ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.08 6月24日 オランダ
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第8戦ダッチTT(オランダGP)
■開催日:2006年6月22日(木)フリー、23日(金)予選、24日(土)決勝
■開催地:オランダ/アッセン
CIRCUIT DATA
■開設:1955年
■コース長:4.555km
■レコードラップ:2分0秒991(2005年:V・ロッシ)
■ベストラップ:1分58秒936(2005年:V・ロッシ)
■2005年の優勝者:V・ロッシ
REPORT
伝統のアッセンで新たな挑戦
MotoGPは今週末、その発祥の地であるオランダはアッセンへと戻る。1949年の世界選手権開始から今も残っている唯一の開催地で、最も歴史のあるGPコース。現在の一部公道を使用するコースとなったのは1955年で、今もなおほぼ毎年改修が施され進歩を遂げ、今回も大規模な改修が行われている。レース名には歴史あるTT(ツーリストトロフィー)の名がつけられ「ダッチTT」と言われている。またここは、ダッチウェザーと呼ばれる天候の急変が特色のため、予測ができずレースの作戦がたてにくいことでも知られている。
大規模なコース改修が行われてから初めての開催となる今回は、チームにとっても新たな挑戦だ。特徴的なノーザン・ループが取り壊されて駐車場と観覧席に生まれ変わったこの新しいコースで、キャメル・ヤマハ・チームは3連勝を目指して戦う。
ムジェロ、カタルニアと連勝を果たし、タイトル争いへの復帰を確実にしているV・ロッシは、第76回ダッチTTにベストコンディションで臨む。ロッシはここアッセンで過去の4シーズン中3回の優勝を果たしており、今回ももちろん、現在ランキングトップのN・ヘイデン(ホンダ)との間にある29ポイントの差をつめるべく最高の成績を狙っていく。
チームメイトのC・エドワーズもまた、ここアッセンで3度の優勝経験をもつ。世界選手権スーパーバイクで活躍中のときのことで、タイトル獲得を果たした2002年シーズンには両レース優勝も成し遂げている。また昨シーズンは3位を獲得しロッシとともに表彰台に上るなどコースとの相性は良い。前回カタルニアから採用しているニューフレームのセットアップも好調で、昨年に続き表彰台獲得を目指す。
COMMENT
V・ロッシ選手談 ー “期待”
前回のカタルニアGPで自己通算56度目の優勝を飾ったロッシ。今回はそれからわずか5日目の開催、さらに次回のイギリスGPも翌週の開催と忙しいスケジュールが続くが、好調のロッシはこの3連戦を非常に重要なチャンスととらえている。
「レースが3週連続するというのは実はちょっと問題だよ。だって一つ目でもしけがでもしてしまったら、後の二つも出られなくなってしまう可能性があるからね。それに、けがでなくても3戦目にはみな疲れてしまって集中力も続かなくなってくるだろう。厳しい戦いになると思うよ。アッセンは好きなコースで、ここでマシンを限界まで走らせるとものすごい感動があった。でも今はコースが変わってしまって、新聞などの記事によれば“アッセン・マジック”が消えてしまったっていうから、前ほどわくわくできなくなってしまったのは事実。それでももちろん、依然として楽しいコースであってくれること望んでいるし、きっといいレースもできると思う。雰囲気は変わらず素晴らしいはずだし、オランダのファンはいつも温かいからね。
ムジェロ、カタルニアと連勝。しかも、もしもル・マンであのトラブルがなかったらすでに3連勝していたことになる。これは、少なくとも昨年のこの時期と同じくらいのコンディションに戻ったということ。ここ数戦が非常に重要なので、できる限りたくさん勝ちたいと思っている。ランキングも3位まで上がってきたが、前回の優勝ではヘイデンに5ポイントしか追いつけなかったわけで、まだ29ポイント差が残っている。彼はコンスタントに表彰台に上っているので、僕らとしてはとにかく勝ち続けるしかない」
C・エドワーズ選手談 ー “走りなれた場所”
エドワーズにとっても、ここアッセンは最も相性の良いコースの一つ。しかしロッシ同様、コース改修によってその特徴が失われてしまったことを残念に思っている。前回のカタルニアでは5位を獲得。これから彼にとって非常に重要となる3戦、アッセン、ドニントン、ラグナセカが続くが、表彰台復帰を目指して戦っていく。
「僕は、アッセン、ドニントン、ラグナセカで育ったようなもの。そして、MotoGPでもその3箇所では表彰台に上った経験があるからこれが良いジンクスになるといいけど。データ上ではヤマハのマシンは新しいコースで良く走るはずなので、ニューフレームのセットアップをもう少し行えばスピードも上がってくるだろう。バレンティーノはすでに成功して結果を出しているので、あとはもう少し小さな変更を加えながら僕のスタイルに合わせていき、彼のスピードに近づいていきたい。
他のライダーも同じだと思うけど、僕も以前のアッセンサーキットに非常に愛着を持っていた。その特徴が大きく失われていないことを望んでいる。でもコースがどうであれ、雰囲気は以前と変わらず熱狂的であるに違いないし、あそこには僕のファンもとても多い。とくにイギリスから大勢やって来てくれるからね。日曜の午後には彼らが何か大声で叫べるように、僕も頑張るよ」
D・ブリビオ、キャメル・ヤマハ・チーム監督談 ー “チームの努力”
このところの忙しいレーススケジュールは、どのチームにとっても大変なストレスになっていて、キャメル・ヤマハ・チームも例外ではない。ライダーやエンジニアはもちろんケータリングスタッフに至るまで、チームの全員にいつも以上の努力が求められ、各々の役割を徹底的に遂行しなければならない重要な時期だ。ブリビオは、今週、そして来週と続くスケジュールのなかで着実にポイント争いを展開をしていくために、各自が果たすべき役割は大きい、と語っている。
「日曜日の夜になるとガレージのなかでは次々に箱詰めが行われ、またホスピタリティーブースの簡易テントなどが分解されていく。そしてわずか2日後には、1,800kmも離れた場所で再び荷を解かれて組み立てられるのだと思うと驚かされる。チームにとっては大きな試練でありプレッシャーでもあるが、このことは同時に、すべてを完璧に準備してくれるチームのサポートがあってこそ、ライダーが輝けるのだということを証明していると思う。ムジェロの前は次の4戦で優勝することを目標にしていたので、今はその半分が達成できたことになる。残りの二つも、もちろん簡単なことではないが、同様のパフォーマンスを見せ、同様の成績を勝ち取りたいと思っている。
アッセンはコースが改修されてほとんど生まれ変わっており、僕らにとっては昨年における中国、アメリカ、トルコと同じようなもの。でもマシンのベースセッティングが大幅に改善されているので、すぐに適合できるに違いない。きっと面白いレースになるだろう」
A・ズグナ談(エドワーズのデータエンジニア) ー “テクニカル情報”
昨年のオフシーズン中にアッセンサーキットは改修されて大幅なレイアウト変更を受けた。しかし依然として、GPサーキットのなかで最もテクニカルで最も体力的な要求の高いコースの一つであることに変わりはない。ストレートはほんのわずかで、高速シケインや劇的にバンク角が変化するコーナーが多いために、やはりハンドリング性能が重要なポイントとなる。バンク角については、以前のコースでは76年も前のものだったが、今は公道で採用されているプロファイルに近づいている。ズグナは、昨年までの情報が依然としてとても貴重であると話している。
「非常に特徴的で、高いバンク角をもち、左から右への素早い向き替えが要求されたノーザン・ループがなくなったコースがどんなものなのか、とても楽しみにしている。コースの前半は上海と似ていて、1コーナーから4コーナーまではタイトな右が続くためタイヤの右側に大きな負担がかかる。またライダーの体力も要求される。
マシンのセッティングに関しては、昨年のもので90%は対処できると思うので、まずはそこからスタートする。金曜の午前中は残りの10%に関してデータ分析を行い、それをベースにエンジニアたちが調整を加えていく。アッセンはおそらく、より“ノーマル”なサーキットになっているだろう。以前はパーシャルスロットルの時間がほとんどで、今もそれは変わっていないようだ。ギアボックスやエンジンのセッティングに集中するよりは、素早い向き替えやモディファイを受けた低速のシケインに対処するための適正な中間点を見つけ出すことが重要になる。昨年はセッティングがうまくいって表彰台を獲得することができた。今年も同様に、二人そろって表彰台を狙いたい」