ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.06 6月4日 イタリア
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第6戦イタリアGP
■開催日:2006年6月2日(金)フリー、3日(土曜)予選、4日(日)決勝
■開催地:イタリア/ムジェロ
CIRCUIT DATA
■開設:1974年
■コース長:5.245km
■レコードラップ:1分50秒117 (2005年:M・ビアッジ)
■ベストラップ:1分49秒223(2005年:V・ロッシ)
■2005年の優勝者:V・ロッシ
REPORT
ホームグランプリ
キャメル・ヤマハ・チームは今週末、ホームグランプリに臨み、栄冠を目指して新たなスタートを切る。高速で流れるようなレイアウトのムジェロサーキットでは、ここ最近のル・マンや上海といったタイトなコースとはまったく違ったレース展開が予想される。
キャメル・ヤマハ・チームのV・ロッシとC・エドワーズは、これを機に運を変え、これまでの5戦とはまったく違った展開を期待している。とくにロッシは、母国イタリアのファンにタイトル争いを見せたいと切望している。先週、ローレウス・ワールド・スポーツ・アワードで「スピリット・オブ・スポーツ」を受賞したばかりだが、今週はムジェロ5年連続優勝の記録達成に挑む。
一方、前回のフランスGPで首位争いができるポテンシャルを披露したエドワーズもまた表彰台の中央を狙っている。エドワーズは第1コーナーでコースアウト、最後尾からの追い上げを強いられたが、見事に6位まで挽回。優勝者とのタイム差はわずかに11秒だった。ロッシ同様、思い通りの走りさえできれば、ホームGPに華を添えるてくれることだろう。
今回の舞台となるムジェロサーキットは、イタリア有数の観光地フィレンツェから40分程の山間部にあり、四輪メーカーフェラーリのテストコースとしても知られる。アップダウンに富んだ丘陵コースで、サーキット施設は最新設備が整う。MotoGPでは、ロッシのファン、ドゥカティのファンと、それぞれカラーで観客席が鮮やかに色づき、大声援を送るシーンが見られる。また、近くに宿泊施設が少なくキャンプ組が多く決勝日前は深夜まで賑やかなGPとなる。
COMMENT
V・ロッシ選手談 ー “11勝を目指して”
タイヤやエンジンの不具合によってノーポイントレースを2回経験したロッシ。シリーズポイントではトップのN・ヘイデン(ホンダ)に43ポイント差をつけられランキング8位。これまでのキャリアのなかで最低のシーズンスタートとなっている。しかし常に楽観的で自らの能力に自信を持つロッシは、ここまでの戦いを負けとせず、今回のレースがターニングポイントとなるはずだと語る。
「ムジェロは相性の良いコース。ここ数年もいつも好成績を挙げているから印象深いが、今年はそれよりもさらに重要なレースになるだろう。ムジェロは毎回、さまざまな感動を与えてくれる。レースウイーク中はいつもやることがいっぱいで忙しいけれど、勝ちたいと思ったら100%の力を注ぎ込まなければならないので仕事に気持ちを集中し続けることが重要だ。ニューフレームはル・マンでは好調だったし、データも十分にそろっているので自信があるよ」
ロッシが今シーズンもタイトルを獲得することになれば、序盤の5戦で表彰台が一度しかなかった初めてのライダーという記録を作ることになる。こうしたこともロッシにとってはチャレンジの一つなのだ。
「バッドラックが続いたが、あと12戦残っているなかでの43ポイント差というのはそれほど大きなものではないと思っているんだ。残り全部を勝とうと思ったら簡単なことではないが、僕は11勝と1度の2位を狙っていくよ! これまでに起こったことは、ほとんど僕のコントロールの外。フランスで25ポイント、中国で16ポイント、ヘレスで14ポイントをみすみす失ったわけだけど、もしもこんなことがなかったとしたら、どんな状況になっていたことか…。先週はようやく本当のポテンシャルを見せることができたと思う。だから後は運を変えるだけでいい。ムジェロはそのための最適の場所だと思う」
C・エドワーズ選手談 ー “ファミリー・アフェア”
エドワーズには、ムジェロを楽しみするだけの理由がいくつかある。開幕から約2カ月間は地球の端から端までを飛び回っていたため、12月に生まれたばかりの息子、ヘイズに会いにいく時間がほとんどなかったが、ヨーロッパラウンドが始まる今回から彼がこちらへやって来ることになったのだ。家族で落ち着いた生活をすることで、成績にも好影響があるはずだ。
「ヘイズだけじゃなくて娘のグレイシーも妻のアリシアも来るんだ。もちろん、とっても楽しみさ。家族と一緒にいるのが大好きだし、この間までみたいに他の大陸へ飛行機で移動してホテルに泊まるよりも、モーターホームでの生活がいい。そうすることで僕は、より自分のコース上でのパフォーマンスに集中できるようになるだろう。これが今の僕にとって最も大切なことで、ここまでの数戦を考えれば、どんなチャンスも逃すわけにはいかないんだ」
そしてもう一つの楽しみがニューフレームの投入だ。前回のル・マンではこれをロッシが使用して好感触を得ている。
「僕のマシンはトルコから変わってなくて、これで気持ち良く乗れるようになったということは、ある意味、どこかが限界に到達したということだ。ル・マンで行ったテストではニューフレームを搭載したマシンで30ラップほど走ったが、ポテンシャルアップは明らかだった。ムジェロでは初めから1台を確保。第1セッションから狙っていく。どこまでやれるかとても楽しみだ」
D・ブリビオ、キャメル・ヤマハ・チーム監督談 ー “故郷凱旋の興奮”
シーズン序盤戦の成績は期待していたものとは違っていたが、ブリビオは依然として、二人のライダーが今シーズンの目標達成に向かって着実に前進していると考えている。ブリビオはヤマハエンジニアの仕事ぶりを励みとしながら、今こそ運気を変えてトップを目指していく時だと話す。
「前回のル・マンではバッドラックがいくつもあったが、同時にマシンの進化を確認できて自信を深めることともなった。バレンティーノは安定してトップをキープ。あのままいっていれば、おそらく楽に勝てたレースだ。またコーリンも最後尾から6位までポジションを上げる素晴らしい走りを見せてくれた。このように着実に積み上げてきたことが結果に繋がっているので、これからもこの調子で前進し続けたい。
ポイントでは遅れをとっているが、残りの12レースで十分に取り戻すことができるだろう。我々が今すべきことは、毎戦、できる限り多くのポイントを集めること、つまり優勝を狙うことだ。その手始めがこのムジェロなんだ。
今回はバレンティーノを含めチーム員の半分にとってのホームレースで、ファンも大勢、応援に来てくれる。チャンピオンシップの行方は予想がつかないが、一つ確かなことは、このムジェロがホットでエキサイティングなレースになるということだ」
D・ロマニョーリ談(エドワーズのチーフエンジニア) ー “テクニカル情報”
全長5.245km、MotoGPサーキットのなかでは最も長いコースの一つ。絶景のタスカン渓谷を横切るムジェロは、そのアップダウンやシケインで他の高速サーキットと趣を異にしている。低速コーナーと高速コーナーとが混在しておりレーシングラインがいくつか可能となるため、ライダーのスキルとシャシーセットアップの正確さが重要となる。
「ムジェロは非常にテクニカルなコース。シャシーのセッティングがおそらく最も重要となるが、同時にストレートのためにエンジンも良くなければならない。何しろフルスロットルの区間が950mもあるのだから。またギア比もとても重要で、エンジンパワーを最大限に引き出すためには4速、5速、6速の間に小さなギャップが必要だ。このように非常に複雑なコースなだけに、ライダーの技量によって大きな差が生まれてくる。例えば1コーナー進入は約330km/hから85km/hまで一気に減速しなければならないハードブレーキングのポイント。それからマシンの旋回性と俊敏性が求められるS字。さらにはアップダウンをしながら素早くマシンの向きを変えなければならないコーナーなど。こうしたさまざまなタイプのコーナーに合わせられるよう、どこかに妥協点を見つけなければならないんだ。
今回はエドワーズにニューフレームが投入されるが、これによってフロントエンドの感触が良くなっており、とくにコーナー進入時の旋回性や安定性が向上している。またチャターの問題もこれでほぼ解決できている。高速コーナーではマシンに横方向の負荷がかかるので、ここムジェロではこのことが重要になる」