ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.14 9月16日 ポルトガル
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第14戦ポルトガルGP
■開催日:2007年9月16日(日)決勝結果
■開催地:ポルトガル/エストリル(4.182km)
■観客数:41,566人
■周回数:28周(117.096km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:28度 ■路面温度:34度
■PP:N・ヘイデン(ホンダ/1分36秒301)
■FL:N・ヘイデン(1分37秒493)
REPORT
V・ロッシ&YZR-M1が今季4勝目
【速報】
3番手フロントロウスタートのフィアット・ヤマハ・チームのV・ロッシ&YZR-M1が優勝。第9戦オランダGP以来、今季4勝目を挙げた。
決勝レースは、C・ストーナー(ドゥカティ)が好スタートを切り、その後にD・ペドロサ(ホンダ)、ポールスタートのN・ヘイデン(ホンダ)、そして、スタート直後5番手に順位を落としたロッシが4番手につけて1周目を終える。2周目に3番手のヘイデンが少し遅れはじめ、3周目にロッシはこれをパスして3番手に浮上。
7周目1コーナーで2番手をいくペドロサが、ストーナーを捕らえてトップに立つと、9周目にロッシもストーナーをかわし2番手にポジションアップ。その勢いのまま続く10周目にペドロサをパスしてロッシがトップに躍り出る。ロッシ、ペドロサ、ストーナーの上位3台が僅差で並び、後続を引き離しかけたが、13周目、ファステストラップを刻んだ4番手のヘイデンもトップ集団にくらいつく。
その後、ロッシは17周目にペドロサにかわされるが、ぴたりとその後ろについて、様子をうかがう。そして24周目、スリップストリームを使って、1コーナーインから飛び込みペドロサをパスするが、同ラップにミスして2番手へ再び後退。残り2周となった27周目、もう一度、仕掛けるもオーバーランし抜き返されるが、あきらめずに再びトップに出るとそのままチェッカーを受けた。なお、6番手スタートのC・エドワーズは10位。
テック3・ヤマハ・チームのS・ギュントーリは、22周目にトラブルで一度ピットに戻った後、再度コースインし、14位でレースを終えてポイントを獲得。今季ベストグリッドの4番手からスタートした玉田は、8番手走行中の24周目に転倒、リタイヤとなった。
【レポート】
ロッシがペドロサ、ストーナーを抑えて今季4度目の優勝を果たし、久しぶりに表彰台の中央に戻ってきた。ロッシはここエストリルで8年連続の表彰台獲得。また今回は6月のアッセン以来6レースぶりの優勝となった。一方のエドワーズは、ペースが上がらず徐々に順位を下げ、10位でレースを終えた。
このところ苦戦が続いていたロッシだが、ここエストリルは最高峰クラスで表彰台を7回獲得と相性が良く、今回もレースウイークの初日からペースをつかんでフリープラクティスで3位と好調。これまでの経験を生かして素早くベースセッティングを仕上げ、金曜日はトップのストーナーからわずか0.17秒差だった。2位には玉田が入った。エドワーズは午前中のセッションは好調で4位につけたが、午後はタイムを更新することができず0.727秒遅れて13位に留まっていた。
土曜日午前中の最終プラクティスではロッシ、エドワーズともにセッティングの作業を続け、ロッシは徐々にストーナーのペースに近づいていった。そして午後からの予選ではトップ3から一度も外れることなくハイペースをキープ。セッション終盤になって二人はミシュランの新しい予選タイヤを装着したが、これが思うように機能しなかったため、タイムアタックのために残されたのは1本のみ。そうしたなかでロッシは一時トップに立ったが、その後ストーナーとヘイデンに抜かれて3位となった。エドワーズもまた健闘して一時5位。その後、玉田が好タイムを記録したため順位を一つ下げた。
プラクティスは好天に恵まれたが、決勝日の朝には厚い雲がコースを覆いコンディションが心配された。前の2日間は気温が高く、加えてウォームアップ直前に軽い雨が降ったことから湿度は75%まで上昇。しかしGP125、GP 250のレースの間に晩夏の太陽が雲を追い払い、MotoGPは晴天の下、湿度34%、路面温度42度、気温28度という絶好のコンディションで行われることとなった。
エストリルは、ヘレス、バレンシア、バルセロナよりもスペインの多くの地域から近いため、41,566人の観衆の多くが国境を越えてやって来た。その声援に応えるかのようにペドロサがグリッド2列目から好スタート。1コーナー進入ではトップを競ってストーナーに挑んでいった。一方ロッシはフロントロウの外側からスタートで出遅れ、1コーナーを5番手で通過。ペドロサ、M・メランドリ(ホンダ)に先行されていた。
しかしこれまでとは違い、ロッシはすぐさま挽回。ミシュランタイヤが1周目からのハードなプッシュを可能にし、メランドリを抜き返してオープニングラップを終えた。さらにヘイデンを追っていき、3周目の第3コーナーでイン側のわずかの隙間に飛び込んで鮮やかにパス。その前方では、スタート後の1コーナーでストーナーに抑えられていたペドロサが、ついにトップに浮上。ストーナーを2番手に後退させてロッシ&YZR-M1との戦いへ。
周回ごとにストーナーとの差を詰めていくロッシ。そして9周目、ヤマハエンジニアの懸命の努力をアピールするかのように、ストレートでドゥカティのスリップストリームに入り、続くブレーキングでついにこれを抜き去った。
その時点で1分37秒508のファステストラップを記録しているロッシは、トップを走るペドロサとの間の0.6秒差を一気に短縮。再度、向上したトップスピードを生かしてストレートで並び、スリップストリームを出てついにはトップに立った。
その後の2、3周は1分38秒台にペースを下げたが、再び37秒台に上げて逃げ切りを図る。しかしペドロサもぴたりとついて離れない。2台のペースはほぼ同等。しかしコースのある部分ではその速さは違っていた。
残り13周。ペドロサがスリップストリームを使って再びトップを奪取し、続くブレーキングでもロッシを抑え込んだ。二人のバトルが続くなか、そこへ3番手のストーナーも追い上げてチャンスをうかがう。
残り5周となったところでペドロサがミス。1コーナー進入ではらむ間にロッシがトップに浮上するが、そのすぐ後のストレートの左コーナーでロッシも同じようなミスをして再び逆転されてしまう。ところがペドロサはその頃からスライドがひどくなっており、ストーナーもいよいよ攻めて来たため、ロッシは最後から2周目で再び勝負をかけてトップに立った。
限界ぎりぎりまで懸命に攻め、こうしてペドロサをしっかりと抑え込んだロッシに対し、観衆は賞賛を惜しまなかった。昨年ここでT・エリアス(ホンダ)に0.002秒差で敗れたときのことを、ロッシは鮮明に覚えている。そして今回は、わずかコンマ1秒の差が、ペドロサに再びチャンスを与えようとはしなかった。
エドワーズは終始、グリップの問題に悩まされて一時は17番手まで後退。それでもあきらめずに挽回し10位でレースを終了。貴重な6ポイントを獲得してランキングは7位をキープした。
テック3・ヤマハ・チームは予選好調で期待されたが、玉田が8位走行中、あと4周というところで転倒。チームメイトのS・ギュントーリは体調不良をかかえながらも14位で完走した。予選では玉田が、2002年のG・マッコイ以来、ダンロップ勢最高の4位、ギュントーリも今季最高の8位を獲得していた。
ロッシはこれでストーナーとの差を76ポイントまで縮めることに成功。残りは4レース。次回は日本のもてぎで行われる。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | V・ロッシ | FIAT Yamaha Team | Yamaha | 45'49.911 |
2 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | 0.175 |
3 | C・ストーナー | Ducati Marlboro Team | Ducati | 1.477 |
4 | N・ヘイデン | Repsol Honda Team | Honda | 12.951 |
5 | M・メランドリ | Honda Gresini | Honda | 17.343 |
6 | J・ホプキンス | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 18.857 |
7 | C・チェカ | Honda LCR | Honda | 31.524 |
8 | T・エリアス | Honda Gresini | Honda | 40.535 |
9 | L・カピロッシ | Ducati Marlboro Team | Ducati | 43.107 |
10 | C・エドワーズ | FIAT Yamaha Team | Yamaha | 44.674 |
11 | 中野 真矢 | Konica Minolta Honda | Honda | 45.403 |
12 | A・ウエスト | Kawasaki Racing Team | Kawasaki | 54.562 |
13 | C・バーミューレン | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 1'00.002 |
14 | S・ギュントーリ | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | -1 Laps |
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | C・ストーナー | Ducati | 287 |
2 | V・ロッシ | Yamaha | 211 |
3 | D・ペドロサ | Honda | 188 |
4 | J・ホプキンス | Suzuki | 150 |
5 | C・バーミューレン | Suzuki | 147 |
6 | M・メランドリ | Honda | 137 |
7 | C・エドワーズ | Yamaha | 106 |
17 | 玉田 誠 | Yamaha | 33 |
18 | S・ギュントーリ | Yamaha | 30 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Ducati | 299 |
2 | Honda | 239 |
3 | Yamaha | 238 |
4 | Suzuki | 201 |
5 | Kawasaki | 94 |
6 | KR212V | 14 |
COMMENT
V・ロッシ選手談(優勝)
「まず始めに、今日のこの勝利を昨日亡くなったコリン・マクレー氏に捧げる。コリンは僕が子どもの頃からの憧れで、彼の影響でラリーが大好きになった。今日はモータースポーツ界全体にとって、とっても悲しい日。その日にこうして彼のために勝つことができてうれしいんだ。
今日の勝利は、いろいろな意味でとても重要。今季4度目で、ずっと表彰台さえなかった後だけに、本当に感動的だ。今日はタイヤもマシンも好調。ニューエンジンも良く走ってくれて、ストレートではホンダやドゥカティのスリップストリームに入ることができたし、彼らに並んでいくこともできた。ミシュランも頑張ってくれたので、今日はライバルたちよりも僕のほうが強かったようだ。タイヤさえうまく機能してくれればトップ争いができるということを、ここでまた証明できたと思う。
ケイシー、ダニとのバトルはすごかった。全力で、何度もパスを繰り返しながら、こんなふうにまた戦えたのは本当に素晴らしいこと。最初にダニをパスしたときは、そのまま逃げようと考えていたが、彼のほうも絶好調。戦いが終盤まで続くだろうということがすぐにわかった。最後には彼がちょっとスライドし始めて、僕のほうはブレーキングで彼に勝てるところがあったので、抜くことができた。最後から2周目の最終コーナーを立ち上がったときに、昨年ここでどうやってタイトルを逃したかを思い出してしまった。だから次からはもっと十分に引き離さないとダメだね! ヤマハ、ミシュラン、チーム、僕のまわりのすべての人に感謝。今日は素晴らしい日になった。そして、シーズンを最後まで戦い続けていくために自信になった」
C・エドワーズ選手談(10位)
「3種類用意されたタイヤはコンパウンドが新しくなったもので、残念ながらそのうちの二つは、このコースにはあまり合わなかった。だから実質的に一つしか選択肢がなかったということなんだ。そのタイヤは右コーナーでは問題ないが、左になるとグリップが落ちて、これが大きな問題だった。二つの左コーナーを抜けるときに、毎周コンマ5秒くらい遅れてしまう。これでペースが落ちて、皆に抜かれる。僕はどうすることもできない。このコースではいつも調子が良かったので、本当に残念。マシンをひっくり返してチームの全員でベストを尽くしたが、努力が結果につながらなかった」
D・ブリビオ、フィアット・ヤマハ・チーム監督談
「昔の感覚が戻ってきた! このところずっと苦しい戦いが続いていたので、今日の勝利はとても重要だ。我々は、やれるときにはここまでやれる、こんなに素晴らしいショーを見せることができるんだ。今日のようなレースを、これからシーズン終了まで続けていきたい。ニューエンジンを開発してくれたヤマハと、懸命に仕事を続けてくれたミシュランのおかげでこの結果が出た。ヤマハ、ミシュランと協力してマシンを作り上げていくということがとても重要で、今日は大きく一歩前進できたと思う。
サーキットによってコースの特徴はそれぞれ違うが、今日のこの方向性を続けていくつもりだ。バレンティーノ自身のレベルは常に一定なわけだから、我々としては、彼がしっかりと自分の仕事をするためのマシンを提供していかなければならない。コーリンのほうは期待ほどにはペースが上がらなかった。去年はここで素晴らしいレースをしていて今回も期待していただけに残念なだった。データをしっかりと分析して次までに良いマシンを用意したい」
S・ギュントーリ選手談(14位)
「決勝の結果は残念だったが、今回は予選でいいポジションを確保できたことが良かったと思う。今回で僕らにもやれるということを証明できたが、やはり依然として、土曜日ではなく日曜日の決勝でうまく走るためにマシンを作り上げていかなければならない。スタート直後からチャターが出ていて次第に状況が悪くなっていった。危うく転倒しそうになるのを何度かこらえたが、その時点でまだ8ラップくらい残っていたので、このままでは最後まで走りきれないと思ってタイヤを換えることを決意、ピットに戻った。次の日本では、すべてがうまくいくようにと願っている」
G・レインダース、ギュントーリのクルー・チーフ談
「ウイーク全体としては悪くなかったし、予選は本当に素晴らしかった。ところがシルバン本人はずっと調子が悪そうだった。決勝ではチャターとリアグリップの問題に悩まされた。彼の体調を考えれば、今日は上出来だったと思う」
玉田誠選手談(リタイヤ)
「厳しいレースだった。予選で2列目につけて今回はもっともっと上を狙っていたが、リタイヤという結果に終わってしまい、とても悔しい。レースはうまくいっていた。トップ10を目指して走っていたが、残り4周というとき、それまでと何も変わったところはなかったのに、コーナーに進入したところで転倒してしまった。何が起こったのか僕にもわからない」
G・クーロン、玉田誠のクルー・チーフ談
「予選で使用したリアタイヤはパーフェクトで、これで誠は4位を獲得することができた。決勝になると気温が高くなったこともあり、リアタイヤには大きな負担になった。とても順調に8位を走行しているように見えたし、ラップタイムでも8番手を記録していた。しかしあと4周というところでリアタイヤのグリップが落ちた。これが突然、誠を襲い、転倒してしまったのだ。好成績を期待していただけに残念な結果だ」
H・ポンシャラル、テック3・ヤマハ・チーム監督談
「予選で好位置を確保した後も、このポジションをキープするのは難しいということがわかっていた。しかし去年もここでベストリザルトをおさめているので、今回も好結果を期待していたんだ。誠は終始、素晴らしいレースを見せてくれた。全力でプッシュし、マシンの能力を全部引き出して頑張った。後続を10秒も引き離して8位獲得を目前にしていた。ところが、そんな矢先に転倒してしまったというわけだ。シルバンのほうは1周目から調子が上がらなかった。懸命に頑張ってはいたものの、最終的には一旦ピットに戻り、再スタートして14位でレースを終えた。次の日本でも今回と同じような予選グリッドを確保したい。そして決勝ではもっと上を狙いたい」
辻幸一談(ヤマハ発動機モトGPグループ)
「前戦のサンマリノGPからチーム、スタッフ一丸となって問題解決に取り組んできました。その結果、ロッシ選手が優勝を飾ることができ、次戦の日本GPに向けて大きなはずみとなりました。ロッシ選手は、初日からマシンのまとまりは良かったものの、最後の最後までタイヤの選択に悩みました。レースではストーナー選手、ペドロサ選手との三つ巴になることは予想しており、最終ラップでは、最終コーナーをトップで立ち上がったものの、0.002秒差で2位になった昨年のことが頭をよぎりましたが、今回は僅差ながら優勝を飾ることができました。
チームメイトのコーリン選手はスタートこそ良かったもののレース中盤で上手くリズムに乗ることができずに10位。テック3・ヤマハ・チームの玉田選手は予選4番手から終始良いリズムでライディングできていたもののリタイヤ。ギュントーリ選手はタイヤと格闘しつつも最後までレースをあきらめることなく14位でチェッカーを受けることができました。
次戦は来週、日本はモテギでのグランプリ開催となります。引き続き皆さんのご支援、ご声援をお願いするとともに、ぜひともサーキットに足を運んでいただき、MotoGPの醍醐味を生で体感してください」
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