ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.11 7月23日 アメリカ
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第11戦USGP
■開催日:2006年7月21日(金)フリー、22日(土)予選、23日(日)決勝
■開催地:カリフォルニア州/ラグナセカ
CIRCUIT DATA
■開設:1957年
■コース長:3.610km
■レコードラップ:1分23秒915(2005年:C・エドワーズ)
■ベストラップ:1分22秒670(2005年:N・ヘイデン)
■2005年の優勝者:N・ヘイデン
REPORT
目指すは優勝のみ!
わずか5日前にドイツはザクセンリンクで劇的な優勝を果たしたばかりのキャメル・ヤマハ・チーム。次の第11戦はアメリカのラグナセカで行われるため、ヨーロッパ大陸の東部からアメリカ大陸の西部まで、世界をまたぐ大移動となる。カリフォルニア州モントレー近郊に位置するラグナセカは、ほぼ10年間に渡ってグランプリ開催がなかったが、昨年カレンダーに復活し、今年は2年目を迎える。
昨年はV・ロッシ、C・エドワーズの二人がそろって表彰台を獲得。ヤマハ創立50周年を最高の形で祝うこととなっただけでなく、グランプリというスポーツをアメリカ大陸へ復帰させる役割も十分に担うことができた。今回はしかし、それだけでは満足できそうにない。シーズンのなかでも最も重要な時期を迎えている今、二人の目標は優勝だけだ。
昨年はケンタッキー州出身のN・ヘイデン(ホンダ)が、地の利を生かして優勝。そのヘイデンとチャンピオン争いを展開しているロッシにとってこの第11戦は、ポイント差を縮めるため、そしてライバルに精神的な一撃を与えるための絶好のチャンスとなりそうだ。ラグナセカはコースの安全性向上のために改修工事が行われたが、ロッシとそのチームはすでに十分なデータ収集も行っており目標達成に向けて着実に前進している。
一方のエドワーズの目標はMotoGP初優勝。エドワーズは先月末に行われた第8戦ダッチTTで優勝目前に転倒してしまったが、そのポテンシャルは十分にアピールしてきた。来週には鈴鹿8時間耐久レースも控えているエドワーズが、このホームグランプリでの勝利に賭ける思いは並大抵のものではない。
2005年、1994年以来11年ぶりにMotoGPが開催されたラグナセカ。従来の問題点であった安全面に関しては、エスケープゾーンやコース幅を拡大することにより解消し、さらにサーキット施設を拡充した結果、開催が実現されることとなった。
ラグナセカの特徴はコークスクリュー、そしてレイニーカーブ。グランプリサーキットでは最短となる1周3.610kmのコースの中に他のサーキットに見られないほどの高低差があり、観客の目にはまるで巨大アメリカン・ローラーコースターのようなレースに映るだろう。通常のMotoGPレースは120kmとレース距離が定められているが、ラグナセカではその短いコースのためにラウンド最多の31周を周回することになる。
COMMENT
V・ロッシ選手談 ー “スタートから力強く”
1年前、初めて訪れたラグナセカで素晴らしい走りを見せ、二人のアメリカ人に続いて3位を獲得したロッシ。しかし2度目となる今回は表彰台ではなく、トップでゴールして25ポイントを獲得することだけを目標としている。
「昨年は初めてだったからコースがわからなかったけれど、エドワーズやヘイデンについていくことができた。だから二人からいろいろ教えてもらったよ。周回を重ねるごとにフィーリングが良くなってきて、レースも終盤頃には本当に力強く走れるようになり、最終ラップでベストラップを記録した。だから今回はスタートからそれができるようにして、二人のアメリカンに勝ちたいんだ! 前回のドイツではいくつか問題があったが、それを解決するための大幅な変更は時間の関係でできそうもない。でも昨年のデータを使いながらセッティングを詰めていけば、きっと良いものができ上がると思う。
コースが改修されたので何らかの影響があると思うが、それは実際に走ってみるまでわからない。昨年の経験から、チャンピオンシップのコースとしては安全性のレベルが低いと思っていたので、安全委員会とさまざまなことを話し合ってきた。そして改善のためにいくつかアイディアを出したんだ。スーパーバイクならあまり問題はないが、MotoGPのマシンはそれよりも40km/hも速いスピードでコーナーに入るのだから、とくに第1コーナーはどうしても何かしら変えなければならない。工事の結果、良くなったのか、安全になったのか、じっくり確かめたいと思う」
C・エドワーズ選手談 ー “優勝がターゲット”
ドイツGPではマシンのセットアップの問題で実力を出し切れなかったエドワーズだが、このUSGPは優勝だけを狙っている。昨年の同大会ではヘイデンと優勝争いを展開しながらの2位。そのヘイデンと今シーズンは、オランダのアッセンで大接戦を繰り広げた末、最終コーナーで転倒を喫してしまっている。2度目のホームグランプリ出場となる今回、アメリカ人同士のこの戦いで同じシナリオを繰り返すわけにはいかない。今度こそエドワーズが勝利を勝ち取る番だ。
そのエドワーズは次の火曜日、ロサンゼルスのハリウッド大通りで開催されるMotoGPバイクのパレードに参加。そのあとMotoGPを題材にした新しい映画で自らが主演する「The Doctor, The Tornado and The Kentucky Kid」の上映会にも姿を見せる予定になっている。
「ザクセンリンクの前に僕は、ラグナセカでは“勝ちたい”のではなく“勝つつもり”だと話していた。そしてその気持ちは今も変わっていない。カタルニアでトラブルに悩んだ後、7日後のアッセンでは優勝争いを展開したという経験がある。どうやらマシンがとても良く走ってくれるサーキットとそうでないサーキットがあるということのようだ。前回のドイツは問題が出てしまったが、ラグナはアッセンのときのように、もしかしたらうまくいくかもしれない。
そんななかで一つだけ確かなことは、勝利のためには全力で何でもやるということ。もしも去年と同様にアメリカン同士の戦いになったとしたら、今度こそ必ず僕が勝利をつかむ。今はただ、マシンがアッセンのときのように良く走ってくれることを望むだけ。そして本当にそうなれば、今度は決して同じミスを繰り返さない」
D・ブリビオ、キャメル・ヤマハ・チーム監督談 ー “目標は1-2フィニッシュ”
ブリビオは、二人のライダーがともに、アメリカでのモータースポーツ人気を牽引する重要な役割を担うものと確信している。昨年はエドワーズとロッシがそれぞれ2位、3位で表彰台を獲得したが、今年は二人そろって頂点に立ってほしいと考えている。
「昨年は二人がともに表彰台に上った。今回もその再現を狙っているが、ポジションはもっと上がいい。MotoGPの戦いは日に日に厳しくなっていくが、我々にできることはただ努力を続けることだけ。なぜならシーズンはまだ先が長いのだから。サマーブレイク後は残り6戦となるわけだが、その前のここラグナセカで優勝を果たしてから休みに入れば、精神的に非常に楽になるだろう。
このコースではヘイデンが速いことは承知している。我々にとっては大きなチャレンジだが、ライダーは戦いを楽しむためにレースをしているのだし、昨年のことを思い出してみれば、二人はきっとニッキーを苦しめるだろう。ドイツでのバレンティーノの勝利は我々に自信を与えてくれた。またコーリンにとってもこのラグナセカは、表彰台に復帰するための絶好の機会となるはずだ。レースウイークの開始までわずかだが、僕らは今、とても待ちきれないような気持ちでいるんだ」
D・ロマニョーリ談(エドワーズのチーフエンジニア) ー “テクニカル情報”
恐れられ、またあがめられてきた世界的に有名なコークスクリューをもつラグナセカはカリフォルニア州モントレー近郊にある。昨年、11年ぶりに、世界でも最もエキサイティングなコースの一つとしてGPカレンダーに復活した。ストレートは短いものがわずかにあるだけで、あとは高速コーナーとアップダウンが連続する全長3.610kmのこのコース。フロントが空中でスピンする光景がたびたび見られ、観客にとっては見応え十分。しかしマシンセッティングに関しては非常に単純ではっきりしていると言える。
「実は昨年初めてここを訪れた時に、思っていたほどテクニカルなコースではないと感じたんだ。ストレートがほとんどない特殊なコースなので、ギアも全部使う必要がないし、最高速もそれほど速くなくてもいい。トップエンドのパワーよりもパワーデリバリーのほうがずっと重要で、ライダーが扱いやすいようにスムーズでなければならない。
同時にこのコースはアップダウンが激しいので、さまざまな条件の下でマシンをターンさせなければならないためシャシー特性もとても大切。マシンが傾いている時、とくにメインストレートエンドで高速で傾けるところ、そしてコークスクリューでは十分なトラクションが必要だ。コークスクリューではまた、サスペンションの安定性とブレーキング性能とが要求される。コーリンは昨年、主にここでパッシングをしていたからだ。
正直に言えば、去年は非常に簡単にセッティングを煮詰めることができた。彼がコースを良く知っているので、我々がサーキットに入った時点ですでに、ギアやサスペンションのセッティングについては十分な情報が手元にあったことになるのだ。でも今回は少し状況が違う。マシンに関してはほとんど同じものを使用できるかもしれないが、タイヤは昨年からかなり変わっているので、やはりそれに合わせてシャシーやサスペンションを詰めていかなければならないだろう。ドイツでは適切なセッティングが見つからず大変苦労したが、コーリンはもうそのことを引きずることはないだろう。そしてアッセンで見せたような見事な戦いぶりを見せてくれるに違いない」