インタビュー:マンディ・カインツ「20年間、私のTo Doリストには"鈴鹿の表彰台"と書いてある」
シーズン前半は、良い点も悪い点もありました。2戦ともにポールポジション獲得したことが証明しているように、常に一番速かったのがYARTです。開幕戦のル・マンでは1つポジションを下げて2位でフィニッシュ。勝ったチームと同一周回でした。開幕戦は特にポイントが重要であり、今シーズンは鈴鹿8耐以外の3つは24時間なのでエンジンをキープする作戦で手堅くポイントを獲りにいきました。だから勝利ではなくとも、2位で満足でした。
ベルギーのスパでのライダーたちはとても素晴らしい仕事をしてくれました。ポールポジションを奪い、レースもリードしていたのに18時間目にエンジントラブルでリタイアとなったのです。それでもまだタイトルの可能性は残っているので、鈴鹿では逃したポイントを取り戻さないといけません。
特に今回の鈴鹿はヤマハのファクトリーチームがいないので、YARTがヤマハのトップチームであり、最高のバイクとライダーを持っていることを見せる機会だとも思っています。ライダーの3人は若くて仲良しで、モチベーションは高いし、身体的にも優れています。でも正直に言えば、YARTにNo.1ライダーはいません。みんながチームのために頑張れる、100%のチームプレーヤーが集まっています。そして、スターライダーのような特別な存在もいません。飛び抜けての速いライダーもいません。3人が同じで、しかも高いレベルにあるのです。だから地球のどのライダーでも選んでいいと言われたとしても、ラインナップは変わりません。私は同じ3人を選びます。まさにドリームチームなのです。そしてこのチームは鈴鹿でも必ず躍動してくれると思います。YARTを止められるのは不運だけだと思います。
今、不運と話しましたが、3人が速いことがバイクにストレスを与えているのかもしれません。他のバイクはペースの遅いライダーがいるために休憩できるけど、YARTのバイクは残念ながら24時間休憩する暇がないのです。3人ともすごくストレスを与え続けて、リミットを超えてしまうのです。
一方でYARTの戦い方も影響を与えているかもしれません。耐久の中にあって常にスプリントだからです。我々にとっては、各スティントが各レースになっているようなものです。EWCのレベルは今とても高く、違うやり方では勝つことができません。耐久は特別なレースです。一番速くなくても勝てますが、勝つための前提条件としては速いことが必要なのです。
耐久レースはギャンブルだと思っています。速いバイク、速いライダーだけでは耐久では勝てません。計算できない要素、テストできない要素がたくさんありすぎるのです。なぜなら、24時間、まったく同じコンディションでテストをすることは不可能だからです。8時間はまだいいけど、24時間は本当に何があるかわかりません。20年間で100戦以上戦ってきましたが、毎回、「なぜだ?」、みたいなびっくりするようなことが起こるのです。だからこそおもしろいのですが、耐久チームのマネージャーの寿命は長くないかもしれませんね。
2019年以来、また鈴鹿で戦うチャンスをもらえてうれしく思います。というのも、20年もの間ずっと、私のTo Doリストには「鈴鹿の表彰台」と書いてあるからです。以前は全メーカーのファクトリーが揃ったレースで4位に入ったことがありますが、今考えるとすごいことですね。
今回は、カワサキとホンダのファクトリーが強いでしょう。普通に戦えば勝てないと思います。でも、2つファクトリーがあることで、ストレスをかけ合う状況が生まれればチャンスはあります。それ以外のチームでは、FCCだって、ヨシムラだってホームレースで有利だけど、逆にプレッシャーはかかると思います。YARTの3人も背負うものがあるけど、ライバルほどではなく、クール(冷静)でいられます。でもこういったことが有利を生み、強みになるのです。
最後にヤマハにはありがとうと伝えたいですね。ヤマハがいないと鈴鹿ではレースができませんから。耐久レースでは一人でトロフィーを獲ることはできません。ヤマハと力を合わせ、ファンの声援を力にして、3人のライダーとチームクルーが一丸となって、夢の表彰台を、勝利を目指します。応援をよろしくお願いします。