ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.04 5月14日 中国
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第4戦中国GP
■開催日:2006年5月12日(金)フリー、13日(土曜)予選、14日(日)決勝
■開催地:中国/上海
CIRCUIT DATA
■開設:2004年
■コース長:5.451km
■レコードラップ:2分13秒716(2005年:A・バロス)
■ベストラップ:1分59秒710(2005年:S・ジベルナウ)
■昨年の優勝者:V・ロッシ
REPORT
中国グランプリいよいよ開幕!
開幕からスペイン、カタール、トルコと世界を転戦してきた2006年シーズンのMotoGP。第4戦となる今回は、アジア大陸の東端に位置する中国は上海へと移動する。次の第5戦から9週間/7レースの予定で始まるヨーロッパラウンドを前に、キャメル・ヤマハ・チームも最後の「アウエーレース」に臨む。
キャメル・ヤマハ・チームのV・ロッシはここまで、開幕戦ヘレスの第1コーナー転倒、第2戦ドーハで優勝、続くイスタンブールではマシントラブルと悪天候に翻弄され4位、と好調と不調の繰り返し。チームメイトのC・エドワーズも状況はほぼ同じで、予選では好調な走りを見せながら決勝では結果につながらないなど、安定しない。
上海インターナショナルサーキットは、2004年に解説され、2004年にはF1、2005年にはMotoGPを誘致し、世界でも数少ない二輪・四輪両方の最高峰レースが開催されたコースとなった。このコースは、H・ティルケとP・ワーランドの設計によるもので、コースレイアウトは漢字の「上」の字をモチーフにしている。サーキット内の施設も独特で、上海の古い庭園「豫園」にあるような古代中国の建物がデザインされている。そして膨大な敷地面積を有するこのサーキットはその収容人数が20万人で、最大の特徴が、実に29,000人を収容する巨大なグランドスタンド。ここからはコースの約80%を見渡すことができる。
コースの特徴としては、長いストレートが2本あること。そのうち直線距離が長いバックストレートは1,175mにもなる。このためアベレージスピードが高いとイメージされるが、実は低速コーナーや中速の切り替えし、そして上り最大3%、下り最大8%というアップダウンなどテクニカルな一面も持ち合わせており、F1の関係者からは「ツインリンクもてぎのようなイメージだ」との声も聞かれる。
COMMENT
V・ロッシ選手談 ー “ドライでの優勝を狙う”
昨年はウエットコンディションのなか優勝を果たしたロッシ。今回はドライでの勝利を狙っている。降りしきる雨のなかでの昨年の見事な戦いぶりは、彼のキャリアのなかでも最も印象的なレースの一つとなったが、今年はよりはっきりとした形で実力をアピールしたいところだ。
「今までのすべての優勝のなかで、昨年の中国GPほど勝つ自信のなかったものはなかったんだ。だってウイーク中ずっとトラブルに悩まされていたし、決勝日には雨が降っちゃったんだから。あれがヤマハに乗ってから初めての、ウエットでの勝利だった。だから本当に特別なんだ。でも今年はどうしてもドライで走りたい。YZR-M1の2006年型は、トルコのウエットで我々が期待しているような走りができなかった。少しでも多くドライコンディションを走り、セッティングを詰めたいんだ」
トルコ同様、上海サーキットもH・ティルケの設計によるものだが、どちらかと言えばマレーシアのセパンによく似ており、ロッシによれば、ライダーのセットアップ能力が問われるコースだという。
「去年初めて走ったときの印象はとても良かったんだ。でもその後、それほど楽しいコースじゃないと思うようになった。かなりタイトでテクニカル。むしろF1のコースに向いていて、理想的なMotoGPサーキットとは言えない。だから皆、適切なセッティングを見つけるのに苦労してしまうんだろう。ライダーにとってもマシンにとっても最大の努力と負荷を要求されるサーキットだ」
C・エドワーズ選手談 ー “予測不可能…”
開幕から3戦、アップダウンの激しいレースが続いたエドワーズは、この中国GPでのポイントが何か、いま一つわからないと話す。そしてロッシと同様に、YZR-M1のセットアップデータを少しでも多く収集するため、ドライコンディションを望んでいる。
「去年はドライがほとんどなかったから、今の段階では皆、どんなことになるのかまったくわかっていないんだ。だからできるだけ早く適切なセッティングを見つけて、それから決勝をにらんで耐久テストをしておきたい。そしてこれまでの3戦であったような問題がもう起こらないということを確認したいんだ。今回は我々にとって非常に重要なレース。ヨーロッパラウンドが始まる前に、本調子を取り戻して好成績を挙げておきたい。
イスタンブールのレース翌日の月曜日に行ったテストはとても収穫があり、いいヒントが得られた。もしも土曜日に雨が降っていなければ、決勝のラップタイムがどこまで伸びたかということもわかった。いずれにしても時間を戻せるわけじゃない。今の我々に最も必要なのは、できる限りたくさん周回を重ね、できるだけ多くのデータを集めること。そしてエンジニアたちに分析してもらうことだ。彼らは今回も全力で頑張ってくれると信じているし、きっと何かの答を見つけてきてくれるだろう」
D・ブリビオ、キャメル・ヤマハ・チーム監督談 ー “ヨーロッパラウンへの布石”
ブリビオはこの中国GPを、チームの運を転換させる絶好のチャンスだととらえている。昨年は素晴らしい成功をおさめたこの場所でまた好成績を再現し、いよいよ重要な時期を迎えるチャンピオンシップのターニングポイントとしたいところだ。
「昨年はここで優勝することができた。しかも見事な勝ち方だった。だからその後の戦いで非常に重要な意味をもつレースとなった。雨に悩まされたが、同時にドライコンディションで問題になっていた部分の解決策を導き出してくれた。だから今回もそうなることを望んでいる。シーズン序盤は厳しい戦いだ。ヘレスの第1コーナーで転倒したバレンティーノは不運だったが、それでも依然としてランキングトップに近いところにいる。一連の問題が解決されたとき、バレンティーノとコーリンがどこまでやれるかが楽しみだ。そして、今はこの中国GPでそうなることを望むばかりだ。
グランプリのスケジュールは、今週から11週間の間に8レースが組まれている。それには誰もがプレッシャーを感じている。例えば我々のチームの運転手たちは、中国からトラックをピックアップに行き、それから休みなしでフランスへと向かわなければならない。ライダーたちはもっと大変だ。彼らは本当に休む暇がない。でもこれからの3カ月間はチャンピオンシップのなかでも最も重要な時期で、我々は持てる能力を最大限に引き出せるように努力しなければならない。だから今回のレースはこれからの戦いにおいても非常に大切なんだ」
R・グロンランド談(エドワーズのサスペンション技師) ー “テクニカル情報”
トルコのイスタンブールサーキットと同じ人物による設計だが、上海インターナショナルサーキットのレイアウトは、むしろセパンに近い。ロングストレートと低速で難しいハードブレーキングのコーナーが混在し、セッティングではその両方の妥協点を見つけ出すのが第一の課題。また天候も重要な鍵を握る。昨年のような天気が変化や独特の高温多湿の気象条件もあり、路面グリップはプラクティスが始まるまで未知数だ。
「上海はある部分ではトルコに似ているが、その一方でまったく違うところもある。例えばトルコのように流れるようなレイアウトではないが、高速コーナーもたくさんあって、またハードブレーキングの場所も混在する。だからセッティングに関して言えば、とくにサスペンションで最も重要になるのが適切な妥協点を見つけることだ。低速コーナー進入で曲がりやすいマシンに仕上げなければならない。そうでなければ、トルコの終盤部分と同じように大きくタイムをロスしてしまうだろう。
昨年が初めての開催だったので、データはその1回分しかない。しかも雨が降ったり止んだりだったため非常に少ない。しかし、実はそのことはそれほど心配していない。なぜならトルコで一定の成果が得られたからだ。ヘレスやカタールであったような振動の問題は、すでにかなり少なくなっているし解決策も見つかった。今回は路面のグリップレベルが鍵となるが、これについては決して楽観はできない。それでもきっとうまくいくと信じている」