ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.10 7月26日 イギリス
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第10戦イギリスGP
■開催日:2009年7月26日(日)決勝
■開催地:イギリス/ドニントンパーク(4.023km)
■観客数:89,977人
■周回数:30周(120.69km)
■コースコンディション:ウエット
■気温:18度 ■路面温度:21度
■PP:V・ロッシ(ヤマハ/1分28秒116)
■FL:J・ロレンソ(ヤマハ/1分31秒554)
REPORT
エドワーズが2位表彰台!
フィアット・ヤマハ・チームのV・ロッシとJ・ロレンソは、ともにトップ走行中に転倒。ロッシは再スタートして挽回を図り、見事に5位を獲得したが、ロレンソは再スタートできずにそのままリタイヤとなった。モンスター・ヤマハ・テック3のC・エドワーズは2位を獲得し、ヤマハによる表彰台獲得記録を更新。チームメイトのJ・トーズランドは今季自己ベストタイの6位。優勝はA・ドビツィオーゾ(ホンダ)だった。
ロッシはポールポジションからスタートしてトップで第1コーナーへ。しかし1周目は順位の変動が激しく、最初に戻ってきたのはT・エリアス(ホンダ)。これにロレンソ、ロッシの順で続いた。さらにその後の数周はトップ5台の間でめまぐるしく順位が入れ替わったが、5周目が始まるところでロレンソがトップに浮上。ロッシもD・ペドロサ(ホンダ)とドビツィオーゾをパスして2番手に上がり、フィアット・ヤマハが1-2体制を築くこととなった。この時点では、今回もまたふたりのトップ争いが展開されるかに見えたが、9ラップ目にロレンソが、最終コーナーで白線に乗り転倒。幸いけがはなかったため再スタートを試みたが、マシンにダメージがありリタイヤを余儀なくされた。
これによって優勝争いは、ロッシとドビツィオーゾによる一騎討ちになる。この時点で後続に10秒以上も差をつけていた。ふたりは互いに激しくプッシュしトップ争いを続けたが、20周目、小雨で路面が滑りやすくなってきたところでロッシが転倒。大きなダメージはなく、11番手でレースに復帰した。その後、雨が強くなったため、マシン交換のためにピットに戻るライダーも何人かいたが、ロッシはこのチャンスに賭け、そのまま走行を続けてポジションを挽回。最終ラップにはトーズランドをパスして5位を獲得した。
エドワーズは序盤、路面コンディションと、初めて履くソフトコンパウンドのタイヤの状態を判断するため慎重にスタート。ところどころで小雨が降る状況のなか、一時は15番手まで後退し、7周目を終えた時点でも13番手に留まっていた。しかしその後、変わりやすいコンディションにしっかり対応する見事な走りを見せ、20ラップ目には5番手に浮上。そして23ラップ目、ペドロサをパスして3番手に上がったころには最速タイムを出すなど、ますます絶好調。終盤ではR・ド・ピュニエ(ホンダ)と2位争いを展開し、最終ラップでこれをとらえて2位を獲得した。優勝したドビツィオーゾとの差はわずか1.360秒。エドワーズにとってはこれで、MotoGPで11回目の表彰台。
一方のトーズランドは母国のファンの声援を受けて、L・カピロッシ(スズキ)、M・メランドリ(カワサキ)、M・カリオ(ドウカティ)らとバトルを展開しながら、目標のトップ6を目指していた。そして最終ラップを迎えた時点では自己ベストの5位獲得が実現するかに思われたが、最後からふたつ目のコーナーでロッシに抜かれて6位となった。
シリーズポイントでロッシは、2位のロレンソとの差を25ポイントに拡大。3位のストーナーはさらに12ポイント差。MotoGPはこのあと3週間の夏休みに入り、8月16日のブルノで第11戦が行われる。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | A・ドビツィオーゾ | Repsol Honda Team | Honda | 48'26.267 |
2 | C・エドワーズ | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | 1.360 |
3 | R・ド・ピュニエ | LCR Honda MotoGP | Honda | 1.600 |
4 | A・デ・アンジェリス | San Carlo Honda Gresini | Honda | 8.958 |
5 | V・ロッシ | Fiat Yamaha Team | Yamaha | 21.622 |
6 | J・トーズランド | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | 22.465 |
7 | M・メランドリ | Hayate Racing Team | Kawasaki | 35.284 |
8 | N・カネパ | Pramac Racing | Ducati | 38.769 |
9 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | 42.112 |
10 | M・カリオ | Pramac Racing | Ducati | 45.845 |
11 | L・カピロッシ | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 53.190 |
12 | G・タルマクシ | Scot Racing Team MotoGP | Honda | 1'12.315 |
13 | C・バーミューレン | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 1'20.398 |
14 | C・ストーナー | Ducati Marlboro Team | Ducati | -1 laps |
15 | N・ヘイデン | Ducati Marlboro Team | Ducati | -1 laps |
LAP CHART
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | V・ロッシ | Yamaha | 187 |
2 | J・ロレンソ | Yamaha | 162 |
3 | C・ストーナー | Ducati | 150 |
4 | D・ペドロサ | Honda | 115 |
5 | C・エドワーズ | Yamaha | 103 |
6 | A・ドビツィオーゾ | Honda | 94 |
12 | J・トーズランド | Yamaha | 55 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Yamaha | 230 |
2 | Honda | 164 |
3 | Ducati | 156 |
4 | Suzuki | 89 |
5 | Kawasaki | 79 |
COMMENT
V・ロッシ選手談(5位)
「ホルヘが転倒してしまった後は優勝に向かって突き進んでいた。だってそれがいつもの僕のスタイルだからね。今になって考えてみれば、あのときドビツィオーゾを先にいかせるべきだったんだろうけど、今日のような難しいコンディションのなかでは判断が難しかったんだ。スリックタイヤで雨のなかを走るのはリスクが高く、今日もとても滑りやすかった。左コーナーがすべて濡れていたので、タイヤの左側が暖まらず、それが転倒の原因になったと思う。低速コーナーだったからマシンのダメージもほとんどなかったのは幸い。
実際、転倒の前も後もマシンは絶好調だったんだ。再スタートしてからは、雨が降っていたけれどスリックのままいくことを決意して、一気に挽回していった。その結果として貴重な11ポイントを手にすることができたよ。そして、これによってチャンピオンシップのリードを拡大することができたんだ。転倒は残念だったけれど、ライバルたちに差をつけて夏休みを迎えられるのは本当に良かった。ドビツィオーゾはもちろんだけど、とくに2位のコーリンを祝福したい。今日の彼はまるでデビルみたいだったよ!」
D・ブリビオ、チーム監督談
「今日はチャンスを逃してしまったけれど、そのなかでも何とか納得できるところまで挽回できたので良かったと思う。あのような難しいコンディションではミスも起こりやすいが、最終的な目標はやはりチャンピオンシップだ。それを考えれば、今日の結果は残念なことではなく、むしろ評価すべきこと。これでレース1回分のリードができたわけで、大きなアドバンテージを得たと言える。次の戦いに備えて、このあとはしばらく休みに入る」
J・ロレンソ選手談(リタイヤ)
「スタートがうまくいったし、最初の2、3周は好調で、気分良くトップを走行することができていたんだ。でも9周目の最終コーナーでちょっとしたミスをしてしまい、ラインを外して白線に乗ってしまった。あそこはとても滑りやすくて、もうどうすることもできなかった。
体は大丈夫だったから再スタートしたかったけれど、残念ながらマシンのダメージがひどすぎたんだ。こんな結果になったことはとても悲しいし悔しいけれど、これがレースというもの。悲しみなんか何の役にも立たないから、ここからまた学び、前を向いていかなければならない。バレンティーノは再スタートできたから良かったけれど、総合的にはやっぱり、今日の僕らはついていなかったと言うしかないね。このあとは夏休みをエンジョイし、たくさんトレーニングをして力をつけて、次のブルノに臨みたい」
D・ロマニョーリ、チーム監督談
「なんというクレイジーな1日なんだ! 好成績を目指していたのに、ホルヘは白線に乗って、その絶好のチャンスを逃してしまった。しかもマシンがフェンスの下に入り込んでしまったことも不運だった。これで再スタートもできなくなってしまった。今回もチームはみなとても良く頑張ってくれていて、おかげでウエットでもドライでも好調だった。それだけに、このような結果は悔しくて仕方がない。ホルヘはこのことからまた何かを学び、さらに強くなってくれるだろう。このあとは少しブレイク。ホリデーというには短過ぎるが、この2カ月間とても忙しかったので、リフレッシュすることができるだろう」
C・エドワーズ選手談(2位)
「緊張の48分間だったけれど、スタート直後は表彰台獲得などまったく考えられなかったんだ。スタートで何が起こったのかはっきりしないが、とにかく大勢があらゆるところから攻めて来た感じだった。僕はフロントに初めて試すタイヤを履いていたので、その感触をつかむまでに少し時間が必要だった。そして勢いが出て、タイヤの感じもわかってきてから、ようやく僕の本来のプッシュを始めることができたんだ。
でも残り7、8周くらいのところでは、コースのどこで雨が降っていて、どこで降っていないのかがわからなかったので、何度か転倒しそうになった。そして常に、どこでグリップし、どこでしないかを考えながら走ったんだ。このような状況ではミスをおかしやすいし、タイヤの左側が暖まらなかったこともあって、懸命に意識を集中しなければならず精神的にとても疲れてしまったよ。そのなかでもド・ピュニエとの差を一気に詰め、ついにはバトルへと持ち込んだ。コースのいくつかの場所で彼のほうが速く、またその他のいくつかの場所では僕のほうが良かったが、最終ラップで運良く彼をパスし、そのまま抑えきることができた。ドビツィオーゾからはかなり離されてしまっていて届かなかったが、最後のドニントンで2位を獲得できたことは素晴らしいと思う。いつも僕を支えてくれるテック3のみんなに感謝。ヤマハとブリヂストンも、今日はとても良く走ってくれた。今は本当にハッピー!」
J・トーズランド選手談(6位)
「何から話していいのか分からないよ。今日のようなコンディションのなかでは、レース中にどれくらいの雨が降るのか、またどこに降るのかを判断するのが難しくて、そのためにたいへんな集中力が必要になったんだ。体を伏せて、スタートでは5番手につけたが、でもそのすぐあとには10番手まで落ちてしまった。タイヤの左側が暖まらなかったからだ。ピットに戻ってレインタイヤに交換しようかと一時は迷ったけれど、結局はそのまま、ミスをしないように慎重に走り続けることにしたんだ。
逆にピットに戻りマシン交換をするライダーもいたので、その分、順位が上がって終盤で5番手。その時点では、このままなら自己ベストの5位を獲得できるかもしれないと思い始めていたよ。地元のファンの目の前でそんなことができれば最高だったんだけれど、最終ラップでバレンティーノが一気に仕掛けてきた。S字で抜かれたあと、また一度は抜き返したんだけれど、彼はメルボルン・コーナー進入のブレーキングで再び僕を圧倒した。
あれ以上執拗に頑張ればミスにつながって、ふたりともだめになってしまうと思ったので、そこでやめて6位でゴール。これでも昨年の雪辱は十分に果たせたと思う。素晴らしい走りを見せて、表彰台を獲得したコーリンを心から祝福する」
H・ポンシャラル、チーム監督談
「とてもドラマティックなレースだった。コーリンの見事なパフォーマンスは信じられないほどだ。このような変わりやすいコンディションのなかで、かなり難しいレースになったが、ピットに戻らないというコーリンの判断はまったく正しかった。スリックタイヤで厳しい状況に対応し、しかも何度か素晴らしいラップタイムを記録しファンを魅了したのだ。彼と、そしてシーズン開幕からずっと彼を支えてきたモンスター・ヤマハ・テック3のすべてのスタッフを祝福したい。
コーリンは出場ライダーのなかでは最年長のひとりに入るが、今日の活躍は、若くなくてもMotoGPで速く走ることができることを証明した。もちろん、あとほんのわずかのところで優勝を逃したことに後悔がないとは言えないが、いま我々は本当にハッピーだ。
ジェームスのほうも本当に良くやった。昨年はここで残念な結果に終わったが、今年は、ホームGPのプレッシャーと、難しいコンディションのなかしっかり戦えることを証明して見せた。もしもバレンティーノを抑えて自己ベストの5位を獲得していたとしたら、それは本当に素晴らしいことだが、私としてはふたりを賞賛するだけだ」
中島 雅彦談(技術開発部MotoGPグループリーダー)
「今年も典型的なブリティッシュウエザーに悩まされ、スタート直前のグリッド上では路面はほぼドライながら小雨がぱらつき、タイヤ選択、セッティング調整が難しい状況となりました。ピットクルーはバイク交換に備え、準備をしながらレースを見守りましたが、路面に水がない状況ではウエットタイヤでのタイム向上は望めず、我慢のレースとなりました。トップ争いのなかでバレンティーノ、ホルヘ両ライダーが転倒したことは残念ですが、レースでは起こり得る事だと思います。最終的にはバイク交換をしない判断が奏功し、コーリンが2位表彰台、転倒から追い上げたバレンティーノが5位、ジェームスが6位を確保してくれたことは、悪いコンディションでも戦闘力を維持できていることを示したくれたと思います。これでしばしのサマーブレークに入りますが、新レギュレーションに備え、確実な準備をして新たな気持ちで後半戦に臨みたいと思います」