ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.05 5月20日 フランス
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第5戦フランスGP
■開催日:2007年5月20日(日)決勝結果
■開催地:フランス/ル・マン(4.180km)
■観客数:74,204人
■周回数:28周(117.04km)
■コースコンディション:ウエット
■気温:13度 ■路面温度:16度
■PP:C・エドワーズ(ヤマハ/1分33秒616)
■FL:J・ホプキンス(スズキ/1分38秒678)
REPORT
ロッシが6位、エドワーズは12位
【速報】
C・バーミューレン(スズキ)がMotoGP初優勝を果たした。決勝開始後まもなく雨となり、途中全車ピットインしてウエット用セッティングの車両に乗り換えてレースを続ける「フラッグ・トゥ・フラッグ」レースとなった。フィアット・ヤマハ・チームのV・ロッシは6位だった。
予選4番手グリッド、2列目スタートのロッシは、ホールショットのC・ストーナー(ドゥカティ)を抜いて1周目を首位で終えその後5周目までトップを走る。しかし雨がぱらつき徐々に後退。変わってトップに立ったのがS・ギュントーリ(ヤマハ)、その後方にR・ド・ピュニエ(カワサキ)と地元フランス人がワン・ツーを走る。しかし2人のランデブーは2周もたず2人とも転倒して後退。10~11周目に入ると雨も強くなり各車ピットインし、ウエット用マシンに車両を交換しコースに復帰。各マシンがピットインを終えた段階でのトップはバーミューレン、そして2番手M・メランドリ(ホンダ)、3番手にロッシがつけ後半に入る。
しかしロッシは、ストーナー、N・ヘイデン(ホンダ)らに抜かれて後退。さらに終盤、D・ペドロサ(ホンダ)、A・ホフマン(ドゥカティ)にも抜かれて7番手まで後退。しかしヘイデンが終盤転倒したため順位を一つ上げ6位でチェッカーを受けた。
ポールポジション発進のC・エドワーズは、ウエット用セットアップで臨み序盤ペースを上げることができず4周目にピットインしマシンをドライ用に交換。しかしその数周後皮肉にも雨となってペースを上げることが出来ず、再びピットイン。その後挽回を図るが結局12位に終わった。
テック3・ヤマハ・チームは、そのホームGPとなった今回、玉田誠とギュントーリがともにトップ10入り。ウエットコンディションのなか玉田が9位、ギュントーリが10位を獲得する活躍を見せた。ギュントーリはディフェンディングチャンピオンのロッシをパスしてレースをリードするという初めての経験もしている。そのままさらに差を広げようと懸命に走り続けたが、コンディションの悪化もあり、ついには転倒。しかしすぐに再スタートしてゴールを目指した。一方の玉田はスリック装着のままさらに数周走ったが、耐えきれずにピットイン。多くのライダーが転倒して戦線を離脱するなか、玉田はコンスタントにペースを守って走りきり、今季自己最高の成績をおさめた。
【レポート】
第5戦フランスGPの決勝は雨に見舞われ、活躍が期待されていたロッシとエドワーズは実力を出し切れずにそれぞれ6位と12位に終わった。波瀾のレースは7台が転倒リタイア、優勝はオーストラリアのC・バーミューレンとなった。
フリープラクティスと予選が行われた金曜日、土曜日は晴天に恵まれ、二人はそろって好調にウイークをスタート。とくにエドワーズは、フリープラクティスで絶好のベースセッティングを作り上げ、土曜日午後の公式予選でも見事な走りを披露してMotoGPで自身初のポールポジションを獲得した。午前中のセッションでは第2コーナーでハイサイドを起こし、グラベルまで飛ばされる激しい転倒を喫していたこともあり、余計に印象的なポール獲得となった。幸いにもけがを免れたエドワーズは予選終了後、“あの転倒があったからポールが獲れたんだと思うよ。ル・マンの路面は痛くないことがわかって、転倒も怖くなくなってたんだ"とジョークを言った。
ヤマハにとっては今季4度目となったこのポールポジション。エドワーズが1分33秒616を叩き出してトップに躍り出た瞬間、皮肉なことに、それまで3番手に付けていたロッシをフロントロウから押し出すこととなってしまった。ロッシはフリープラクティスでなかなかセッティングが煮詰まらず、エドワーズのペースについていくことができずにいた。問題はマシンとタイヤのバランス。ロッシのエンジニアは今シーズン初めて、タイヤの新レギュレーションの影響に悩まされることとなった。そうした厳しい状況のなかでも一日ごとに前進し、予選で4位を獲得できたのは大健闘と言えるだろう。そして決勝はそろって表彰台に上ることを目標にしていた。
決勝当日。125ccクラスと250ccクラスのレースがドライコンディションのもとで行われた後、ブガッティサーキットの上空に突然、真っ黒な雲が立ちこめた。そしてMotoGPのライダーたちがグリッドにマシンを並べたところでついには雨粒が落ち始めた。開始予定時刻の午後2時直前のことだったため、レースはウエット宣言が出されてスタート。ところがライダーたちは、天候がさらに悪化したときにマシン交換を行うという選択肢を残してスリックタイヤのままスタートした。
ポールシッターのエドワーズはスタートを失敗して、第1コーナーで集団に飲み込まれてしまう。同じくその集団の一員となったロッシは完璧なライン取りで好位置をキープ。第2コーナーのシケイン入り口でストーナーとJ・ホプキンス(スズキ)をパスしてトップに浮上し、さらにハイペースでリードを広げ3周目終了時点で2秒もの差をつけることに成功した。一方エドワーズは波瀾の展開。スリッピーなコンディションのなかでグリップが得られず、ついには最後尾まで後退してしまう。
4周目。コンディションがさらに悪化するとロッシはペースを落とし、地元ライダーのギュントーリとド・ピュニエを先行させる。ギュントーリにとっては当然、初めての体験だったが、難しいコンディションのなかで果敢にバトルを展開して観客の目を十分に引きつけた。しかしギュントーリは8周目にハイサイド、ド・ピュニエもその1周後にコースアウトしてしまう。これで後続のライダーたちはレインタイヤへの変更を決意させられることとなった。
真っ先にピットインしたのはエドワーズ。4周目にすでにタイヤ交換を行っていたが、これは早すぎる決断だったようだ。路面がまだ完全なウエットになっていなかったため、タイヤの温度を低く保つことができなかった。これでリアタイヤを一つ使い切ってしまったエドワーズは2度目のピットイン。その後はただひたすらゴールを目指して走りきり12位でチェッカーを受けた。
その他の多くのライダーは9周目にタイヤを交換。ロッシは1周遅らせてピットインし、これが功を奏して5番手から3番手へと順位を上げることに成功した。チームはこのとき、タイヤチョイスで賭けに出ていた。天候の好転を予測してハードコンパウンドを装着していたのだ。ところが予想に反して雨が激しくなったためこの判断は裏目に出て、逆に柔らかめのコンパウンドを選択していた他のライバルたちにアドバンテージを与えることとなってしまった。
ロッシはこれで順位を下げ、代わってバーミューレンがみるみるうちにリードを広げ、メランドリとストーナーが続いた。ヘイデン、ペドロサ、ホフマもペースを上げてロッシを抜いていったが、ヘイデンは残り3周で転倒。これでロッシは順位を一つ上げて6位でゴールし、ランキングは2位をキープした。
ギュントーリは転倒後、ピットに戻り、ウエットタイヤを装着したスペアマシンに乗り換えて再スタート。転倒の際に腰と脚を強打しており痛みに耐えながらの走行となったが、14位から10位までポジションを上げる大健闘を見せた。チームメイトの玉田は9位。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | C・バーミューレン | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 50'58.713 |
2 | M・メランドリ | Honda Gresini | Honda | 12.599 |
3 | C・ストーナー | Ducati Marlboro Team | Ducati | 27.347 |
4 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | 37.328 |
5 | A・ホフマン | Pramac d'Antin | Ducati | 49.166 |
6 | V・ロッシ | FIAT Yamaha Team | Yamaha | 53.563 |
7 | J・ホプキンス | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 1'01.073 |
8 | L・カピロッシ | Ducati Marlboro Team | Ducati | 1'21.241 |
9 | 玉田 誠 | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | -1 Laps |
10 | S・ギュントーリ | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | -1 Laps |
11 | F・ニエト | Kawasaki Racing Team | Kawasaki | -1 Laps |
12 | C・エドワーズ | FIAT Yamaha Team | Yamaha | -3 Laps |
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | C・ストーナー | Ducati | 102 |
2 | V・ロッシ | Yamaha | 81 |
3 | D・ペドロサ | Honda | 62 |
4 | M・メランドリ | Honda | 61 |
5 | C・バーミューレン | Suzuki | 55 |
6 | J・ホプキンス | Suzuki | 48 |
9 | C・エドワーズ | Yamaha | 35 |
16 | S・ギュントーリ | Yamaha | 12 |
17 | 玉田 誠 | Yamaha | 11 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Ducati | 102 |
2 | Honda | 89 |
3 | Yamaha | 81 |
4 | Suzuki | 71 |
5 | Kawasaki | 28 |
6 | KR212V | 4 |
COMMENT
V・ロッシ選手談(6位)
「スタートのときはまだドライコンディションで、とても良い感じで走れていたんだ。だから余計にこの結果には腹が立つよ。マシンのほうは数カ所のモディファイのおかげでとても好調だったので、優勝を狙っていけると思っていた。ところが雨がすべてを台無しにした。コンディションが変わったのでマシン交換を行わなければならなくなったが、そのときに硬めのレインタイヤを選択したのが失敗だった。雨が予想以上に激しくなり、その後はリアのグリップが何もないような状態になり、ペースを上げることができなかった。
最後の5周などは走っているだけで精一杯でとても危なかったんだ。1周でおそらく5、6秒遅れていただろうね。今回はストーナーとの差を埋めるつもりで臨んだレースだった。彼との激しいバトルになるはずだったのに、まったく違う展開になった。こんなコンディションのなかで優勝したバーミューレンを祝福したい。まるでマジシャンみたいだったよ」
C・エドワーズ選手談(12位)
「昔と同じ問題にぶつかった。つまり、昨年のオーストラリアGPでの雨のなかでの転倒と今年のヘレステストだ。説明するのは難しいんだけれど、どうもエンジンブレーキと関係があるようなんだ。ウエットコンディションでタイヤのトラクションが少なくなると、この現象が現れる。きのうのクラッシュもおそらく、これと同じようなことだと思うんだ。コーナーに進入していくとリアが回り込んでくる。そしてスライドしてしまう。バレンティーノとはスタイルがまったく違っていて、彼がクラッチをかなり長く握っているのに対して僕はすぐに離す。今日はこのことが問題を大きくしたと思う。
今日のレースは雨のレースというより氷のレースと言ったほうが相応しいくらいで、僕は本当に何もすることができなかった。とくにスタートが最悪で、濡れた路面にスリックタイヤという状況が問題を大きくした。だから早めに決断をして一番にピットに戻ってきたが、その後しばらくはウエットタイヤにドライの路面ということになってしまって、やっぱりうまく走れなかったんだ。それでもう一度ピットに戻り、柔らかめのレインタイヤに履き替えたら、ようやくいくらか良くなったというわけだ。こんな形でポールポジションを無駄にしたくはなかった。好成績を狙っていたのに、ここまで支えてくれたみんなに本当に申し訳ない」
D・ブリビオ、フィアット・ヤマハ・チーム監督談
「とても難しいコンディションだった。大きな期待を持って臨んだレースだっただけに本当に残念だ。バレンティーノは好調に走っていたが、雨が降り出してピットイン。我々としては弱い雨を想定してハード・レインを装着したのだが、思っていたよりもひどくなってしまったため、うまく機能してくれなかった。そういうわけで、ピットアウト直後はとても好調だったのに、あとからどんどん後退してしまったんだ。そんな難しい状況のなかで彼は最善を尽くし、貴重なポイントを獲得してくれた。コーリンに関しては、本当に何と言っていいかわからない…。天候と、低い気温のためこんなことになってしまったんだ。見事なポールポジションの後のこの結果は、忘れてしまったほうがいい。晴れていれば間違いなく素晴らしいレースを見せてくれただろう。でもそうはならなかったということだ。今日のことはもう過去のこととして、次の戦いの舞台、ムジェロへ向かうよ」
玉田誠選手談(9位)
「とても難しいレースだった。完走できてうれしいが、本当ならもっと速く走れたはずなので、完全に満足というわけにはいかなかった。でもこんなにシビアなコンディションでのレースだったのだから文句を言っても仕方がない。今回もレースのなかで多くのことを学ぶことができた。路面がまだそれほど濡れていないときに時間を無駄にしまって、いつピットインすれば一番いいのかをなかなか決めきれなかった。路面がすっかり濡れてしまった後はタイムがどんどん上がってきた。そして気持ちよく乗れるようになりタイヤのグリップも十分に感じることができたんだ。明日からまたここでテストを行う予定で、そのなかで、今回のように路面状況が不安定なときの対処法を探していきたい。チームとしてはまずまずの結果で、確かな前進が見られていると思う。今後の戦いにも役立ってくれるだろう」
S・ギュントーリ選手談(10位)
「かなり変なレースだったけど、僕としては総合的にとても満足しているよ。母国のファンの前で、予選、決勝ともに好調に走れたということが特別な意味を持っているんだ。スタートは大失敗でウイリーしてしまったけれど、その後はとても快調でどんどんパスしていき、最後には目の前に誰もいなくなった。でもその事実を実感するよりも、ただひたすら前を目指し続けたんだ。すると突然にリアが回り込んできてクラッシュしてしまった。それほど濡れているようには見えなかったので、自分でも驚いてしまったほどだ。あそこで転倒していなければ、あと何周かはあのまま走り続けてトップをキープしただろう。あの時点ではまだ、ピットに戻ってマシンを替えなければならないほどのコンディションにはなっていなかったからね。
10位という成績は自己最高。だからクラッシュがあったのは残念だけど全体としてとってもハッピーなんだ。ライバルたちと十分に戦えるということがわかったことも大きな収穫だと思う。マシンを信頼出来るし、自分自身のライディングにも自信が持てた。次のムジェロでも前進出来るよう頑張りたい」
H・ポンシャラル、テック3・ヤマハ・チーム監督談
「実に奇妙なレースだ。予選がとても好調で、今朝のウォームアップもしっかりと走れていた。そしてその勢いのまま、レースがスタートした。シルバンはスタート前、“1周だけでもレースをリードしてみたい"と話し、それが何と実現した。彼はスタートで13番手まで後退して遅れてしまったのだが、ハイペースでどんどん挽回。雨が激しくなってきたときにはちょっと心配したが、我々としてはクラッシュの可能性も想定しながら、彼自身はチャンスを待ち続けた。フランスのファンは誰もが、シルバンがトップを走行するのを喜んで見ていたし、クラッシュした後もすぐにマシンを起して再スタートするファイティングスピリットは素晴らしかった。
また、同様に素晴らしい精神力を見せてくれた誠にも感謝したい。二人がそろってトップ10に入ったことはチームにとってとても大きな出来事だ。今回でチームはまた大きく前進できたし、これからは常に10位以内を目指していく自信もついた。これから2日間のテストを通じて、さらに何歩か前へ進み次のイタリアに臨みたい」
辻幸一談(ヤマハ発動機モトGPグループ)
「ここル・マンサーキットは、GPサーキットの中でYZR-M1と相性の良いサーキットの一つであり、優勝あるのみとの意気込みでサーキット入りしました。予選ではコーリン選手が自身初となるポールポジションを獲得。ロッシ選手も4位、テック3・ヤマハ・チームのギュントーリ選手、玉田選手も今までよりも高いスターティンググリッドを獲得し、決勝にも期待がかかりました。レースではスタート直前から小雨が降り出し、レース中盤にかけてはウエット仕様のバイクに乗り換える“フラッグ・トゥ・フラッグ"レースとなり、結果的に雨に翻弄されたレースとなりました。ウエットコンデションのなか、最後までマシンをコントロールし続けたロッシ選手でしたが、結果は6位。
テック3・ヤマハ・チームのギュントーリ選手は、この地元フランスで一時はトップを走る場面もありましたが、残念ながら途中転倒もあり10位。玉田選手はドライ、ウエットとも安定したペースで9位。ポールポジションからスタートのコーリン選手は、スタート直後からリアのグリップ不足に悩まされ、12位でチェッカーを受けました。この雪辱を果たすべく、次節イタリアGPは表彰台の中央に立てるようチームスタッフ一同全力投球しいたします。引き続き皆さんのご支援、ご声援をお願いします」
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