ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.15 10月18 オーストラリア
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第15戦オーストラリアGP
■開催日:2009年10月18日(日)決勝
■開催地:オーストラリア/フィリップアイランド(4.448km)
■観客:50,094人
■周回数:27周(120.096km)
■コースコンディション:ドライ
■気温:16度 ■路面温度:31度
■PP:C・ストーナー(ドゥカティ/1分30秒341)
■FL:V・ロッシ(ヤマハ/1分30秒085)
REPORT
ロッシが2位、エドワーズ5位、ロレンソは転倒リタイア
フィアット・ヤマハ・チームのV・ロッシは2位を獲得。今季11回目となる表彰台に上った。チームメイトのJ・ロレンソはスタートでミスし、直後の第1コーナーで転倒してリタイアとなった。モンスター・ヤマハ・テック3チームのC・エドワーズは5位、J・トーズランドはフライングのペナルティを課せられ後退し14位だった。優勝はC・ストーナー(ドゥカティ)だった。これでランキング首位のロッシは合計270ポイント獲得となり、無得点に終わった2位ロレンソとの差を38点に広げ、次戦マレーシアGPでタイトルを決定する可能性も出てきた。
フロントロウからスタートしたロッシは、D・ペドロサ(ホンダ)とストーナーに続く3番手でオープニングラップを終了。2周目にはストーナーとロッシがペドロサをパスして一気に後続を引き離し、早くも2台によるトップ争いへと発展していった。この頃になると上空に雨雲が広がりはじめ、ピットではメカニックたちが慌ただしくスペアマシンを用意する光景も見られたが、再び太陽が顔を出して雨の心配がなくなったため、ロッシとストーナーはそのまま一騎討ちのバトルを続行。レース中盤にはロッシがストーナーに迫り何度かパスを仕掛けたが、終盤ロッシは安全策に切り替え2位を守りゴール。
2列目グリッドのロレンソは、スタートに少し出遅れ3列目グリッドのN・ヘイデン(ドゥカティ)に先行を許す。その直後、ロレンソはヘイデンのテールに接触。この衝撃でフロントブレーキを損傷したため、第1コーナー進入で減速することができずにそのまま転倒した。接触されたヘイデンもオーバーランするが、転倒せずにレースへ復帰。ロレンソはサーキット内の診療所に運ばれ鼻の切り傷と右手小指を治療したが、その他に深刻なダメージはなく、1週間後のマレーシアGPに影響はない。
モンスター・ヤマハ・テック3チームのC・エドワーズとJ・トーズランドはそれぞれ5位と14位。
5戦連続でグリッド5位を獲得していたエドワーズ。スタートでは少し出遅れて9位まで後退した。しかしその後は見事な追い上げを見せ、4周目にA・ドビツィオーゾ(ホンダ)をパス。5周目にはM・カリオ(ドゥカティ)、T・エリアス(ホンダ)、・R・ド・ピュニエ(ホンダ)を次々にパスして5位に浮上した。ウイークを通じてM1の安定性と俊敏性を高めてきたエドワーズは、その成果を証明するように、4番手を行くA・デ・アンジェリス(ホンダ)に照準を定めて差を縮めていったが、最終的に届かなかった。シリーズポイントではライバルのドビツィオーゾにわずか7ポイントに迫り、ランキング5位獲得の可能性がより高まってきた。
一方のトーズランドはフライングの反則をとられて10周目にピットイン。それまでは5位争いを展開していたが、これで順位を下げて14位でゴールした。13位のG・タルマクシ(ホンダ)との差はわずか0.034秒。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | C・ストーナー | Ducati Marlboro Team | Ducati | 40'56.651 |
2 | V・ロッシ | Fiat Yamaha Team | Yamaha | 1.935 |
3 | D・ペドロサ | Repsol Honda Team | Honda | 22.618 |
4 | A・デ・アンジェリス | San Carlo Honda Gresini | Honda | 32.702 |
5 | C・エドワーズ | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | 35.885 |
6 | A・ドビツィオーゾ | Repsol Honda Team | Honda | 38.482 |
7 | M・メランドリ | Hayate Racing Team | Kawasaki | 44.461 |
8 | R・ド・ピュニエ | LCR Honda MotoGP | Honda | 44.941 |
9 | M・カリオ | Ducati Marlboro Team | Ducati | 54.345 |
10 | T・エリアス | San Carlo Honda Gresini | Honda | 1'01.205 |
11 | C・バーミューレン | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 1'05.417 |
12 | L・カピロッシ | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 1'05.950 |
13 | G・タルマクシ | Scot Racing Team MotoGP | Honda | 1'17.951 |
14 | J・トーズランド | Monster Yamaha Tech 3 | Yamaha | 1'17.985 |
15 | N・ヘイデン | Ducati Marlboro Team | Ducati | 1 lap |
LAP CHART
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | V・ロッシ | Yamaha | 270 |
2 | J・ロレンソ | Yamaha | 232 |
3 | D・ペドロサ | Honda | 195 |
4 | C・スト―ナー | Ducati | 189 |
5 | A・ドビツィオーゾ | Honda | 152 |
6 | C・エドワーズ | Yamaha | 145 |
13 | J・トーズランド | Yamaha | 87 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Yamaha | 350 |
2 | Honda | 252 |
3 | Ducati | 236 |
4 | Suzuki | 121 |
5 | Kawasaki | 100 |
COMMENT
V・ロッシ選手談(2位)
「僕のこれまでのレースキャリアのなかでも、おそらく最も楽しくて、そして最も重要な2位獲得だと思うよ! レース中はずっと限界ぎりぎりまで攻めていて、大きなスライドも何度も経験した。まるで“オールドスタイル”のような走り方だった。このフィリップアイランドの太陽の下で、このようなレースができるなんて感激だし、僕自身、本当に楽しんで走ることができたんだ。もちろん勝ちたい気持ちはあったけれど、こういうときには熱くなり過ぎてはいけない。ロレンソがリタイアしたあとはとくに、もしも僕がミスでもすれば最悪なことになると自覚していたからね。とにかく、僕も何度か仕掛けたけれども、ストーナーのほうが僕より少し速かった。最後まであきらめるつもりはなかったけれど、結局、彼のほうが勝っていたんだ。彼には素直に“おめでとう”を言うよ! 僕のほうは20ポイントを獲得できたから、チャンピオンシップのリードも大きくなった。次のマレーシアでは、最初のマッチポイントに挑むよ!」
D・ブリビオ、チーム監督談
「今日の結果で、チャンピオンシップのリードを38ポイントまで拡大することができた。その意味で、今日は非常に重要なレースだった。その一方でロレンソの転倒はとても残念。こんなことを誰が予測できただろうか…? バレンティーノのほうは非常に自信を持って臨んでいて、優勝を狙って何度も果敢に攻めていった。しかし同時に冷静さも失わず、貴重な20ポイントを持ち帰ってきた。いつものように全力で頑張ったが、決して行き過ぎることはなかったということだ。チームのほうもいい仕事をしてくれた。この集中力とモチベーションをこのまま維持して、来週のセパンに乗り込まなければならない。そこでもまた最大限の結果を目指していく」
J・ロレンソ選手談(リタイア)
「転倒は悔しい。タイトル争いのことじゃなくて、僕自身のミスに腹が立つんだ。僕がこんなミスをしてしまうなんて、思っていなかったよ。今回のことは完全に自分の失敗で、距離を読み違えていたんだ。それにニッキーが僕の予測より早く減速したから、思わずぶつかってしまったんだ。初めは何とか持ちこたえられると思ったんだけれど、フロントブレーキが壊れてしまったので、コーナー進入でブレーキをかけようとしたらできなかった。それでそのあとリアが激しくスライドして転倒してしまったんだ。鼻と指にちょっと怪我をしたけれど、これだけで済んで良かったと思っている。だって、こういうことはレースにはつきものなんだ。残念な結果にはなったけれど、ひどい怪我がなかったことのほうが重要だと思うよ。ニッキーのレースを邪魔してしまったことを謝らなければならない。タイトルはいずれにしても遠い存在。これからは残りのふたつのレースに集中していきたい」
D・ロマニョーリ、チーム監督談
「今回はウイークを通じて厳しい状況ではあったが、そのなかでもこのような結果はまったく想像していなかった。予想外の問題がいくつも見つかってチームは非常に苦労したが、最終的にはかなりいいところまで来ていたのだ。そして今朝のウォームアップでまた1ステップ、そして決勝でももう一歩、前へ進むことができるはずだった。表彰台を目指して戦うはずだったが、果たせずに終わってしまったのだ…。タイトル獲得の夢は、これでほとんどなくなったと言っていいだろう。でもあとふたつのレースを、これまで同様にしっかりと戦っていきたい。あのような転倒で、ホルヘが大きな怪我をしなかったことは本当に幸いだった。このことを我々の幸運ととらえて、次のマレーシアにつなげていきたい」
C・エドワーズ選手談(5位)
「何も弁解はできない。スタートで大失敗をやってしまったんだ。気づいたらライトが変わっていて、僕はしばらくぼーっとしたように、そのままそこに座っていたんだよ…。それで9位まで後退。でもそのあとはペースも良く31秒台前半が出ていたので、どんどん抜いていくことができた。あのときは、もしも身体を伏せないとしたら周りのみんなを引きずり回してしまっただろうね、ここのスリップストリームはそうなんだよ。僕は決して優しくなんかならなかったし、あの勢いは本当にすごかったよ。おかげでわりと楽に集団を抜けて行くこともできたんだ。そのあとアンジェリスが前方に見えてきたから、また全力で追いかけていった。5位はもう飽きているから、今度こそその次へ行きたかったしね。でもやっぱりあのスタートが響いてしまったと言わざるを得ない。終盤になるとサイドのグリップが消耗してきてペースが上がらず、アンジェリスには追いつくことができなかった。でもドビツィオーゾに勝つことができたので、ランキング5位を目指し続けたい。モンスター・ヤマハ・テック3のみんなの努力に報いるためにも、どうしても欲しいものなんだ。残りの2戦もそのためにすべてを賭ける」
J・トーズランド選手談(14位)
「今の気持ちをどう表現していいのかわからないよ。ただひとつ言えることは、フライングの判断は厳し過ぎて、本当に残念だということ。レースのあとで録画を見てみたけれど、やっぱりフライングをしたようには見えない。だから今もなかなか受け入れられないんだ。でももう終わってしまったことだから、できるだけ早く忘れて次のセパンに気持ちを切り替えていかなければならないね。今日はいいレースをする自信があったし、実際に5位争いのグループにもうちょっと、というところまで迫っていた。でも、あのペナルティですべてが終わってしまったんだ。チームのみんなはいつも素晴らしい仕事をしてくれて、僕を支えてくれている。彼らの努力には心から感謝している。だからこそ、今回のことで気力をなくしてしまわずに、最後までしっかりと戦っていきたい」
H・ポンシャラル、チーム監督談
「今回もコーリンは見事なレースを見せてくれた。もしもスタートがうまくいっていれば、間違いなくアンジェリスと4位争いを展開していただろう。ラップタイムではほとんどの周回で上回っていたから、きっと見応えあるバトルになっていたはずだ。ドビツィオーゾに対しては、わずかに1ポイントしか差を縮めることができなかったが、ランキング5位争いは依然として続いており、可能性は十分に残っている。ジェームスのほうは、彼の憤りは私にはよく理解できる。一緒にビデオを見たが、正直なところ、あれは本当にぎりぎりの判断だったと思う。もちろん主催者の決定は尊重しなければならない。その上で、ジェームスは必ず、次のマレーシアで強さを取り戻してくれると確信している」
中嶋雅彦談(技術開発部MotoGPグループリーダー)
「南半球はまだ春先のため、冷たい風と変わりやすい天候に悩まされ、思ったようにグリップが得られず、厳しいレースとなりました。バレンティーノはナーバスな挙動を示すマシンをうまくコントロールしながら、勝機を窺いますが、トップを奪うには至らず、マシンの調整不足を痛感しています。ホルヘはスタート直後の混乱の中で、他車と接触し転倒リタイア。大切な一戦だっただけに残念ですが、大事に至らず幸いでした。
チャンピオンシップを争う、フィアット・ヤマハ・チームの2人は明暗を分ける結果となりましたが、気持ちを切り替えて次戦に臨むとともに、残り2戦で素晴らしいレースを披露できるよう、我々も全力でサポートしたいと思います」