ヤマハ発動機が「鈴鹿8耐」に込めたもの
2025年、ヤマハ発動機は創立70周年を記念して、鈴鹿8耐で2019年以来6年ぶりにファクトリーチームを復活。そして2026年もファクトリー参戦を決定しました。
当社にとっての鈴鹿8耐の意義や参戦目的とはなんなのか? 鈴鹿8耐の主幹部門であるモータースポーツ統括部 MS価値創造部長の中村正がその思いを語ります。
現在は、MotoGPの日本グランプリの方が観客は入っていますが(2025年は日本グランプリが90,096人、鈴鹿8耐が61,500人)、かつて鈴鹿8耐は決勝だけで16万人(1990年)の観客が入った伝説的なレースです。磐田の本社からも近いサーキットであり、MotoGPよりも歴史があり(※ロードレース世界選手権は除く)、ブームではなく鈴鹿8耐独自の文化が形成されています。その歴史・文化の中で当社としてもアイコニックな出来事がたくさんあり、日本で鈴鹿8耐はMotoGPと並び、当社を代表するモータースポーツ活動である、と言えます。
MotoGP、鈴鹿8耐、それぞれまったく異なるカテゴリーであり、それぞれ異なる役割・目的・魅力を持っているので、ヤマハ発動機としても、鈴鹿8耐ならではの価値を皆さまにお届けできると思っています。
鈴鹿8耐を使っての社内活性や、二輪業界の活性化をしたいという思いもあり、創立70周年となった2025年、2019年以来6年ぶりにファクトリー活動を復活しました。ようするにヤマハ発動機にとって鈴鹿8耐は今でも、社を一つにまとめ、日本の濃いコアなファンに当社や二輪、モータースポーツの魅力を届ける絶好の機会であると考えているのです。
社内活性で言えば昨年は、新入社員300人、既存の従業員300人による応援ツアーを組んで、ファクトリーチームをはじめ、世界耐久選手権(以下EWC)のレギュラーチームである「Yamalube YART Yamaha EWC Official Team(以下YART)」、そして「YZF-R1」を使用してくれるプライベートチームに声援を送りました。
2025年は、4連覇を達成されたホンダさんに注目が集まりましたが、その一方で、私たちもファクトリーチームを復活し、強者であるホンダさんに立ち向かいました。このライバル関係があったことで大いに盛り上がったと思いますし、私たちもたくさんの応援をもらって本当に大きな喜びを感じたわけです。
これを踏まえて昨年は、会場、業界、市場が盛り上がり、社内では一体感を醸成しながら、技術開発、人材育成といろんなものに効果があったと思います。その中で特に感じたのは、鈴鹿8耐はモータースポーツ部門のみの活動ではなく、ヤマハ発動機としての活動であるということでした。そして2位だったこともあり、やはりシンプルに"勝ちたい"、ファンの皆さんの期待に応えなければならいレースであると痛感したのです。だから今年もファクトリー活動を継続し、社内の応援ツアーも継続して、ヤマハ発動機として鈴鹿8耐を戦います。
ただ、昨年と同じでいいかというと、そんなことはありません。できることは限られてきますが、実は終わった後すぐに、ライバルに対してライダー、ピットワーク、マシン、レースストラテジー... どこにどれだけのギャップがあったかについて比較・分析し、アドバンテージとディスアドバンテージを把握して、その対策をしてきました。
手当の方法についても新しいチャレンジがあります。私たちには全日本のJSB1000での活動もあれば、スーパーバイク、EWCでの活動もあって、それぞれが持っている経験、知見をかけ合わせることでシナジーを生み出していくという方法です。
それは同じやり方に固執するのではなく、違う視点も入れていくということです。例えばYARTはEWCにおいて長い参戦経験があるだけでなく多くの勝利を重ねてきたトップチームですが、私たちファクトリーチームとYARTの経験を共有することで戦略の質を上げていくことができます。具体的には、YARTでライダーとして活躍したニッコロ・カネパさん(現在は当社欧州拠点のロードレース活動マネジメント責任者)を中心に、欧州拠点との協業を強化しています。つまり勝つためには変革も必要なのです。
レースはライバルがあることなので絶対はありませんが、それでも目標である勝利に向け、過去のレコードである220周を超えていくために、積み上げを続けています。
昨年からライダーを変えなかったのも本気の表れです。今年は開催が早まったことで3名が揃ってのテストができずぶっつけ本番みたいなところもあります。だからこそ昨年の経験を活かすことができる勝つために最善のライダーたちを選びました。特に中須賀選手は昨年の鈴鹿8耐は怪我で苦戦しましたが、今年の全日本で示している通りまだまだ速い。そして何よりも彼の懐の深さがこのチームには必要不可欠なのです。
鈴鹿8耐はヤマハとして大事なものだし、8耐のファン、ヤマハのファン、モータースポーツファンの皆さんにとってもすごく大事なシンボルみたいなもので、そこにとてつもない価値があると思っています。だから私たちヤマハ発動機も本気で挑戦しています。ぜひ鈴鹿サーキットで一緒に盛り上げてください。












