤で予選タイヤを試すこととなった。2007年から新しく導入されたレギュレーションでは、ライダー一人についてウイーク中に使用できるタイヤの本数が制限されており、リアが17本、フロントが14本と定められている。二人に用意された予選タイヤはわずかに2本だ。そのなかで予選セッション終盤はロッシ、エドワーズ、ストーナー、T・エリアス(ホンダ)、ペドロサが激しくタイムを競い合い、いずれも昨年のポールタイムを更新。そしてトップに立ったのが1分55秒002秒を叩き出して現行の記録をコンマ5秒以上も上回ったロッシだった。これでロッシの自己通算46度目(ロッシが大好きな数字である)のポールポジション獲得。エドワーズもまた3位に入り、そろってフロントロウに並ぶこととなった。そして二人の間に入ったのがストーナーだった。
気温29度、路面温度45 度という暑さのなかで行われた決勝。ここカタールでは毎回、予選までのペースをいかに決勝距離でもキープするかが非常に重要となる。ロッシは好スタートを切ってレースをリードしたが、オープニングラップを終了する時点でトップの座をストーナーに譲ってしまう。その後はストーナーの背後につけてチャンスを窺う展開となり、この間にはそれぞれの800ccマシンを間近で比較することもできた。ヤマハとドゥカティは特徴が異なり、コース上でもまったく異なる場所でそれぞれが強さを発揮。ドゥカティはストレートで、ヤマハはコーナリングでタイムを稼ぐという状況がよく読み取れた。
ストーナーは最終コーナー立ち上がりからゴールラインへと続くストレートで明らかに優位に立っていた。だからこそロッシは、最終ラップを迎える前に差を広げておきたかったのだ。それで残り4ラップになったところ勝負に出てトップを奪ったが、すぐに抜き返され、ストーナーはさらにペースを上げてそのままチェッカーまで走りきった。最終ラップでは1分56秒528というタイムでサーキットレコードを更新。ロッシの追撃を振り切って2.8秒の差をつけた。3位にはペドロサ、4位にはホプキンスが続いた。
一方、テストから昨日の予選まで素晴らしいパフォーマンスを見せていたC・エドワーズだが、スタートでわずかに出遅れて1周目を7番手で終了。序盤は懸命に挽回を図ったが、滑りやすい路面でグリップに問題を抱えており無理ができなかった。何度か危ない場面があり、一度はもう少しのところで転倒を免れている。そうした状況のなかでもエドワーズは、集中を途切れさせることなく終盤を迎え、残り3周の時点で5番手。しかしその後、メランドリに先行を許して6位でレースを終えた。
2006年の開幕戦でロッシは、コーナリング中に転倒して14位。エドワーズも11位と非常に厳しい状況を強いられたことを考えれば、今回の成績は十分に素晴らしいものと言える。そして今、二人は第2戦スペインGPに向けて自信を高めている。
テック3・ヤマハ・チームではルーキーのS・ギュントーリが15位に入って1ポイントを獲得した。木曜日に始まったレースウイーク中に着実に前進を見せ、ラップタイムも走るごとに縮まってベテランライダーたちに近づく努力を続けていた。またチームメイトの玉田誠はウイークを通じて難しい状況。ヤマハ加入後初めてのレースとなるが、玉田はこれまでも、このロサイルサーキットではあまり良いところがない。コーナーの特徴がそのライディングスタイルにマッチしないことと、タイヤのグリップ不足が原因となり決勝は16位、ポイント圏外に終わった。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | C・ストーナー | Ducati Marlboro Team | Ducati | 43'02.788 |
2 | V・ロッシ | FIAT Yamaha Team | Yamaha | 2.838 |
3 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | 8.530 |
4 | J・ホプキンス | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 9.071 |
5 | M・メランドリ | Honda Gresini | Honda | 17.433 |
6 | C・エドワーズ | FIAT Yamaha Team | Yamaha | 18.647 |
7 | C・バーミューレン | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 22.916 |
8 | N・ヘイデン | Repsol Honda Team | Honda | 23.057 |
9 | A・バロス | Pramac d'Antin | Ducati | 25.961 |
10 | 中野 真矢 | Konica Minolta Honda | Honda | 28.456 |
11 | A・ホフマン | Pramac d'Antin | Ducati | 35.029 |
12 | O・ジャック | Kawasaki Racing Team | Kawasaki | 42.948 |
13 | K・ロバーツJr | Team Roberts | KR212V | 42.977 |
14 | T・エリアス | Gresini HONDA | Honda | 42.989 |
15 | S・ギュントーリ | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | 51.639 |
16 | 玉田 誠 | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | 57.853 |
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | C・ストーナー | Ducati | 25 |
2 | V・ロッシ | Yamaha | 20 |
3 | D・ペドロサ | Honda | 16 |
4 | J・ホプキンス | Suzuki | 13 |
5 | M・メランドリ | Honda | 11 |
6 | C・エドワーズ | Yamaha | 10 |
15 | S・ギュントーリ | Yamaha | 1 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Ducati | 25 |
2 | Yamaha | 20 |
3 | Honda | 16 |
4 | Suzuki | 13 |
5 | Kawasaki | 4 |
6 | KR212V | 3 |
COMMENT
V・ロッシ選手談(2位)
「優勝でシーズンをスタートしたかったけれど、今日のレースは素晴らしかったと思う。午前中のプラクティスでタイヤに関してちょっとした問題が見つかったため少し心配していたが、やるべきことはわかっていたし、正しいタイヤチョイスもできたので満足している。スタートがうまくいってYZR-M1はその後もとても良く走ってくれた。限界ぎりぎりまで僕の思い通りに動いてくれて、プッシュし続けることができた。終盤もっとケイシーを追い詰めたかったけれど、今日の彼はまさにパーフェクト。僕が見ている限りでは一つもミスがなく、終始見事な走りをキープした。勝利をもぎ取った彼を祝福したいと思う。彼はストレートがとても速かったので、僕は前に出たとしても差を広げておかなければならないことはわかっていた。でも実際、彼は本当に強かったんだ! 終盤になって僕らはさらにペースを上げ、その時点ではまだチャンスがあると思っていたんだけれど、彼が好調をキープしたのに対して僕のほうはタイヤがスライドし始めてついていくことができなくなってしまった。これでついに白旗だ。でもいいバトルができたから満足しているよ! もちろん今日はパーフェクトというわけにはいかなかったけれど、去年は2ポイントしかとれなかったことを考えれば、今日の20ポイントはずっといい。これからは、もうちょっと馬力を引き出すことが課題になるが、ヤマハもとても頑張ってくれているので自信があるよ」
C・エドワーズ選手談(6位)
「グリッドの路面が汚れていて、スタートのときにちょっとスピンしてしまった。それがすべての間違いだ。実はグリッドにマシンを並べる前、ちょっと嫌な予感がよぎったんだ。タイヤが暖まるまでに時間がかかるため、最初の数ラップは遅れてしまうんじゃないか、という不安。それがその通りになってしまったんだ。肝心な序盤で十分にプッシュできなかったのは大きな痛手だった。それでもそのあとは何とかペースをキープすることができてトップグループにもついていける気がしていたが、7周目か8周目の第7コーナーで危うく転倒しそうになり、ひざとひじで持ちこたえる場面があったんだ。何とか復帰したけれど、ここでまた遅れてしまった。全体としては悪くなかったしリズムをつかんで走れたと思っているが、フロントのグリップがやや不足したことは残念。プラクティス中はずっと問題なかったから不思議なんだ。その他には、やはりもっとパワーが必要だ。これは今日のレースのなかで明らかになったことで、ヤマハにとっての一番の課題になるだろう。いずれにしろ今回で多くのことを学ぶことができた。ここから前へと進んでいきたい」
D・ブリビオ、フィアット・ヤマハ・チーム監督談
「二人がフロントロウからスタートした今回は、正直なところ、もう少し上の成績を狙っていたことは確か。でも、そんなにひどかったというわけでもないんだ。マシンは好調に走ってくれていたし、バレンティーノは勝利をかけて戦うこともできたのだからね。コーリンは予選までの好調を、今日はキープすることができなかった。でも次のヘレスでは必ず調子を取り戻すと信じている。今日見たところでは、我々のマシンはある部分で強く、ある部分ではちょっと力の足りないところもある。だから今後の課題は、このギャップを埋めていくこと。このレースウイークで、またたくさんの貴重なデータを収集することができたので、エンジニアたちの助けになるだろう。ヘレスもきっと良い戦いができると確信している」
S・ギュントーリ選手談(15位)
「僕にとってMotoGP初レース、とてもよい経験だった。クオリファイで予選タイヤを履くというのも初めてのことで、そのなかで自分のパフォーマンスを向上させていくことができたし、次のレースへの自信も高めることができた。フロントタイヤは数週間前に我々がここでテストしたものと同じでとても良かったし、リアも安定していた。これが決勝のレース中の安定したタイムに繋がったと思う。チームがポイントを獲得できてうれしいし、自分もMotoGPでの初ポイント。だから有意義な週末だったよ。とくにタイヤは最初の6ラップが好調で、何人かのライダーとバトルを展開しながらバロスやチェカにも追いついたんだ。さらに追い上げようとしていたら、自分のリズムを少々崩してしまった。でも彼らとの差は、経験の積み重ねで詰めていける、という感触をもてた」
玉田誠選手談(16位)
「とても残念な結果でチーム、ダンロップに申し訳ない。実はこのコースは、スリッピーでキャンバーの付き方がどうも僕の走りのスタイルに合わないんだ。タイヤのグリップは良かったけれど、攻める走りをしたとき自信を持てない。フロントに少しチャターを感じたこともあってね。まあ今回のカタールのことは忘れて、次のスペインに頭を切替えようと思う。ヘレスは好きなコースだし、前回のテストでもいい感触があり、そのヘレスで今回よりいい結果を出して自分のシーズンスタートとしたい」
H・ポンシャラル、テック3・ヤマハ・チーム監督談
「冬の長くて多忙な時期を経てようやく迎えた開幕戦。初戦としては納得すべきレースだった。ギュントーリは今回のウイーク中セッション毎に進歩を見せ、これにはとても満足。予選でも確実に仕事をこなし決勝でもポイントをゲットした。レース中のラップタイムも非常に安定していた。我々にはまだやるべきことがたくさんあり、さらに前進するため明日(日曜)もここに残ってテストする。玉田は残念な結果になった。3週間前ここで彼は決勝シミュレーションでいい成果を見せてくれたが、今回はいくつかの理由で良いフィーリングを見つけだせなかった。前回スペインでのテスト結果は良好だったので、2週間後のヘレスでは彼本来の走りを期待したい」
辻幸一談(ヤマハ発動機モトGPグループ)
「エンジンの排気量が990ccから800ccへ、ガソリンタンク容量は22Lから21Lへ、レースウイーク中に使用できるタイヤの本数が31本(フロント14本、リア17本)に決められるなど、新しいレギュレーションになってから初めてのレースとなりました。昨日の予選でポールポジションを獲得したロッシ選手がスタートもうまく決めてホールショットを奪い、その後はストーナー選手との一騎討ちとなりましたが、かわすまでには至らず2位でチェッカー。チームメイトのエドワーズ選手も6位入賞。テック3・ヤマハ・チームのギュントーリ選手と玉田選手はそれぞれ15位、16位でレースを終えており、YZR-M1は全車完走を果たしました。新レギュレーション下においてもYZR-M1のパフォーマンスを発揮できたことで、開発の方向性の正しさを確認できた意義のあるレースでした。今後もマシンの開発を加速させ、皆さんにYZR-M1の素晴らしいパフォーマンスをお見せしたいと思います。次節は3月25日、スペイン/ヘレスサーキットでの第2戦となります。皆さんのご声援をよろしくお願いします」
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