ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.09 6月30日 オランダ
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第9戦オランダGP(TTアッセン)
■開催日:2007年6月30日(土)決勝結果
■開催地:オランダ/アッセン(4.555km)
■観客数:91,429人
■周回数:26周(118.43km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:21度 ■路面温度:32度
■PP:C・バーミューレン(スズキ/1分48秒555)
■FL:V・ロッシ(ヤマハ/1分37秒433)
REPORT
ロッシ&YZR-M1、終盤の逆転で今季3勝目!
【速報】
フィアット・ヤマハ・チームのV・ロッシが終盤23周目のシケインでC・ストーナー(ドゥカティ)をパスして逆転、今季3勝目を飾った。ヤマハ車にとってGP最高峰クラス通算150勝目となった。C・エドワーズは6位。玉田誠、S・ギュントーリはそれぞれ13位、14位でヤマハ選手全員がポイントを獲得した。
決勝はストーナーの好スタートで始まり、すぐ後ろからJ・ホプキンス(スズキ)、C・バーミューレン(スズキ)が追う展開。雨の予選結果から11番手発進となっていたロッシは、スタート開始後は10番手に埋もれていたが1周目を終わるまでに一人抜いて9番手に。その後先行するL・カピロッシ(ドゥカティ)の後ろで様子を見るが、これをパスしてからはペースアップ。見る見るうちに挽回し6周目には1分37秒台を叩き出し前をいくホンダの二人、D・ペドロサとN・ヘイデンに迫る。続く7周も37秒台ペースで追うロッシは、まずペドロサをパス、次の8周目にヘイデンをパスしてついに3番手に。このときトップとの差は約3秒の射程圏内。
そしてロッシは12周目、それまで2番手をキープしていたホプキンスを抜いて2番手に。1.5秒前を行くストーナーを追う一騎討ちが始まる。13周目、ファステストラップ(1分37秒433)を叩き出して追い上げるロッシは、この周に差を0.5秒まで短縮。それ以後終盤まではストーナーとロッシが、0.1秒~0.2秒の僅差というデッドヒート。その接近戦に決着がついたのが23周目のシケイン。ここでインをさしたロッシがトップに浮上。その後もロッシは37秒台で力走し、24周目0.8秒、25周目1.5秒とリードを広げて最終的には約2秒差で優勝した。
【レース展開】
ロッシが第9戦オランダGPで、予選11位からスタートして優勝を果たす見事なレースを展開した。今季3度目となるこの優勝は同時に、ヤマハにとっては最高峰クラスで150回目となる勝利。エドワーズは予選ポジションと同じ6位でレースを終えた。
ロッシ、エドワーズ両選手は今回、マシンとツナギに1950年代を彷彿させるカラーリングを採用。これはフィアットの名車、“フィアット500”をイメージしたもので、来る7月4日、1957年の誕生からちょうど50年になるのを記念してそのニューバージョンが登場することとなっている。カラーリングのテーマは、エルビス・プレスリーやリタ・パヴォーネなど当時の芸術や音楽から考えられた。
ウイーク初日はドライコンディションでスタート。ロッシとエドワーズの二人は午前中の第1セッションで、タイヤテストとマシンセットアップに取り組みながら2位、4位と好調。午後からも同様に順調な走りを続け、順位ではやや後退して4位、7位となったもののタイムは更新してその日の走行を終えた。
今シーズンは金曜日に雨に見舞われることが多かったが、金曜日に公式予選が行われた今回も、その天候が再現されてしまった。午前中はまだドライで、ロッシとエドワーズはそれぞれ1・4位につけ依然として好調をキープしていたが、午後からの公式予選ではレインスーツで身を包みウエットコンディションに挑むこととなった。
二人は難しいコンディションの下、マシンセッティングとタイヤコンビネーションを追求。そのためセッションのほとんどで後方の位置に留まっていた。終盤になってエドワーズがようやく調子をつかみ、最終ラップでタイムを更新して6位に浮上。ヤマハ勢、ミシュラン勢の最上位の位置につけることとなった。一方ロッシは、最後まで大きな進歩が見られず11位。昨年のドイツGP以来最低グリッドとなってしまった。
決勝が行われた土曜日。水曜日からコース上空を覆っていた厚い雲が姿を消し、暖かい太陽が顔を出し、ところどころに青い空が見えていた。気温は春を思わせる21度。路面温度も32度と理想的なコンディションだ。しかしロッシにとっては、予選での低迷が決勝に向けて大きな課題を残している上、ライバルのストーナーがフロントロウを獲得していることもあって、ミスの許されない厳しい戦いになることは間違いなかった。
ロッシは絶好のスタートを切り、A・ホフマン(ドゥカティ)、R・ド・ピュニエ(カワサキ)、A・ウエスト(カワサキ)をパスした一方でヘイデンには先行を許した。そのまま3ラップは9番手のポジションをキープしていたが、全力を注いでアタックを開始し、カピロッシ、M・メランドリ(ホンダ)、そしてチームメイトのエドワーズを一気に抜いていった。エドワーズは1周目に順位を一つ下げて7番手を走行していたが、ロッシに抜かれた後はついていくことができなかった。
ロッシはその後も追撃の手を緩めることなく、5周目にバーミューレンをパスして5番手。その2ラップ後にはペドロサにコンマ7秒差まで迫り、これをシケインで捕らえて4番手。さらに続けてヘイデンのリアにつけると、1周もしないうちにパスして3番手へ浮上する。
次のターゲットは2.6秒前をいくホプキンス。前にマシンがいなくなったことでロッシのペースはさらに上がり、9周目、10周目、11周目と連続してラップタイムを更新。そして12周目にはついにホプキンスに仕掛け、2番手に浮上することに成功した。
この時点でトップのストーナーとの差は1.528秒。ロッシはハイペースをキープしたまま容赦なくストーナーに迫っていく。そして2ラップ後には1分37秒433のファステストラップを記録し、ストーナーとの差をコンマ9秒にまで縮めていた。ところがパッシングにはいくらか労力を費やすことになる。ロッシの追撃を何とか逃れようとするストーナーがペースを上げ、1分37秒台に入れてきたからだ。このペースアップに対応したロッシだったが、それでも抜き去るためにはマシンに鞭を打ち、全力で仕掛けていかなければならなかった。そして何度か失敗を繰り返した後、残り3周の段階で、メインストレートへと続く最終シケイン進入でストーナーのインに飛びこみトップに浮上。
ストーナーを従えて91,000人の観客の前を駆け抜けながら、ロッシはさらにペースを上げていく。そして残りの3周で2秒近い差をつけ、完璧な勝利をその手につかんだ。これでシリーズポイントではストーナーとの差を21ポイントに短縮。同時にヤマハにとって最高峰クラスで150回目となる優勝を祝した。
なお、ヤマハは1961年からGPロードレースに参戦しているが、最高峰クラス史上、通算150勝を果たした2番目のメーカーとなった。最高峰クラスの最初のヤマハのウイナーは、1972年シーズンの最終戦バルセロナで2気筒353ccの2ストロークマシンを駆ったイギリスのチャス・モーティマー。以来ヤマハは、最高峰クラスで2シーズンを除き毎年勝利を積み重ね、合計11のメーカータイトルと12のライダータイトルを獲得してきた。
エドワーズは序盤でバーミューレンの追撃を抑えて6位でレースを終え、10ポイントを加算してランキング7位をキープしている。テック3・ヤマハ・チームの玉田とギュントーリは6台の大集団のなかでトップ10争いを展開。二人は今季最高位を目指して戦っていたが、最終的に玉田は13位、ギュントーリは14位でレースを終えた。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | V・ロッシ | FIAT Yamaha Team | Yamaha | 42'37.149 |
2 | C・ストーナー | Ducati Marlboro Team | Ducati | 1.909 |
3 | N・ヘイデン | Repsol Honda Team | Honda | 6.077 |
4 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | 10.465 |
5 | J・ホプキンス | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 13.138 |
6 | C・エドワーズ | FIAT Yamaha Team | Yamaha | 15.139 |
7 | A・バロス | Pramac d'Antin | Ducati | 36.075 |
8 | A・ホフマン | Pramac d'Antin | Ducati | 41.768 |
9 | A・ウエスト | Kawasaki Racing Team | Kawasaki | 43.605 |
10 | M・メランドリ | Honda Gresini | Honda | 43.796 |
11 | C・チェカ | Honda LCR | Honda | 43.826 |
12 | 中野 真矢 | Konica Minolta Honda | Honda | 47.896 |
13 | 玉田 誠 | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | 54.068 |
14 | S・ギュントーリ | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | 57.718 |
15 | Ku・ロバーツ | Team Roberts | KR212V | 1'28.637 |
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | C・ストーナー | Ducati | 185 |
2 | V・ロッシ | Yamaha | 164 |
3 | D・ペドロサ | Honda | 119 |
4 | J・ホプキンス | Suzuki | 94 |
5 | C・バーミューレン | Suzuki | 88 |
6 | M・メランドリ | Honda | 87 |
7 | C・エドワーズ | Yamaha | 75 |
16 | 玉田 誠 | Yamaha | 20 |
17 | S・ギュントーリ | Yamaha | 18 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Ducati | 188 |
2 | Yamaha | 171 |
3 | Honda | 149 |
4 | Suzuki | 122 |
5 | Kawasaki | 56 |
6 | KR212V | 8 |
COMMENT
V・ロッシ選手談(優勝)
「信じられないような展開! 僕のこれまでの全キャリアのなかのトップ5には入る素晴らしいレースだったと思う。予選11位からのスタートは運があるみたいだ。だって昨年のザクセンリンクを含めて、これまでにも何度かあの位置から優勝しているからね。ゆうべはあまり眠れず、決勝がこのような展開になるなどということはイメージできなかった。実際、予選の後はかなり落ち込んで、決勝に何を期待したらいいのか、わからないほどだったんだ。
でも一旦走り出してみると、ペースがとても良くて全力でプッシュすることができた。どんどん前のマシンを抜いていき、これならストーナーに追いつけるとわかったので、さらに懸命に攻め続けたんだ。ようやくたどり着いたときには本当に疲れてしまっていた。タイヤも消耗していたし、もちろん彼もとても速かったので、パスするのは簡単ではなかったが、YZR-M1が好調に走ってくれたので、終盤でついに彼を捕らえることができた。ミシュランとチームに心から感謝。マシンが素晴らしかったので最大限までプッシュすることができたのだから。アッセンは僕にとって特別な場所なので、ここで勝てたことは本当にうれしい。またスペシャルなカラーリングも良かったね。今までの経験では、カラーリングを新しくしたときは、たいていうまくいかないんだけれど、今回はこの通りの大成功! ヤマハの150勝目をこんな形で祝うことができて感激だ」
C・エドワーズ選手談(6位)
「スタートは悪くなかったが、最初の数周は何だか手間取ってしまってペドロサに抜かれてしまった。一人になって落ちついてからはメランドリとバーミューレンに迫りチャンスをうかがった。ペースも良くなってきていたので楽に抜けると思っていたが、実際にはなかなかチャンスはめぐってこなくて何周かかかってしまった。一旦二人をパスしてからは、ただ体を伏せてひたすら前を目指していくと、最速のラップタイムが出るようになったんだ。
だから一時は表彰台も夢ではないと考えたほどだ。本当に全力でプッシュした。6位に落ち着くのは嫌だったので必死だった。でもレース後半は、完璧なフィーリングというわけにはいかなくなってペースも落ちた。終盤にはもう一度ホプキンスを追いかけてペースも少し戻ったが、彼もペースを上げたため結局追いつくことができなかった。バレンティーノはとても素晴らしかった。祝福したい」
D・ブリビオ、フィアット・ヤマハ・チーム監督談
「ヤマハの150回目の勝利を、最高の形で祝福できたと思う。きのうの予選が終わった時点では、このような展開はとても想像できなかった。バレンティーノはまさに驚異の走りを見せてくれた。マシンもタイヤも好調だったので、バレンティーノがこのように最大限の力を出し切ることができた。だからミシュラン、ヤマハ、チームのみんなにお礼を言いたい。
コーリンも素晴らしいレースで、ペースもとても速かった。最終的に上位との差を埋めることはできなかったが、ラップタイムでは上位グループに劣っていなかったので、次回に向けて大きな励みになるだろう。これからは本当にハードな戦いになるだろうが、モチベーションは十分だ。また、今回はスペシャルなカラーリングでフィアットを祝福できたことも良かった。新型フィアット500のスタートとして最高のストーリーができあがった」
玉田誠選手談(13位)
「先週に比べればずっといい。だから全体として満足はしているけれど、本当はもっと上を狙えたはずだと思っている。スタートがとてもうまくいって、マシンもタイヤも好調だったので、最初の10周くらいまでは大集団のなかで7番手争いを展開することができた。でもその後からフロントタイヤの右側のグリップが落ちてきたんだ。左側は問題なかったんだけれど、思うように全力でプッシュすることができなくなってしまった。またリアタイヤはレース終盤まで何の問題もなく走ってくれた。僕はこれまでフロントにトラブルを抱えたことはなかったので不思議なんだ。とにかく、今僕らが常に前進を続けていることは間違いない。これからはそれを結果につなげられるようにしていきたい」
S・ギュントーリ選手談(14位)
「依然として、自分が望んでいるような成績には届いていないが、少なくとも先週より一歩前進したことは間違いない。スタートはあまり自信がなくてちょっと出遅れてしまったけれど、そのあとはプッシュできてメランドリ、ウエスト、ホフマン、チェカ、玉田らの集団に詰め寄ることができた。すべてがうまくかみ合っているような感じで、ペースをしっかりとつかんで彼らについていくことができた。ところが終盤に近づくとリアタイヤの調子が落ちてきて、ちょっと厳しい展開になってしまった。もっと抜けると思ったし、玉田選手よりも速く走れてパスできると思ったが、残り3、4周というところで少しペースを抑えざるを得なくなった」
H・ポンシャラル、テック3・ヤマハ・チーム監督談
「きのうのウエットで苦労したので、今朝、晴れているのをみたときにはうれしかった。今回はダンロップが開発に非常に力を入れていることを証明できて良かったと思う。最初の数ラップはとても好調。玉田とギュントーリがそろって大集団のなかで戦い、ライバルたちよりも好タイムを記録するところを見ることができて感激。でも終盤はそのペースを維持できず、ポジションのキープで精一杯になってしまったのは残念だった。
また、レースの3分の2ほどを他のファクトリーマシンと互角に戦えたこともうれしかったことだが、やはり最終的には逃げられてしまった…。前回と今回の二つのレースは、ダンロップにとって非常に貴重なものとなったはず。というのもウエットとドライの両方のコンディションでたくさんのデータを収集することができたからだ。我々はこれかれもまた前進を続けていけると確信している。バレンティーノ、ヤマハ、フィアット・ヤマハ・チームの見事な戦いぶりを祝福したい。ヤマハが再び表彰台の真ん中に立つのを見ることができて満足だ」
辻幸一談(ヤマハ発動機モトGPグループ)
「このレースウイークは天候に翻弄された面もありましたが、最終的にはロッシ選手が11番グリッドからのスタートにも関わらず、驚異的な速さを見せて優勝を飾ることができました。フリープラクティス中のドライ路面では、車体、エンジン、タイヤがまとまりを見せていたものの、予選時のウエット路面では、一転、方向性を見失ったことで上位のグリッドを獲得できませんでした。その中でもコーリン選手が予選6番手を獲得できたことが、ウエットでのセッティングの方向性を得る上で非常に参考となり、万が一、決勝レースがウエットになったとしても備えは十分できていました。
決勝日の土曜日は、今週で最も好天に恵まれた中でのレースとなりました。ロッシ選手は果敢な走りでベストラップを次々と更新し、11番手スタートながら優勝を獲得。コーリン選手も序盤は彼らしい鋭い走りを見せ、その後もミスなくレースを終え6位を獲得。テック3・ヤマハ・チームの玉田選手は最後尾スタートながら13位、ギュントーリ選手も14位でチェッカーを受けています。
このアッセンでシーズンの半分が終了し、ランキングポイントではロッシ選手がトップから21ポイント差の2位で折り返します。次戦は2週間後、ドイツでのレースとなります。昨年もロッシ選手が優勝しているサーキットですので期待が持てます。引き続き皆さんのご支援、ご声援をお願いします」
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