ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.17 10月29日 バレンシア
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第17戦バレンシアGP
■開催日:2006年10月29日(日)決勝結果
■開催地:スペイン/バレンシア(4.005km)
■観客数:129,446人
■周回数:30周(120.15km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:32度 ■路面温度:43度
■PP:V・ロッシ(ヤマハ/1分31秒002)
■FL:L・カピロッシ(ドゥカティ/1分32秒924)
REPORT
YZR-M1のロッシ、転倒するも13位で完走!
【速報】
キャメル・ヤマハ・チームのV・ロッシは序盤5周目7番手走行中に単独転倒。最後尾から追い上げるも13位に終わった。優勝は序盤からレースをリードしたT・ベイリス(ドゥカティ)。3位に入ったN・ヘイデン(ホンダ)がシリーズチャンピオンを決めた。他のヤマハ選手はC・エドワーズが9位、C・チェカが10位、J・エリソンが14位でヤマハライダー全員が完走した。
レースはベイリスの好スタートで開始。序盤1~2周目はベイリスとD・ペドロサ(ホンダ)が先行。その後方にヘイデン、M・メランドリ(ホンダ)、L・カピロッシ(ドゥカティ)が続く展開となる。
一方ロッシはスタートでやや遅れ7番手を走行するが5周目に入ったところで転倒。すぐ再スタートするも19番手・最後尾からの追い上げとなる。その後ロッシは上位グループと同レベルのタイムで力走、12周目には先行するC・バーミューレン(スズキ)らの転倒で14番手まで挽回。終盤はC・ストーナー(ホンダ)の転倒でまた一つ順位を上げるが結局13位でチェッカー。3周目に2番手に上がっていたヘイデンは、8周目にカピロッシに先行を許すが3位を維持してゴール、初タイトルを決めた。
【レース展開】
8ポイントをリードして最終戦を迎え、予選でポールポジション獲得し完璧な形でタイトル防衛に臨んだロッシだが、スタートで出遅れたあと5周目に不運が襲った。ロッシは土曜日の予選でポールレコードを更新し続ける好調ぶり。予選は最終的に1分31秒002のタイムで2台のドゥカティ、ベイリス、カピロッシを抑えていた。計算上、唯一タイトルの可能性を残しているライバル、ヘイデンは2列目からのスタート。
シグナルがグリーンに変わるとすぐに状況は一変。ロッシはスタートラインからスロースタート、ポジションを下げてしまう。その一方でヘイデンは順調に1コーナーへ進入。オープニングラップ終了時点でヘイデンは4番手、ロッシは7番手となる。トップは、ほんの2、3週間前にスーパーバイク世界選手権で優勝し、負傷中のS・ジベルナウ(ドゥカティ)に代わって出場したベイリス。
作戦を組み立て直すのに数周を要したロッシを、その後、シーズン前半で相当に苦しめられたバッドラックが再び襲う。5周目の第2コーナーのブレーキングでフロントエンドが切れ込み、ロッシは転がりながらグラベルへ。大きなショックがグランドスタンドを覆い尽くした。しかしすぐに起き上がるとマシンの無事を確認し、周回遅れのG・マッコイからさらに25秒遅れてコースに復帰した。
その一方でヘイデンは、カピロッシとD・ペドロサ(ホンダ)をパスして2番手に浮上。しかし真のチャンピオンのスピリットを見せ、後方から猛追してシーズン開幕戦ヘレスのバトルを彷彿させるロッシに、大勢のファンが期待をかける。7ラップの間にマッコイ、J・エリソン、J・ルイス・カルドソ(ドゥカティ)をパス、さらにはC・バーミューレン(スズキ)、C・ストーナー(ホンダ)の転倒もあってポイント圏内の13番手まで順位を挽回した。次の集団までは30秒もの差があったため、残念ながらポジションアップはここまで。これによってヘイデンは非常に楽になり、カピロッシに2位を譲って安全に3位でゴール。シリーズポイントではロッシに5ポイント差をつけチャンピオンとなった。
ロッシのチームメイト、C・エドワーズもまた実力を出し切れずに9位という結果。ウイークを通じて良いペースを維持していたエドワーズだが、予想外に上昇した路面温度(43度)のために前日までのセッティングが機能しなかった。10番手からスタートしてK・ロバーツ(ホンダKR)、T・エリアス(ホンダ)とバトルしたが、その後徐々に離され、後半はJ・ホプキンス(スズキ)との一騎討ちの戦いに。残り7周でようやくパスして9番手。これでシリーズランキングは7位に浮上した。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | T・ベイリス | Ducati Marlboro Team | Ducati | 46'55.415 |
2 | L・カピロッシ | Ducati Marlboro Team | Ducati | 1.319 |
3 | N・ヘイデン | Repsol Honda Team | Honda | 9.230 |
4 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | 12.065 |
5 | M・メランドリ | Fortuna Honda | Honda | 16.306 |
6 | T・エリアス | Fortuna Honda | Honda | 17.390 |
7 | 中野 真矢 | Kawasaki Racing Team | Kawasaki | 19.329 |
8 | K・ロバーツ | Team Roberts | KR211V | 23.174 |
9 | C・エドワーズ | Camel Yamaha Team | Yamaha | 26.072 |
10 | C・チェカ | Tech 3 Yamaha Team | Yamaha | 28.194 |
11 | J・ホプキンス | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 29.364 |
12 | 玉田 誠 | Konica Minolta Honda | Honda | 29.707 |
13 | V・ロッシ | Camel Yamaha Team | Yamaha | 38.546 |
14 | J・エリソン | Tech 3 Yamaha Team | Yamaha | 1'20.013 |
15 | G・マッコイ | Ilmor SRT | Ilmor X3 | -7 Laps |
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | N・ヘイデン | Honda | 252 |
2 | V・ロッシ | Yamaha | 247 |
3 | L・カピロッシ | Ducati | 229 |
4 | M・メランドリ | Honda | 228 |
5 | D・ペドロサ | Honda | 215 |
6 | K・ロバーツ | KR | 134 |
7 | C・エドワーズ | Yamaha | 124 |
15 | C・チェカ | Yamaha | 75 |
18 | J・エリソン | Yamaha | 26 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Honda | 360 |
2 | Yamaha | 289 |
3 | Ducati | 248 |
4 | Suzuki | 151 |
5 | KR211V | 134 |
6 | Kawasaki | 109 |
COMMENT
C・エドワーズ選手談(9位)
「いろいろな意味で、完全な失敗だ。序盤の2、3周は何度かフロントを滑らせそうになったが、それがなぜなのかがどうしてもわからなかった。タイヤは柔らかめのものを選んでいたが、もてぎ、エストリルと同じものだし、ここへ来てからもとても調子の良いものだったんだ。今日は予想以上に気温が上がったので、おそらくそれが原因なのだろう。いずれにせよ、そういう状況だったためにコーナリングがうまくいかず、かなりスピードを落としてから進入し、しかもひざに頼らなければならなかった。何度もクラッシュしそうになったし、コーナースピードが上がらないのでパスすることができず、ホプキンスにずっとついていくことになってしまったんだ。このような形でシーズンを終えるのは非常に悔しい。チームのみんなはいつも、決してあきらめずにずっと僕を支えてくれたのに、それに応えることができなかったことは残念。またバレンティーノの不運も、チーム全体にとってとても残念なこと。今シーズンはまた別の素晴らしさを見せてくれた彼だったのに…。来年の3月には二人とも新しいバイクで、リベンジを賭けて戻ってくるよ!」
V・ロッシ選手談(13位)
「この最終戦を前に8ポイントをリードしていながらタイトルを逃してしまったことは、もちろん、大きな大きな落胆。今日は基本的に、僕は二つのミスをした。一つはスタート、そしてもう一つがクラッシュだ。今シーズンは本当にいろいろなことがあって、グッドラックもバッドラックも経験し、そして最後にはついにミスをおかしてしまった。でもこれがレースというもの。今僕に言えることは、ニッキーへの“おめでとう”だけ。彼はライダーとして、人間として素晴らしいし、今シーズンは最高のパフォーマンスを見せた、だからチャンピオンになったんだ。彼のことはずっと以前から知っているし、彼の家族のことも知っている。僕自身は残念なことになったけれど、同時に彼のことはとてもうれしいんだ。
今までは、他のライダーとは何かと問題があったりもしたけれど、今シーズンの彼との戦いは、お互いに信頼し合い尊敬し合っていてとても良かった。最後にヤマハ、チームのみんな、エンジニア、支えてくれた人たち全員に心からの感謝をしたい。800ccに変わる来シーズンを今は楽しみにしているよ。来年もまたきっと、激しいバトルが繰り広げられエキサイティングなシーズンになるに違いない」
D・ブリビオ、キャメル・ヤマハ・チーム監督談
「今は当然のことながら、チーム全体を失望感が覆ってしまっているが、同時に、バッドラック続きだった今シーズンの最終戦を、このような形で戦えたことを誇りにも思っている。バレンティーノは信じられないくらいの頑張りを発揮して、いくつもの場面で偉大な世界チャンピオンたる所以を我々に見せてくれた。今日だって、あそこまで順位を落としてしまった後も最後の最後まで戦い続けたんだ。今日は悲しい一日となったけれど、2007年にはタイトルを取り戻すべく、800ccマシンでの新時代に照準を合わせていく。二人のライダー、チームスタッフ、スポンサー、テクニカルパートナー、協力してくれたすべての人の、今シーズンの素晴らしい貢献に対してお礼を言いたい。そしてニッキー・ヘイデンにはおめでとうを!」
C・チェカ選手談(10位)
「いいレースだった。スタートはまずまずで、10位から15位のグループでバトルしていた。そしてバレンティーノが転倒。これでタイトルを逃してしまうことになったので、彼とそのチームのことを考えるととても残念。僕は最終的に10位でゴールしたが、序盤は楽じゃなかった。タイヤのパフォーマンスにはとても満足していて、ずっと安定してくれていたので何人かを抜くことができた。そしてコーリンにかなり近づくことができたんだ。コーリンのチームは別のタイヤメーカーのものを使っているので、僕がここまでやれれば、ダンロップの進化を証明することができたと思う。
ヤマハとはとても近い関係になれたと感じているが、今日はチームを離れ、ダンロップやヤマハともお別れしなければならないのでとても悲しい。後になってこのシーズンのことを思い出し、常にマシンとタイヤの改良を目指して戦い続けたことを満足に感じることができると思う。シーズン序盤の厳しい状況を思い出せば、結果として今シーズンは、僕にとって最高のものの一つだったと言えるだろう。タイヤのことをもっと学び、戦い続けるチャンスをこのチームが与えてくれた。その上人間同士の非常に親密な関係を作ることもできた。そうしたすべてのことを考えて、やはり今はとても満足した気分。
なぜこのチームを離れるのか、現時点ではうまく説明できないが、僕はやはりもっと上のポジションでレースがしたい。このままならまた、開発のために多くの時間が必要になるだろう。この1年間で微力ながら、重要な進歩に貢献できたし、いくつかの結果も残すことができたと思う。彼らはこれからも成長していくだろう。今シーズンは、僕のこれまでのグランプリのなかでも最も充実した1年。決して忘れることはないだろう。ライディングと開発と自分自身を学ぶ機会を与えてくれて、良い仲間になれたことを教えてくれたをエルベ、ヤマハ、ダンロップ、チームのみんなに感謝している」
J・エリソン選手談(14位)
「依然としてチャタリングの問題があり、納得のいくレースができなかったのが残念。シーズンを通して、その面ではほとんど変わっていない。カルロスと同じタイヤを選択したが、スペックが異なっている。セットアップがとても難しく、何をやってみてもチャタリングの問題は消えなかった。4周目頃から出始めて、それとうまくつきあっていくか、あるいはそれを克服しようとトライするかどちらかしかない。でも後者の方法をとれば、アッセンやきのうの予選と同じように転倒してしまうだろう。調子が良くてマシンがちゃんと機能してくれればタイムも上がることはわかっている。でも実際にはコーナーの度にチャターがあり、いつも限界ぎりぎりで走っているので無理なんだ。でも、エルベやチームのみんなの努力には本当に感謝している。彼らの仕事ぶりにはずっと驚かされっぱなしだった。ただ、結果を出すためのチャンスがもう少しだけでもあれば状況は違っていたと思う。僕自身はこのチームに残りもう一度このハードワークを続けていきたいと思っているが、残念ながらそれは実現しなかった。だから今は、ただ彼らに感謝している。そしていつかまたMotoGPのパドックに戻ってきたいと願っている」
H・ポンシャラル、テック3・ヤマハ・チーム監督談
「信じられないような一日。まず一つ目に、バレンティーノがチャンピオンを逃したことは本当に残念。二つ目には、私達のチームとしてはこの最終戦を良く戦えたと喜んでいる。カルロスは16番手からスタートして、何台もパスして順位を上げ素晴らしいファイティングスピリットを見せてくれた。ペースではトップグループにも迫っていて、タイヤが違っているのに多くのライダーを捕らえることができた。そして最後にはホプキンスもパス。コーリンに2秒差まで追いついた。つまりもう少しでヤマハ勢トップになれるところ。しかもダンロップで、というところは重要だと思う。
この1年で大きく前進することができた。予選タイヤではまだ課題があり集中的に作業をしていかなければならないが、シーズン後半は非常に安定していたと思う。カルロスとダンロップの仕事ぶりに感謝。我々は来シーズンもダンロップを使用するが、800ccマシンの導入に伴いタイヤのルールも変わって、よりオープンになるので期待している。唯一、残念なことは、大きな貢献をしてくれたカルロスにお別れを言わなければならないこと。彼の今後の幸運を祈り、そしてもう一度、感謝の気持ちを伝えたい。彼がこの1年、マシンとタイヤの開発にどれほど注力してくれたかということは、私が一番良くわかっている。この後もずっと、彼を応援していく」
辻幸一談(ヤマハ発動機モトGPグループ)
「チャンピオンをかけた最終戦でしたが、残念ながら一歩届きませんでした。明日からチャレンジャーとして気持ちを新たに、来シーズンに向けスタートしたいと思います。これからも引き続き皆さんのご声援をよろしくお願いします」