ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.15 9月23日 日本
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第15戦日本GP
■開催日:2007年9月23日(日)決勝結果
■開催地:日本/もてぎ(4.801km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:21度 ■路面温度:24度
■周回数:24周(115.224km)
■PP:D・ペドロサ(ホンダ/1分45秒864)
■FL:T・エリアス(ホンダ/1分50秒718)
REPORT
ギュントーリが自己ベストの4位
【速報】
テック3・ヤマハ・チームのS・ギュントーリが自己ベストの4位と活躍した。チームメイトの玉田誠は12位。フィアット・ヤマハ・チームのV・ロッシとC・エドワーズは13位と14位だった。優勝はL・カピロッシ(ドゥカティ)、C・ストーナー(ドゥカティ)が6位となり今年のチャンピオンに決定した。
レースはウエット宣言の下、全車ウエット用タイヤでスタートする。まずD・ペドロサ(ホンダ)が飛び出しトップに立つ。予選2番手フロントロウ発進のロッシは、スタートで出遅れ序盤は7番手。2~3周目はA・ウエスト(カワサキ)がトップを走るが、フライングのペナルティを課せられピットストップで後退。代わってトップに立ったのがストーナー。これにM・メランドリ(ホンダ)が僅差でつける。メランドリはストーナーを抜き5周目からトップに立ち、2人がトップ集団を形成する。
やがて路面が乾き13~16周目にかけて各選手はウエット用からドライ用にマシン交換するためピットイン。この混乱で順位も変動。一時は9番手に留まっていたカピロッシは早めのマシン交換を済ませており15周目にトップに浮上すると、そのままトップを独走していく。
ロッシは5周目に3番手まで挽回すると、先行のストーナー、メランドリを追う展開。この2人が先にマシンを交換したので15周目にはロッシが一時トップに浮上。その後16周目にマシン交換のためピットインして再発進するが、次の周にマシンに不具合を感じピットインしてタイムロス。すぐ再スタートするが、その後オーバーランをするなどでさらに後退。またペドロサは同じ頃、マシン交換直後に転倒しリタイヤとなった。
各車のマシン交換を終えた後半は、それまでの1分59秒前後から51秒前後へと各選手ペースアップ。そのなかで序盤にマシン交換を済ませていたギュントーリは、10周目12番手、13周目9番手、そして16周目には4番手と見る見るうちに順位アップ。先行する3番手のT・エリアス(ホンダ)とコンマ3秒差のバトルを展開。一時エリアスを抜いて3番手に上がるシーンも見られたが、終盤23周目にはエリアスが最速ラップタイムをだして結局エリアス、ギュントーリの順でゴール。1位はカピロッシ、2位はR・ド・ピュニエ(カワサキ)だった。
【レポート】
天候とタイヤの問題が、わずかに残っていたチャンピオンの可能性を打ち砕いた。ロッシは一時レースをリードする健闘を見せたものの、最終的には13位に終わった。チームメイトのエドワーズも同様の問題に見舞われて、ロッシの一つ後ろの14位でチェッカーを受けた。
ウイーク初日の金曜日は、決勝日の雨など想像できないほどの焼けるような太陽が照りつけていた。午後のセッション中に気温が34度に達し、ライダーにとってもチームにとっても厳しいコンディション。そのなかでエドワーズが11位、ロッシが14位につけた。
わずか5日前にポルトガルで優勝を果たしたロッシ。午前中のセッションは2位のタイムを記録して好調だったが、午後からはメインのマシンにトラブルが発生したこともあって総合14位に後退。エドワーズも調子が上がらず午前中は13位、午後はセッティングが改善されたものの、順位を二つ上げるに留まり11位だった。
土曜日もコンディションはほとんど変わらなかったが、マシンとライダーの状況は一転。路面温度45度とさらに増した暑さが助けとなったのか、ロッシは午前中のフリープラクティスで2番手のタイムを記録した。ところが午後からの予選は計画通りには運ばず、序盤でコースアウトするなどで一時は18番手までポジションダウン、エドワーズも17番手と苦戦を強いられていた。
そうしたなかでも、セッションのほとんどの時間を決勝用のセッティングとタイヤの決定に費やした二人。終盤になってようやく予選タイヤを装着すると、ロッシは一気にタイムを上げて最初のアタックで2番手に浮上。その後2本目のタイヤでさらにタイムを縮めついにトップに躍り出たが、ペドロサに僅差で先行され2位となった。エドワーズも2周にわたって好タイムを記録するなどで一時は6位に上がっていたが、エリアスに逆転されて7位となった。
迎えた決勝。午前中に小雨が降り、スタート時点でも路面はまだ濡れた状態。ウエットレースが宣言され、各車ウエットタイヤを装着してグリッドについた。ところがスタート直前に雨が止むと路面は急速に乾いていった。スタートで出遅れたロッシは1周目を7番手で終了。エドワーズがその後ろの8番手につけていた。ロッシはその後追い上げを開始し、上位グループとの間にあった5秒差を挽回して14周目にはついにトップを奪取した。
このころにはレースラインが、ほぼ完璧に乾いており、後続のライダーのほとんどがすでにスリックタイヤへの変更を済ませていた。ロッシは十分なリードを築いてから1周遅れてピットイン。カピロッシに続く2番手でコースに復帰することができた。ところが、作戦通りに事は運ばなかった。フロントタイヤに重大な問題を抱え、ロッシは再度ピットイン。もう一度コースに戻ったときには15番手までポジションを下げており、その後も二つ上げるに留まった。一方のエドワーズは、ロッシが最初にピットインした時点で3番手を走行しており、マシン交換を行った後は8番手で復帰。ところがロッシと同様のトラブルで順位を下げ、ロッシから2秒遅れてゴールした。
ストーナーは6番手でチェッカーを受け、同時にチャンピオンを決定。ロッシはこのあともランキング2位獲得を目指して戦っていくことになるが、あと3戦を残して3位のペドロサに26ポイント差をつけている。エドワーズはランキング9位に後退した。
その他のヤマハ勢では、ギュントーリが今季最高の4位獲得と大健闘。予選18位からスタートしたギュントーリは、7周目に早くもピットインを決断してスリックタイヤに交換。これが功を奏して、コース復帰後はファステストラップを7回以上に渡って連発しながら順位を挽回。シーズン序盤の母国GPル・マンでの活躍を彷彿とさせる見事な走りを見せた。
ル・マンでは限界を越えて転倒してしまったが、今回は完璧にコントロールしながら3位獲得をかけてエリアスを追撃。最終的にはリスクを避けて4位を手中にした。エリアスとのバトルは最終コーナーまで続いていたが、ギュントーリは表彰台を切望しながらも気持ちを抑え、一歩引いた。そして0.566秒差でゴールした。
ギュントーリのチームメイト、玉田もまた予測のつかないこのコンディションで賭けに出た。しかし結果的には、ウエットタイヤのままピットインを2周遅らせたことを後悔することとなってしまった。それでもシリーズポイントでは中野真矢(カワサキ)との差を5ポイントまで縮めることに成功し、現在ランキング18位。ギュントーリは16位につけている。第16戦は3週間後、オーストラリアはフィリップアイランドで開催される。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | L・カピロッシ | Ducati Marlboro Team | Ducati | 47'05.484 |
2 | R・ド・ピュニエ | Kawasaki Racing Team | Kawasaki | 10.853 |
3 | T・エリアス | Honda Gresini | Honda | 11.526 |
4 | S・ギュントーリ | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | 12.192 |
5 | M・メランドリ | Honda Gresini | Honda | 28.569 |
6 | C・ストーナー | Ducati Marlboro Team | Ducati | 31.179 |
7 | A・ウエスト | Kawasaki Racing Team | Kawasaki | 50.001 |
8 | A・バロス | Pramac d'Antin | Ducati | 52.343 |
9 | N・ヘイデン | Repsol Honda Team | Honda | 53.629 |
10 | J・ホプキンス | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 59.715 |
11 | C・バーミューレン | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 1'02.804 |
12 | 玉田 誠 | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | 1'09.313 |
13 | V・ロッシ | FIAT Yamaha Team | Yamaha | 1'09.699 |
14 | C・エドワーズ | FIAT Yamaha Team | Yamaha | 1'11.735 |
15 | 伊藤 真一 | Pramac d'Antin | Ducati | 1'12.290 |
16 | 中野 真矢 | Konica Minolta Honda | Honda | 1'32.979 |
17 | 柳川 明 | Kawasaki Racing Team | Kawasaki | -1 Laps |
18 | C・チェカ | Honda LCR | Honda | -1 Laps |
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | C・ストーナー | Ducati | 297 |
2 | V・ロッシ | Yamaha | 214 |
3 | D・ペドロサ | Honda | 188 |
4 | J・ホプキンス | Suzuki | 156 |
5 | C・バーミューレン | Suzuki | 152 |
6 | M・メランドリ | Honda | 148 |
9 | C・エドワーズ | Yamaha | 108 |
16 | S・ギュントーリ | Yamaha | 43 |
18 | 玉田 誠 | Yamaha | 37 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Ducati | 324 |
2 | Honda | 255 |
3 | Yamaha | 251 |
4 | Suzuki | 207 |
5 | Kawasaki | 114 |
6 | KR212V | 14 |
COMMENT
V・ロッシ選手談(決勝13位)
「今週末のことは本当に残念だった。ドライではストーナーよりも速かったので、チャンスはあったはずなのだが…。第一の問題は今朝の天候。そのなかでも何とかいいセッティングを見つけることができて、決勝スタート時点では、まだまだ十分に望みがあったと思う。スタートで出遅れてしまったものの、路面が乾いていくにつれてペースが上がり、トップとの5秒差を縮めることができた。メランドリをパスしたあとピットに戻ってマシンを交換したが、どうやらこれが1周遅かったようだ。それでも作戦は決して大きく間違っていたわけではない。というのもコースに復帰した時に前にいたのはロリスだけだったのだから。
フロントタイヤはカット入りのインターミディエイト。今日のようなコンディションでは通常の選択だ。ところがマシンは思うように走ってくれず、何か深刻な問題が出てしまったようだった。それでピットに戻ったけど、メカニックたちが問題ないというのでそのまま、またピットアウトした。そんなことをしている間に戦いには決着がついてしまっていたというわけだ。
それからさらに4、5周走るうちにタイヤも良くなってきて最後まで走りきることができたが、この問題さえなければ表彰台を狙っていけただろうし、ロリスと優勝争いも可能だったと思う。不運にもコンディションが悪すぎた。でもこれがレースというものなんだ。まだあと3レース残っているので、勝利を目指してベストを尽くしていく。何としてもシーズンをいい走りで締めくくりたいんだ。僕を応援してくれたファンのみんな、そしてチームの仲間たちには申し訳ない気持ちでいっぱい。またロリスと、世界チャンピオンになったケイシーには祝福の気持ちを伝えたい。彼がチャンピオンTシャツをくれたことは光栄だよ。僕以外の誰かが勝つとするなら、それが僕のファンであってくれたほうがうれしいからね! 素晴らしいライバルだ。これからもお互いにいいライバル関係を続けていけそうだ」
C・エドワーズ選手談(決勝14位)
「今朝のウエットコンディションでは好調だったのだが、決勝はちょっと乾きすぎてしまったようだ。このような状況でレインタイヤを履くのはかなり無理があるし、途中からさらに乾いてきてしまったのだから、あとはタイヤ温存のことばかり気にしなければならなくなった。調子自体は悪くなかった。序盤からペースを上げて前との差を詰めることもできたのだが、今になって考えてみればマシン交換のタイミングが少し遅すぎた。でもそれを言っても意味がない。
というのも履き替えたフロントのカットスリックが言うことを聞いてくれず、僕はただペースを落とすしかできなかったんだ。バレンティーノはこれに耐え切れずにピットイン。僕ももう少しで同じことをするところだったが、結局我慢して何とか走りきった。今朝の時点ではまだ半分チャンスが残されていた。それだけにこの結果は残念で仕方がない。チームのみんなの懸命の作業とサポートに感謝している。ケイシーは今シーズン、ずっと素晴らしい走りを見せた。そしてその結果としてタイトルを獲得したんだ。心から祝福したい」
D・ブリビオ、フィアット・ヤマハ・チーム監督談
「急速に路面が乾き始めたレース序盤、状況は今シーズン始めに問題を抱えていた時とよく似ていた。でもロッシは素晴らしいレースをしたね。スタートで少し出遅れたけど、その後には、5秒程あったトップとの差を縮めることができたんだ。マシンを交換するためにピットに入ったあと、ロッシはいいポジションでレースに戻ったんだが、フロントの違和感のため再度ピットに入らなければならなかった。メカニックが素早くチェックしたけど、問題は見られなかったから、ロッシはまたコースに戻ったんだよ。実はフロントタイヤに問題があって、それが原因でマシンを交換した直後の数周は思うように走行できなかったんだ。エドワーズもマシンを交換した後フロントタイヤの違和感のため、思い通りに走行できるまでに数周かかってしまった。チームの戦略はほとんど完璧だったと思う。ロッシはレースに戻っても2番手をキープでできていたけど、残念なことにスリックタイヤではトップを走行し続けることはできなかった。ケイシーのタイトル獲得を祝福するよ。彼は素晴らしいライバルだし、来年はとてもエキサイティングなシーズンになることを期待している」
S・ギュントーリ選手談(決勝4位)
「今までの僕の人生のなかで最高の日と言っていいだろう! MotoGPで4位を獲得するなんて、シーズン開幕の頃には夢でしかなかったことだ。もうちょっとで表彰台というところまで迫っていたことを、忘れることはできないだろう。最終ラップではエリアスをパスしたくて懸命に攻めたが、頑張り過ぎて転倒なんていうことにはなりたくなかったんだ。スタートがうまくいったので、序盤から上位についていこうと決めた。何周にも渡ってファステストラップを記録できてうれしかったが、エリアスとのバトルのなかで最終的な記録は僅差で逆転されてしまった。それから、今回もまたバレンティーノを抜くことができた。これでシーズン2度目だ。チームとダロップに感謝する。今日のことは決して忘れない」
玉田誠選手談(決勝12位)
「まずは、シルバンにおめでとう、と言いたい。今日は、どのタイミングでタイヤを交換するのか、その判断が難しいレースだった。柔らかめのレインタイヤでスタートしたものの、意外にドライな部分もあるし、すごく迷ったんだ。まわりのライダーとの駆け引きもあったけど、比較的早めのタイミングで交換。その後は、良いペースでコンスタントに周回を重ねることができたと思う。
マシンの仕上がりは良く、現状の課題はタイヤとのマッチング。徐々に良い兆しが見えているが、残り3戦、今までの成果を出して行きたい。日本だから、という気負いはなかったけれど、ファンの方がたくさん応援にきてくれていたので、もうちょっといい走りで応えたかったね」
H・ポンシャラル、テック3・ヤマハ・チーム監督談
「今日のレースは非常に良かった。ギュントーリが18番グリッドから、実に素晴らしいレースを見せてくれたからね。何人ものライダーをパスしたし、どのライダーよりも早くスリックタイヤで走行する決断をしたおかげで、4番手に上がることができたんだ。彼はもう少しで表彰台に手が届いただけに残念だけど、彼が良くがんばって4位でフィニッシュしたことは忘れられないだろう。また、ダンロップの本拠地・日本で、このような結果を残せたことにとても満足している。彼らの努力を結果で見せることができたからね」
辻幸一談(ヤマハ発動機モトGPグループ)
「フィアット・ヤマハ・チームのロッシ選手、コーリン選手にとっては非常に厳しい週末となってしまいました。きのうまでのドライセッティング、本日のウエットセッティングとも車体、エンジン、タイヤ、いずれも非常に良いコンビネーションを見せていましたが、レースでウエットからドライに路面が変っていくコンディションには対応しきれませんでした。その中でもテック3・ヤマハ・チームのギュントーリ選手は、早めにドライセッティングのマシンに交換し、ベストラップを毎回更新する走りを見せつけ、4位でチェッカーを受けることができました。
ライダータイトルはストーナー選手が獲得しましたが、残り3戦は来年に繋げる意味でも非常に重要なレースとなります。次節はオーストラリアでの開催となります。引き続き皆さまのご支援、ご声援をよろしくお願いします」
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