ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.13 9月10日 マレーシア
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第13戦マレーシアGP
■開催日:2006年9月8日(金)フリー、9日(土)予選、10日(日)決勝
■開催地:マレーシア/セパン
CIRCUIT DATA
■開設:1999年
■コース長:5.542km
■2005年のPPタイム:2分01秒731(2005年:L・カピロッシ)
■2005年のFL:2分02秒993(2005年:N・ヘイデン)
■2005年の優勝者:L・カピロッシ
REPORT
逆転勝利に向けてのラスト5戦
シリーズ戦の終盤戦5レースは、アジア、オセアニア、ヨーロッパと3大陸を移動して行われる。その最初の舞台が今週末9月8日~10日にマレーシアのセパンサーキットで開催されるGPで、その後オーストラリアのフィリップアイランド、日本のもてぎ、ポルトガルのエストリル、スペインのバレンシアと続く。この5つのレースを走り終えたとき、過去5年間に渡りV・ロッシが持ち続けたタイトルの行方が決定する。ロッシが再びチャンピオンに輝くためには、現在のポイントリーダーであるN・ヘイデン(ホンダ)との38ポイント差を挽回しなければならない。しかもロッシの他にも8人のライダーに計算上、チャンスが残されている。
3週間前に行われた前大会のブルノでは、ロッシが2位を獲得したのに対しヘイデンが9位に留まったことから、その差が一気に13ポイント短縮。またこのレースはトップ15のタイムが史上最も接近しており、今季の戦いの厳しさを改めて強調するものともなった。こうしたなか、残る5戦での勝敗と獲得ポイントが非常に大きな意味を持つものになることは言うまでもない。
ブルノでの2位獲得は、ロッシにとって最高峰クラスで87回目の表彰台。今回のマレーシアで再び表彰台を獲得すれば、G・アゴスチーニの記録に並ぶこととなり、M・ドゥーハンの記録に次ぐ2位タイへと浮上する。ロッシは過去5年に渡りここセパンで表彰台に上っており、2004年にはヤマハで優勝を飾ったほか昨年はL・カピロッシ(ドゥカティ)に続く2位獲得でタイトルを決定した。
チームメイトのC・エドワーズは残る5戦の目標の一つとして、ロッシのタイトル獲得のためのサポートを掲げている。それと同時に、これまでの連続ポイント獲得回数の記録更新から、連続表彰台獲得回数の記録更新へと目標を切り替える。
COMMENT
V・ロッシ選手談 ー “お気に入りのコース”
前回のブルノでは、同郷のカピロッシと記憶に残る見事な戦いを繰り広げたロッシ。振り返ってみれば昨年のセパンでもカピロッシと激しく競り合っており、今年の大会も同じような展開になることをロッシ自身が予測している。セパンはロッシのお気に入りのコースでもあり、このところ増々好調のYZR-M1もこの大会にしっかりと照準を合わせてきている。
「皆さんもご存知の通り、セパンは大好きなコースの一つ。ここをYZR-M1で走るのは、いつでもとても楽しいんだ。ブルノですでにしっかりとした手応えをつかむことができているので、今回は金曜日の朝の走行からすぐにいい走りが期待できるし、ウイークを通じて上位につけていたいと思う。昨年はロリスの強さが際立ったが、これは前回のブルノでも同じ状況。そして今回もきっと手強い存在になるだろう。
今年は少なくともマレーシアでタイトルを決めるというようなことは不可能。だから目標は表彰台を獲得し、できる限り多くのポイントを手にすることだ。この後の3連戦は非常に重要で、3連戦の後にはおそらくチャンピオンシップの行方がよりいっそうはっきりしていることだろう。大陸をまたぐ移動、時差との戦いはもちろん大変だけれど、目標にしっかりと照準を合わせて最後までベストを尽くすよ!」
C・エドワーズ選手談 ー “後ろは振り向かない”
テキサス州コンローに住むエドワーズは、常日頃から長旅には慣れている。3つの大陸を巡る今回のアウエーも、彼にとっては少しの苦労もない。レースの少なかった夏の期間はとうに過ぎ去り、最終盤の5戦に向かって気持ちはすっかり切り替えられた。
「期待していたような展開になっていないことは確か。当然もっと良い状態でこの終盤戦を迎えたかった。でも終わったことを、くよくよするつもりはないし、前回のブルノでは確かな手応えがあったのでこの調子を維持することを考えるだけ。ブルノでのセッティングが他のコースでは必ずしもうまく機能しないことは、昨年の経験でわかっている。でもあのテストによってマシンのことをはっきりと理解できたと思っているので、金曜の朝にはきっと良いポジションに立っていられるだろう。
僕はセパンのコースがとても好きだし、次のフィリップアイランドも気に入っている。だからこの何戦かは本当に楽しみ。目標は二つある。一つはバレンティーノがタイトルを獲るために必要な“ツール”を与えてあげられるように、チーム全体で協力して最高のマシンを作ること。そしてもう一つは僕自身が好成績を挙げて表彰台に上ることだ。“アウエー”の3連戦は確かにきついけれどチャレンジする準備は整っている!」
D・ブリビオ、キャメル・ヤマハ・チーム監督談 ー “最後の追い上げ”
ブリビオは、ロッシがこれまでの2年間と同様にチャンピオンの座を守れるようチームに対して最後の努力を要求している。3つの大陸を移動して行われる5つのレースは、チームスタッフにいつも以上の重荷を負わせることとなるが、彼らの努力はコース上で必ず実を結ぶとブリビオは信じている。
「とても長く、とてもハードなシーズンが続いてきた。そしてここからは最後の“プッシュ”ということになるが、ライダー、チーム、関わってきた全員がこの最後の2カ月に全力をかける。ブルノのレースのあと2日間のテストを行い、今後に向けて確かな手応えを得ることができた。新しいものをいくつも試しセッティングに関して大きく前進。ライダーたちから非常に重要な情報をもらったので、これできっと最終戦まで上位で戦うことができると思う。
一番の目標は、バレンティーノが最後までタイトル獲得の可能性を残せるようにして、最終戦のバレンシアでの展開を見守ること。またブルノテストの結果はコーリンにも自信を与えているはずだから、彼もきっと頑張ってくれるだろう。そしてできるだけ好成績でシーズンを終えてほしいと思う。セパンとフィリップアイランドは二人とも好きなので、チームにとって良いレースになると信じているよ!」
J・バージェス談(ロッシのチーフエンジニア) ー “テクニカル情報”
セパンはコース幅が広いことで知られ、ある部分ではコース幅が16メートルにもおよぶ。また一年中、気温が高いことも特徴の一つだ。このことから、とくにハードブレーキングからのコーナー進入の際にしっかりとラインをキープできるマシンであるかどうかが鍵となり、それが勝敗のポイントとなる。5.542kmのなかには4つのヘアピンといくつかの高速コーナーがあり、何度も方向が変わるレイアウト。ここでは、マシン全体としてのセットアップの正確さが求められるし、その安定した気候もあり、オフシーズン中のテストコースとして理想的な場所ともなっている。
「前回のブルノは別だが、このところの開催サーキットは非常にタイトで厄介なコースばかりだった。そういう意味ではセパンは“真のグランプリサーキット”と言えると思う。セパンにはすべてがそろっている。6速を使う高速部分から1速を使うタイトでツイスティーな部分まであり、テストコースとしても適している。コーナーについて言えば、加速しながら抜けるところ、止まるところ、高速から一気にブレーキングするところなどがあり、これがバイクのあらゆる部分に正確さを要求してくる。
昨年はタイヤに悩まされたが、オフシーズンのテストでたくさんのラップを重ねてきたし、最近のレースでもこの部分に集中してきた。セパンはフルリーンの状態でブレーキをかけなければならない場所がたくさんあるので、フロントエンドのセットアップにはとくに正確さが求められる。だからライダーたちがフロント部分を完璧に信頼できるようにしなければならない。またこの暑さも要注意で、序盤からプッシュし過ぎず、タイヤを温存することが重要だ」