「このチームなら絶対できる!」3連覇に自信を深め3日間のテストを終了
7月11日からの3日間にわたって行われた鈴鹿8耐合同テストが終了した。今回のテストには、YAMAHA FACTORY RACING TEAMの中須賀克行選手、アレックス・ローズ選手、マイケル・ファン・デル・マーク選手が参加。また、YART Yamaha Official EWC Team(YART)からはブロック・パークス選手、マービン・フリッツ選手、野左根航汰選手が出走。さらにGMT94 Yamaha Official EWC Team(GMT94)はデビッド・チェカ選手、ニッコロ・カネパ選手、マイク・ディ・メリオ選手がテストに臨んだ。
EWC(世界耐久選手権シリーズ)では、この鈴鹿8耐が2016-2017シリーズの最終戦となる。ランキングでは、GMT94は1ポイント差のランキング2位、そしてYARTは27ポイント差の3位だが、この最終戦・鈴鹿8耐はポイントが通常の150%(1位 30P→45P)となるため、両チームともに逆転チャンピオンの可能性を残している。
今回のテストには、EWCにフル参戦する一部チームを除き、出場するほとんどのチームが出走。そして3日間で、ナイトセッションを含み各グループ530分、本番の8時間(480分)以上の走行を行った。
YAMAHA FACTORY RACING TEAMは、6月下旬に行った鈴鹿サーキットでプライベートテストのデータを基に、3人に合わせたマシンのセットアップやポジション設定を中心に行った。特にポジションは、中須賀選手とアレックス選手の体型は似ているが、マイケル選手は身長が高く、その分、手足が長いためにハンドル幅を調整。3人の納得のいくポジションを見つけ出すことが急務だった。
しかし「僕のために若干だけれどポジション変更してもらった。もしかしたら2人が乗りにくくなるのではと心配していたけれど、そのマシンに乗った2人から問題ないと言われて安心した」とマイケル選手は話したが、それも初日のうちに解消した。
翌12日はロングランテストを行う予定だったが、午後の走行直前に雨が降りはじめ、路面は完全にウェットコンディション。チームはすぐに切り替えて、決勝でのウエットを想定し、貴重なセットアップデータを残した。
そして3日目はウィークに向けての総仕上げにかかった。午前中のセッションでは、中須賀選手がマシンのチェックを兼ねニュータイヤでアタックし、3日間の総合3番手となる2分7秒603をマークした。さらに午後の90分の走行枠を利用してアレックス選手とマイケル選手の2人がロングランテストを実施。ともに2分9秒台前半のアベレージで、マシンが順調であることを立証した。
テストを終了した中須賀選手は「やりましょう3連覇! このチームなら絶対できる!」と気合い十分。アレックス選手、マイケル選手とともに優勝を誓い合った。
YARTは、先週のテストからタイムもアベレージも確実な進歩を示し、3日間を通してのベストは2分8秒861で13番手。特に初の鈴鹿となったマービン選手は、3人のアベレージが非常に重要になるなかで、2人の鈴鹿経験者から多くを吸収して成長を遂げたことは大きな収穫となった。
エースとして期待される野左根選手は、ブロック選手とともに、セットアップやベストラップでチームをけん引してきたが納得はしていない。過去のレースは、すべてが初のコースでチームメイトに支えられてきただけに、この鈴鹿は「母国レースだから、鈴鹿8耐だからこそ」恩返ししたいという思いがあるからだ。それでも、全員で戦う耐久の特性も十分理解しており、野左根選手が決勝で「個」と「チーム」にどう折り合いをつけるかが注目される。
一方のGMT94は、2分10秒882のベストタイムを出し33番手でテストを終了した。3日目もサーキットへの適応、タイヤセレクト、アベレージの向上に集中。決して目立ったタイムなどを残したわけでも、劇的な進化を果たしたわけでもないが、EWCチャンピオンへの距離を縮めるべく、マイペースにやるべきことをこなし、テストを終えている。
YAMAHA FACTORY RACING TEAM
中須賀克行選手談
「今日はアレックスとマイケルがロングランテストをして、僕は路面温度とタイヤのマッチングや決勝を見据えてのサスセッティングに集中しました。昨日の午後のセッションは雨が降ってしまいましたが、全体的に鈴鹿8耐本番を思わせる暑さと湿度で、充実した3日間でした。ただ、ライバルを見ると、新型モデルも登場していて確実に速くなっているので、昨年以上にチーム全体として気持ちを引き締めていかないと、と思っています。3人のポジションは、全員がうまく歩み寄れるものになりました。次に鈴鹿サーキットに戻ってくるのは鈴鹿8耐本番になりますが、やりましょう3連覇! このチームならば絶対にいけます。ファンのみなさんも、応援してください!」
アレックス・ローズ選手談
「全体を通してみるととてもポジティブで、マシンのフィーリングもよかったですね。アメリカから日本に着いた初日はちょっと疲れがありましたが、本当によいテストでした。最終日の今日は、レースシミュレーションを行いました。とてもいい感触でしたね。ラップタイムがとても安定していて、最後のラップに2分8秒台が出ているし、アベレージも2分9秒台に入っています。もちろん、マイケルも、ナカスガさんもいい仕事をしていました。レースに向けて、チームの雰囲気も含めすべてがグッドです。これから一度帰って、8耐に集中するために、1週間リラックスしたいと思います」
マイケル・ファン・デル・マーク選手談
「テストの結果はとてもハッピーです。今日はロングランを行いましたが、セッティングもほとんど変更する必要もないくらい完成度が高く、さらに3人ともにうまく合わせられることを確認できました。とにかく僕たちは速く、安定していたのです。鈴鹿8耐はマシンのセッティングだけでなく、チームワークも大事ですが、雰囲気もいいし、みんながリラックスしていたし、もちろんテストを無事に終えることができてよかったですね。レースウィークに入ると、もっとプレッシャーがかかってきて、少し違う状況になると思いますが、今はレースが楽しみでなりません。これから一旦オランダに戻ります。一番最初にやること? そうですねまずはゆっくり寝ますよ! 8耐のためにもね」
吉川和多留監督談
「とても充実した3日間になりました。マシンへのセッティングオーダーはありますが、それが3人とも同じで3人が同じ方向を向いているということ。とてもポジティブです。そしてどこかでロングランを行い、燃費などを確かめたかったのですが、それを3日目の最終セッションで行うことができました。このロングランはアレックスとマイケルに担当してもらいましたが、アベレージで2分9秒前半。アレックスは2分7秒台に入る勢いだったので、抑えていくよう指示するほどでした。とにかくチームは良い状態。本番を楽しみにしていてください」
YART Yamaha Official EWC Team
ブロック・パークス選手談
「今回はとてもよい3日間を過ごすことができました。結果についても、最初のテストから今日までチーム全体を向上させることができ、とてもポジティブに感じています。一言でいうと、前回のテストからかなり乗り心地がよくなりました。ロングランを行った時も、ラップタイムが安定していたし、他のチームと比較してもよいアベレージだと思います。鈴鹿は僕もコウタも十分な経験があることが、こうした結果につながったのでしょう。鈴鹿が初めてのマービンのサポートもできていますしね。テストを終えて言えるのは、チームとして自信をもってレースに臨める状態にあるということです」
マービン・フリッツ選手談
「最初のテストからここまでの間に、3人にとってよいバイクになりました。具体的には乗り心地が改善され、安定したタイムで走れるようになったということ。自分については、まだまだ学び、向上しなければならないのが現実。普段は新しいサーキットに馴染むのは得意な方ですが、鈴鹿サーキットは攻略できていないのです。最後のシケインは問題ないのですが、ヘアピンの後のシケインは難しいですよ。だからブロックとコウタからいろいろ教わり、毎日よくなってきて、タイムも出ているので、悪い状態ではありません。でもまだ向上しなきゃいけない部分はあるので。一歩一歩で確実に前進します。鈴鹿は暑くてとにかく疲れました。これから本番までに少し休憩があるので、身体を休ませます」
野左根航汰選手談
「今回の最大の目標は、3人のアベレージを上げることでした。もちろんこれは一定レベルでクリアできたのですが、セッティングに関していえば僕の好みとは少し違います(笑)。これまでは、すべて初のコースだったので違和感もなかったのですが、鈴鹿サーキットは走りなれているだけにもう少し意見も入れたかったところ。母国レースだから、鈴鹿8耐だからこその思いですが、これがまさに3人で戦う耐久の難しさだし、この中でしっかり結果を残すことがライダーの務めだと思っています。それでも、ブロックと一緒にロングランをして、2分9~10秒台で走っているので、これはよかったと思います。レースはもう直前に迫っています。自分をしっかりとマシンに合わせがんばります!」
マンディー・カインツ監督談
「前回のテストから今日まで、十分な進歩を感じています。私たちのパフォーマンス、レースペースに自信を持てたし、いいレースウィークになることでしょう。ライバルについてはなんとも言えませんが、昨年よりも今年のほうが激しく厳しい戦いになると思います。ただ、私たちも強くなっており、ライダー3人がとても速い。鈴鹿を走ったことがなかったので当たり前ですが、マービンが一番力をつけてくれました。チームのストロングポイントは、ライダー3人が安定し、同じようなペースで走れること。だからこそペースもよいのです。ただし、レースでは運も必要です。最終戦は運が味方してくれるといいですね」
GMT94 Yamaha Official EWC Team
デビット・チェカ選手談
「テストの前の日曜日にレースがあり、初日の13時に鈴鹿に到着。とても疲れていたのでプッシュはしていませんが、次の日のために5〜6周ほど走りました。2日目以降は、いろんなことをチェックできました。特にダンロップとは、とてもよい感じで仕事が進み、タイヤも決めることができました。このレースはファクトリーチームが参戦するため、勝利することはとても難しいのはわかっていますが、僕たちは強いチームで、強いライダーがそろっており、マシンも確実に仕上がっているので、自信はあります。ヤマハのため、ダンロップのため、そしてチームとチームメイトのため、ベストなリザルトを獲れるように最善をつくします」
ニッコロ・カネパ選手談
「すばらしいサーキットで、すごいライダー、速いバイクと一緒に走ることができ、とても楽しい3日間でした。テストでは乗り心地がよいマシンセッティングを目指していましたが、みんながすばらしい仕事をしたおかげで、達成できたと思います。現在、EWCのライバルの中で僕たちは、速く強く、とてもよい状況にあります。ただ、この鈴鹿8耐での目標は勝利ではありません。目標はあくまでもタイトル獲得。なぜなら僕たちは必要以上のリザルトを取るためにリスクをおかしたくないからです。この後一旦、鈴鹿を離れますが、ここでみんなとてもよいモチベーションもらいました。準備は万端です!」
マイク・ディ・メリオ選手談
「僕は2003年以来ここで走っていないので、今回のテストはとても有意義なものになりました。以前走った時はGP125のマシンだったので、1000ccのマシンでこのコースになれるために初日は多くのラップをこなしましたが、セッションを終えるごとにフィーリングはよくなっていきました。そしてタイヤを決める作業も行いました。日を追うごとにラップタイムも、ペースもよくなり全体的にポジティブなテストでした。あとは本番を待つのみ、決勝を走るのを楽しみにしています」
クリストフ・グィオ監督談
「今回のベストは10秒8でしたが、ユーズドタイヤで11秒台のペースで走ることができ、とてもいい感触を持って終わることができました。しかし最もよいことは安定していること。そしてウィークで使うべきタイヤを見つけたことです。またウエットにおいてもタイヤがすばらしく、一時的にトップにたったほど。ドライは簡単ではないでしょうが、もしレースがウエットになったらトップとも十分に戦えるでしょう。全体を見れば、チャンピオンシップをかけて戦うライバルより速く走れていたことも大きな収穫。そして今大事なのは、8時間で起こりうる問題に備えること。その時にどう対処していくか、メカニックたちも準備をしています。今の私たちは「自信がある」ではなく、決戦に向け「集中」している状態。それはとてもいい状態にあるということです」