ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.16 10月5日 オーストラリア
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第16戦オーストラリアGP
■開催日:2008年10月5日(日)決勝結果
■開催地:オーストラリア/フィリップアイランド(4.448km)
■観客数:50,541人
■周回数:27周(120.096km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:17度 ■路面温度:27度
■PP:C・スト―ナー(ドゥカテイ/1分28秒665)
■FL:N・ヘイデン(ホンダ/1分30秒059)
REPORT
ロッシ、最終ラップで2位をもぎ取る!
〔速報〕
C・ストーナー(ドゥカティ)が今季5勝目を飾った。フィアット・ヤマハ・チームのV・ロッシは、予選12位から追い上げ最終周にN・ヘイデン(ホンダ)をパスし2位表彰台を獲得した。チームメイトのJ・ロレンソは4位、テック3・ヤマハチームのJ・トーズランドはロッシと抜き差しを繰り返す3番手争いを見せるが結局6位、C・エドワーズは8位だった。
レースはストーナーとヘイデンのリードで開始され2人が序盤から独走。その後はトーズランド、ロッシ、ロレンソ、中野(ホンダ)、A・ドビツィオーゾ(ホンダ)の5選手が一団となった走行で3番手争いが展開される。7周を終えた頃、既にトップとは5秒差となり、ストーナーが独走していく。
1周目を8番手で終えていたロッシは8周目にトーズランドをとらえて3番手に上がる。そのままロッシはトップグループを追撃するかに見えたが、そこで"待った"をかけたのがトーズランドだった。8周目から5周にわたり、トーズランドとロッシは熾烈なデッドヒートを展開。コーナー進入で先行するロッシに対し、ワイドなラインで旋回速度を生かすトーズランドが再び抜き返す展開が続く。13周目に入ってトーズランドとの抜き差しに決着をつけたロッシは3位の単独走行へ。この時点でトップのストーナーとの差は8秒、2番手へイデンとの差は6秒だった。
ロッシに抜かれた後のトーズランドは、ロレンソ、ドビツィオーゾ、中野を引き連れて4番手グループの先頭を走りポジションを終盤24周目までキープ。しかしその後、ロレンソ、中野に先行を許して6位でのフィニッシュとなった。
終盤の4番手争いの攻防戦を尻目に確実に2番手ヘイデンとの差を詰めていたのがロッシ。13周目に6秒あったヘイデンとの差を毎ラップ確実につめ、27周目の最終ラップにヘイデンを抜き去り2位をもぎ取った。
[レース展開]
フィアット・ヤマハ・チームのV・ロッシは、グリッド4列目から見事な追い上げを見せて2位獲得。チームメイトのJ・ロレンソは、前回に続いて2度目の4位。優勝はC・ストーナー。
最高峰クラスで6度目、自己通算8つめとなるタイトル獲得決定からわずか5日、ロッシは第16戦オーストラリアGPのフリープラクティスを開始した。午前中は明るい太陽に恵まれて走りも好調で、ストーナーに続く2位でセッションを終了。ところが午後になると天候が悪化し、海に面したサーキットを雨と強風が襲うとロッシは6位まで順位を下げることとなった。
一方、チームメイトのJ・ロレンソは午前中、とくにタイヤの左側のグリップが問題となりやいこのコースの特徴を考慮し、ミシュランの決勝用タイヤをテスト。午後になると、このところのウエット・コンディションでの好調をここでも再現した。
土曜日は晴天ながら気温が下降。ロッシは午前中のセッションを6位で終え、午後からの公式予選ではフロントロウ獲得を狙っていた。ところが予選タイヤ2本目のアタック中にコースアウトを喫し、グラベルにタイヤを取られて転倒。首の筋肉にダメージを受け、軽度のむち打ち症を負ってしまった。ロッシはその後ピットに戻って医師の診断を受けたあと、スペアマシンで再びコースに出たが、ライン通過がわずかに遅れてラップタイムを更新することができなかった。
ロレンソは予選2位を獲得して今季7度目のフロントロウ。ポールポジションはストーナー、3位にはN ・ヘイデンがつけた。前日のドライ・コンディションで思うような走りができなかったロレンソは、夜を徹してセッティング変更を行った結果、午前中のフリープラクティス最終セッションで3位。午後からの公式予選でも好調をキープし、4本の予選タイヤすべてでタイムを更新した。そして最終ラップのタイムでストーナーに0.069秒届かず2位となった。
テック3ヤマハ・チームではJ・トーズランドが予選5位。今季2度目となるフロントロウまで、あとわずか0.2秒と迫っていた。またチームメイトのC・エドワーズは、モトGP参戦100戦目となる今回、予選タイヤ1本目で一時トップに立った後、7位で予選を終えた。
天候が変わり易いことで知られるフィリップアイランドだが、決勝日は好天に恵まれ、気温も20度と絶好のコンディション。すでに10年間にもわたって、ここでの表彰台セレモニーを楽しみにオーストラリア南部まで旅をする大勢のファンの期待に十分に応えることとなった。
ロッシはグリッド後方から好スタートを切って、A・ドビツィオーゾ、L・カピロッシ、D・ペドロサらをパス。さらにA・デアンジェリスの転倒もあり、1周目を終える時点で早くも8番手まで浮上していた。デアンジェリスは、R・ド・ピュニエのブレーキングミスの犠牲となってロッシの目の前で転倒。ロッシもこれに巻き込まれそうになったが、間一髪、接触を免れた。
ロッシはその1周後にまたひとつ順位を上げると、いよいよ3位争いへ。この時点でレースをリードしていたのはテック3のトーズランド。2位と3位もいずれもヤマハ勢で、ロレンソ、エドワーズの順で続いていた。2列目からスタートしたロレンソは1周目でヘイデン、トーズランドに先行され、その後トーズランドとしばらく競り合ったあと3番手に落ち着いていた。
ロッシは900メートル・ストレートの終わりでスリップストリームを使い、中野真矢とエドワーズをパス。さらに前方でバトルを繰り広げるロレンソ、トーズランドとの差を一気に短縮した。
5周目には、ロレンソのタイムを1秒以上も上回る1分30秒284でファステストラップを記録。そしてついにロレンソを捉えると、さらにその2ラップ後にはトーズランドにも襲いかかった。しかしトーズランドは決意の走りを見せ、2コーナー進入で果敢にも反撃に出ると、懸命にポジションをキープしようという構え。トーズランドの力走はその後も5ラップにわたって続いたが、ロッシは第2、第3コーナーでの優勢を生かしてついにパスに成功。そのあとはリードを拡大してゴールを目指した。
すでにチャンピオンを決定しているロッシは無理をする必要はなかったが、依然として楽な道を選択するようなことはしなかった。そして澄んだ空気、YZR-M1、ブリヂストン・タイヤが完璧な状況を作り出すと、ロッシはヘイデンとの間にあった6秒以上の差を次第に詰めていった。1.2秒差まで近づくと、残り2ラップではそれを一気に詰め、最終ラップの1コーナー進入でついにヘイデンをパス。ヘイデンはこれに反応できずロッシはそのまま逃げ切って2位、今季14度目の表彰台を獲得した。
ロレンソは終始、激しいバトルを展開したが、わずかに表彰台にはとどかなかった。懸命に食い下がるトーズランドを25周目にパスして4位。そのトーズランドはオーバーランを喫し、その間に中野に抜かれて6位となった。エドワーズは自己通算100回目のモトGPレースを10位で終えた。
ロッシはすでにチャンピオンを決定し、そのチームメイトのロレンソにはルーキー・オブ・ザ・イヤー獲得の可能性が残されている。また今回はポイント争いのライバル、ペドロサが転倒リタイアに終わったことから、ランキング3位まであと27ポイントと近づいた。次回は2週間後、マレーシアのセパン・サーキットで開催される。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | C・ストーナー | Ducati Marlboro Team | Ducati | 40'56.643 |
2 | V・ロッシ | Fiat Yamaha Team | Yamaha | 6.504 |
3 | N・ヘイデン | Repsol Honda Team | Honda | 7.205 |
4 | J・ロレンソ | Fiat Yamaha Team | Yamaha | 11.5 |
5 | 中野真矢 | San Carlo Honda Gresini | Honda | 11.914 |
6 | J・トーズランド | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | 12.243 |
7 | A・ドビツィオーゾ | JiR Team Scot MotoGP | Honda | 12.78 |
8 | C・エドワーズ | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | 25.92 |
9 | R・ド・ピュニエ | LCR Honda MotoGP | Honda | 26.037 |
10 | L・カピロッシ | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 26.799 |
11 | T・エリアス | Alice Team | Ducati | 27.027 |
12 | A・ウエスト | Kawasaki Racing Team | Kawasaki | 47.808 |
13 | J・ホプキンス | Kawasaki Racing Team | Kawasaki | 48.333 |
14 | S・ギュントーリ | Alice Team | Ducati | 48.899 |
15 | C・バーミューレン | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 48.935 |
LAP CHART
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | V・ロッシ | Yamaha | 332 |
2 | C・ストーナー | Ducati | 245 |
3 | D・ペドロサ | Honda | 209 |
4 | J・ロレンソ | Yamaha | 182 |
5 | A・ドビツィオーゾ | Honda | 145 |
6 | N・ヘイデン | Honda | 131 |
7 | C・エドワーズ | Yamaha | 126 |
11 | J・トーズランド | Yamaha | 100 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Yamaha | 361 |
2 | Ducati | 286 |
3 | Honda | 275 |
4 | Suzuki | 165 |
5 | Kawasaki | 81 |
COMMENT
V・ロッシ選手談(2位)
「最初から最後までエキサイトなレースだったよ。残念なことに昨日僕はミスをおかしてグリッドは後方、身体も痛めることになった。今朝の僕は、首の方は問題なかったが頭痛は依然として残っていた。そうした中、マッサージと投薬で、僕のコンディション回復を支えてくれたドクター・コスタとクリニカモービルには感謝しなければならない。
スタートは上手くいって、幸運なことにアンジェリスを僅か数センチでパスすることができロレンソとトーズランドに追いつけた。最初トーズランドをパスした時、僕はそのまま突き放せるかと思っていたが、彼はまた僕を抜いてきた。彼のペースは決して悪くないことを目のあたりにし、結局その後は彼といいバトルになった。彼はとても速く、抜くのは大変だったよ。でも結局僕は抜くことができて、その後僕は前を行くヘイデンを追っていった。すると彼の姿がだんだん大きく見えてきたんだ。最終ラップまで彼を追い上げていくのは楽しかったし、このコースの表彰台は格別な感動があり、2位表彰台はとても嬉しいね。
チームとブリヂストンに感謝。速さを取り戻したストーナーとともに、出来る限りのレースを展開できてよかった。本当にレースを楽しめた」
D・ブリビオ、フィアット・ヤマハ・チーム監督
「優勝は逃したが、バレンティーノは"ネバーギブアップ!"の信じられない走りのパフォーマンスを披露してくれた。グリッド4列目発進で表彰台を獲得すること自体凄いことなのに、彼は最後まで力をふり絞って2位獲得だから。身体の調子は完璧とは言えなかったが、クリニカモービルのケアにより彼はベストの走りが出来た。今日は本当に最初から最後までエキサイトなレースだった」
J・ロレンソ選手談(4位)
「表彰台を狙えると思っていたから、この結果に満足していない。思うように走れず、トーズランドが何度も前に出てきて上手くかわせず、バレンティーノが前に出たときについて行けなかった。普段、バレンティーノのリズムについていけるのだが、今日はうまくいかなかった。
計算上では、ランキング2位、3位も可能だったが、今日の結果で、現実的にはあり得なくなってしまったと思う。今、最も重要なことは、残りのマレーシアとバレンシアで、いい成績を残し、今シーズンをいい形で締めくくること。チームも、タイヤもマシンも上手く機能してくれているし、結果も良くなっているが、もっと上を目指せると思う。マレーシアのコースは好きだし、冬のテストでも乗っているし、ミシュラン・タイヤとの相性もいいと思うので次戦が楽しみだ」
D・ロマニョーリ、フィアット・ヤマハ・チーム監督
「表彰台を狙えると思っていたし、それだけの実力もあったから、今日の結果には満足していない。昨日に比べて、リアのグリップに少し問題があって、ハードブレーキが必要なコーナーで他のライダーよりも少し遅れをとってしまった。それはさておき、いいレースだったし、ロレンソは素晴らしい4位争いを展開した。結果には納得していないが、レース自体は楽しめたし、次戦を楽しみにしている」
J・トーズランド選手談(6位)
「信じられないような展開!僕は絶好のスタートを切ったけれど、ケイシーとニッキーもとても速くて一気に蹴散らされてしまった感じ。それでそのあとは、このコースではいつもタイヤの左側の耐久性が問題になるので、終盤の数ラップの戦いに備えてタイヤを温存することにしたんだ。とにかくトラブルだけは避けたいと思っていたが、いざ始まってみると激しいバトルのなかにいた。最初にやってきたバレンティーノとのバトルはやはり格別で、抜かれたとき、すぐに抜き返しておかなければならいと直感でわかったんだ。あそこで逃してしまったら、あとは限界ぎりぎりまで攻め込まなければならなくなって、そうなればタイヤをあっという間に消耗してしまうからだ。何とか彼を抑えようとできることはすべてやったが、その時点ですでにリアがスピンしていて、とうとう抜かれてしまった。そして彼が差を広げようとしていたので、僕としても頑張ってついて行こうとして少しハードに攻め過ぎたようだ。そしてそれが結局、終盤の戦いに影響した。でもバレンティーノとあのようなバトルができたことは、それだけでとても光栄なことだ。
最後の3ラップはグリップが落ちてきて、そのせいでさらにふたつ順位を下げることになった。最終ラップのヘアピンでアンドレアをパスしようとしたら、ふたり揃ってはらんでしまって、彼はちょっと怒っていたような感じだったが、結局、彼に接触することなくパスすることができたんだ。怒らせたのなら申し訳ないと思うが、彼の怒りは理由のないもの。僕はただ、モトGPでのベストリザルトを目指していただけなんだ。僕がコーナー出口ではらんだときに真矢に先行されたが、シベリア・コーナーでまた抜き返した。総合的に見て、今日の走りには満足している。一生懸命に走って見応えあるレースを見せることができたと思うし、自分自身もエンジョイできた。すべてを出し切ることができて、しかもバレンティーノをパスすることができたことは、僕にとって最高の励みだ」
C・エドワーズ選手談(8位)
「スタートがうまくいったので、3位争いか4位争いに絡んでいけると思っていた。ところが最初の数周で、そう簡単にはいかないということがわかったんだ。というのもコーナーの進入も立ち上がりもまったくだめ。それでライバルたちのそばについていることさえ出来なかった。また、序盤のうちに、今まではなかったフロントエンドの不具合から危ない場面に遭遇。それ以降はプッシュすることもできなくなり、ペースをキープするのがやっとという状態で31秒5以上はどうしても不可能だった。最終盤にはド・ピュニエがリアタイヤに問題を抱えていることがわかったので、僕は少しずつ差をつめていった。そしてついに彼をパスすると、あとは懸命にそのポジションをキープした。ただ、今日は間違いなく表彰台を狙っていけると思っていただけに残念で仕方がない。あんなに頑張って8位という結果では納得しようがない。今日のペースでは、僕はまさに限界のラインの上を走っているような感覚があったが、それでもまだ足りなかったということだろう。グランプリ100回目の出場を祝うには不十分な出来だったと言わざるを得ない。ジェームズはとてもよく頑張った。次のマレーシアでも期待したい」
H・ポンシャラル・テック3・ヤマハ・チーム督談
「今日のジェームズは本当に素晴らしかった。今季最高のポジションを、これ以上はないというような見事な展開でもぎとった。またも6位に留まったのは残念だが、今日の走りによって彼はまた、真のファイターであることを我々に見せてくれたのだ。昨日の予選ではジェームズが5位、コーリンが7位と好調だったので、それぞれ心のなかで自信を深めていた。ジェームズはスタートもうまくいって3位争いを展開することとなったが、これには我々も驚かされた。というのも、タイヤに厳しいこのコースで、そのペースをどこまでキープできるかは我々としても未知数だったからだ。しかしジェームズは最後までペースをキープして、ランキング上位のトップライダーたちと互角に戦ったのだ。なかでもバレンティーノとのバトルは特別で、見ているほうもはらはらさせられた。バレンティーノに抜かれたあと、すぐに抜き返すようなライダーは、そう多くはない。ジェームズがそれをやってのけたのには本当に驚いているんだ。チームとしてはやはり表彰台獲得を夢見ているわけだが、今日のような走りのほうが観客を魅了するに違いない。今日の走りは自分自身への最高の誕生日プレゼントになったと思う。コーリンのほうは期待したようにはいかなかったが、やはり最後まで懸命に戦ってくれた。そしてそのおかげで、我々チームとしてはランキング4位に再浮上することができた。
また、125ccクラスで優勝したマイク・ディメリオを祝福する。フランスのチームとして、その故郷で育ってきたライダーの活躍を見るのはとてもうれしいことだ」
中島雅彦フィアット・ヤマハ・チーム総監督
「オーストラリアGPが行われるフィリップアイランドは、メルボルンから南に200km程の最南端に位置します。この時期はまだ春先の冷たい風と変わりやすい天候に悩まされます。高速コーナーと切返しの連続で高い旋回性が要求されますが、路面温度が低く、思ったようにグリップが得られないためにマシンセットアップは苦しい状況が続きました。V・ロッシ選手は予選のタイムアタック中の転倒の影響で万全とは言えない体調で、後方からのスタートを余儀なくされ、厳しいレースとなりましたが、確実に順位を上げ、最終ラップには2位を奪う大健闘でした。J・ロレンソ選手、J・トーズランド選手も激しい4位争いを展開し、大いにレースを盛り上げてくれました。C・エドワーズ選手を含め、4台のYZR-M1が上位で完走できたことは我々スタッフにとっては大きな励みになりました。残り2戦もさらに高みを目指して頑張りたいと思います」