ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.11 7月20日 アメリカ
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第11戦USGP
■開催日:2008年7月20日(日)決勝結果
■開催地:アメリカ/ラグナセカ・スピードウェイ(1周3.610km)
■観客数:47,000人
■周回数:32周(115.52km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:21度 ■路面温度:34度
■PP:C・スト―ナー(ドゥカティ/1分20秒700)
■FL:C・スト―ナー(1分21秒488)
REPORT
ロッシ優勝でランキングをリード!
[速報]
フィアット・ヤマハ・チームのV・ロッシが、USGPで初優勝を成し遂げ、ランキングの差を広げた。ヤマハとの契約更新を発表したばかりのロッシは、これで今季4勝目。チームメイトのJ・ロレンソはオープニングラップで転倒しリタイヤ。テック3・ヤマハ・チームのJ・トーズランドは9位、C・エドワーズは14位となった。
快晴のもと行われた決勝の32周、2番手グリッドからスタートのロッシは、1周目のブレーキングでポールポジションのC・ストーナー(ドゥカティ)をパスしてトップに浮上。その後はこのふたりの一騎討ちとなり、互いに何度も順位を入れ替える激しいバトルを展開。コーナーでロッシがストーナーをパスすれば、ストレートでストーナーが、ロッシをパスする緊迫したレース展開で、2人のライダーは3番手以降を大きく引き離していった。その差100分の1というほどの接近戦だったが、3位との差が約18秒となった24周目、2番手でロッシにぴたりとつけるストーナーがコーナーで曲がりきれずグラベルに進入し転倒。ストーナーから16秒の差を得たロッシは独走状態に入り、最終的には13秒の差をつけてそのまま優勝した。
2列目から好スタートを切ったロレンソは、4番手を走行していたオープニングラップの第5コーナーで激しいハイサイド。左足の第3及び第5中足骨を骨折してしまった。1ヵ月後のブルノに向けリハビリを行っていく予定。D・ペドロサが欠場したため、ストーナーがランキング2位に上がっている。
[レース展開]
フィアット・ヤマハ・チームのV・ロッシが、C・ストーナー(ドゥカティ)との激しい一騎討ちを制してアメリカの地で初優勝。これで今季4勝目を果たしたロッシは、シリーズポイントで2位以下に25ポイント差をつけてランキングトップをキープしている。
ロッシはウイーク初日の金曜日、ヤマハとの2年間の契約更新を発表。フリープラクティスでは総合3位と好調にスタートした。ベストタイムの1分22秒679は昨年のラップレコードにあとコンマ1秒と迫るもので、予想外に気温の低かった午前中のセッションに記録されてストーナーに続く2位。午後からの第2セッションは路面温度がそれまでの22度から30度にまで上昇。セッティングを変更して臨んだが効果は上がらなかった。
チームメイトのJ・ロレンソは初めて走るラグナセカで、フリープラクティス初日を総合13位で終了。昨年はテレビのコメンテイターとして訪れており、ここでのレース出場をシーズン開幕以来とても楽しみにしていた。第1セッションは、有名な‘コークスクリュー'をはじめとする特徴的なコースに慣れるために使った。そして午後からはマシンのセットアップを開始し、リアグリップに問題を抱えながらも1秒近くもタイムを更新した。
テック3・ヤマハ・チームのC・エドワーズ、J・トーズランドのふたりは、ミシュランの硬めのリアタイヤが暖まりにくいという問題を訴えていた。木曜日の夜に2009年の契約更新を発表したエドワーズは、前回のザクセンリンクで傷めた首にも問題をかかえていた。また、初めてこのコースを走るトーズランドも、第2セッション終盤で転倒したためコース攻略には至らなかった。
土曜日の朝方はコースに深い霧が立ちこめ、フリープラクティスの最終セッションは低い気温の下で行われた。幸い、午後になると太陽が顔を見せて気温も上昇。ロッシはコンスタントにハイペースをキープして、サスペンションのセットアップも向上した。そして残り6分、ブリヂストンの予選タイヤを履いてタイムアタックを開始したロッシは2位に浮上。その後、再び後退する時間帯もあったが、最終ラップでタイムを更新して予選2位を獲得した。トップはストーナーとなった。
ロレンソは2日目の午前中、前日のタイムをコンマ5秒短縮。自信を持って公式予選に臨み、昨年のポールタイムを大幅に上回るタイムを記録して4位につけた。
テック3・ヤマハのトーズランドはモトGPデビュー戦のカタール以来、自己最高の予選5位を獲得。残り2分というときにベストタイムを記録して一時3位に上がったが、その後逆転され、わずかコンマ4秒差でフロントロウには届かなかった。エドワーズは路面の凹凸に対応しきれないという問題を抱えて7位。開幕以来、続いていた予選6位以内の記録がここで途切れることとなった。エドワーズはセッションのほとんどで10位以下に留まっていたが、終盤のアタックで5つポジションを上げた。
日曜日の午後に行われた決勝は、トム・クルーズがピットウォールの上で見守るその前で、ロッシが‘ミッション・イン・ポッシブル'を開始。ロッシは1周目のコークスクリュー入り口でストーナーをパス。その後はこのふたりが圧倒的な強さを見せ、互いに何度も順位を入れ替えながらも後続集団を引き離していった。
ストーナーはストレートで速さを見せ、ロッシはツイスティな部分で力を発揮。ストーナーに抜かれる度、ロッシはブレーキングで抜き返すという激しい攻防戦が続いた。ふたりの差は1000分の1秒。ときにコースアウトしそうになり、ときにフェアリングを接触させて危うく転倒というほどの接近戦だった。
24ラップ目、ストーナーが最終コーナー進入のブレーキングでミス。何とか転倒を免れようとしたが、グラベルに入ってからフロントをとられて投げ出された。これで楽になったロッシは、未だ優勝経験のない3つのコースうちのひとつ、ラグナセカでの初優勝に向かって悠々と走り抜けた。ストーナーは再スタートを果たして2位。シリーズポイントでは、D・ペドロサが怪我で欠場したため、ストーナーがランキング2位に上がっている。
ロッシの成功の一方で、チームメイトのロレンソは1周目にハイサイドを起して転倒。アメリカでのデビュー戦は、わずか5つのコーナーだけで終わってしまった。左足の第3及び第5中足骨を骨折しており、今後は1ヶ月後のブルノでの復帰に向けて治療に臨む。
ロレンソはそれまで、好スタートを切って4位につけていた。今シーズンはすでに足首骨折と意識喪失という不運を体験してきたロレンソにとって、今回の負傷はすぐに判明した。今晩にもスペインへ戻り、バルセロナで詳細の検査を受ける予定。
テック3・ヤマハのエドワーズは母国のファンの前で良いレースを見せたいところだったが、14位に留まった。ホームGPのために特別にデザインされたカラーリングで出場したエドワーズ。一時は10位まで迫ったが、フロントエンドに問題を抱えて本来の力を発揮できず、最終的には14位まで後退してゴールとなった。
一方のトーズランドは9位と健闘。グリッド2列目から好スタートを決めて4位で第1コーナーへ進入したが、その後しばらくはタイヤが適正な温度まで暖まるまで慎重に走行。これで8位まで順位を下げて1周目を終了した。
6周目には再び6位まで浮上してR・ドピュニエ(ホンダ)とバトルを展開、12周目には7位に落ちたが、1分23秒台をキープしてコンスタントにプレッシャーをかけ続けた。4位争いのペースにも匹敵する速さだったが終盤で一気にふたつポジションを下げて9位となった。
9週間のうちに7レースが開催された忙しいスケジュールを終了し、チームはこのあと、約1ヶ月間の夏休みに入る。第12戦チェコ大会は8月17日、ブルノで開催される。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | V・ロッシ | Fiat Yamaha Team | Yamaha | 44'04.311 |
2 | C・ストーナー | Ducati Marlboro Team | Ducati | 13.001 |
3 | C・バーミューレン | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 26.609 |
4 | A・ドビツィオーゾ | JiR Team Scot MotoGP | Honda | 34.901 |
5 | N・ヘイデン | Repsol Honda Team | Honda | 35.663 |
6 | R・ド・ピュニエ | LCR Honda MotoGP | Honda | 37.668 |
7 | T・エリアス | Alice Team | Ducati | 41.629 |
8 | B・スピース | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 41.927 |
9 | J・トーズランド | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | 43.019 |
10 | 中野真矢 | San Carlo Honda Gresini | Honda | 44.391 |
11 | J・ハッキン | Kawasaki Racing Team | Kawasaki | 46.258 |
12 | S・ギュントーリ | Alice Team | Ducati | 55.273 |
13 | A・デ・アンジェリス | San Carlo Honda Gresini | Honda | 55.521 |
14 | C・エドワーズ | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | +1'02.380 |
15 | L・カピロッシ | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | +1'08.207 |
LAP CHART
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | V・ロッシ | Yamaha | 212 |
2 | C・ストーナー | Ducati | 187 |
3 | D・ペドロサ | Honda | 171 |
4 | J・ロレンソ | Yamaha | 114 |
5 | A・ドビツィオーゾ | Honda | 103 |
6 | C・エドワーズ | Yamaha | 100 |
9 | J・トーズランド | Yamaha | 72 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Yamaha | 241 |
2 | Honda | 197 |
3 | Ducati | 192 |
4 | Suzuki | 112 |
5 | Kawasaki | 52 |
COMMENT
V・ロッシ選手談(優勝)
「何というレースなんだ! ウォームアップのあとでマシンに少しモディファイを加えたら、最後のコンマ数秒が伸びるようになったんだ。それでケイシーについて行くことが出来た。結果はまさにファンタスティック! スタートがうまくいって1周目にトップに出ることができたが、ケイシーを抑え込むためには全力でいかなければならないことはよくわかっていたので、1秒たりともリラックスすることなどできなかった。M1もブリヂストン・タイヤも素晴らしくて、自分のミスで一度だけコークスクリューではらんでしまったのだが、実際、ダートでもグリップが良かったんだ! ケイシーはストレートで僕よりも速かったが、僕はブレーキングが良かったのでパスはすべてそこで行った。ふたりが何度順位を入れ替えたのかわからないくらいで、僕にとってもいいレースだったが、ファンにとっても見応えあるものになったと思う。このようなバトルはしばらくなかったしね。
トップをキープするためには少なくとも21秒台後半をキープしなければならず、それを可能にしてくれたチームのみんなとエンジニアに感謝している。アメリカでの初優勝は本当に嬉しい。オーバーテイクのときに、ケイシーはおそらく僕がちょっと激しすぎだと感じたこともあったと思う。でも、僕が仕掛けたのはブレーキングだけだったし、毎回同じポイントでブレーキをかけていて、一度も接触はなかったんだ。確かに激しいレースだったが、間違いなくフェアなものだった。
このあとは夏休みが待っている! しばらくリラックスするつもりだけど、まだ大変な戦いが7戦残っているのでのんびりし過ぎは良くない。集中し続けないとね」
D・ブリビオ、フィアット・ヤマハ・チーム監督
「実際にはなかったんだけれど、今日もまた、バレンティーノのヘルメットに‘ハート'が見えた! 昨日、一昨日とライバルに遅れを取っていたのに、このような形で優勝することができた。チームの全員が決してあきらめず、最後の瞬間まで全力で戦った。そしてケイシーと戦えるところまでポテンシャルを上げていくことができたのだ。あらゆる部分を出来る限り良くしていこうという方針があって、その最終段階として ‘ザ・ドクター'が見事な手術を行ったというわけ! バレンティーノがどうしても勝ちたかったレース。彼が最後まであきらめずに戦ったことが、この結果を導いたのだ。彼に心からの祝福と、チームのみんなや技術者たちに感謝の気持ちを捧げる。これでランキングのリードを25ポイントに拡大し、気分良く夏休みを迎えることが出来る。この間、残りの7戦のためにエネルギーを再チャージしなければならない。ホルヘのことは非常に残念だった。早く良くなって、ブルノには復帰できるよう祈っている」
J・ロレンソ選手談(リタイヤ)
「予選が良かったので、今日は自信があったし楽しみにしていたので非常に悔しい。しかも、スタートがうまくいって4位につけていたのだからね! タイヤが暖まっていなくてリアが流れてしまった。次の瞬間にはグラベルに投げ出されていて足に痛みがあったんだ。また転倒して、また怪我をしてしまった。またもうひとつ、早く忘れてしまいたい、いやな出来事が起こってしまったというわけだ。くよくよせず、前を見て進んでいかなければならない。今はとっても悲しいけれど、これからブルノまでの1ヵ月でしっかり治療して復活したい。これが今の僕の目標だ。バレンティーノの優勝は素晴らしかった。心から祝福する」
D・ロマニョーリ、フィアット・ヤマハ・チーム監督
「プラクティスでは大きな手応えがあったのに、今日は残念ながら、期待したような結果は得られなかった。問題はリアのグリップ不足。とくにタイヤが十分に暖まっていない序盤は、その症状がでがちなのだ。ホルヘにはしばらく、しっかりと休養をとってもらいたい。そして、次のブルノではまた、トップライダーたちと互角に戦えるまでに復活してくるのを待っている」
J・トーズランド選手談(9位)
「一生懸命頑張って、ベストを尽くしたつもりだったのに、それでもまだ9位だなんて悔しくて仕方がないよ。スタートがうまくいって4位につけたが、その後が厳しくて、思ったように攻められずに守りの走りになってしまった。タイヤのコンパウンドが硬めだったので暖まるまでに時間がかかり、序盤は少し順位を下げてしまった。そのあと23秒台までペースが上がってきてからは好調で、これなら6位以内を狙えると思っていたんだ。ド・ピュニエといいバトルができたが、ラップタイムがほぼ同等で突き放すためにはかなりの努力が必要だった。終盤はひたすら、追い上げてくるライダーに抜かれないようにすることに集中していたが、スピースとエリアスだけは抑えきれず悔しい思いをした。9位という結果はあまり誉められたものではないし、僕だけじゃなくて、チームのみんなの頑張りに見合わないと思う。でも、本当にこれで精一杯で、出せるものはすべて出し切ったと思っている。夏休みのあとは、また6位以内を狙っていけるようなポテンシャルを取り戻して臨みたい」
C・エドワーズ選手談(14位)
「予想外にひどかったと、今さら言うまでもないだろう。ヤマハUSやアメリカのファン、家族たちに支えてもらったのに、その恩返しをすることができなかった。正直なところ、今回は初めから、硬いフロントタイヤに手間取っていた。ブレーキングで仕掛けようとして大きく遅れてしまったことが何度かあったんだ。何とか立て直しては、また同じような状況になるという繰り返しで、気持ちはかなり参ってしまった。誰もが知っているように、僕はフロント重視のライダーなのに、今回はフロントに信頼がおけなかったことが問題だった。ドイツでの転倒といい、このところ良いことがない。夏休みを利用して気持ちを切り替え、ブルノにはまた好調を取り戻して臨みたい。ランキングでは依然として4位につけているし、テック3・ヤマハ・チームもチームランキングの4位にいる。残りの7戦も全力で頑張りたい」
H・ポンシャラル、テック3・ヤマハ・チーム監督談
「我々チームにとって、今回はとても厳しい戦いだったが、決勝ではジェームスがとてもいいレースを見せてくれた。彼が最後まであのポジションをキープできるとは思っていなかったというのが正直なところで、いつものようにあきらめず、全力で頑張っていただけに、最後にふたつ下げてしまったのが残念だった。ジェームスにとっては非常に意義のあるレースだったが、一方で、コーリンはかなり悔しかったようだ。ドイツでの転倒も影響しており、首の痛みを抱えながら、セッティング面でもいくつかの問題にぶつかっていた。決勝に向けても自信が持てず、我々が知っている、いつもの彼が今日はそこにいなかったのだ。ひとつだけ救いは、今シーズンはもう一度アメリカでレースが行われるので、そのときに必ず雪辱を果たすだろう。チームランキングは依然として4位につけており、このあとも全力で頑張ってこれをキープしなければならないと思っている。良い夏休みになるように、そして、後半戦にしっかり準備を整えて戻ってきたい。最後になったが、ヤマハとバレンティーノに、ラグナセカでの初優勝、おめでとう!」
中島雅彦フィアット・ヤマハ・チーム総監督
「USGPが開催されるラグナセカサーキットは、西海岸のサンフランシスコの南200kmに位置します。起伏に富んだ丘陵地に作られ高低差が大きく、切返しながら一気に下るコークスクリューで有名です。ここはモトGPクラスのみの開催となります。
久しぶりに雨の心配をする必要がないレースウィークとなりましたが、意外と気温が上がらず、夜の冷え込みで午前中は濃霧に包まれ、午後から陽が射してくるという状況で路面温度が大きく変化する中、タイヤ選択に苦慮しました。
マシンはブレーキングスタビリティと旋回性、加えてタイヤ性能をうまく引き出すべく、レース直前まで調整を繰り返し、そんなスタッフのがんばりに気迫の走りで応えてくれたV・ロッシ選手が激しいドッグファイトを制し、今シーズン4勝目を上げ、チャンピオンシップのリードを広げることが出来ました。
テック3・ヤマハチームのJ・トーズランド選手、C・エドワーズ選手は低い路面グリップに苦しみましたが、それぞれ9、14位と健闘。残念ながらJ・ロレンソ選手は転倒リタイヤとなりましたが、復調の兆しが見えてきており、今後期待できると思います。
これでモトGPは1ヵ月余りのサマーブレークに入りますが、リフレッシュすると共に前半戦のデータを充分に分析し、チャンピオンシップ奪還へ向け更なる戦闘力アップを図っていきます」