ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.05 5月21日 フランス
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第5戦フランスGP
■開催日:2006年5月19日(金)フリー、20日(土)予選、21日(日)決勝
■開催地:フランス/ル・マン
CIRCUIT DATA
■開設:1965年
■コース長:4.180km
■2005年の優勝者:V・ロッシ
REPORT
いよいよヨーロッパラウンドがスタート!
3月末にスペインでスタートし、その後は中東や東アジアを転戦したMotoGP。馴染みのない場所で厳しい展開を迫られてきたキャメル・ヤマハ・チームだが、第5戦フランスGPから始まるヨーロッパラウンドでは挽回を狙う。
ディフェンディングチャンピオンのV・ロッシは、第2戦カタールGPで優勝を果たした以外は、ここまでいいところがない。開幕戦のヘレスでは第1コーナーで転倒、第3戦イスタンブールと第4戦上海はマシントラブルと不運が続いたため、シリーズポイントでは、現在トップのN・ヘイデン(ホンダ)に32ポイント差をつけられている。この遅れを何とか取り戻したいロッシは今、ここまで2006年型YZR-M1の開発を妨げてきたいくつかの問題を解決することに主眼をおいている。
フランスのル・マンは、キャメル・ヤマハ・チームにとっては相性の良いサーキット。昨年はロッシがポールポジションからラップレコードを記録して優勝を果たし、チームメイトのC・エドワーズもともに表彰台に上っている。このレースの再現が、今回の二人の目標となる。エドワーズは前回の中国GPで3位表彰台を獲得、25回連続ポイント獲得の快挙を成し遂げたばかり。これはM・ドゥーハン、W・ガードナー、E・ローソン、V・ロッシに並ぶ記録。
パリから130Kmほど南下した所にあるル・マンは自動車の24時間レースで有名。四輪ではサーキットの一部と公道コースを繋ぐ13Kmのサルテサーキットが舞台だが、MotoGPではクローズドのブカッティサーキットがコースとなる(サルテとはストレート部共用)。見どころは最終コーナーの進入と脱出で、ここが主に勝負に影響するポイント。2004年には大幅改修で第1コーナーも変更された。GP開催中は当地の高速道の二輪通行料は無料となる。
COMMENT
V・ロッシ選手談 ー “重大局面?”
モーターサイクルレースの最高峰クラス、MotoGPで連続5回目のタイトル獲得を目指すV・ロッシは、ヨーロッパラウンドを迎える今こそ重要なターニングポイントであると考えている。シーズン序盤は不運が続いたが、この逆境をはねのけて、ここまでの遅れを取り戻したいところだ。現在はランキング6位だが、運が変われば数週間のうちに劇的な変化が訪れるだろう。
「先週日曜の中国GPは、ここまでの4戦のなかで2回目のノーポイントレースとなってしまった。しかもそのいずれも自分のミスではなかったんだ。ツキがないことは明らかだが、今最も重要なことは、一刻も早くトラブルの原因を突き止めることだ。次のル・マンから始まるヨーロッパラウンドは、フルシーズンの中のメインであり、僕らにとっては非常に重要だからね。
ル・マンではいくつかのニューパーツを試すことになっているので、それによってベースセッティングをうまく煮詰めていけるようにと願っている。ライバルたちとの差は決して小さくなく、課題はまだ多い。彼らに打ち勝つためには、少なくとも持てる力を最大限に出し切ることが必要だ。ポイントではすでに遅れをとってしまっているが、シーズンは長いしチームを信頼しているので、必ず取り戻せると信じている。ル・マンは好きなコースではないが、僕らのチームは去年、とても良い結果を残すことができた。僕はポールポジションとファステストラップと優勝を獲得し、コーリンも表彰台に上ったのだからパーフェクト。今回もこれを再現できれば最高だ」
C・エドワーズ選手談 ー “表彰台を再び狙う”
エドワーズの今回の目標は、先週の中国GPに続き再び表彰台に上ることだ。昨シーズン初の表彰台も第4戦で実現しているが、それがちょうど1年前のル・マン。エドワーズは序盤をリードした後、最終的にはロッシとS・ジベルナウに先行されて3位となった。
「シーズンの第4戦がどうも好きみたい。そして今年もまた、先週の中国GPで良い結果が得られて本当にうれしい。昨年のル・マンの表彰台は、その後の好調への重要な足がかりとなったので、今回もそうなることを強く臨んでいる。マシンにいまだに問題があることは秘密でもなんでもない。トラブルがあっても優勝や表彰台が可能だとすれば、すべてが解決した時にはどこまでできるか非常に楽しみだ。
ル・マンはストップ&ゴーのサーキットで、ハードブレーキングとタイトコーナーとハードな加速ばかりが多すぎるとみんなは言うけど、僕はあまり気にしていないんだ。マシンに関してはまだ課題があるけれど、このコースは去年いいレースができているので、ここ何戦かに比べれば少しは楽にやれると思う」
D・ブリビオ、キャメル・ヤマハ・チーム監督談 ー “臨戦態勢”
ブリビオは、ヨーロッパラウンドの始まりを心待ちにしている。第2戦のカタールからトルコ、中国と飛行機での移動が続いたが、この第5戦でようやくヨーロッパへ戻り通常の生活が始まる。
「シーズン序盤戦、バレンティーノの優勝とコーリンの表彰台はあったものの全体としては本当に厳しい状況が続いた。次からのヨーロッパラウンドが、我々にとって新たな始まりとはることを望むばかりだ。今後も厳しい戦いに変わりはないだろうが、今我々にできることは、ただひたすら全力で臨み問題解決に取り組むことだけだ。開発に関して、やらなければならないことは、まだまだたくさん残っている。しかしマシン自体の性能の高さは、バレンティーノとコーリンのパフォーマンスからすでに良くわかっているんだ。後はそれをいかに最大限まで引き出すか、ということなんだ。
ヤマハのエンジニアたちも、そのために懸命に頑張っている。そして金曜日の最初のプラクティスからバレンティーノにニューフレームが投入される予定だ。それを現行のものと比較してみて、実際に使うか使わないかを判断することになる。昨年はここで二人がそろって表彰台に上るという快挙を成し遂げることができた。今回もそれを再現できれば最高だ。このところ我々のバッドラックを振り払うことができたら、大きな自信になるだろう」
J・バージェス談(ロッシのチーフエンジニア) ー “テクニカル情報”
ル・マンは典型的なストップ&ゴーのコース。そして、それをさらに複雑にしているのが短いメインストレートの後の超高速コーナー。これはグランプリサーキットのなかでも最もスピードの出るコーナーの一つだ。ヘアピンやシケインがいくつもあるため、連続的なハードブレーキングでのバランスやコントロールが要求されるばかりでなく、フルブレーキングからフル加速を行うコーナー立ち上がりの俊敏性も求められる。
「9つの右コーナーと4つの左コーナー。タイヤの片側により多くの負担がかかる。ル・マンはおそらく、GPサーキットの中でも最もテクニカルなコースだろう。でも他のコースと比較して目立った特徴があるというわけではないのでセッティングに関して特別な秘策はない。低速コーナーの立ち上がりごとに加速が求められるが、このことは、2004年に初めてここでM1を走らせたときに苦労した点だった。当時はバルセロナやムジェロ、アッセンといった馬力重視のコースに備えてニューエンジンに取り組んでいたからだ。
昨年は完璧に開発されたマシンがあったので、後はこのコースに合わせて細かい調整を行うだけで良かった。それでバレンティーノもコーリンも十分に速く走ることができた。ハードブレーキングの箇所がこれだけたくさんあるので、フロントフォークのセッティングとスプリングレートを硬めにするのはもちろんだが、同時にリアに関してはスプリングをやや柔らかめにすることで、コーナー出口でラインが取りやすくなる。この方法は非常にはっきりしていて、秘密でもなんでもないんだ」