ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.17 10月29日 バレンシア
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第17戦バレンシアGP
■開催日:2006年10月27日(金)フリー、28日(土)予選、29日(日)決勝
■開催地:スペイン/バレンシア
REPORT
14年ぶり、最終戦でのタイトル決定一騎討ち!
MotoGP史上最もエキサイティングなシーズンの一つが今週末、いよいよクライマックスを迎える。シーズン最終戦のバレンシアで、キャメル・ヤマハ・チームのV・ロッシとN・ヘイデン(ホンダ)がタイトルをかけた一騎討ちの戦いを繰り広げるのだ。円形闘技場のような雰囲気を持つリカルド・トルモ・サーキットは9カ月前に始まったこのシリーズ戦の最終章の舞台として最高の環境と言えよう。
開幕戦ヘレスの第1コーナーでマシンから振り落とされて以来、今季のロッシはモーターサイクルレーサーとしての喜怒哀楽のほとんどすべての感情を経験した。ロッシはグラベルへ押し出しされたり、病院へ運ばれたり、また表彰台の中央へ立ったり、今年はまさに予想を遥かに超えた紆余曲折に満ちた劇的なシーズンであった。とくにシーズン前半はテクニカルトラブルのためにロッシは多くのポイントを失った。しかし第12戦ブルノ以降は5戦連続で表彰台をゲット。ヘイデンとの間にあった51ポイントの差を一気に短縮したのだった。
そして第16戦ポルトガルGPでは2位を獲得。ヘイデンの転倒もありロッシはついにランキングトップに浮上。あと1戦を残して8ポイントのアドバンテージを握った。ロードレース世界最高峰でチャンピオン決定が最終戦までもつれこむのは実に14年ぶりだ。その最終戦の舞台では約12万の観衆が二人の戦いを待つことになる。
C・エドワーズは前回のエストリル同様、ロッシの良きチームメイトとしての役割を務めようとしている。エストリルでは予選2位を獲得し絶好調をアピール。決勝ではロッシのタイトルのためにサポート役にまわり、最終的には4位でゴールした。29日の日曜の夜は、ロッシとともに祝えるようさらに上のポジションを狙う。
COMMENT
V・ロッシ選手談 ー “マイ・ワン・チャンス”
ほんの5戦前までは、タイトル獲得の可能性がほとんどその手中から滑り落ちそうになっていたロッシ。ところが最終戦を目前にした今、まさに千載一遇のチャンスが巡ってきていることを本人も良く承知している。ここ11戦では9回の表彰台獲得と大健闘。この絶好調の影で、前回のヘイデンの転倒という不運なニュースは、もしかしたらすでに人々の印象から遠くなっているかもしれない。皆がロッシ自身の強さに目を奪われているのだ。そしてロッシは今、連続6度目のタイトルを視野にシーズン最後の戦いの地へと向う。
「エストリルは我々にとってとても良い形になった。目標を達成し、依然としてチャンピオン争いを続けていられるからだ。チームの皆に感謝しなければならない。こうしてトップの位置にカムバックするために、一人一人が100%の力を注いで頑張ってきた。そして今、最後の戦いを前に気持ちがとても高揚しているんだ。これまでのように何戦かを残してタイトルを決めたときとは、当然状況が違っている。チャンスは一度しかない。だから皆が大きなプレッシャーを感じているけれど、それだけに素晴らしいレースになるに違いない。バレンシアでのこれまでの成績は、決して良くはない。その一方でヘイデンはいつもとても強いんだ。だから間違いなく厳しい戦いになる。でもYZR-M1はとっても調子がいいし、昨年のこの大会ではとくに後半で強さを発揮した。フロントロウからスタートすることができれば、優勝を狙っていくことも可能だろう。でもどんなことになるとしても、エキサイティングなレースには違いないだろう。できればエストリルと同様に、コーリンと僕がそろって上位を走りたい」
C・エドワーズ選手談 ー “チーム・プレーヤー!”
エドワーズは言う。彼の今回の一番の目標は、大切な友人でありチームメイトでもあるロッシのタイトル獲得に貢献することであると。そのためのベストの方法と言えばもちろん、このところの好調を維持し、二人で作り上げてきたYZR-M1をさらに進化させることだ。エドワーズのこうした考え方は、キャメル・ヤマハ・チームのなかに自然に育まれてきたもののようだ。そして日曜日の決勝の最終ラップ、チェッカーフラッグが2006年度チャンピオンを出迎えるときにその思いも報われる。
「最終戦を非常に楽しみにしている。きっとものすごい接近戦になるだろうね。エストリルではコースがチームに味方し、僕もバレンティーノの助けになることができた。一番の目標が達成できたというわけだ。もちろん僕自身が表彰台に立てなかったのは残念だったが、マシンがとても良く走ってくれたことはうれしかったし、今回のバレンシアでも同じことができるという予感がある。
バレンシアは何度も走っていて良くわかっている。しかも僕がそこでとても速いということもわかっているんだ。 エストリルと同様、目標はバレンティーノとともにフロントロウに並び、決勝では彼をサポートできればいいね。そしてもちろん今回は、僕も一緒に表彰台に上りたい。ヤマハの1-2ということになれば、シーズン締めくくりとしては最高だからね!」
D・ブリビオ、キャメル・ヤマハ・チーム監督談 ー “ファイナル・プッシュ”
キャメル・ヤマハ・チームのライダーとスタッフは苦しかったシーズン中盤をともに乗り越え、強い団結力と精神力とを培ってきた。その集大成をブリビオは、前回のポルトガルGPで目にすることとなった。そして800ccマシンが導入される新時代の幕開けを前にした今、最も大切な最終決戦に臨む。
「夏の休暇以来、集中力を維持して一つ一つのレースに全力で臨んできた。そしてブルノ以降の目標は、シーズン終了まで、とにかく戦い続け最終戦を迎える時点で計算上タイトルの可能性を残しているようにすることだった。ポルトガルGPを終えて、その計算上の可能性は、我々が思っていたよりもずっと高くなった。
しかし決してまだ終わったわけではない。今シーズンのさまざまな経験から、レースではどんなことでも起こりうることを我々自身が一番良くわかっているんだ。今回もまたドラマティックな週末になるだろう。しかし我々の目標はこのところの5、6戦とまったく変わらない。それぞれの仕事にひたすら集中し、二人のライダーに最高のマシンを提供できるようベストを尽くすことだ。それができればバレンティーノとコーリンも自分たちの役割をしっかりと果たし、日曜日の夜には皆でともに祝うことができるだろう」
J・バージェス談(ロッシのチーフエンジニア) ー “テクニカル情報”
競技場のようなスタイルのリカルド・トルモ・サーキットは、いくつものタイトコーナーが連続し、その間を短いストレートでつなぐ、観客にとっては非常に見応えのあるレースが展開されるコース。最後から二つ目となる長く回り込むような左コーナーと、ハイスピードで進入する1コーナーが、インフィールドのマシンを左右に振って抜けるシケインや低速コーナーと強いコントラストを作っている。
「バレンシアはタイト&ツイスティー。だからバレンティーノの好きなコースとは言えない。でも2004年には優勝しているし、昨年も予選のポジションが悪かったにもかかわらず3位を獲得することができた。だからYZR-M1がここで良い走りをしてくれるということはわかっているんだ。今シーズン学んだことは、このクラスで優勝するためにはフロントロウからスタートしなければならないということ。今回もフリープラクティスでマシンセッティングをしっかりと煮詰め、予選と決勝に備えたいと考えている。
技術的なことでは、話すべきことはあまりない。低速ギアを多用するコースでフルスロットルはほんのわずか。そして高速セクションはバックストレートとメインストレートの二つだけ。また左の最終コーナーはとてもユニークで、世界中のどこのコーナーとも違っている。レースの行方を左右する非常に重要な場所なので、ゴールラインへと続く加速のために十分な注意を払ってマシンを作り上げなければならない。ここ以外はどれも低速のコーナー、そして反時計回り。特徴と言えばそのくらいしか見当たらないね!」