ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.06 6月1日 イタリア
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第6戦イタリアGP
■開催日:2008年5月30日(金)フリー走行2(総合結果)
■開催地:イタリア/ムジェロサーキット (5.245km)
■コースコンディション:ウエット
■気温:15度 ■路面温度:16度
REPORT
雨のフリー走行を順調に消化!
第6戦ムジェロのフリープラクティス初日は激しい雨に見舞われた。例年、明るい太陽に恵まれるこの大会だが、今回はコース脇の丘に陣取ったロッシの大応援団もびしょぬれとなった。
午前中はまだ軽い雨で、第1セッションはドライ・コンディションで行われた。ロッシは非常に順調で序盤から好タイムを記録していたが、路面が最も乾いている時間帯にコースに出ていなかった。そして午後からのセッションでは、序盤4分の1くらいまで激しい雨となり、その後も降り続いたためコース中が完全なウエットとなってしまった。
この状況のなかでもロッシとチームは、ブリヂストンのレイン・タイヤのデータを収集するために積極的に取り組み、ウエット用セッティングを探っていった。ロッシはウエット・セッティングのマシンの仕上がりに非常に満足し、2分02秒327のタイムで4位。しかし総合では、午前中のドライでのタイムが採用され10位となっている。
チームメイトのJ・ロレンソは、ウエット用セッティングでまた一歩前進した。今回でグランプリ出場100回目を迎えるロレンソだが、ウイーク初日、金曜日のフリープラクティスはまだ99回目。というのは2002年のデビューイヤー、スペインGPの初日はまだ14歳で、2日目に誕生日を迎えて15歳になり、ようやく参加が認められたからだ。
中国GPで負傷した足首の状態はまだ完璧ではないが、身体のコンディションがかなり良くなっているため、当初に比べれば楽に乗れるようになっている。第1セッション序盤はドライとウエットが混ざりあう難しいコンディションだったので、リスクを避けて慎重に走行、14番手で終了した。
午後になって完全なウエットになると、ミシュランの新しいウエット・タイヤでセッティングに取り組んだ。ロレンソは参加ライダー中最も多い25ラップを走行し、2分02秒562のタイムで6番手。総合では午前中のタイムが採用されて14位となった。
テック3・ヤマハ・チームのJ・トーズランドは、ウエット・コンディションで行われたフリープラクティス第2セッションで好調な走り。リアのグリップ性向上のために初めてショート・ホイールベースを採用し、ロッシからわずか0.085秒差の2分02秒412を記録した。トーズランドは先週、ミシュランの本拠地でウエット・タイヤのテストを行っており、その経験を生かしてセッション中盤でトップに浮上。コース上の水量が増えるにつれてストレートでもスライドをコントロールしなければならないような状態になっていったが、路面コンディションが悪くなるほどトーズランドの優位性が際立つことに。そして一時は2.585秒まで差を広げたが、セッション終盤に向かって雨が小ぶりになってくると、徐々に順位を下げて5位となった。
総合では午前中のタイムが採用され、トーズランドは13位。チームメイトのC・エドワーズは一時3位まで浮上していたが8位へ後退。総合では19位となった。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | J・ホプキンス | Kawasaki Racing Team | Kawasaki | 1'54.053 |
2 | L・カピロッシ | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 1'54.520 |
3 | A・ウエスト | Kawasaki Racing Team | Kawasaki | 1'55.021 |
4 | A・デ・アンジェリス | San Carlo Honda Gresini | Honda | 1'55.141 |
5 | 中野真矢 | San Carlo Honda Gresini | Honda | 1'55.528 |
6 | A・ドビツィオーゾ | JiR Team Scot MotoGP | Honda | 1'55.718 |
7 | C・バーミューレン | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 1'55.774 |
8 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | 1'55.805 |
9 | C・スト―ナー | Ducati Marlboro Team | Ducati | 1'58.618 |
10 | V・ロッシ | Fiat Yamaha Team | Yamaha | 1'58.672 |
11 | R・ド・ピュニエ | LCR Honda MotoGP | Honda | 1'59.240 |
12 | N・ヘイデン | Repsol Honda Team | Honda | 1'59.436 |
13 | J・トーズランド | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | 1'59.899 |
14 | J・ロレンソ | Fiat Yamaha Team | Yamaha | 2'00.004 |
15 | M・メランドリ | Ducati Marlboro Team | Ducati | 2'00.162 |
16 | S・ギュントーリ | Alice Team | Ducati | 2'01.718 |
17 | 岡田忠之 | Repsol Honda Team | Honda | 2'02.810 |
18 | T・エリアス | Alice Team | Ducati | 2'03.305 |
19 | C・エドワーズ | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | 2'03.586 |
COMMENT
V・ロッシ選手談(フリー走行総合10位/1分58秒672)
「雨の量もすごかった!この地方は、晴れていればとても素晴らしいところなので非常に残念。これではファンのみんなにとっても、あまり楽しくないと思うんだ。明日以降は晴れそうだが、そうなると今日の一日も無駄になってしまうようで残念。午前中のセッションではところどころに水たまりができた難しい状態だったので、無理をせず楽に走ることにした。午後からは完璧なウエットになったので、逆にチャンスと思ってウエット用セッティングの中で、いくつか重要な変更を試した。
その結果としてタイムも上がって4番手につけることができた。セッション序盤は路面がかなり濡れていて危険な感じもあったので、慎重にいった。後半になると少し状況が良くなり、タイムも上がって嬉しかった。これでウエットでも速いということを再確認できたからだ。明日以降は晴れると思うし、そうなることを期待している。そして明日からまた新たにスタートするつもりで臨む。今回のように1日を無駄にしてしまうと、決勝のドライ・コンディションに向けてのセットアップが完璧にはいかないかもしれない。それでも決勝はやはり晴れてほしい。ファンのみなさんのためにもね!」
D・ブリビオ、フィアット・ヤマハ・チーム監督談
「雨は雨でも、1日の間に雨の量がいろいろ変化し、チームとしては非常に難しく、そして多くの仕事が要求されることとなった。状況は最悪だったが、そのなかでブリヂストンのウエット・タイヤの性能をさらに深く理解し、ウエット・セッティングに役立てていく大切なチャンスになった。その結果、雨での走りはかなり良くなった。しかし決勝はおそらくドライになると思うので、明日はドライ・コンディションで決勝に向けての準備をしたい」
J・ロレンソ選手談(フリー走行総合14番手/2分00秒004)
「ウエットでもとても速く走れたのでハッピー!YZR-M1で初めてウエットを走ったときにはかなり苦労したが、それから少しずつ良くなっていって、今日は自信を持って走行できた。午前中は変なコンディションだったから無理しなかった。足首はかなり良くなっているが、もうこれ以上ミスはしたくないからね!
午後からは完全なウエットになったので積極的に周回を重ね、連続19ラップのロングランも行ってリズムをつかんだ。ミシュランの新しいレイン・タイヤはとてもいい感じで気に入っている。それでも明日以降はやっぱり晴れてほしい。ウエットだとレース全体が長くなってしまって、怪我を抱えている僕にはちょっと辛いんだ」
D・ロマニョーリ、フィアット・ヤマハ・チーム監督談
「チームにとっては非常に重要な機会になった。ホルヘもウエットでの走行はこれまでで一番いい。ウエットでのYZR-M1の乗り方を理解し始めており、我々も彼に合ったセッティングができている。19ラップのロングランも順調で、走るごとに自信を深めていっているのを見て嬉しく思う。
ミシュランのウエットもとても良くなっているので、次のウエット・レースでは力を発揮してくれるだろう。でも今回は幸い、明日以降は晴れそうだ。いずれにしても我々はそうなることを望んでいる。だから明日からは決勝に向けて、ドライのマシン・セットアップをスタートさせる」
J・トーズランド選手談(フリー走行総合13番手/1分59秒899)
「2004年、ドゥカティでWSBタイトルを獲得したお祝いのプレゼントとして、ここムジェロでモトGPマシンに何周か乗せてもらったことがある。だからコースは少しだけ知っていた。最近の3戦はまったく初めてのコースだったから、やはりかなり不利だったと言わざるを得ない。ほんの少しだけでも、馴染みがあるだけありがたい。初めてのコースを走る場合は、どうしても一歩後ろからのスタートという感じになってしまって、それがフラストレーションになるが、今回はすでにセッティングもよく仕上がってきている。
今回は他のヤマハ勢同様にホイールベースを短くしてもらい、リアの信頼感が上がった。とくにウエットではその効果が大きい。リアにより多くの荷重がかかることで接地面が増え、それによってより強くプッシュしていけるようになったんだ。中国GP決勝のウォームアップでもとても速く走れており、ウエットのベース・セッティングはできあがっているから雨には自信がある。
セッションを通じて好調だったが、最後にトップ3を逃してしまったのは少し残念だ。雨は一時激しくなり、路面の水の量もかなり増えていた。ストレートを6速で駆け下りながら、水に当たってマシンが横に激しく揺れたこともあって危ない思いをした。コンディションはあそこまでで限界だろう。世界中のどんなウエット・タイヤだって、水を完全にはねのけるものなどないのだから。先週、ミシュランへ行ったのはタイミングが良かった。彼らは素晴らしい仕事をしてくれた」
C・エドワーズ選手談(フリー走行総合19番手/2分03秒586)
「マシンは好調。今日の午後は、レース距離を走り切ることのできるウエット・タイヤを見つけだすことが目標だった。フロントはずっと同じものを使用してとても感触が良かった。ミシュランはこの部分をかなり重視してやってくれたのだと思う。フロントは本当に良くて、ドライで使っても十分に走れると思うくらい!ただリアに関してはもう少しグリップしてほしい。グリップ性自体は悪くないのだが、もう少し安定性が必要なんだ。セッティングがもう少し良くなってくればタイムも上がるだろう。
先週のミシュランでのテストの際、このコースに合わせて、マシンの向き変えがより素早くできるようにセッティングを変更してきた。だからドライで試してみたかったが、それができなかったのは残念だ。あのとき僕はスリックタイヤしかテストしなかったので、今日のようなコンディションになってしまったのは不運としか言いようがない。ストレートエンドで6速で全開で丘を越えていくと、リアが滑りだしてしまうんだ」