ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.11 7月23日 アメリカ
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第11戦USGP
■開催日:2006年7月23日(日)決勝結果
■開催地:アメリカ/ラグナセカ(3.610km)
■周回数:32周(115.52km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:39度 ■路面温度:56度
■PP:C・バーミューレン(スズキ/1分23秒168)
■FL:D・ペドロサ(ホンダ/1分23秒333)
REPORT
C・チェカが今季自己ベストの7位! ロッシはリタイヤ!
【速報】
テック3・ヤマハ・チームのC・チェカが今季自己ベストの7位を獲得した。キャメル・ヤマハ・チームのV・ロッシは予選10位から追い上げ終盤4番手まで挽回しさらに上位を狙ったが、マシントラブルでリタイヤ。チームメイトのC・エドワーズは9位だった。優勝は昨年のUSGPに続きN・ヘイデン(ホンダ)で今季2勝目。
レースは予選3番手のK・ロバーツ(ホンダKR)が好スタートで飛び出すが、まもなくC・バーミューレン(スズキ)が首位に浮上。序盤はバーミューレン、ロバーツ、ヘイデン、C・ストーナー(ホンダ)、M・メランドリ(ホンダ)、エドワーズが続くが、中盤17周目からバーミューレンを抜いたヘイデンが首位をリードし、そのまま逃げ切った。
ロッシは序盤、スタート位置と同じ10番手を走るがまもなく中野真矢(カワサキ)を抜いて9番手に。11周目にはJ・ホプキンス(スズキ)、エドワーズを抜いて7番手まで挽回する。その後先行するストーナーの転倒で順位を一つ上げると、19周目にロバーツ、20周目にメランドリを抜いて4番手とする。この時点で前を走る3番手ペドロサとの差は約4.5秒。
その後ロッシは、3番手に後退したバーミューレンを追うが終盤28周目からトラブルに見舞われ徐々に後退。マシンの不具合をかばいながら走行を続けるが、ラスト1周半を残してマシンがストップしリタイヤとなった。
2番グリッド、フロントロウスタートのエドワーズは、星条旗をカウルに施したYZR-M1で決勝に臨むも振るわず9位。チェカは予選11番手、ロッシの隣のグリッド4列目中央から決勝に臨み、中盤以降は9番手を走る。終盤エドワーズを抜き、さらにロッシの後退で7位でのチェッカーとなった。チームメイトのJ・エリソンは13位だった。
【レポート】
ロッシは、ラグナセカで開催されたシリーズ第11戦USGPで、驚異的な追い上げを見せたもののタイヤとエンジンのトラブルによりリタイヤした。グリッド10番手からスタートしたロッシはレース中徐々に追い上げ、ゴールまで残り4周となった時点で4番手まで順位を上げていた。ところが焼け付くような陽射で56度まで上昇した路面温度によって、ロッシはリアタイヤ左側のトラブルに悩まされ始めペースを落とす。さらにその後エンジンの冷却システムの機能が低下しオーバーヒート。マシンから白煙を上げ、レースをあきらめることになった。
同じトラブルがロッシのチームメイト、エドワーズは、フロントロウからスタートしトップグループにつけて走行。しかしロッシと同様、タイヤトラブルがエドワーズを襲う。さらに焼け付くような暑さはライダー自身にも大きな負担となる。レースウイーク中に体調を崩していたエドワーズはカゼ気味で胃の具合も悪く、ペースを維持することが困難となり5番手から徐々に順位を落とし、結局9位でレースを終えた。
エドワーズにとっては、今回は母国開催のGP。土曜日の予選でポールポジションを目指して果敢に攻めたエドワーズだったが、わずかに届かず2位となった。気温が38度まで上昇し、蒸し暑いコンディションのなか、エドワーズは予選終了まで残り数分となったところでベストタイムをマーク。セッション開始早々に最速ラップを記録していたバーミューレンのタイムを、コース前半の3セクションでは上回っていたが、コークスクリュー後の連続コーナーでコンマ数秒の遅れを喫してしまった。
予選は路面温度が極端に上昇し、朝の涼しい状況での走行と比較してもグリップが低下していたため一部のライダーは、予選用タイヤを履いたときでさえラップタイムの更新に苦悩していた。ロッシもコンディションの変化に苦しんだ一人で、予選ではグリッド2列目を確保したかに見られたが、結局10位で予選を終了。この予選順位は、見事な追い上げで優勝を飾った7日前のドイツGPの予選と同じだった。
決勝レースがスタートすると、ポールのバーミューレンは出遅れロバーツがホールショット。しかしバーミューレンは1周目にトップに立つ。バーミューレンの後方ではエドワーズがロバーツ、ヘイデン、ストーナー、メランドリ、そしてD・ペドロサ(ホンダ)らとバトルを展開。
ところがわずか6周でエドワーズの体調の悪化が明白となる。そのエドワーズの後退をよそに、ロッシは着実に順位を上げ中野を10周目までに抜き去り、さらにホプキンスをかわすと、7番手につけるチームメイトのエドワーズに追いつく。そしてこれをパス。15周目にストーナーが転倒して順位を上げると、19周目までにメランドリとロバーツをかわし、今回のグリッドと難しいコースの状況を考慮すれば充分満足できる4番手まで浮上する。
しかしその後、ロッシも不運に襲われる。ポイントリーダーのヘイデンがバーミューレンをパスしてシーズン2勝目を挙げるのを横目に、ロッシはピットガレージに戻った。この結果、ランキング首位のヘイデンと4位に後退したロッシとの差は51ポイントとなった。レースで2位、3位に入ったペドロサとメランドリもポイントでロッシに先行し、2位と3位に順位を上げた。エドワーズは7位のまま。
テック3・ヤマハ・チームはチェカが今季自己ベストの7位に入り開幕以来続けてきたチームの努力が証明した。チェカはロッシとエドワーズのトラブルもあり、ヤマハ勢最上位でゴール。エリソンは見事なスタートを決めてポジションを上げたが、レース中盤にタイヤの消耗により後退。13位でフィニッシュした。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | N・ヘイデン | Repsol Honda Team | Honda | 45'04.867 |
2 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | 3.186 |
3 | M・メランドリ | Fortuna Honda | Honda | 10.929 |
4 | K・ロバーツ | Team Roberts | KR211V | 11.941 |
5 | C・バーミューレン | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 27.439 |
6 | J・ホプキンス | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 38.820 |
7 | C・チェカ | Tech 3 Yamaha Team | Yamaha | 44.825 |
8 | L・カピロッシ | Ducati Marlboro Team | Ducati | 48.526 |
9 | C・エドワーズ | Camel Yamaha Team | Yamaha | 53.228 |
10 | S・ジベルナウ | Ducati Marlboro Team | Ducati | 1'06.279 |
11 | 玉田 誠 | Konica Minolta Honda | Honda | 1'11.941 |
12 | R・ド・ピュニエ | Kawasaki Racing Team | Kawasaki | 1'14.407 |
13 | J・エリソン | Tech 3 Yamaha Team | Yamaha | 1'19.283 |
14 | A・ホフマン | Pramac d’Antin MotoGP | Ducati | 1'41.277 |
15 | T・エリアス | Fortuna Honda | Honda | -1 Laps |
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | N・ヘイデン | Honda | 194 |
2 | D・ペドロサ | Honda | 160 |
3 | M・メランドリ | Honda | 150 |
4 | V・ロッシ | Yamaha | 143 |
5 | L・カピロッシ | Ducati | 126 |
6 | C・ストーナー | Honda | 91 |
7 | C・エドワーズ | Yamaha | 84 |
15 | C・チェカ | Yamaha | 53 |
18 | J・エリソン | Yamaha | 20 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Honda | 246 |
2 | Yamaha | 181 |
3 | Ducati | 135 |
4 | Suzuki | 92 |
5 | KR211V | 79 |
6 | Kawasaki | 75 |
COMMENT
C・エドワーズ選手談(9位)
「スタートはあまり良くなかった。ダッシュはうまくいったんだけど、第1コーナーの進入のときにパワーが少し落ちてしまって遅れてしまった。それ以降は全力を振り絞って24秒1から2のペースをキープ。これはきのうのレースタイヤでのタイムを上回る速さだった。またブレーキングにも少し問題があって、こちらのほうも気にしながら走らなければならなかった。でも10周目くらいからは僕は完全に調子を崩してしまった。金曜日から体調が悪く体力を奪われていたので、ここに来て突然、力がまったく出なくなった。気分がとても悪くて本気でリタイヤを考えたが、ストーナーがクラッシュしたのが見えたので、やはり最後まで走って少しでもポイントを取らなければならないと思い直した。
20周あたりからタイヤがスピンし始めた。そしてどんどん状況は悪くなっていった。終盤には1コーナー進入では、本当に危ない場面にも遭遇した。あと3~4周というところでリアタイヤを見てみたら、そのひどさが目に見えるほど。だからその後はとにかく完走することだけ考えて走った。ホームレースがこんな形で終わったのは本当に残念だが、これがレースというものだ」
V・ロッシ選手談(リタイヤ)
「ウイークを通じて本当に厳しい状況が続いてしまった。たくさんのトラブルもあって、それが今日、最悪の形で現れてしまった。今朝のウォームアップでは大きな前進も見られ、タイムもかなり良くなっていた。だからきっといいレースができると思っていたのに…。ところがリアタイヤに問題が発生。まったくグリップしなくなってしまったので、クラッシュしないためにはペースを落とすしかなかった。その後さらに、エンジンの冷却システムに問題が起きた。オーバーヒートして煙が出始めたんだ。これですべてが終わったと思った。残り6レースあるが、ヘイデンとの差は51ポイント。こうなると、僕は初めて、チャンピオンシップのプレッシャーを考えることなくこの後のレースに臨むことになるわけだ。あとはできる限りレースを楽しみ、一つでも多く勝ちたい。先のことは誰にもわからないさ」
D・ブリビオ、キャメル・ヤマハ・チーム監督談
「いろいろな意味で、本当に厳しいレースになった。二つの異なる問題が発生し、二人のライダーに影響してしまった。コーリンはいいレースをしたが、体調が悪かった上に終盤ではリアタイヤの問題に悩まされた。バレンティーノもタイヤに関してはまったく同じ症状で、ペースを落とした後はエンジンの冷却システムが壊れてオーバーヒートした。そしてリタイヤを余儀なくされてしまった。シリーズポイントでは大きく離されており、大きな山に邪魔されている感じだが、最後まで決してあきらめない」
C・チェカ選手談(7位)
「とても満足している。レース序盤からバレンティーノや中野の後ろのいいポジションにつけ、遅れずについていくことができた。そして中盤になると暑さでタイヤが少したれてきて、終盤の4~5ラップはちょっと苦労した。でも7位という結果は今までで最高。決して楽ではなかったこのウイークを考えれば、非常に良い成績で喜んでいいだろう。しかも決勝では、今までに試したことのないタイヤを使ったほどだから満足していいはずだ」
J・エリソン選手談(13位)
「とても厳しいレースだったが、スタートの時点ではフィーリングがかなり良かったんだ。好スタートを切って玉田やド・ピュニエについて、いいバトルができた。数ラップは彼らに遅れなかったが、フロントがたれてからは危うく転倒という場面もあった。気温が上がってきたし、僕がハードにブレーキをかけていたからフロントタイヤの挙動が激しくなってしまったんだろう。
その後は少し自信がなくなってペースが落ちてしまった。でもまた考え直したんだ。これでは何もトライできていないってね。転んだら転んだときのこと。でもそう思ったら、何とか走れたし、それがきっかけになって、また自信を取り戻し終盤になってタイムが上がって、前に近づくこともできた。そのほかにもコースの周りに僕を応援して旗を振ってくれている人たちが見えたりして、最後は本当にいい走りができたと思う。これを最初から最後までできていたら良かったんだけれど…。でも最終的にはポイントも取れて、いい気分でアメリカを後にすることができる」
H・ポンシャラル、テック3・ヤマハ・チーム監督談
「今回は我々チームにとって、今までで最高の成績。シーズン前半戦をこのような形で終えることができたので、この後の夏休みをエンジョイできそうだ。気温がとても高かったし、プラクティス中から大勢が苦労しているのを見ていたので、厳しいレースになることはわかっていた。
決勝ではタイヤチョイスでギャンブルをした。テストしたことのないものをカルロスに履かせたんだ。どうなるかわからないものを決勝で使うというのは本当に厳しい決断だった。その結果今期最高の7位を得られ、ヤマハ勢のトップになれたことは、技術的な面の我々のプロジェクトが成功していることの証明だ。常に前進し続けてこられたことがうれしいし、そのためにカルロスがこれほど頑張ってくれたことに感謝している。
ジェームスもまたレースを通じて安定していて、とても良くやってくれた。もうちょっとで、あと一人か二人はパスできただろう。なぜなら終盤の彼は、前のライダーよりも間違いなく速かったからね。とにかく両ライダーがポイントを獲得し、安定して最後まで走りきれたのだから十分に満足できる。夏休みを楽しんで、その後はまた全力で戦おう」
辻幸一談(ヤマハ発動機モトGPグループ)
「ヤマハにとっては非常に厳しい結果となりました。コーリン選手はフロントロウからのスタートでしたが、体調の悪化と上昇した気温にマシンが対応しきれず、徐々に順位を落とし、9番手でフィニッシュ。バレンティーノ選手は、一時4番手まで順位を上げるも、残り2周でマシントラブルによりリタイヤ。一方、テック3・ヤマハ・チームのカルロス選手は11番手スタートながら、順調に前車をパスし、ヤマハ勢最高位の7位でフィニッシュ。エリソン選手も18番手スタートから13位で完走を果たしました。MotoGPはここでサマーブレイクとなり、次節は8月20日のチェコGPです。チャンピオンシップポイントの差が広がってしまいましたが、この間に立て直しを図ります。今後とも皆さんのご支援、ご声援をよろしくお願いします」